- 更新日 : 2024年7月22日
ローカルベンチマークとは?概要と活用事例について解説!
ローカルベンチマークは、企業の経営状態を把握する上で非常に便利なツールです。経済産業省より提供されており、財務面のみならず非財務面の分析まで可能という特徴があります。
本記事では、ローカルベンチマークの概要から特徴、使い方、活用事例、課題について解説します。
目次
ローカルベンチマークとは
まずは、ローカルベンチマークの概要と、重要性を解説します。
ローカルベンチマークの概要
ローカルベンチマークは、地域企業の経営改善や地域活性化を目指すための評価手法であり、企業の健康診断ツールとして活用されます。
経済産業省が作成・提供しているツールであり、財務面(6つの指標)と非財務面(商流・業務フロー、4つの視点)での企業分析が可能です。
エクセルシートに必要事項を入力することで、売上増加率や営業利益率などの財務指標に加え、自社の業務フローや課題・対応策を可視化することができます。
ローカルベンチマークを活用する重要性
ローカルベンチマークの活用は、地域企業の競争力強化と地域経済の活性化を図る上で非常に重要です。
ローカルベンチマークツールへ財務情報や自社の状況を入力し経営状況や課題を可視化することで、経営者自身が課題を発見しやすくなります。これによって発見された課題に取り組むことで、経営を改善していくことができます。
つまりローカルベンチマークは、企業の現状把握と経営改善の推進に効果的なツールだといえます。
ローカルベンチマークの特徴
ローカルベンチマークには、以下のような特徴があります。
- 経済産業省が提供している
- 財務以外の情報も活用した分析が可能
経済産業省が提供する企業分析ツールであるため、信頼性が高く、高い効果が期待できます。
参考:経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」
また、ローカルベンチマークシートでは非財務面の分析・可視化もでき、企業の財務情報以外の分析も可能です。
財務面を分析できるツールは多くあるものの、非財務面まで分析できるツールは非常に少ないため、最も大きな特徴だといえます。
ローカルベンチマークシートの使い方
続いて、ローカルベンチマークシートの使い方をご紹介します。
まずは、経済産業省の公式ページからローカルベンチマークシートをダウンロードしましょう。
ダウンロードページ:経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート 」
ダウンロードしたエクセルブックのうち、以下のシートに企業のデータを入力することで、分析が可能になります。
- 財務分析シート
- 商流・業務フロー
- 4つの視点
各シートの概要を解説します。
財務分析シート
財務分析シートでは、企業の財務状況を分析することが可能です。
企業の基本情報に加え、売上高や営業利益、自己資本比率など、主要な財務情報をシートに入力します。
これにより、以下の6つの指標を可視化できます。
- 売上増加率
- 営業利益率
- 労働生産性
- EBITDA有利子負債倍率
- 営業運転資本回転期間
- 自己資本比率
商流・業務フロー
商流・業務フローでは、自社の業務フローを整理し、他社と差別化できるポイントを分析することが可能です。
このシートには、自社の現状の業務フローや、主要ステークホルダーとの商流フローを記入します。
業務の中でこだわっている部分やなぜ自社が選ばれているかを検討することで、強みの可視化につながるでしょう。
4つの視点
4つの視点では、以下4つのそれぞれの視点で、自社の分析を行います。
- 経営者
- 事業
- 企業を取り巻く環境・関係者
- 内部管理体制
これらの情報に加え「財務分析シート」や「商流・業務フロー」で分析した内容をもとに現状分析を行い、企業の将来像や目指す姿と比較します。
それぞれの情報を比較することで、「課題」とその「対応策」を可視化することが可能です。
ローカルベンチマークの活用事例
住宅やアパートなどの工事をする際の仮設足場設置工事を行う株式会社ASVALは、法人化以前は現代表が個人事業主として業務を請け負っていました。
法人化の際、さらなる業績向上のため会社としての強み・弱みを把握した上で、今後の方針を策定したいと考えました。
ローカルベンチマークを活用することで、案件の質が高いことや、主力得意先以外からも引き合いがあるという強みが分かったものの、最大の得意先である1社からの案件を最優先に対応しているため、主力得意先としては1社のみであり、安定性に懸念があるという課題が可視化されました。
この分析をもとに、強みである「質」を維持することを前提とし、主力得意先の1社以外からの受注にも対応できる体制を整備するため、従業員の増員が必要であることが分かりました。
出典:経済産業省「ローカルベンチマーク活用事例」
ローカルベンチマークの課題
続いて、ローカルベンチマークを実施する上で発生しやすい、以下3つの課題について解説します。
- データの取得が困難
- 小規模企業には実施ハードルが高い
- 効果的な活用方法がわからない
データの取得が困難
ローカルベンチマークの活用において、データの取得が困難なケースがあります。
特に中小企業では、データの整備や収集が不十分であることも多いでしょう。
売上データや顧客情報のデジタル化が進んでいない企業では、正確なデータを収集することが難しく、結果的にローカルベンチマークの精度が低下します。
正確な分析を行うには、財務データを可視化できるシステムを導入し、適切な管理をすることが求められます。
小規模企業には実施ハードルが高い
小規模企業がローカルベンチマークを実施する際のハードルが高いことも課題の一つです。
小規模企業は従業員全員がプレイヤーであるケースも多く、分析用データの抽出や、実際の評価・分析のためのリソースが不足している可能性が高いです。
企業分析や戦略立案の担当者がいないため、日々の業務を優先してしまい、データの抽出や評価・分析作業が滞ることがあります。
データ分析のための人材を専任しようとすると、小規模企業にとって大きな負担となるケースが多いでしょう。
小規模企業でローカルベンチマークを実施するには、企業全体のシステム最適化でバックオフィス業務を効率化し、組織全体で工数を削減することが求められます。
効果的な活用方法がわからない
ローカルベンチマークは企業だけでなく、金融機関や会計士、税理士、商工会議所などの各種支援機関にも認知され、活用されるべきものです。
しかし、これらの機関での認知度はまだ低く、実際に活用できている機関は少ないのが現状です。そのため、ベンチマークの最適な活用方法が分からず、効果的に活用されているとは言い難い状況になっています。
まとめ
本記事では、ローカルベンチマークの概要から使い方、活用事例を解説しました。
ローカルベンチマークは経済産業省が提供する企業の分析ツールであり、財務面に加え非財務面の分析を実施することが可能です。
データの取得が困難である可能性や、小規模企業の実施ハードルが高いことが課題です。これらの課題を解決し正確な企業分析を実施するには、的確なデータ管理やバックオフィス業務の効率化が求められます。
上記のような課題がある場合、ERPなどのシステムを導入し活用することで、企業全体のデータ一元管理や業務効率化につながります。
ERPについて詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご確認ください。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
財務会計と管理会計の基本
予実管理の煩雑さは大きな課題です。手作業に依存した業務プロセスやデータの連携不足、エクセルによる予実管理に悩む企業も多いのではないでしょうか。
財務会計と管理会計の基本を押さえつつ、予実管理の正確性とスピードを両立させるためのポイントと具体的な解決策を詳しく解説しています。
間接部門のコスト削減ガイド
バックオフィスのスリム化にお悩みではないでしょうか。経営改善の一環としても、バックオフィスの業務効率化はとても重要です。
本書では、間接部門の役割や抱えがちな課題に加えて、コスト削減のメリットとその進め方について解説します。
2025年の崖までに中堅企業がやるべきこととは
2025年の崖は、大企業だけではなく、中堅企業においても対応が求められる重要な課題です。
2025年の崖の現状や解決に向けて中堅企業がやるべきこと、バックオフィスシステムの見直し方を解説した人気のガイドです。
マネーフォワード クラウドERP サービス資料
マネーフォワード クラウドERPは段階的に導入できるコンポーネント型クラウドERPです。
会計から人事労務まで、バックオフィス全体をシームレスに連携できるため、面倒な手作業を自動化します。SFA/CRM、販売管理、在庫・購買管理などの他社システムとも連携できるため、現在ご利用のシステムを活かしたままシステム全体の最適化が可能です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
VUCAとは?いまの時代に必要なスキル!企業にとっての意味を解説
社会情勢は目まぐるしく変動し続けており、ビジネスの現場でも対応が求められています。しかし、先の読めない情勢への対応は極めて困難であり、苦慮している企業が多いでしょう。 当記事では、変動を続ける環境を生き抜くため、企業に求められるスキル「VU…
詳しくみる特例事業承継税制とは?一般措置との違いや申請の流れを解説
特例事業承継税制は、2009年度に定められた事業承継税制の中でも10年間限定の措置として利用可能な制度です。事業承継を検討している中小企業にとっては、より納税の猶予や免除が受けやすい制度となっています。 本記事では、特例事業承継税制の概要に…
詳しくみる独自性を追求する差別化戦略とは?特徴や実践方法などを解説
ブランドの展開、既存サービスの拡大、新規事業の立ち上げなど、戦略を立てるべきシーンはビジネスにおいて多く存在します。ただし、一言で「戦略」といってもその意味は幅広く、また戦略のパターンも多様です。その中でも差別化戦略は多くの企業やブランドが…
詳しくみるホールディングス化とは?メリットやデメリット、実行ステップや事例も解説
ホールディングス化とは、企業が持株会社を中心に事業会社を子会社として運営する経営形態を指します。 ホールディングス化は主に、経営の効率化やリスク分散、M&A対策の強化を目的に実施されます。 本記事では、ホールディングス化の概要やメリット・デ…
詳しくみるプライシングとは?目的や基本的な考え方、種類、ポイントを解説
プライシングとは、自社の製品やサービスの価格を決めることです。プライシングは企業のマーケティングにおいて重要な要素のひとつであり、適切なプライシングによって売上・利益の拡大や価格の安定化などを実現できます。 本記事では、プライシングの概要や…
詳しくみるレベニューシェアとは?メリット・デメリットや契約のポイントを解説
レベニューシェアとは、発注者側と受注者側で、事業の収益を分配する契約を結ぶ、成果報酬型の契約方式です。 発注者としてはコストやリスクを抑えたビジネス展開ができ、受注者としては継続的な収入の確保につながるという特徴があります。 本記事ではレベ…
詳しくみる


