- 更新日 : 2024年7月12日
ERPとMRPの違いは?特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説
現在では単独の基幹システムではなく、ERPを導入している企業が増えています。ERPが普及する前は、MRPと呼ばれるシステムを導入している企業も多くありました。どちらも基幹業務の業務効率化を行うためのシステムですが、両者は概念やシステムが異なります。
ここではERPとMRPの違い、なぜERPが導入されるようになったのか、ERPのメリット・デメリットなどをご紹介します。
目次
ERPとMRPの違いとは?
ERPとMRPはどちらも基幹業務を効率化するシステムです。しかし、次のような部分が異なります。
導入する目的
ERPの導入目的は基幹業務とそれに関するデータを一元的に管理することです。それによって経営資源を効率的に活用し、大幅な業務効率化が可能になります。
一方、MRPの導入目的は生産管理の合理化と資材調達の最適化です。MRPを活用することで、ジャストインタイムの在庫管理を実現し、過剰在庫やキャッシュフローの悪化などを防ぐことができます。
システムがカバーする範囲
ERPは基幹業務のすべてをカバーし、それらのデータを統合しています。対してMRPは、生産管理を対象とした業務システムで、仕入れ量の計算、在庫管理などの機能があり、生産管理を合理化・自動化することができます。
得られる分析結果
ERPは基幹業務すべてをカバーしているため、在庫管理だけでなく、販売管理、原価計算など企業経営全体を見据えた分析やシミュレーションが可能です。
MRPは、生産管理に関わる部分のデータを分析し、シミュレーションすることができます。
導入費用
ERPはカバーする範囲が広いため、MRPよりも費用がかかりますが、最近ではクラウド型ERPやコンポーネント型ERPの普及により、会社の規模に合ったシステムを低コストで導入することも可能になってきました。
MRPとは
MRP(Material Requirement Planning)は日本語で「資材所要量計画」と訳されます。1970年ごろに広がったもので、生産管理から在庫管理を効率的に行うための手法、およびそれを実現するためのシステムのことです。
MRPがカバーする業務は、主に次の範囲です。
- 生産するための原材料(資材・部品など)を調達する
- 原材料を在庫として管理する
- 在庫を利用して生産計画を立てる
MRPを導入することで、資材調達、生産費用、時間などの業務を効率化し、最適化することができます。資材調達が最適化された状態とは、ジャストインタイム方式と言われる、「必要なものを」「必要なときに」「必要なだけ」調達する方法です。
MRPの特徴
MRPでは、在庫を適正に管理することで、在庫管理や生産管理の無駄をなくします。
在庫を適正に管理するためには、次のようなプロセスが必要です。
- 在庫数を把握すること
- 在庫数と売上に応じて適正な発注・計画を立てること
- それによって製品を安定的に供給すること
- 安定的な生産により在庫の過不足を少なくすること
- 過剰な在庫を持たないことで、コスト削減にもつなげること
MRPを活用することで、これらのプロセスを効率化・自動化することができます。また、作業を自動化することで社員の作業を減らし、人件費の削減と人的ミスの削減を実現することも可能です。
MRP2の誕生
MRP2(Manufacturing Resource Planning )は日本語で「製造資源計画」と訳されます。1980年代に生まれた、MRPの発展形です。
MRP2は、管理の対象をMRPの在庫管理や生産管理に限らず、「製造能力」を加えています。製造能力とは、従業員・工数・資材・設備・費用、時間などです。要素が増えたぶんだけ管理は複雑になりましたが、より正確で緻密な計画を立てることができるようになりました。
MRPからMRP2への移行で、生産管理に関わるすべての要素を総合的に管理し、利益率を高めることが可能です。
ERPとは
ERP(Enterprise Resource Planning)は日本語で「企業資源計画」と訳され「統合基幹業務システム」とも呼ばれます。在庫管理から生産管理だけでなく、販売、会計、人事などさまざまな基幹業務システムを統合したシステムです。ERPを導入することで、さまざまな基幹業務を統合的に管理し、効率化できます。
業務システムを統合化することで、予算、原料、従業員など社内のリソースに関する情報を一元管理し、リソースの使い方を最適化することができます。その結果、在庫管理や生産管理の合理化・効率化を大幅に推進することが可能になります。
ERPの特徴
ERPは、MRPやその発展形のMRP2をさらに発展させ、企業内のすべての経営資源を一元的に管理する手法と、それを実現するためのシステムです。
ERPでは在庫管理や生産管理に限らず、基幹業務のすべてをシステム化し、企業全体の業務プロセスを見直して自動化・最適化することができます。それによって、在庫管理や生産管理業務も大きく効率化することが可能です。
また、ERPではすべての基幹業務システムのデータを一元管理しているため、MRPやMRP2よりも大幅な業務効率化が期待できます。また、どの業務においてもリアルタイムなデータを利用することも可能です。
ERPが普及した経緯
ERPは、MRP、MRP2にBPRという考え方を取り入れて発展したものです。
BPR(Business Process Re-engineering)とは「業務改革」の意味で、業務、組織、企業戦略を根本的に見直し、一貫したプロセスとして、顧客志向の視点で再統合して最適化するという考え方です。BPRは、1990年代の世界的大不況や企業のグローバル化により広まりました。
BPRを実現するには、すべての基幹業務の一元管理と最適化が不可欠です。そのため、それを実現するための手法としてERPが、BPRと同時に普及していきました。
ERPを導入するメリット・デメリット
ERPの導入は、MRPやMRP2に比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット
ERPには、次のようなメリットがあります。
- 社内の情報を一元管理できる
ERPは基幹業務システムすべてのデータを1つのデータベースで一元管理します。そのため、リアルタイムにデータを連携させることが可能です。 - 経営状態を可視化できる
データを一元管理することで、常に経営状態の最新の状況を把握できます。また、ERPの機能によりグラフや図にしてわかりやすく可視化することも可能です。これは、適切でスピーディーな意思決定に大きく貢献します。 - 業務効率化が進む
データ入力・収集・計算などの作業の多くを自動化することが可能です。また、データは1回入力すれば他のシステムにもシームレスに反映されていきます。それによって社員の作業を大きく削減し、業務効率化を進めることが可能です。 - 業務管理にかかる工数やコストの削減
ERPはすべての基幹業務システムと連携しているため、より多くのデータを反映した生産計画を立てることができます。そのため、より緻密で正確な在庫管理と、在庫数の最適化が可能です。
ERPでは、この部分を大きく自動化できるため、管理の工数や費用も大きく削減できます。
デメリット
ERPの導入には次のようなデメリットもあります。
- 自社に合ったシステムを選定するのが難しい
ERPには多様な製品がありますが、そのなかから自社に合った製品を選ぶのは、なかなか難しいものです。担当者は、自社のシステム環境や状況をすべて把握した上で導入する目的をしっかりと理解しておく必要があり、専門的な知識が求められます。 - 導入費用がかかる
ERPはMRPよりも大規模なシステムになるため、導入した際には大きな効果も期待できますが、そのぶん費用も大きくなります。機能面だけでなく、コストとも相談しながら、システムを選ぶ必要があります。
まとめ
MRPは生産・在庫管理に限られていたシステムです。かつてはそれだけでも大きな業務効率化が可能でしたが、ERPによってMRPやMRP2の概念はさらに拡張されました。
ERPを導入することで、生産管理や在庫管理だけでなく、すべての基幹業務を管理できるようになりました。それにより、さらに大きな業務効率化が可能になっただけでなく、全社規模でデータ管理・分析ができるようになったのです。ERPとMRPの違いやそれぞれの特徴を理解し、自社にとって最適なシステムの導入を検討しましょう。
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よくある質問
ERPとはなにか
統合基幹業務システムと言い、在庫、生産、販売、会計、人事などさまざまな基幹業務システムを統合したものです。
ERPとMRPはどう違うのか
MRPがカバーしているのは在庫管理と生産管理だけですが、ERPはすべての基幹業務システムをカバーしています。
ERPを導入するメリットはなにか
すべての基幹業務システムに関するシステムやデータを一元管理することで、より大きな業務効率化とリアルタイムなデータ反映が可能です。
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