- 作成日 : 2024年9月30日
ノックアウト・ファクターとは?概要や重要性をはじめ活用法などを解説
ノックアウト・ファクターとは、ビジネスやプロジェクトにおいて必ず満たすべき条件や基準を指す言葉です。ノックアウト・ファクターには、企業の特徴や技術的な要素などを設定することが多く、主に開発ベンダーの選定、プロジェクトの着手・継続判断、プロジェクト品質管理などに活用されます。
本記事ではノックアウト・ファクターの概要をはじめ、設定方法や活用法について解説します。
目次
ノックアウト・ファクターとは
はじめに、ノックアウト・ファクターの概要について解説します。
ノックアウト・ファクターの概要
ノックアウト・ファクターとは、ビジネスやプロジェクトにおいて必ず満たすべき条件や基準を指します。
ノックアウト・ファクターの語源は、ボクシングのKO((Knock Out)だといわれています。
ポイント稼ぎの軽いパンチを受けても試合全体への影響は少ないですが、1発当たっただけでKOになるような重いパンチは、試合そのものの流れを一変させてしまう点が特徴的です。
これはビジネスにおいても同様です。細かい課題(=軽いパンチ)が発生しても大きな問題は生じにくいですが、ビジネスやプロジェクトの進行をストップさせてしまうような大きな課題(=重いパンチ)には最大限注意しましょう。
システム選定におけるノックアウト・ファクターの重要性と役割
システム選定時は、企業やサービスなどさまざまな候補の中から選ばなければなりませんが、ノックアウト・ファクターを設定しておけば、選定を効率的に進めることが可能です。
また、システムはあらゆる部門や社員が関わることになりますが、全ての部門・社員のリクエストを実現することは難しい場合が多いです。しかしノックアウト・ファクターを設定しておけば各部門の必須項目を把握できるため、全体最適を実現することができます。
さらに、システム開発の着手、あるいは進行時には不確定要素がゼロであることが理想ですが、現実ではたくさんの要素が複雑に絡み合っています。ノックアウト・ファクターを活用すれば、それらの不確定要素に対する判断基準を明確にすることができるでしょう。
ノックアウト・ファクターの種類
ここではノックアウト・ファクターの主な種類を解説します。
企業の基本情報
企業規模、売上、利益、導入実績などは、ノックアウト・ファクターの基本的な要素です。利益を創出していても規模が小さい企業の場合、大型案件を発注することはリスクが高い行為だといえます。また安定稼働を必須とするシステムの場合は、過去の実績などもノックアウト・ファクターとなることがあります。
技術要素
技術要素とは、システムに求める機能や性能などを指します。例えば「各画面を1秒以内で表示できること」あるいは「○○といった機能を備えていること」など、実運用に必須となる要素をノックアウト・ファクターとして設定します。
法的要素
業界によって、法律や規制などが厳しい場合も少なくありません。システムの仕様が法律や規制などの要件を満たせない場合は、プロジェクトの進行を諦めざるを得なくなってしまいます。このような法律や規制などの法的要素も、ノックアウト・ファクターとなるものの1つです。
QCD
QCDとはQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字をとった言葉です。システムが一定の品質を満たしていない場合、あるいはクライアント側のコスト超過や希望納期を満たせない場合にもプロジェクトの着手もしくは継続が困難になるため、QCDをノックアウト・ファクターとして設定することがあります。
ノックアウト・ファクターの設定方法
ここではノックアウト・ファクターの設定方法を解説します。
1.プロジェクトの目的明確化
どのような要素をノックアウト・ファクターに設定するかは「システムに何を求めるか」が重要な鍵となります。
そのため、システム開発や導入で何を実現したいのか、どのような成果を期待しているのかを定義することからスタートしましょう。ここで洗い出した要素が、そのままノックアウト・ファクターに設定される場合もあります。
2.要件の洗い出し
プロジェクトの目的が明確になったら、システムの機能要件および非機能要件はもちろん、ビジネス上の要件なども洗い出します。その後、洗い出した各要件に対して優先度を設定しましょう。
3.ノックアウト・ファクターの特定
洗い出した要件に対して、プロジェクトの進行に必須かどうかを判断します。必須である場合は、ノックアウト・ファクターの候補となります。
4.評価基準の設定
最後にノックアウト・ファクターとして設定した項目の評価基準を整理します。評価基準を設定することで、ノックアウト・ファクターに該当するか否かを客観的に判断できるようになります。例えば「コスト」をノックアウト・ファクターに設定した場合は「コストの絶対値」を基準とするのか「利益に対する割合」を基準とするのかなどを検討し、判断基準を設定しましょう。
5.ステークホルダーとの合意
ノックアウト・ファクターとして設定した項目や評価基準は、プロジェクトに関与するステークホルダーと合意を形成しておく必要があります。
ノックアウト・ファクターに抵触した場合、プロジェクトは停止などの大きな影響を受けます。誰もが納得できる基準・判断にするためにも、ステークホルダー全員が同一の観点で評価し、意思決定することが重要です。
ノックアウト・ファクターの活用法
ここではノックアウト・ファクターの活用法について解説します。
開発ベンダーやパートナーの選定
システム選定時はさまざまな企業から開発ベンダーやパートナーを選ぶ必要がありますが、それぞれ異なる特徴を持っているため、比較には時間を要します。
ノックアウト・ファクターとして必ず満たすべき要素を設定すれば、効率的に開発ベンダーやパートナーのスクリーニングが可能です。
プロジェクト開始・継続の判断
ひとたびプロジェクトがスタートすると、さまざまなコストが発生します。
無駄なコストを抑制するためには、プロジェクト着手時にノックアウト・ファクターに抵触する要素がないかを確認しておくことが重要です。
また進行中のプロジェクトについても、途中で継続・停止するかを判断する際にノックアウト・ファクターを活用できます。
プロジェクト品質の管理
システム会社に依頼したサービスなどが最低限の品質を満たしているか、リリースして問題がないかを判断する際にもノックアウト・ファクターを利用できます。
要求した基準を満たしていない場合はノックアウト・ファクターに抵触しているため、プロジェクトの停止や改善作業を行いましょう。
まとめ
ノックアウト・ファクターとは、ビジネスやプロジェクトにおいて必ず満たすべき条件や基準を指すものであり、企業の基本情報や技術要素など、さまざまなものを指定することができます。
ノックアウト・ファクターの活用シーンは幅広く、開発ベンダーの選定やプロジェクトの着手・継続判断などにも利用できます。上手に活用して、コスト削減や効率化を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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