- 作成日 : 2024年9月30日
マスタデータ管理とは?重要性やライフサイクル、上手く実践するための方法を解説
企業が持つ膨大なデータの中で、特に重要な役割を担うのが「マスタデータ」です。
これには、顧客情報や製品情報、取引先情報などが含まれ、正確かつ一貫性のある管理が求められます。しかし、その管理にはデータの重複や不整合、システム移行時の課題など多くの課題が伴います。
本記事では、マスタデータ管理の重要性と、データ管理のライフサイクルや課題、そしてマスタデータ管理を実践するためのポイントを解説します。
目次
マスタデータ管理とは
まずマスタデータ管理とは何かを説明し、他のデータとの違いについても解説します。
マスタデータ管理の定義
マスタデータ管理は、企業が保有する重要な基幹データを一元的に管理し、その正確性、整合性を維持するための方法論および技術のことを指します。
企業活動の基盤となるデータを「マスタ」として統一し、全社で共有・活用できるようにすることが目的で、データの収集、統合、標準化、そして継続的なメンテナンスを通じて、複数のシステムや部門間でデータの矛盾や重複を防ぎ、データの整合性を保ちます。
マスタデータと他のデータの違い
- マスタデータ
企業の業務において長期間にわたり安定的に使用される基本的なデータを指します。顧客情報や製品情報、取引先情報など、ビジネスプロセスの基盤となるデータが該当します。これらのデータは変更されることが少なく、企業全体で共通して使用されます。 - トランザクションデータ
日々の業務プロセスや取引によって生成されるデータを指します。リアルタイムで発生する注文、在庫データなど、具体的なビジネスイベントや活動に関連するデータがこれに該当し、その量や内容は頻繁に変動します。 - サマリーデータ
トランザクションデータを集計・分析して得られるデータです。企業が経営状況を把握し、将来の戦略を立てるために用いる重要な情報で、売上総額、月別の販売トレンド、顧客の購入パターンなどがこれに該当します。
マスタデータ管理の重要性
本章では、マスタデータ管理の重要性について解説します。
データの一貫性と正確性の確保
マスタデータ管理は、企業全体で使用される基幹データの一貫性と正確性を維持するために不可欠な役割を果たします。マスタデータ管理によってデータの整合性が保たれ、全社的に統一された情報が提供されるため、正確なデータに基づいた迅速な意思決定が可能になります。
組織横断的なデータ活用の促進
企業内の異なる部門やシステム間でのデータ共有を容易にし、組織全体でデータの統合的な活用を可能にします。これにより、部門間でデータの整合性がとれなくなるリスクが軽減され、全社的な視点からデータを活用することができます。
業務効率化と生産性の向上
正確で一貫性のあるマスタデータは、業務プロセスの自動化や最適化を推進し、業務効率の向上に寄与します。データの不整合が減少することで、トラブルシューティングやデータ修正にかかる時間と労力が削減されます。
マスタデータ管理のライフサイクル
次に、マスタデータ管理のライフサイクルについて解説します。
Step1. 要件定義と現状分析
マスタデータ管理のライフサイクルの第一歩は、要件定義と現状分析です。
この段階では、企業がマスタデータ管理において達成したい目標を明確にし、その目標に基づいて必要な要件を定義します。
どのデータがマスタデータとして管理されるべきか、どのような正確性と一貫性が求められるのかを判断し、また、現状データの管理体制の分析や、現状データの品質や管理プロセスの課題を洗い出します。
Step2. データの収集と統合
次のステップでは、必要なマスタデータを収集し、統合する作業を行います。ここでは、各部門やシステムからデータを収集し、統一されたフォーマットに変換して、データの重複や不整合を解消します。
Step3. データの管理体制と運用プロセス
データの収集と統合が完了した後に、マスタデータの管理体制と運用プロセスを確立します。この段階では、データの管理者やその権限、責任範囲を明確にし、マスタデータ管理におけるガバナンス体制を整えます。
マスタデータ管理の課題
続いて、マスタデータ管理の課題について解説します。
データの重複と不整合
複数のシステムや部門で同じデータが異なる形式や内容で保存されている場合、情報の整合性が失われる可能性があります。
データのメンテナンス
データのメンテナンスは、マスタデータが時間を経ても正確で最新の状態を保つための重要なプロセスです。運用する中で、データが古くなったり、変更が適切に反映されないまま放置されると、ビジネスプロセスに悪影響を及ぼします。
システム移行時のデータ移行
新しいシステムにデータを移行する際、古いシステムと新しいシステムの間でのデータフォーマットや構造の違いを原因に、データが失われたり変換エラーが発生したりするリスクが高まります。
マスタデータ管理を上手く実践する方法
本章では、マスタデータ管理を上手く実践する方法を解説します。
意識すべきポイント
- 明確な目標設定
具体的な目標設定により、データの一貫性や正確性の確保、業務効率の向上など、マスタデータ管理の効果を最大化するための基盤が整います。 - 関係者の巻き込み
データを使用する部門ごとに異なるニーズや課題があるため、関係者全員を巻き込むことで、全社的な視点からのデータ管理が可能になります。 - プロセスの標準化
データ管理のプロセスを標準化し全社で統一された方法論を適用することにより、データ管理が一貫性を持って行われるため、データの整合性が維持されやすくなります。
ITツールを活用する
- 自動化ツール
自動化ツールを活用することは、データの品質向上と作業効率化に直結します。データのクリーニングや重複削除、定期的な更新作業を自動化することで、人的エラーの発生を大幅に減少させることが可能です。 - クラウドベースのマスタデータ管理
クラウドベースのマスタデータ管理ソリューションはスケーラビリティと柔軟性に優れており、オンプレミスのシステムと比較して低コストでの導入と運用が可能です。必要に応じてリソースを迅速に拡張できるため、企業の成長や変化に対応しやすくなります。
マスタデータ管理の重要な指針
- データガバナンス
データガバナンスとは、企業が保有するデータの品質と利用を統制するためのポリシー、プロセス、役割などと、それにまつわる活動を指します。これにより、データの一貫性、正確性、安全性が維持され、組織全体でのデータの信頼性が確保されます。 - データマネジメント
データマネジメントは、データの収集、保存、利用、そしてアーカイブに至るまでの全プロセスを統括・管理することです。このプロセスを適切に管理することで、データが企業の資産として効果的に活用されるようになります。
まとめ
マスタデータ管理は、企業の基幹データを正確かつ一貫性のある状態で保つための中心的なプロセスです。マスタデータ管理は、データの正確性を確保し、全社的なデータ活用を促進することで、業務の効率化や生産性の向上につながります。
データ管理のライフサイクルや課題の解決策を見出し、管理技法やマスタデータ管理のポイントを押さえながら、効率的な管理を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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