- 作成日 : 2025年4月21日
基幹システムをクラウド化するメリット・デメリットや手順を紹介
基幹システムの老朽化が進んでおり、システム刷新を検討している企業も多いでしょう。
近年はリモートワークの普及や、保守・運用のコスト削減などを目的として、オンプレミス型ではなく、クラウド型の基幹システムを選ぶ企業も増えてきました。
この記事では、基幹システムをクラウド化するメリット・デメリットや、導入する手順について解説します。
目次
オンプレミス型の基幹システムはクラウド化したほうが良い?
基幹システムは、大きくオンプレミス型とクラウド型の2種類に分けられます。基幹システムの刷新にあたって、オンプレミス型とクラウド型のどちらを選ぶかは悩ましい問題です。
近年は官民問わず、情報システムのクラウド化が加速しています。例えば、政府は「デジタル・ガバメント推進方針」において、政府情報システムの整備にあたり、クラウドサービスの利用を第一候補とするクラウド・バイ・デフォルト原則を提示しました(※1)。
民間企業でも、DXへの関心の高まりなどから、クラウド型のサービスの採用例が増えつつあります。業務効率化や全社横断的なデータ活用など、基幹システムのクラウド化はさまざまな課題解決につながるでしょう。
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」によると、老朽化した基幹システムを使い続けた場合、IT予算の9割以上を維持管理費が占めるという試算もあります(※2)。今後も、クラウドへ移行する企業が増加していくことが予想されます。
※1内閣官房 IT総合戦略室「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」p5
※2デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」p2
基幹システムをクラウド化するメリット
基幹システムをクラウド化するメリットは3つあります。
- リモートワークに対応できる
- 定期的にアップデートされる
- サーバーの管理が不要になる
リモートワークに対応できる
クラウド型の基幹システムなら、インターネット環境さえあれば、いつでもどこでもアクセスできます。オンラインで業務が完結するため、テレワークやリモートワークへの対応が可能です。
サービスによっては、スマートフォンやタブレットなど、モバイル端末で利用できるものもあります。外回りの仕事が多い従業員も、移動中などのスキマ時間を活用し、より効率の良い働き方を実現できるでしょう。
定期的にアップデートされる
クラウド型の基幹システムは、サービス事業者によって、自動でアップデートが行われます。法改正などに合わせて、手作業でシステムを更新したり、機能を改修したりする必要はありません。
例えば、令和7年度税制改正では、電子帳簿保存法に新たな制度が設けられ、電子取引データの保存要件が見直されました※3。今後、このような法改正があっても、基幹システムをクラウド化すれば、常に最新の業務環境を維持できます。
※3国税庁「請求書等を帳簿に⾃動連携する仕組みに対応した制度が新設されました」p1
サーバーの管理が不要になる
オンプレミス型とは異なり、クラウド型の基幹システムでは、自社にサーバーを設置する必要がありません。基幹システムをクラウド化すれば、サーバーの保守・運用の手間や、維持管理費の削減につながります。
基幹システムをクラウド化するデメリット
一方、基幹システムのクラウド化には、デメリットも3つあります。
- オフラインでは利用できない
- 自社の状況に合わせたカスタマイズが難しい
- ランニングコストがかかる
オフラインでは利用できない
クラウド型の基幹システムは、原則としてインターネット環境でしか利用できません。ネットワーク障害などのトラブルが発生した場合、システムが使えず、業務が滞るリスクがあります。
重要度の高い業務については、災害時などでも迅速にシステムを復旧できるよう、BCP対策を講じておくことが大切です。
自社の助教に合わせたカスタマイズが難しい
クラウド型の基幹システムは、標準的な業務プロセスを想定して構築されることが一般的です。オンプレミス型とは異なり、自社独自の要件に合わせてカスタマイズするのが難しいというデメリットがあります。
ただし、近年はFit to Standardと呼ばれる、システムの機能に合わせて業務フローを標準化する手法も注目されています。Fit to Standardの流れや成功事例について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ランニングコストがかかる
オンプレミス型の基幹システムと比べ、クラウド型のサービスは、導入時の初期費用が低いことが一般的です。
一方、ユーザー数に応じた月額利用料がかかるため、長期的に見るとトータルコストが高くなる可能性があります。将来的に規模が拡大することも想定し、余裕を持って予算を確保しましょう。
4ステップで基幹システムをクラウド化する流れを解説
ここでは、基幹システムをクラウド化する流れを4つのステップに分けて解説します。
- クラウド化の目的を明確にする
- プロジェクトチームを立ち上げる
- 導入するシステムをピックアップする
- 新しいシステムの運用をスタートする
クラウド化の目的を明確にする
まずは基幹システムのクラウド化によって、どのような課題を解決したいのかを洗い出しましょう。
- 期間システムの老朽化を解消したい
- 複雑化・ブラックボックス化した状態を改善したい
- ペーパーレス化や業務効率化を実現したい
- セキュリティ水準を向上させたい
クラウド化の目的をしっかりと明確化しておくと、移行先のシステムの要件定義がスムーズに進みます。
プロジェクトチームを立ち上げる
基幹システムは、販売管理や在庫管理、財務会計、人事管理など、さまざまな業務部門を横断するシステムです。クラウド化にあたって、専任のプロジェクトチームを立ち上げることをおすすめします。
情報システム部門の担当者や、クラウド分野の専門人材だけでなく、意思決定に関わる経営層も巻き込みながらプロジェクトを推進しましょう。
導入するシステムをピックアップする
プロジェクトチームでの議論を通じて、導入するシステムをピックアップしましょう。
クラウド型の基幹システムといっても、機能や月額料金、操作性、セキュリティ、サポート体制など、さまざまな違いがあります。必要に応じて、デモや無料トライアルを活用しながら、自社に合った基幹システムを選ぶことが大切です。
新しいシステムの運用をスタートする
導入するシステムが決まったら、いよいよ移行作業のフェーズです。業務への影響ができるだけ小さくなるように、移行計画書を作成し、本番と同じ環境でのリハーサルを実施しましょう。
とくにデータの移行作業は、予期せぬトラブルが発生する可能性があるため、慎重に行うことが大切です。移行作業が完了したら、新しいシステムのテストを実施し、問題がなければ運用をスタートします。
基幹システムをクラウド化するメリットや手順について知ろう
基幹システムを刷新するタイミングで、オンプレミスからクラウドへ切り替える企業が増えています。
クラウド型の基幹システムには、「リモートワークを拡大できる」「法改正に自動で対応できる」「保守・運用にかかるコストを削減できる」など、さまざまなメリットがあります。
一方、オンプレミス型ならではの強みもあるため、本当にクラウド化が必要かどうか、事前にしっかりと検討することが大切です。既存のシステムが抱える問題点や、業務フローの課題を洗い出し、自社に合ったサービスを選びましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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