• 更新日 : 2024年7月12日

アジャイルとは?意味をわかりやすく!開発手法とビジネス活用法

アジャイルとは、「素早い」「機敏」を意味し、計画変更を前提として小単位で実行と修正を繰り返す手法のことです。

当初の計画通りに進めることよりも、変化への対応と価値の提供スピードを優先します。そのため、顧客ニーズが変わりやすい新規事業や、法改正への迅速な対応が求められるバックオフィス業務などで成果を発揮します。

本記事では、IT用語としてのアジャイル開発の基礎から、現代のビジネス全般で求められる「アジャイル思考」の取り入れ方まで解説します。

アジャイルとは?

アジャイル(Agile)は、直訳すると「機敏な」「素早い」という意味を持つ言葉です。ビジネスや開発の現場では、「短いサイクルで作成と検証を繰り返し、軌道修正しながら完成度を高める手法」を指します。

従来の手法では、最初にすべての仕様を決定してから着手していましたが、これでは完成までに時間がかかり、途中で状況が変わった際に対応できません。一方、アジャイルは「変化は必ず起きるもの」と捉えます。未確定な要素があっても走り出し、途中で方向転換することを良しとする点が最大の特徴です。

「小さなサイクル」を繰り返す反復型の仕組み

アジャイル開発の特徴は、開発工程を小さな期間で区切る点にあります。通常、この期間は1週間から4週間程度に設定されます。

従来の開発手法では、数ヶ月から数年かけてすべての機能を一度に作り上げますが、アジャイルではこの短い期間の中で以下の工程を一通り行います。

  • 計画:その期間で何を作るかを決める
  • 設計:具体的な作り方を考える
  • 実装:実際にプログラムを書く
  • テスト:正しく動くか確認する
  • レビュー:関係者に見せてフィードバックをもらう

1〜2週間ごとに「小さな成果物」が出来上がるイメージです。このサイクルを何度も繰り返すことで、少しずつ機能を追加し、システムを成長させていきます。

なぜアジャイルがビジネスで求められるのか

変化の激しい現代において、計画通りに進めるだけでは市場のニーズや環境変化に追いつけないからです。

経済産業省やIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が推進する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」においても、アジャイルは中核的な概念とされています。システム開発に限らず、中小企業の経営判断や、総務・経理といった管理部門の業務フロー構築においても、「まずは小さく試して、ダメならすぐ直す」というアジャイルなアプローチが業務効率化につながります。

参照:DX白書2023|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いは?

アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いは、「仕様変更への対応力」と「進め方」にあります。

ウォーターフォール開発は、水が上から下へ落ちるように、要件定義→設計→開発→テストと工程を一つずつ完了させて進みます。一方、アジャイル開発は「イテレーション(反復)」と呼ばれる短い期間でこれらを繰り返します。

項目アジャイル開発ウォーターフォール開発
基本的な考え方変化への対応を優先当初の計画遵守を優先
進め方短期間(1〜4週間)で実装・検証を反復全工程を順番に完了させる
仕様変更歓迎する(柔軟に対応)原則行わない(コスト増大)
リリースの頻度高頻度(機能ごとに順次)一括(完成時にすべて)
適しているPJ新規事業、仕様が未確定な案件大規模システム、品質厳守の案件

自社にはどちらが適しているか

プロジェクトのゴールが明確か、それとも模索段階かによって使い分けます。

アジャイルが適しているケース
  • 顧客の要望がふわっとしている新規システム開発。
  • 法改正や市場トレンドに合わせて頻繁に修正が必要な業務アプリ。
  • 社内のタスク管理や、正解のない業務改善プロジェクト。
ウォーターフォールが適しているケース
  • 銀行の勘定系システムなど、絶対にミスが許されない基幹システム。
  • 製造業のライン構築など、後戻りが物理的に困難なプロジェクト。
  • 予算と納期が厳密に決まっており、仕様変更が起きない案件。

ウォーターフォールは「品質の担保」と「スケジュールの見通し」に長けています。一方、アジャイルは「スピード」と「顧客満足度」に長けています。どちらが優れているかではなく、目的に応じて選択することが重要です。

アジャイル開発の手法とフレームワーク

アジャイルにはいくつかの具体的な実行フレームワークがあります。ここでは代表的な3つを紹介します。

スクラム(Scrum):チームの連携を最重視

スクラムは、チーム間のコミュニケーションを密にし、短期間(スプリント)で成果を出し続ける手法です。

ラグビーの「スクラム」が語源であり、チーム一丸となってゴールを目指します。「プロダクトオーナー(責任者)」「スクラムマスター(進行支援)」「開発チーム」という役割を明確にし、毎日の朝会(デイリースクラム)で進捗と課題を共有します。タスクの滞留を防ぎやすいため、多くの開発現場やプロジェクトチームで採用されています。

カンバン(Kanban):タスクの可視化と流れを管理

カンバンは、トヨタ生産方式をルーツに持ち、作業の「見える化」に特化した手法です。

「To Do(未着手)」「Doing(進行中)」「Done(完了)」などの列を作ったボードに、タスクを付箋(カード)として貼り付けます。これにより、誰が何をしているか、どこで作業が詰まっているかが一目でわかります。開発だけでなく、バックオフィスのタスク管理や個人の業務整理にも即座に応用できる手軽さが魅力です。

エクストリーム・プログラミング(XP):技術的品質と柔軟性

XPは、仕様変更に対する柔軟性と、プログラムの品質保持に重きを置いた手法です。

「テスト駆動開発(先にテストを作ってから実装する)」や「ペアプログラミング(2人1組で書く)」といった具体的な技術プラクティスを推奨します。変更コストを抑えつつ、顧客の要望を継続的に取り入れられるため、ビジネスの変化が激しい環境での開発に適しています。

ビジネスパーソンが知っておくべき「アジャイル思考」

開発者でなくとも、アジャイルの考え方(マインドセット)を取り入れることで、日々の業務効率は劇的に向上します。

完璧主義を捨てて「まずは出す」

アジャイル思考の本質は、60%の完成度でも良いので早期にアウトプットし、フィードバックを得ることです。

例えば、資料作成において、数日かけて100点の資料を作り上げるのではなく、1時間で骨子だけ作り、上司や依頼者に「方向性は合っているか」を確認します。これにより、完成間近での「思っていたのと違う」という手戻りを防ぎます。時間をかけずに修正を繰り返す方が、結果として高品質な成果物が早く完成します。

大きな目標を小さなタスクに分割する

壮大なプロジェクトも、1週間単位・1日単位の小さなタスクに分解して管理します。

アジャイルではこれを「ユーザーストーリー」や「タスクの細分化」と呼びます。「業務改善」という大きなテーマではなく、「請求書のスキャン方法を見直す」「ファイル命名規則を決める」といった、すぐに着手・完了できるサイズまで小さくします。小さな成功体験を積み重ねることで、チームのモチベーション維持にもつながります。

アジャイルな進め方を導入するメリット・デメリット

アジャイルのメリットは、手戻りによる損失コストを抑え、顧客(または社内ユーザー)のニーズに合致した成果物を提供できることです。

こまめに確認を行うため、「作ったけれど使われなかった」という事態を回避できます。また、問題が発生しても早期に発見できるため、傷が浅いうちに修正可能です。結果として、プロジェクト全体の工数削減や品質向上に寄与します。

一方、アジャイルのデメリットとして、柔軟であるがゆえに、追加要望を受け入れすぎるとプロジェクトの方向性がブレたり、納期が延び続けたりする懸念があります。

当初の予定になかった機能追加が繰り返されることを「スコープクリープ」と呼びます。

これを防ぐための対策は以下の通りです。

  1. 優先順位の厳守:
    「絶対に必要」なものと「あれば良い」ものを明確に分ける。
  2. タイムボックスの固定:
    期間(スプリント)を決めたら、その期間内は新たな変更を入れない。
  3. ゴールの共有:
    何のためのプロジェクトか、という原点を常にチームで確認する。

業務にアジャイルを取り入れるステップ

業務にアジャイルを取り入れるための具体的なステップを解説します。

STEP 1:タスクの洗い出しと優先順位付け(バックログ作成)

まずは、やるべきこと(タスク)をすべて書き出し、リスト化します。これをアジャイル用語で「プロダクトバックログ」と呼びます。

書き出したタスクに対し、ビジネス上の価値や緊急度に基づいて優先順位をつけます。この時点で細かい仕様まで決める必要はありません。「何を達成したいか」が明確であれば十分です。

STEP 2:短期間の計画作成(スプリントプランニング)

1週間〜2週間程度の期間(スプリント)を区切り、その期間内に「どこまで終わらせるか」を決めます。

優先順位の高いタスクから順に、今回の期間で実行する分だけを選び出します。欲張らず、確実に完了できる量に留めるのがコツです。

STEP 3:実行と毎日の確認(デイリースクラム)

タスクを実行します。毎日決まった時間に15分程度の短いミーティングを行い、「昨日やったこと」「今日やること」「困っていること」をチームで共有します。

これにより、誰かが作業に行き詰まっている場合でも、すぐにチーム全体でサポートできます。

STEP 4:振り返りと改善(レトロスペクティブ)

期間が終了したら、成果物の確認とともに「進め方」自体の振り返りを行います。

「何が良かったか」「何が悪かったか」「次はどう改善するか(KPT法など)」を話し合います。この振り返りを経て、次のサイクルの計画を立てます。このサイクルを回し続けることで、チームと業務プロセスは自律的に進化していきます。

【職種別】アジャイル思考の活用方法は?

「アジャイル=エンジニアのもの」ではありません。ここでは、非エンジニア職が日常業務でアジャイル思考をどう活用するか、具体的な例を紹介します。

人事・採用担当の場合

ウォーターフォールなやり方: 半年かけて完璧な採用マニュアルとスケジュール、面接評価シートを作り込み、一斉に募集を開始する。

アジャイルなやり方: まず「仮の評価シート」を作り、少人数のインターン生でトライアル(スプリント1)を実施します。そこで出た「質問がわかりにくい」「時間が足りない」という課題をもとに、次週すぐにシートを修正して本番の面接(スプリント2)に臨みます。

メリットとして、実際の候補者の反応を見ながら、採用基準や選考フローを最適化できるため、ミスマッチが減ります。

営業事務・企画担当の場合

ウォーターフォールなやり方:上司の指示を受け、1週間かけて30ページの資料を完成させてから提出する。結果、「方向性が違う」と言われ、大幅な作り直しが発生する。

アジャイルなやり方: 初日に「目次とキーとなる3枚のスライド」だけを作成し、上司とすり合わせます。OKが出たら、次の2日で詳細なデータを入れ込み、再度確認(スプリント2)。最後にデザインを整えます。

メリットとして、手戻りが最小限になり、完成までのスピードが圧倒的に早くなります。

素早い変化に対応し、成果を最大化する

アジャイルとは、単なる開発手法にとどまらず、不確実な未来に対して柔軟に適応するための「思考法」です。

顧客や市場のニーズは常に変化します。その変化をリスクと捉えるのではなく、より良いものを作るチャンスと捉えるのがアジャイルの真髄です。

DX推進や業務効率化において、まずは小さく始め、失敗を恐れずに修正を繰り返す姿勢こそが、企業の競争力を高めます。

完璧な計画よりも、まずは目の前の小さな一歩を踏み出し、フィードバックを得ることから始めてみてください。それが、アジャイルな組織への転換点となります。

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