- 更新日 : 2024年7月16日
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは?意味や進め方を解説
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは企業改革に用いられる手法の1つで、業務改革と訳されます。プロセスの観点からあらゆる業務を見直し、再構築することを意味します。生産性や顧客満足度が向上するといったメリットがあり、業務仕分けやERP、BPO、シェアードサービス、シックスシグマといった手法が用いられます。
目次
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは?
BPRとは「Business Process Re-engineering」の頭文字をとった言葉で、「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略語です。企業改革に用いる手法の1つであり、業務改革と訳されます。会社のあらゆる業務を対象にプロセスの観点から見直しを行い、再構築することを指しています。
BPRの歴史
BPRは1993年にマイケル・ハマー&ジェイムズ・チャンピー「リエンジニアリング革命」において提唱された、ビジネスプロセスを単純化することが効率化につながるという概念を指します。同書はそれまで追求されてきた業務の細分化・専門化はプロセスを複雑化し、かえって不便や非効率・コストをもたらしているとし、逆にビジネスプロセスの単純化が必要であるとしています。
また「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」とリエンジニアリングを定義しています。
業務改善とBPRの違い
BPRは営業部門や販売部門、人事部門といった全ての部分を最適化し、プロセスそのものを根本から見直そうとする取り組みを指します。これに対して業務改善は、プロセスそのものは残したままで必要部分の改善のみを行おうとする取り組みです。
BPRはそれぞれの部署が行う業務について部分的な改善を行うのではなく、抜本的にプロセス全体を見直すことで企業の成長・発展を目指す取り組みを指します。業務改善は日常業務に関するシステムについて見直しと改善を行い、本来の業務をスムーズに遂行できるようにすることを言います。
DXとBPRの違い
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務の効率化や合理化を図ることを言います。BPRもDXも業務改善を目的としている点では同じですが、方法やフォーカスする点に違いがあります。
まずDXはデジタル技術の活用により業務改善を図りますが、BPRはこれまで構築したビジネスプロセスを見直してムダを省くことで業務を改善しようとします。またDXは顧客や社会との接点からの業務改善を目指しますが、BPRPでは内部プロセスにフォーカスして業務改善を図ります。
BPRの進め方
BPRは以下のように進めます。
- 検討目的・目標設定と対象業務範囲の設定の2点について、検討します。目的・目標設定ではトップや従業員、それぞれの階層から改善すべき点を聴取します。
- 分析分析ツールを用いて現状のビジネスプロセスの課題を洗い出し、改善点を検討します。
- 設計問題点の改善に向けて戦略や方針を策定し、ビジネスプロセスを設計します。戦略や方針の策定では全員が納得できる戦略とし、各ビジネスプロセスの標準化やアウトソーシングの利用についての検討も行います。ビジネスプロセスの設計では優先順位をつけて効果の高いものから着手することも重要です。
- 実施方針通りになっているか、目的達成ができているかなど、確認しながら進めます。BPRの実施は長期にわたるため、短期的目標を立てて行うことも大切です。
- モニタリングと評価適切にモニタリングし、問題があれば修正します。
BPRで用いられる手法
BPRの用いられる手法のうち、代表的なものを説明します。
- 業務仕分け見直した業務に優先順位をつけ、残すものと廃止するもの、あるいはアウトソーシングとするものに分類する手法です。BPRでは、もっとも一般的に用いられます。
- ERP「Enterprise Resources Planning」の頭文字をとった言葉で、統合基幹情報システムという意味で用いられます。企業の情報戦略に欠かせないシステムを指し、BPR実現に不可欠とされます。
- BPO「Business Process Outsourcing」の頭文字をとった言葉で、企業のある部門やビジネスプロセスを外部の企業に丸ごと移管し、業務を継続する手法を指します。
- シェアードサービス類似する業務を1つに集約する手法です。ビジネスプロセスを単純化するというBPRの考え方に合致し、プロセスの効率化やコーポレートガバナンスの強化につながります。
- シックスシグマ統計学を利用して顧客満足と品質改善を目指す手法で、主に製造業・製造部門でのBPRに使われます。
BPRのメリット・デメリット
BPRは企業の成長発展への寄与を目指して行うものですが、利点ばかりではなく不利益となる点もあります。考えられるメリット・デメリットを説明します。
BPRのメリット
BPRには次のように生産性や顧客満足、市場優位性、ノベイションといった点でのメリットがあります。
- 生産性が向上するBPRにより業務改善が行われることで、生産性の向上が図られます。プロセスの見直しにより従業員一人ひとりの生産性が向上することも、会社全体の生産性向上につながります。
- 顧客満足度が高まるビジネスプロセスの見直しにより顧客のニーズに合ったプロセスの再設計が可能になります。
- 市場優位性が上がるビジネスプロセスの再設計により効率化が図れ、より良い商品・サービスを、より早く提供できるようになります。競合相手よりも良い商品・サービスを早く提供できるようになり、優位性が確保できます。
- イノベーションが促進されるBPRによってビジネスプロセスの根本的な再設計が行われ、新しいアイデアや手法も取り入れられ、イノベーションが促進できます。
BPRのデメリット
BPRには以下のような失敗リスク、困難さ、費用の面でのデメリットが考えられます。
- 失敗リスクが大きいBPRはビジネスプロセスを根本的に再設計するため、失敗すると大きな影響が出ます。
- 実施が難しいBPRを実施するためには、企業は組織風土を変革する必要があります。組織の文化や価値観を変えなければならず、反対する意見が生じるといった困難さが伴います。
- 費用がかかるBPRは新しくシステムを構築する費用など、多くのコストを必要とします。
メリット・デメリット・手法などからBPRを正しく理解しよう
BPRはビジネスプロセス・リエンジニアリング「Business Process Re-engineering」の略語です。会社のあらゆる業務をプロセスの観点から見直し、再構築することを指しています。企業改革に用いる手法の1つで、業務改革と訳されます。生産性が向上する、顧客満足度が高まる・市場優位性が上がる・イノベーションが促進されるというメリットがある反面、失敗リスクが大きい・実施が難しい・費用がかかるというデメリットがあります。
実施する際は検討・分析・設計・実施・モニタリングと評価の5ステップで進めます。BPRは業務仕分けやERP、BPO、シェアードサービス、シックスシグマといった代表的なものをはじめとする、多くの手法が用いられて実施されます。さまざまな手法を知ってBPRへの理解を深め、業務効率化を考える際の一助としましょう。
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