- 作成日 : 2024年9月2日
共同経営とは?よくあるトラブルやメリット、事例を解説
共同経営とは、2人以上の経営者が共同で会社を経営することです。
資金面の負担や経営リスクを低減することが期待できますが、利益配分や経営責任など、さまざまな面でトラブルを引き起こす可能性があります。
本記事では、共同経営の概要や代表的な形態、メリット・デメリット、事例について解説します。
目次
共同経営とは
まずは共同経営の概要に加え、ジョイントベンチャーとの違いについて解説します。
共同経営の概要
共同経営とは、複数の経営者が対等な立場で共に経営する形態のことを指します。
資金面の負担や経営リスクの低減に加え、各経営者が経営知識や業務スキルを持ち寄ることでの相乗効果も期待できます。
例えば、技術力はあるが販売ノウハウがない企業と、販売ルートを持つが技術力がない企業が共同経営を行うことで、新たな商品やサービスを開発し、販路を広げる事が可能です。
共同経営は、経営者同士がお互いの強みを活かし、事業の発展と成長を促進できます。
ジョイントベンチャーとの違い
共同経営とジョイントベンチャーでは、事業の持続性が異なります。
ジョイントベンチャーとは、1つのプロジェクトに対して各企業が資金を出し合って合弁会社を設立し、プロジェクト終了後に解散する形態です。建設業などで大規模な工事を行う際などがこれに該当します。
共同経営は持続的な事業経営を行いますが、ジョイントベンチャーは特定のプロジェクトのために一時的に設立されるという違いがあります。
共同経営の代表的な形態
共同経営の代表的な形態として、以下の2つが挙げられます。
- 法人格を持つ共同経営(株式会社、LLP、NPOの設立)
- 法人格を持たない共同経営(個人事業主間の共同経営)
それぞれについて、詳しく解説します。
法人格を持つ共同経営
法人格を持つ共同経営では、公的信用力が高く、金融機関などから融資を受けやすいというメリットがあります。
株式会社の場合は出資比率により議決権が決まり、LLPやNPOの場合は個々の意見が重視されることが一般的です。
また、法人格を持つ際は、法人化のための初期費用が必要な点に注意しなければなりません。
法人格を持たない共同経営
法人格を持たない共同経営の場合、出資を必要とせず、出資率による上下関係がありません。特に個人事業主間での共同経営では対等な関係を維持しやすい傾向があります。
一方で、法人格を持たないため、契約や資金管理が複雑化する可能性があります。また金融機関からの信頼が得られず、融資を受けづらいケースもあります。
共同経営のメリット
本章では、共同経営のメリットを4つ紹介します。
資金面の負担軽減
共同経営により、資金面の負担が軽減されます。複数の経営者が出資することで、個人の負担が軽減されます。
株式会社の設立時には多くの資本金が必要ですが、共同経営者が複数いれば、その分出資金を集めやすくなったり、借り入れを分担できたりします。
個人の資金面での負担を減らしつつ、大きな資金をもとに事業をスタートさせることが可能です。
リソースの共有
共同経営により、経営者間で資金、時間、労力などのリソース共有が可能となります。
ある経営者が営業に強く、もう一方が技術に精通している場合、役割分担を行うことでそれぞれの強みを最大限に活かすことができます。これにより、事業の範囲や規模の拡大が可能です。
共同経営は、リソースの共有を通じてシナジー効果を発揮しつつ事業運営を実現できるという魅力があります。
経営リスクの分担
経営上の責任やリスクを複数人で分担することで、一人当たりの負担を軽減できます。
経営者が病気や事故によって一時的に業務を行えなくなった場合でも、共同経営者が代行することで、経営への影響を最小限に抑えることができます。
また経営判断に迷った際にも、共同経営者と相談することで冷静かつ客観的な判断が可能です。
さらに経営リスクを分担することで、経営者は過度なプレッシャーから解放され、適切な判断を下しやすくなります。
コネクションの広がり
それぞれの経営者が持つ人脈を共有することでコネクションが広がり、新たなビジネスの展開も目指せます。
ある経営者が特定の業界に強い人脈を持っている場合、その人脈を活用して新たなビジネスチャンスを掴むことも期待できます。
また、異なる業界の経営者が共同で経営を行うことで多様な人脈形成ができ、新しいビジネスアイデアが生まれる可能性が高まります。
共同経営のよくあるトラブル・デメリット
一方で、共同経営にはトラブルやデメリットも存在します。以下の3つを紹介します。
- 意思決定の複雑化
- 利益配分の割合
- 責任の曖昧化
意思決定の複雑化
共同経営では、意思決定が複雑化することによってスピード感が失われ、ビジネスチャンスを逃す原因となることが懸念点です。
全ての経営者の意見を一致させる必要があるため、意見の対立が起きた場合、迅速な決定が難しくなります。
共同経営者全員の同意が得られない場合、従業員にも派閥が生まれ、組織が分裂する恐れもあります。
意思決定のスピードを保つためには、明確な意思決定プロセスを設定することが重要です。
利益配分の割合
共同経営における不適切な利益配分の割合は、トラブルの原因となります。
貢献度や出資比率に基づく報酬の設定が難しく、各経営者が自身の貢献を過大に評価し、他の経営者を過小評価してしまうケースがあります。
利益配分に関する不満が蓄積すると、経営者同士の関係が悪化し、円滑な経営に支障を来す可能性があります。
公平な利益配分を確保するためには、事前に明確な報酬基準を設定しておくことが大切です。
責任の曖昧化
責任の所在が曖昧になることも、共同経営のデメリットの1つです。
経営者が複数いることで責任の所在が不明瞭になり、責任の押し付け合いが発生する恐れがあります。
特に経営が悪化した際に発生しやすく、トップ同士の衝突は従業員のモチベーション低下にもつながるため、注意しなければなりません。
責任の所在を明確にするためには、各経営者の役割と責任範囲を具体的に定めておくことが重要です。
共同経営の事例
株式会社ソラジマは、萩原氏と前田氏が代表取締役Co-CEOを務める、共同経営企業です。
共同経営をする際のメリットとして、利害関係が一致する人が近くに居て、1人での経営に比べて孤独が少ないということを挙げています。
一方で、1人の社員に対して両者が異なることを伝えてしまい、社員を混乱させてしまったという失敗例があるとも話しています。
社員のモチベーション低下を防ぐためにも、プロジェクトごとにどちらがトップかを決めるなどの役割分担が重要だとのことです。
円滑な共同経営を実現し、上記のようなすれ違いを防ぐためには、以下が重要だと話しています。
- よく話すこと
- 仲良くあること
- 信頼し合うこと
また、創業からの4年間欠かさず毎朝1時間2人だけで話しているそうです。これも円滑な共同経営の秘訣だと考えられるでしょう。
※出典:株式会社ソラジマ 【ソラジマのCo-CEOが語る】共同経営よかったこと・大変だったこと
まとめ
共同経営とは、複数の経営者が協力して会社を経営することを指します。
資金面の負担やリスクが少ないことに加え、リソースの共有ができる一方で、利益配分の割合や責任の所在により、トラブルが起こるケースがあります。
共同経営の注意点として、事前に役割分担や利益配分について協議し、共同経営契約書を作成しておくことが推奨されます。
本記事の内容を参考に、トラブルのない共同経営を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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