- 作成日 : 2024年10月28日
SCM(サプライチェーン・マネジメント)とは?メリットやステップを解説
SCM(サプライチェーン・マネジメント)とは「サプライチェーンそのものを管理すること」であり、サプライチェーン上の「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などについての全体最適を目指す手法です。
SCMの目的は、効率的に商品を供給することです。昨今、ビジネスのグローバル化や少子高齢化などのさまざまな理由により、ビジネス環境は一層厳しさを増しています。そのような時代において競合他社に対する優位性を確保するためには、SCMの導入が必要不可欠です。
本記事ではSCMの概要や重要性をはじめ、メリットや成功に向けたステップについて解説します。
目次 [非表示にする]
SCM(サプライチェーン・マネジメント)とは
はじめにSCMの概要について解説します。
SCMの概要
SCMとは、「サプライチェーンそのものを管理すること」です。
サプライチェーンとは、ある商品を製造するために必要となる原材料の調達から消費者の手元に届くまでの一連の生産・流通プロセスを指します。サプライチェーン上には、サプライヤー、卸売業者、物流業者、小売業者(あるいは部門)など、さまざまなステークホルダーが存在しているため、それぞれと連携して進めることが重要です。
SCMの目的
SCMの目的は、サプライチェーン上の「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などについての全体最適を目指す手法であり、効率的に商品を供給することを目的としています。
SCMに取り組むことで、ビジネス基盤を強化できるだけでなく、売上の向上も期待できます。
SCMの重要性
昨今のビジネス環境では急速にグローバル化が進んでおり、企業間の競争が激化しています。さらに最近では、DXに取り組む企業が増加しており、AIやビッグデータを活用した高効率なサプライチェーンの構築に取り組んでいるところもあります。
一方、日本国内では少子高齢化や働き方改革の影響もあり、労働人口が減少しているのが実情です。このような中で競合他社との競争に打ち勝つには、SCMにより生産性を高めつつ、売上や利益を創出できる体制を構築することが重要です。
SCM(サプライチェーン・マネジメント)がビジネスに与える効果
SCMはビジネスにさまざまなメリットをもたらします。本章では、SCMがビジネスに与える効果を解説します。
メリット1.コスト削減・売上拡大
SCMは、サプライチェーン上のさまざまな工程における「無駄」を削減可能です。
例えば、各工程に潜んでいる無駄な作業を削減すればコストを抑えることができます。また、過剰在庫の防止やプロセス自動化などによってもコストを削減できます。さらに、売上予測をもとに会社が利用するリソースを最大限活用すれば、更なる売上拡大も目指せるでしょう。
メリット2.リスク対策の実現
SCMに取り組めば、サプライチェーン上のリスクを検出できます。
工場が1つの地域に集中している場合、大規模な自然災害などが発生すると商品の供給が完全にストップしてしまいます。同様に、部品の調達元を1社に限定している場合は、当該企業の事業停止などによる被害を被りやすいだけでなく、仕入価格を掌握されるなどのリスクもあります。
サプライチェーン上に潜む見落としがちなリスクを検出し、早期に対策を実現できる点がSCMに取り組むメリットの1つです。
メリット3.顧客満足度の向上
前述のとおり、SCMによって、サプライチェーン上に潜むさまざまな無駄を削減することができます。
無駄を削減できれば、商品が顧客の手元に届くまでの時間短縮につながります。結果として、顧客は今までより安い価格で商品を購入できたり、すぐに欲しいものを手に入れることができるようになるため、顧客満足度向上にも良い影響を与えます。
SCM(サプライチェーン・マネジメント)の課題
さまざまなメリットがあるSCMですが、注意すべき課題も存在します。本章では、SCMの課題について解説します。
初期コスト
SCMはサプライチェーン全体が対象です。サプライチェーンは、自社のさまざまな部門はもちろん、材料の調達先や物流業者など社外の取引先も含まれます。
SCMではこれらも対象に含まれるため、広範囲を管理できるソフトウェアやITインフラが必要となります。そのため、ツールの利用に先立って社員への教育も行わなければならならず、初期コストがかさむ点がデメリットです。ただし長期的な視点で見れば、SCMに取り組むことで初期コストを回収できる可能性は十分にあります。
対応の難易度
SCMの対象領域は、調達・製造・物流・販売など多岐にわたります。また、対象領域が広いだけでなく、各工程の業務に関する詳細を把握することが重要です。効果的なSCMを導入するためには、特定領域だけではなく全体最適を考慮する必要がありますが、その難易度は高いといえます。
最適なSCMを実現するためには、サプライチェーン構築に関する知見を持つ人材を確保する必要があるでしょう。
SCM(サプライチェーン・マネジメント)導入を成功させるためのステップ
ここではSCM導入を成功させるためのステップを解説します。
ステップ1.SCM導入プロジェクト立ち上げ
まずはSCM導入プロジェクトを立ち上げる必要があるため、プロジェクトメンバーを選定します。なおメンバーには、自社の社員だけではなくサプライチェーン上の取引先などからも選出することが重要です。
ステップ2.構成要素の整理および課題特定
プロジェクト立ち上げ後は、自社のサプライチェーンを構成する要素を洗い出します。その上で、各要素あるいはサプライチェーン全体が抱える課題を特定しましょう。
ステップ3.改善目標の設定
サプライチェーン上の課題や問題点などの特定が完了したら、それぞれの課題に対する改善目標を設定します。
ステップ4.デジタル化の可否検討およびシステムの選定
改善目標を設定したら、サプライチェーン上の各要素に対して、デジタル化すべきかどうかを検討します。また、既存システムを利用している場合は、継続利用するか、新規システムを導入するかなどを検討します。
デジタル化は目的ではなく、あくまでも手段の1つであるため、SCMに与える影響を十分に考慮することが重要です。
ステップ5.社員への教育
強固なサプライチェーンを構築するためには、システム導入はもちろん、そのシステムを最大限活用することが求められます。そのため社員に対して、導入したソフトウェア(サービス)の教育を実施することはもちろん、SCMの重要性を理解してもらうことが重要です。
ステップ6.サプライチェーンの監視と改善
SCMは導入して終わりではなく、継続運用が前提となります。日頃からサプライチェーンを監視し、発生した課題や問題点に対して早期の対策を行う必要があります。
SCM(サプライチェーン・マネジメント)システムが持つ機能
SCMシステムはさまざまな機能を有しています。主な機能は次のとおりです。
機能分類 | 機能詳細 | 概要 |
---|---|---|
需要予測・計画 | 需要予測 | 需要予測および予測に対するリソース配分などの計画立案 |
調達計画 | 材料・部品などの調達計画策定 | |
製造計画 | 商品製造の計画策定 | |
管理 | 受注管理 | 顧客からの注文受け付け |
生産管理 | 製造ラインの計画的な稼働 | |
物流管理 | 輸送経路の最適化 | |
在庫管理 | 在庫数の管理および動向分析 | |
顧客管理 | 顧客の情報管理 | |
評価 | パフォーマンス分析 | 生産効率やコスト効率など各種指標の分析 |
KPI設定 | 目標達成度の定量化 |
まとめ
SCMとは、サプライチェーン上の「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などについての全体最適を目指す手法です。
昨今、さまざまな要因によりビジネス環境は厳しさを増していますが、そのような中で競合他社に対する優位性を創出するためには、強靭なサプライチェーンを構築することが重要です。
効率的なサプライチェーンの構築に取り組んでいる方、競争力を強化したい方は、本記事を参考にSCMの導入からスタートしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
QBRとは?効果的な実施手順や達成すべき指標などをを解説
QBRは「四半期ビジネスレビュー」という言葉に和訳され、四半期(3ヶ月)ごとに目標や計画について議論する会議を指します。QBRの効果を最大化するためには、適切な実施手順やトピックを把握した上で開催することが重要です。 本記事では、QBRの効…
詳しくみる特例事業承継税制とは?一般措置との違いや申請の流れを解説
特例事業承継税制は、2009年度に定められた事業承継税制の中でも10年間限定の措置として利用可能な制度です。事業承継を検討している中小企業にとっては、より納税の猶予や免除が受けやすい制度となっています。 本記事では、特例事業承継税制の概要に…
詳しくみるバランススコアカード(BSC)とは?4つの視点や効果、作成方法まで解説
企業が業績を伸ばし、継続的な成長を続けるためには、複数の観点による多面的な状況把握が必要です。財務や顧客など、ひとつの観点からの評価のみでは正確に状況を把握することは困難でしょう。 当記事では、経営戦略を効率的に推進するために役立つバランス…
詳しくみる会社法で義務付けられている決算公告とは?期限や方法、罰則を解説
会社法により、原則として非上場を含む株式会社には、決算公告の義務が課せられています。決算公告を怠ると罰則が課せられるため、注意が必要です。会社法の規定に基づき、決算公告の期限や方法、手続きについて詳しく説明します。 決算公告とは 決算公告と…
詳しくみるアメーバ経営とは?概要やメリット・デメリット、導入プロセス、成功のポイントを解説
アメーバ経営とは、組織を独立採算制の小集団に分割し、各従業員が経営者視点を持って事業を運営する経営管理手法です。従業員のモチベーション向上や迅速な意思決定の促進といったメリットが期待できる一方で、部門間の対立が生じやすいというデメリットもあ…
詳しくみる独自性を追求する差別化戦略とは?特徴や実践方法などを解説
ブランドの展開、既存サービスの拡大、新規事業の立ち上げなど、戦略を立てるべきシーンはビジネスにおいて多く存在します。ただし、一言で「戦略」といってもその意味は幅広く、また戦略のパターンも多様です。その中でも差別化戦略は多くの企業やブランドが…
詳しくみる