- 更新日 : 2025年4月22日
工数管理をエクセルで行う方法は?表の作り方やポイントを徹底解説
エクセルでも、工数管理は十分に対応可能です。特別なツールを導入しなくても、エクセルを活用すれば、タスクの進捗やコスト、各担当者の作業時間を可視化できます。
本記事では、エクセルで工数管理を行う方法について解説します。必要なファイルや表の作り方、運用を成功させるポイントまで、実務に使える情報をまとめているためぜひ参考にしてみてください。
目次
工数管理とは|工数を記録・分析する仕組み
工数管理とは、プロジェクトに必要な「時間」と「人員」を記録・分析する仕組みです。
業務の開始から完了までにかかるリソースを数値で把握することで、進捗の可視化や業務の効率化が可能になります。
工数は「人日」「人月」「人時」などの単位で表され、作業時間に近い考え方としてプロジェクト単位で積算されます。各単位の意味は以下のとおりです。
- 人日:1人で1日にこなせる作業量
- 人月:1人で1ヶ月にこなせる作業量
- 人時:1人で1時間にこなせる作業量
適切に工数管理を行えば、無駄の削減や精度の高い見積もりに役立ち、業務改善にもつながります。一方で、管理を怠ると進捗遅延やコスト超過を見逃し、赤字リスクが高まるため注意が必要です。
工数管理については、下記の記事で詳しく解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
エクセルで工数管理する3つのメリット
エクセルは多くの企業で使い慣れたツールであり、導入の手間が少なく、カスタマイズ性にも優れています。コストを抑えながら工数管理ができ、手軽に始められる点が大きな魅力です。
コストを抑えて効率的に工数を把握したい企業にとって、事前にメリットを知っておくことは重要です。
以下では、エクセルで工数管理する3つのメリットについて紹介します。
1. 導入時のコストを抑えられる
エクセルで工数管理を行うメリットは、導入時のコストを抑えられることです。
多くの企業ですでにエクセルが導入されているため、新たなソフトを購入する必要がなく、初期費用をかけずに運用を始められます。また、日常的に使用されているツールであれば、操作説明や研修にかかる時間、人件費も最小限に抑えられます。
現場の負担を増やすことなくスムーズに導入できるため、新しいツールへの抵抗も少なく、すぐに実務へ活用可能です。
2. 関数を使用できる
関数を使用できることも、エクセルで工数管理を行うメリットのひとつです。
関数を活用することで、作業時間の合計や日付の自動計算が可能となり、入力や集計の手間を大幅に削減できます。また、ガントチャートの日付管理や工数の可視化も効率的に行えるため、ミスの防止や作業の時短につながります。
さらに、自社の業務に合った管理表を柔軟に設計できる点も魅力です。マクロや高度な関数を使えるメンバーがいれば、より複雑な管理にも対応できます。
3. テンプレートが豊富にある
エクセルでは、豊富なテンプレートを活用し、自社に合った方法で工数管理が行えます。
エクセルは利用者が多いため、ネット上には工数管理に特化したテンプレートが多数公開されています。テンプレートを活用することで、ゼロから表を作成する手間が省け、作成時間の短縮が可能です。
テンプレートの種類も多様で、自社の業務内容や規模に合ったものを選びやすく、小規模から大規模まで柔軟に対応できます。また、エクセル形式のため、社内での共有や展開もスムーズに行える点でも魅力でしょう。
エクセルで使える工数管理の無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、工数管理に使える無料のエクセルテンプレートを提供しています。誰でも無料でダウンロードでき、すぐに利用を始められます。
テンプレートはエクセル形式で作られており、自社の業務内容に応じたカスタマイズも可能です。
初期設計の手間が不要なため、スピーディーに工数管理を導入したい企業にとって最適です。導入のハードルが低く、お試し感覚で始めたい方もぜひ下記のリンクからダウンロードしてみてください。
エクセルでの工数管理に必要なファイル
エクセルで工数管理を行うには、目的に応じたファイルを事前に用意しておくことが重要です。
必要な情報がまとめられたファイルを揃えることで、管理の手間が減り、精度も向上します。以下では、エクセルでの工数管理に必要なファイルについて紹介します。
下記の記事では工数管理ツールを紹介しているため、工数管理ツールをお探しの方はぜひあわせてご覧ください。
WBS(Work Breakdown Structure)
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトを細かなタスクに分解し、階層的に整理する方法です。
「作業構造分解図」とも呼ばれ、全体の作業内容を視覚的に整理できます。エクセルを使用すれば、WBSをツリー状やリスト形式で自由に作成でき、自社の運用に応じて柔軟に対応可能です。
WBSを作成することで、タスクの抜け漏れや作業の重複を防ぎ、効率的な工数管理につながります。ただし、WBSは時間軸を含まないため、スケジュール管理にはガントチャートとの併用が効果的です。
作業内容の把握と進捗の可視化を両立させるには、タスクを細かくしすぎないように注意し、数時間から数日単位で調整することがポイントです。
日報
日報は、各メンバーがその日の作業内容や進捗状況を記録するためのファイルです。
誰が・どのタスクに・どれだけの時間を使ったのかを日単位で把握できるため、工数管理の基礎データとして重要です。日報を毎日入力することでデータの精度が向上し、より正確な工数管理につながります。
入力を習慣化すれば、管理者による進捗確認の負担も軽減できます。また、日報の内容をWBSやガントチャートと連携させることで、プロジェクト全体の進捗をリアルタイムで可視化することも可能です。
エクセルを活用すれば、日付や担当者ごとにシートを整理しやすく、情報の管理や集計もスムーズに行えます。
ガントチャート
ガントチャートは、タスクの進行状況を時系列で可視化するための表です。
縦軸に業務項目、横軸に日付を配置し、色やバーで作業の予定と進捗を視覚的に表します。タスクの開始日・終了日・作業期間が一目でわかるため、誰がいつ何を行うかを把握しやすい点がメリットです。
WBSで洗い出したタスクをもとにガントチャートを作成することで、計画的なスケジュール管理が可能になります。WBSと連携させれば、全体像と進行状況の両方を効率的に管理可能です。
また、タスク間の依存関係や前後関係も示せるため、遅延のリスクやボトルネックの特定、優先順位の調整にも役立ちます。ただし、タスクを細かくしすぎると表が煩雑になるため、適度にまとめて見やすさを保つことが大切です。
エクセルを使用した工数管理表の作り方
エクセルで工数管理を行うには、作業項目や担当者、作業時間などの項目を整理し、見やすい形式で管理表を作成することが重要です。
事前に工数管理表の作り方を把握しておけば、スムーズに管理を始められ、業務の進捗やリソースの把握に役立ちます。以下では、エクセルを使用した工数管理表の作り方について紹介します。
1. タスクを洗い出す
エクセルで工数管理表を作成する際は、まずタスクを洗い出すことが重要です。
プロジェクトのゴールから逆算して、大まかな作業内容を明確にします。たとえば「商品販売」がゴールであれば、「商品を作る」「サイトを作る」「配送を準備する」といった作業が挙げられます。
次に、作業を大・中・小の階層に分けて整理することで、全体の構造が把握しやすくなり、抜け漏れの防止が可能です。各タスクは「何をするかがすぐわかる」レベルまで分解することで、担当者の割り当てや工数の見積もりがしやすくなります。
エクセル上ではWBS形式でタスクを整理すると管理がスムーズです。
たとえば、システム開発のケースでは、「要件定義」といった大まかな工程の下に「要求分析」や「ヒアリング」などの中・小階層のタスクを紐づけて整理できます。
階層は目的に応じて3段階程度にとどめておくことで、全体像の把握と工数の見積もりがスムーズになります。階層を細かくしすぎないことが管理しやすさのポイントです。
2. タスクごとの担当者を決める
タスクリストを作成したら、各タスクに担当者の名前を入力する列を設けます。
担当者を決めずにタスクを残しておくと、誰も着手せずに放置されるリスクがあり、進行に支障をきたす可能性があります。責任の所在を明確にすることで、作業の遅れを防ぐことが可能です。
担当者を割り振る際は、各メンバーのスキルや現在の業務負担を考慮し、特定の人に偏らないようにバランスよく配分することが重要です。タスクは、小カテゴリレベルで担当者を設定すると、進捗管理がより正確になります。
エクセルで工数管理表を作成する際は、担当者ごとに色分けしたり、フィルター機能で一覧表示したりすることで、視覚的にもわかりやすくなります。
見やすい管理ができれば、チーム内での情報共有も円滑に進むでしょう。
3. タスクの開始日と終了日を入力する
タスクごとに担当者を決めたら、「開始日」と「終了日」の列を追加します。
誰が・いつから・いつまで作業を行うかを明確にすることで、タスクの進行管理がしやすくなります。開始日と終了日は、タスクの内容や担当者のスキル、見積もった工数をもとに現実的に設定することが大切です。
また、タスクの優先順位や他タスクとの依存関係を意識しながら、実行順を組み立てていく必要があります。終了日は納期に合わせつつ、ある程度の余裕を持たせておくことがポイントです。
想定外のトラブルが起きた場合にも対応できるよう、リスクを見越したスケジューリングが重要です。
エクセルで工数管理する際の注意点3つ
エクセルは手軽に使える一方で、属人化やデータの管理ミス、更新漏れなどのリスクがあります。事前に注意点を把握しておくことで、工数管理の精度を高め、運用トラブルの防止が可能です。
以下では、エクセルで工数管理する際の注意点3つについて紹介します。
1. 手間がかかる
エクセルは導入しやすいですが、入力や管理が手作業になるため、手間がかかる点に注意が必要です。
毎日の更新作業が必要なため、運用の負担が大きくなる可能性があります。WBSやガントチャートの作成・更新は、一部の担当者に集中しやすく、操作に慣れていないメンバーが多いと入力作業が属人化しやすくなります。
また、メンバーが多いプロジェクトでは、日報の確認やデータの集計に時間がかかり、全員分を手動でまとめる作業が大きな負担になるでしょう。
さらに、関数や紐づけを活用していても、構造が複雑になると修正対応に時間を要し、ミスが起こる可能性も高まります。要員数やプロジェクト数が増えると、エクセルでの一元管理が困難になるため、工数管理の規模や体制に応じた見直しも必要です。
2. 人為的なミスが起こりやすい
エクセルで工数管理を行う際は、人為的なミスが起こりやすいため注意が必要です。
エクセルでは入力が手作業中心になるため、記載ミスや抜け漏れが発生しやすく、データの正確性が重要な工数管理においては大きな問題となる可能性があります。
さらに、複雑な関数やマクロを使用すると、特定の人しかファイルを管理できない状態になりやすく、属人化が進むと担当者が不在の際に対応できなくなるリスクも高まります。
また、ファイルの破損や消失といったトラブルも想定されるため、こまめなバックアップが欠かせません。クラウド保存や定期的な保存ルールを設けることで、データの保全と復旧対応をスムーズに行えます。
3. リアルタイムでの共有ができない
エクセルは基本的にローカルファイルで運用されることが多く、リアルタイムでの情報共有には限界があります。
進捗状況の更新にタイムラグが生じやすく、最新の情報を全員が把握するのは困難です。そのため、進捗に遅れが出てもすぐに気づけず、対応が後手に回る可能性があります。
また、更新作業は手動で行う必要があります。入力のタイミングにバラつきが生じる場合、情報のズレや認識の違いが発生しやすくなるため注意が必要です。
エクセルによる工数管理の手間やミス、共有の難しさなどの課題を事前に把握し、対策することで、より正確な工数管理が可能です。自社の体制やプロジェクトの規模に応じて、運用方法を見直すことも検討しましょう。
エクセルでの工数管理を成功させるポイント
エクセルで工数管理を行う際は、ツールの特性を理解し、運用ルールを明確にしておくことが重要です。工数管理を適切に行うためには、入力ミスの防止や管理の属人化を防ぐ工夫も欠かせません。
以下では、エクセルでの工数管理を成功させるポイントを解説します。
責任者を選任する
エクセルでの工数管理を成功させるには、責任者を選任することが重要です。
工数管理にはルールの統一が必要であるため、入力ルールやフォーマットのブレを防ぐ役割として、担当者を決めておくことが大切です。メンバーごとに入力方法や工数の捉え方が異なると、データの信頼性が低下します。
一定の基準で運用することで、工数データの精度を維持できます。責任者がルールに沿った入力をメンバーに指導・確認することで、入力ミスや曖昧な記録の防止が可能です。
明確な管理体制を整えることで、プロジェクト全体の進行もスムーズになるでしょう。
データを毎日更新する
エクセルで工数管理を成功させるには、データを毎日更新することが基本です。
工数の入力を後回しにすると記憶が曖昧になり、正確な記録ができなくなります。進捗の遅れを早期に発見するには、リアルタイムの情報が必要です。もし、更新が滞ると対応のタイミングを逃す可能性があるため注意が必要です。
また、小さな遅れでも数日分をまとめて入力すると、大きなズレとして現れやすくなります。結果として、適切な対応が間に合わなくなるリスクが高まります。
プロジェクトの状況を正確に把握するためには、日々のデータ蓄積が重要です。責任者がルールを徹底することで、日次更新の習慣化ができるでしょう。
全体で共有する
エクセルでの工数管理を成功させるには、データをプロジェクトメンバー全体で共有することが重要です。
チーム内で情報をオープンにすれば、認識のズレや行き違いを防げます。また、各メンバーの作業量や進捗状況が可視化されるため、負担の偏りにも気づきやすくなるでしょう。
さらに、取り組みや成果が見えるようになることで、管理者による公平な評価にもつながります。進捗や課題をチームで共有することにより理解が深まり、メンバーの当事者意識も高まります。
極端なトラブルがない限り、工数の共有はチーム運営において多くのプラス要素をもたらすでしょう。
エクセルで工数管理して経営改善を目指そう
エクセルを使った工数管理は、コストを抑えながらもプロジェクトの可視化・効率化を実現できる有効な方法です。
タスクの進捗やコストをきちんと把握できれば、無駄な時間や工数の削減ができ、結果として経営改善にもつながります。
エクセルでの工数管理には手間や限界もありますが、「誰が・いつ・何にどれだけ時間をかけているか」を正しく把握することが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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