- 更新日 : 2024年7月12日
中小企業投資促進税制とは?対象のソフトウェア、申請時の注意点を解説
新しいソフトウェアや設備の導入は、企業の生産性を上げていくために不可欠なものです。しかし中小企業にとって、設備投資は大きな負担になるケースも多く見られます。
そこで活用したいのが「中小企業投資促進税制」です。
中小企業投資促進税制は、一定の設備投資やソフトウェアに対して、特別償却または税額控除を認める制度のことです。
本記事では、中小企業投資促進税制の概要や、対象となっているソフトウェア、申請する際の注意点について詳しく解説していきます。設備投資を検討している企業はぜひ参考にしてください。
目次
中小企業投資促進税制とは
中小企業投資促進税制とは、機械装置などの設備の取得・製作など一定の設備投資を行った場合、取得費用の30%に相当する特別償却か、7%の税制控除のいずれかの適用を受けられる制度のことです。
中小企業投資促進税制を利用し上記の適用を受けることによって、大きな節税効果が期待できます。
中小企業投資促進税制は、中小企業・個人事業主の生産性向上を図ることも目的とされています。
資本金3,000万円以下の中小企業の場合は特別償却か税額控除のどちらかを選ぶことができ、資本金が3,000万円を超えている中小企業の場合は特別償却のみとなります。
2023年度に行われた税制改正について
中小企業投資促進税制は、数年単位で内容が改正されています。
2023年度の税制改正によって、中小企業投資促進税制の適用期限は令和6年度末(2025年3月末)までに変更されました。
参考:経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」P41
また、この改正によって不動産業や物品賃貸業などの業種が新たに対象に追加されています。その他に現在対象となっている主な業種は以下の通りです。
- 製造業
- 建設業
- 農業
- 林業
- 漁業
- 水産養殖業
- 鉱業
- 卸売業
- 道路貨物運送業
- 倉庫業
対象事業者
中小企業投資促進税制の対象事業者は、以下の通りです。
- 資本金額または出資金額が1億円以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
- 農業協同組合
- 商店街振興組合 など
中小企業投資促進税制の対象となっているソフトウェア・設備について
中小企業投資促進税制では、対象となっているソフトウェアや設備が定められています。
事前にどのようなものが対象なのかを確認しておきましょう。
中小企業投資促進税制で対象となっている設備は、以下の通りです。
- 1台160万円以上の機械装置
- 1台30万円以上かつ複数台の合計が120万円以上の測定工具・検査工具
- 車両総重量が3.5トン以上の普通貨物自動車
- 内航船舶(取得価額の75%が対象)
総トン数が500トン以上の内航船舶の場合、国土交通省への届出が必要となっています。
ソフトウェアの例
続いて対象となっているソフトウェアについて解説します。
ソフトウェアの場合、1つ70万円以上、または当該事業年度で利用開始したものの合計が70万円以上のソフトウェアが対象です。
例えば、ワープロソフトや表計算ソフト、経理ソフト、給与ソフト、イラストソフト、CADソフト、ERPなどのソフトウェアが該当します。
近年、中小企業での需要が高まっている「クラウド型ERP」も中小企業投資促進税制の対象です。クラウド型ERPの概要や詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
適用対象外のソフトウェアも存在する
例えば、サーバー用OSやサーバー用仮想化ソフトウェア、データベース管理ソフトウェア、連携ソフトウェアなどは対象外となっています。
他にも電子計算機(パソコン)やデジタル複合機、試験・測定機器なども制度の対象外となっているので注意しましょう。
また、中小企業投資促進税制は、対象の設備・ソフトウェアが該当事業年度中に稼働開始することが条件となっています。そのため、購入年度に稼働させない設備・ソフトウェアに関しては対象外となっていることは認識しておきましょう。
中小企業投資促進税制で必要な書類について
中小企業投資促進税制の申請は、法人・個人事業主どちらも確定申告のときに行います。この章では、中小企業投資促進税制で必要な書類について解説します。
特別償却の場合
法人が特別償却の申請を行う場合、確定申告書に以下の2点の書類を添付する必要があります。
- 特別償却の付表(中小企業者等又は中小連結法人が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表)
- 適用額明細書
個人事業主の場合、青色申告決算書の中にある「割増(特別)償却費」の箇所に特別償却額を記入します。
税額控除の場合
法人が税額控除の申請を行う場合、下記の書類を添付します。
- 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
- 適用額明細書
個人事業主も同様に、確定申告書に上記の書類を添付することで申請することができます。
中小企業投資促進税制を申請する際の注意点
中小企業投資促進税制を申請する際には、以下の2点に注意する必要があります。
期限や内容の追加・変更について把握する
中小企業投資促進税制は、期限の延長や内容の追加・変更などが多い税制です。
自社に不利な追加・変更がされる可能性も十分にあるため、内容については事前にきちんと確認しておきましょう。
また、税制の対象項目についても変更されることがあるので注意が必要です。前述した電子計算機(パソコン)やデジタル複合機、試験・測定機器などは、2017年度の税制改正で対象外となりました。
計画的な設備投資を心がける
中小企業投資促進税制のメリットを最大限に享受するためには、計画的な設備投資を心がける必要があります。
仮に購入した設備・ソフトウェアの支払いが事業年度中に完了していなかったとしても、稼働さえしていれば適用することができます。
また、特別償却か税額控除のどちらがより節税効果があるのかを見極めることも大切です。特別償却は対象設備の取得価額に対して30%の特別償却を適用できるのに対し、税制控除では取得価額の7%を法人税から税額控除できます。そのため、税額控除よりも特別償却の方がより多くの節税効果を見込めます。
しかし、特別償却の場合は翌年以降の償却分が減少するため、税額が高くなる点は認識しておきましょう。設備投資した年度の税額を抑えたい場合は、特別償却を選択するのがおすすめです。
まとめ
中小企業投資促進税制は特別償却や税額控除などを受けられる制度であり、大きな節税効果が期待できます。
中小企業投資促進税制を利用する際は、事前に対象業種や項目などの内容を確認しておく必要があります。また、設備投資した年度に稼働させることが条件となっている点も認識しておきましょう。中小企業投資促進税制を利用し、設備投資を積極的に行うことは企業の生産性向上につながります。事前に内容を確認した上で活用をご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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