- 更新日 : 2024年7月12日
人時生産性とは?計算式や向上させるためのポイントを徹底解説
人時生産性(にんじせいさんせい)は、従業員1人が1時間でどの程度の粗利益を生み出しているかを表す指標です。
この指標を用いれば、自社の経営状況分析はもちろん、経営に関する意思決定を迅速に行うための判断材料となります。
本記事では、人時生産性の概要や計算方法をはじめ、人時生産性を向上させるためのポイントについて解説しています。自社の生産性に課題を感じている方、生産性向上策を模索している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
人時生産性とは
はじめに、人時生産性の概要と、注目されている背景について説明します。
人時生産性の概要
人時生産性の「人時」は従業員1人が1時間で対応できる作業量を、「生産性」はインプットに対するアウトプットの割合のことを指します。
つまり「人時生産性」とは、従業員1人が1時間労働した場合、どの程度の粗利額を生み出せるかを表す指標です。
「人時生産性」が競合他社や自社の他部門よりも高い場合は、より利益を生み出しやすい、優れた企業や部門だといえるのです。
なぜ人時生産性が注目されているのか
人時生産性は、大きく分けて下記2つの理由により注目されています。
- 少子高齢化(労働人口減少)
- 働き方改革
まずは少子高齢化(労働人口減少)から見ていきましょう。

出典:総務省統計局
総務省統計局が発表した「主要国における高齢者人口の割合の推移」によると、各主要国の中でも、日本の高齢化率が高いことがわかります。
今後労働人口が減少するであろう日本企業では、生産性を向上させなければ持続的な成長が見込めないのです。
また、厚生労働省が推進している「働き方改革」も、人時生産性が注目される理由の1つです。
この改革を後押しするために、時間外労働の上限規制や割増賃金率引き上げなど、労働基準法が改正されています。そのため、今後は従業員の作業負荷アップだけでは業務に対応できなくなるリスクが高まっています。
このような背景から、生産性を分析する指標として「人時生産性」が注目されているのです。
参考:総務省統計局「主要国における高齢者人口の割合の推移」
参考:厚生労働省「働き方改革」の実現に向けて
人時生産性の計算方法と具体例
ここでは、人時生産性の計算方法や具体例、類似しているキーワードとの違いを解説します。
人時生産性の計算式
人時生産性の計算式は、以下のとおりです。
続いて、粗利額の計算式は以下のとおりです。
売上原価とは、商品やサービスを売り上げるために費やした原価を指します。
例えば製造業の場合は、仕入れにかかった費用をはじめ、商品の製造に携わった従業員の人件費なども含まれます。
前述した2つの式より、人時生産性は以下の計算式で算出できることがわかります。
人時生産性の具体例
では、人時生産性を具体的な例で見ていきましょう。
| 企業A | 企業B | ||
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,000万円 | 1,500万円 | |
| 売上原価 | 仕入原価 | 100万円 | 400万円 |
| 人件費 | 100万円 | 200万円 | |
| 粗利額 | 800万円 | 900万円 | |
| 総労働時間 | 3,200時間 | 4,000時間 | |
企業Aの場合、人時生産性は以下のとおりです。
一方、企業Bの人時生産性は以下のとおりです。
一見、売上高も粗利額も多い企業Bの方が生産性が高いように見えますが、人時生産性を見ると、企業Aの方がパフォーマンスが高いことがわかります。
人時生産性と人時売上高の違い
人時売上高とは、従業員1人が1時間でどの程度の売上高を生み出したかを表す指標です。
人時売上高は、以下の計算式で算出できます。
人時生産性は計算の過程で粗利額を利用するため、売上原価によって結果が左右されます。一方で人時売上高は売上原価の影響を受けない指標である点が、両者の差異だといえます。
人時生産性と労働生産性の違い
「労働生産性」とは、投入したリソースに対してどの程度のアウトプットを生み出したかを表す指標です。
労働生産性を求める計算式は、以下のとおりです。
人時生産性は「従業員1人あたりの1時間における生産性」にフォーカスしたものです。一方で労働生産性は、全社レベルなど組織全体のパフォーマンスの計測を目的とした指標だといえます。
人時生産性を向上させるためのポイント
人時生産性を向上させるためには、以下の3つに取り組む必要があります。
- 売上高の向上
- 売上原価の削減
- 総労働時間の削減
「売上高の向上」や「売上原価の削減」にも取り組むべきですが、これらは自社のみではコントロールしにくい要素です。一方で「総労働時間の削減」は自社で完結するため、実現しやすいのが特徴です。
ここでは「総労働時間の削減」を中心に、人時生産性を向上させるためのポイントを解説します。
正確な数値管理
人時生産性を向上させるためには、計算に使用する粗利額や総労働時間などの数値が正確である必要があります。不正確な数値で算出した人時生産性では、課題の真因を見誤ってしまうからです。
例えば、Excelで労働時間を管理している場合、従業員が正しい時間を入力しないケースもあります。
後述する「システムの活用」にも該当しますが、常に正確な数値を管理できる仕組みを整えておくことが重要です。
業務プロセスの最適化
業務プロセスには、さまざまな「無駄」や「ボトルネック」が発生します。
しかし、現場で働く従業員の多くは変化を嫌うため、改善されることは少ないのです。
定期的に業務プロセスを最適化すれば、総労働時間の削減を実現できます。その結果、人時生産性の向上につながるのです。
従業員の配置見直し
従業員の能力や作業適性は一人一人異なります。
例えば、パソコンは不得意でも力仕事では高いパフォーマンスを発揮する従業員などがいるでしょう。人時生産性を向上させるには、同じ業務を可能な限り短い時間で処理することが重要です。
そのため、従業員の適性やチームのバランスを踏まえた上で配置を検討しましょう。
従業員のモチベーション向上
モチベーションが低い従業員は期待するアウトプットを実現できないため、人時生産性が低下します。
モチベーションについては「マズローの欲求5段階説」というフレームワークが有名です。
まずは低次の欲求をターゲットとして、最終的には「自分がやりたい仕事の実現」へつながるような施策を行いましょう。
システムの活用
システムを活用すれば、既存業務にかかっていた作業時間を削減できる可能性があります。
例えば、これまで3人で100時間かかっていた業務が、システム導入により50時間になれば、総労働時間は300時間から150時間に減少します。その結果、人時生産性も大幅に向上するのです。
さらに会計システムなどを導入すれば、粗利額や総労働時間について厳密な管理が可能となります。
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