- 更新日 : 2024年7月12日
独立採算制のメリット・デメリット、導入するポイントを詳しく解説
「独立採算制」は、日本国内の大手企業でも導入されている経営方式です。独立採算制を導入するためには、メリット・デメリットがあることも事前に認識しておき、管理体制・評価制度などの見直しも事前に進めなければなりません。本記事では、独立採算制のメリット・デメリット、導入するポイントについて詳しく解説します。
目次
独立採算制とは
独立採算制とは、部門・事業部がそれぞれ独立して利益を生み出すことを目指した経営方式のことです。部門別採算制と呼ぶケースもあります。
さまざまな事業を展開している大企業の場合、各部門の規模が大きいことで企業全体の意思決定に時間を要したり、責任の所在が不明瞭になったりする場合があります。
独立採算制では、経営に関わる重要な意思決定や人事に関する取り決め、サービスの開発・廃止などの権限が各部門に委譲されるのが特徴です。また、組織単位を小さくすることで責任の所在を明確にでき、部門ごとの成果が見えやすくなるというメリットもあります。
この独立採算制を部門単位で取り入れている組織形態のことを「カンパニー制」と呼びます。
事業部制との違い
事業部制は、経営に関わる意思決定や人事権などについて、企業が最終的な決定権を持ちます。独立採算制の場合はそれぞれの部門が一企業として扱われる形となり、この中での取り決めの責任・権限などは各部門に委譲されている点が異なります。
独立採算制を導入するメリット
独立採算制を導入することで、企業は以下の3つのメリットを得られます。
- 柔軟な事業展開が可能になる
- 企業全体の活性化につながる
- 責任の所在が明確になる
この章では、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
柔軟な事業展開が可能になる
前述の通り、独立採算制は経営に関わる意思決定や人事権など、多くの権限が各部門に委譲されます。組織としての意思決定をスピーディーに行えるため、市場ニーズに応じた柔軟な対応が可能になります。また、組織の利益向上や事業拡大も目指しやすくなるでしょう。
事業部制の場合、最終的な意思決定は役員会などの承認を得る必要があるため、承認が下りるまで時間がかかるケースがあります。内容によっては関連部門に稟議を通す必要があり、より多くの時間と労力がかかることも多いです。
独立採算制を採用すれば、部門内で考えたアイデアをスムーズに形にできるようになり、新しいビジネスチャンスを獲得したり、事業をさらに加速させたりしやすくなるのです。
企業全体の活性化につながる
独立採算制を採用すると、部門同士で競争意識が芽生えることがあります。従業員は自分が所属している部門がどうすれば成長できるかを考えられるようになり、全員が経営的な視点やコスト意識を持ちやすくなるでしょう。
独立採算制を採ることで従業員の主体性やモチベーションが高まり、企業全体の活性化・生産性向上につながります。
また、各部門に責任が帰属することで、従業員の役割や責任範囲も大きくなります。仕事に対する視座・意識が変わることで、経営者目線を持った人材が育ちやすくなるでしょう。
責任の所在が明確になる
部門ごとの責任の所在が明確になる点も、独立採算制のメリットです。
例えば、事業部制を採用している企業である商品の売り上げが下がっている場合、なぜ売り上げが下がっているのか、どこの部署に責任があるのかの特定が難しくなります。独立採算制では、その商品の開発・販売に携わった部門に原因があることがすぐに分かるでしょう。
また、各部門で発生しているコストも把握しやすくなるので、収支責任が明確になるというメリットもあります。従業員のコスト意識向上にもつながるでしょう。
独立採算制のデメリット
独立採算制にはメリットばかりではなく、デメリットも存在します。この章では、独立採算制のデメリットについて解説します。
重複する業務が発生する可能性がある
独立採算制は、経理や人事などの管理部門を事業部ごとに設置しなければなりません。その結果、社内で重複する業務が発生し、人件費の増加につながる可能性が高くなります。
事業同士で協力する機会が減り、生産性が低下するケースもある
独立採算制は、部門同士の競争意識を生むメリットがありますが、競争が激しくなりすぎればデメリットになります。部門同士が対立することで、事業ごとに協力する場面が減少し、逆に組織全体の生産性が低下する場合があるのです。従業員の関係悪化につながるケースもあるため、時には部門同士で協力し合えるような関係性を構築する必要があるでしょう。
社内統治が難しくなる
独立採算制では、部門のトップが最終的な責任を負う形をとります。そのため、目の前の利益を保つために保守的になったり、数字を追い求めて適切な労務管理ができなかったりするリスクがあります。
独立採算制は本社からの監視体制が弱まりやすい仕組みであるため、社内統治が難しくなるのがデメリットです。例えば、目が届かないところでの不正な会計や、部門にとって不都合な事実を隠ぺいするといったことにもつながりかねないため、従業員が不審な動きをしていないか、より注意する必要があります。
独立採算制を導入する際のポイント
独立採算制を導入するためには、スムーズに運営できるように事前に準備しておくべきことがあります。この章では、独立採算制を導入する際のポイントについて解説します。
管理体制・評価制度の見直し
独立採算制を本格的に導入する前に、各部門で管理体制・評価制度を見直しておきましょう。管理体制を改めて見直すことで、どのような業務が新たに必要になるのかを把握できます。その上で必要な人員を確保しておき、従業員が新たな体制に対して不安を抱かないよう、必要な説明をするようにしましょう。
また、業績に対する評価制度・基準も明確に決める必要があります。数字による評価だけではなく、他部署との合同での取り組みなども評価する仕組みを作っておけば、部署間のつながりを意識してもらいやすくなるでしょう。
リアルタイムに情報共有できる仕組みを作る
リアルタイムに情報共有できる仕組みを作れば、各部門の状況をスピーディーに把握し、協力し合う関係を作れるようになります。ただし、各部門でそれぞれ独立したシステムを使っている場合、見たい粒度のデータを確認できなかったり、部門間でデータの不整合が起きたりするケースが出てきます。
そこでおすすめなのが、全ての部門が同じ粒度でスピーディーに情報を把握できる「ERP」です。ERPに搭載されている管理会計機能を使うことで、部門ごとの経営状況をリアルタイムで把握できます。
ERPの詳細については下記の記事で詳しく解説しています。
まとめ
今回は、独立採算制を導入するメリット・デメリットについて解説しました。
独立採算制を導入することで、組織としての意思決定をスピーディーに行えるようになり、企業全体の活性化・生産性向上を実現できます。独立採算制を導入するには、管理体制・評価制度を見直し、リアルタイムに情報共有できる仕組みを作る必要があります。ERPは部門同士の情報共有・経営状況の把握をリアルタイムで行えます。独立採算制の運用をスムーズに行えるようになるため、ぜひ導入をご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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