- 作成日 : 2024年7月29日
事業継続力強化計画とは?メリットや計画策定のステップ、注意点を解説!
事業継続力強化計画とは、災害などの発生により事業が停止してしまうことを防ぐ計画を指します。
同じ事業継続の計画であるBCPと比べると、経済産業大臣の認定を受けることでさまざまな支援を受けられる点や、対象となる企業規模に違いがあります。
本記事では、事業継続力強化計画の概要やメリット、計画策定のステップ、注意点を解説します。
目次
事業継続力強化計画とは
まずは事業継続力強化計画認定制度の概要と、BCPとの違いを解説します。
認定制度の概要
事業継続力強化計画は、中小企業の災害対策に関する計画を指します。
条件を満たすことで経済産業大臣に計画を認定してもらうことができ、税制優遇措置や金融支援などのさまざまなメリットを受けることが可能です。
防災・減災対策は、自然災害の多い日本で企業を存続していく上で非常に大切です。
事業継続力強化計画認定制度の活用は、中小企業が災害に強い組織を作る機会となります。
BCP(事業継続計画)との違い
BCP(事業継続計画)は、自然災害やテロなど突発的な危機に遭遇した際の損害を最小限に抑え、企業の存続を目指す計画です。
事業継続力強化計画と非常によく似ていますが、大きく以下2つの違いがあります。
- 国からの認定や支援・優遇措置の有無
- 対象の企業規模
事業継続力強化計画は国からの認定を受けることで支援や優遇措置を受けられますが、BCPには認定制度がなく、支援・優遇措置もありません。
また、事業継続力強化計画認定制度は中小企業を対象としていますが、BCPに企業規模の制限はありません。
事業継続力強化計画のメリット
事業継続力強化計画のメリットは以下の3つです。
- 税制優遇措置
- 補助金審査での加点
- 信頼性の向上
税制優遇措置
事業継続力強化計画の認定を受けると、税制優遇措置を受けられます。
防災・減災設備に対して特別償却(20%)が適用されるため、税負担を軽減することが可能です。
例えば自家発電機や制震・免震装置など一定規模の設備を導入した場合、経済的な負担を最小限に抑えて災害対策を講じることができます。
補助金審査での加点
事業継続力強化計画を認定されると、補助金審査で加点されます。
例えば、ものづくり補助金やIT導入補助金などの申請時において、事業継続力強化計画の認定を受けていることで加点の対象となります。
参考:中小企業庁「事業継続力強化計画認定制度の概要」
このように、事業継続力強化計画の策定は資金調達の機会を増やし、事業成長にもつながります。
信頼性の向上
事業継続力強化計画の策定は、企業の信頼性向上にもつながります。
事業継続力強化計画の認定を受けることで、「事業継続力強化計画認定ロゴマーク」を使用できるようになります。
ロゴマークを名刺やホームページに使用することで、防災・減災に対する取り組みが認められ、外部からの信頼向上につながります。
事業継続力強化計画策定のステップ
本章では、事業継続力強化計画策定の以下5つのステップについて解説します。
- STEP1:事業継続力強化の目的検討
- STEP2:災害リスクの確認・認識
- STEP3:初動対応の検討
- STEP4:ヒト・モノ・カネ・情報への対応
- STEP5:平時の推進体制の検討
STEP1:事業継続力強化の目的検討
まずは、事業継続力強化の目的を明確にします。
自社の存在が社会や経済に与える影響を踏まえ、自然災害やその他の不測の事態が発生した際に、いかに迅速に事業活動を再開できるかという観点で検討しましょう。
目的を設定することで、事業継続力強化計画全体の方向性が定まります。
STEP2:災害リスクの確認・認識
次に、災害などのリスクの確認・認識を行います。
ハザードマップなどを活用して、事業所の所在地域の災害リスクを把握し、それに基づいて「ヒト・モノ・カネ・情報」にどのような影響が出るかを想定しておきましょう。
STEP3:初動対応の検討
続いて、災害発生直後にどのように行動するか、すなわち初動対応について検討しましょう。初期段階での迅速な行動が被害の拡大を防ぎ、早期の事業再開へとつながります。
人命の安全確保や緊急時体制の構築、被害状況の把握・共有などが主な焦点となります。
STEP4:ヒト・モノ・カネ・情報への対応
SPEP2で検討した「ヒト・モノ・カネ・情報」への影響について、具体的にどのような対策を講じるかを検討します。
例えば拠点内に安全エリアを設定したり、安否確認システムを導入したりすることが挙げられます。
STEP5:平時の推進体制の検討
最後に、事業継続力強化計画を策定しただけで終わらないよう、平時からの訓練や計画の見直しを行う体制を整えます。
従業員から経営層までが計画に加わり、定期的に訓練を実施することが重要です。
具体的な取り組み事例
株式会社ダイヤベルツリーフーズは、主にカット野菜の製造販売を行っている食料品製造業であり、令和2年7月に事業継続力強化計画の認定を受けました。
同社は令和元年度の台風第15号による停電により、約1,600万円相当の被害を受け、自然災害に対する備えの重要性を再認識しました。
この経験から、供給を停止しないための体制づくりを目指し、事業継続力強化計画を策定しました。
具体的には以下のような取り組みを行っています。
- 自家発電機の導入
- 避難所としての機能強化
- 危機管理マニュアルの作成
この取り組みにより、災害時でも安定した事業活動を継続し、従業員が安心して働ける体制を構築することを目指しています。
参考:経済産業省 関東経済産業局「株式会社ダイヤベルツリーフーズ:令和2年7月認定」
計画策定時の注意点
事業継続力強化計画を策定する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 計画の柔軟性と現実性の確保
- 従業員への周知徹底と訓練
- 継続的な見直しと改善
計画の柔軟性と現実性の確保
事業継続力強化計画は、災害に柔軟に対応できることはもちろん、計画が実行可能であることも重要です。
災害に対して、1つの対策だけでなく複数のシナリオを想定した計画を立てることや、実際のリソース・時間・コストを考慮した現実的な計画を策定することが求められます。
しかし、複数のシナリオを想定して計画を立てるためにコストやリソースを投与しすぎると、企業経営に支障を来しかねません。
計画策定時には、柔軟かつ現実的なアプローチが求められます。
従業員への周知徹底と訓練
策定した計画を従業員へ周知徹底し、訓練を定期的に実施することが必要不可欠です。
全従業員が計画の内容を理解し、災害発生時に迅速かつ適切な行動をとれるようにしておく必要があります。
定期的な訓練を開催し、事業継続力強化計画の内容を従業員に周知したり、実際の災害シナリオを想定した演習で対応能力を高めることが求められます。
継続的な見直しと改善
事業継続力強化計画は、継続的な見直しと改善が必要です。
時代の流れに伴い新たなリスクが出現する可能性があるため、これらに対応できるような体制をとることが求められます。
例えば年に一度定期的な見直しを実施し、新技術の導入や過去の災害からの学びを計画に反映させることが重要です。
事業継続力強化計画の認定を受けるための申請方法
以前は申請書やチェックシートなどを用いて書面で申請する必要がありましたが、現在は中小企業庁の電子申請システムを通して申請することができます。
電子申請にはGビズIDアカウントが必要となりますが、取得には約2週間かかること、また申請してからの標準的な審査期間が45日であることから、余裕を持って申請することが大切です。
参考:中小企業庁「事業継続力強化計画の申請方法等について」
まとめ
事業継続力強化計画は、中小企業が災害時でも事業を継続できるようにするための計画です。
経済産業大臣の認定を受けることで税制優遇措置や補助金審査の加点、信頼性の向上といったメリットが得られます。
本記事を参考に、継続力の高い事業計画を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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