- 更新日 : 2024年7月12日
Fit&Gap(フィットアンドギャップ)分析のステップや注意点を解説
Fit&Gap(フィットアンドギャップ)とは、ERPなどのシステム導入時において、自社の要件を洗い出すための分析手法です。
Fit&Gap分析を実施することで、自社に適したシステムの選定や導入に際するカスタマイズ要否の判断材料となります。
本記事では、Fit&Gap分析の概要から目的、具体的なステップ、実施に際する注意点を解説します。
目次
Fit&Gap(フィットアンドギャップ)とは?
はじめに、Fit&Gap分析の概要と実施する目的、「要件定義」や「Fit to Standard」との違いについて解説します。
Fit&Gap分析の概要と実施する目的
Fit&Gap分析とは、ERPなどのパッケージシステムについて、自社に適合(Fit)している部分と、乖離(Gap)がある部分を見極める手法です。
主にシステム導入時の企画・検討段階に用いられ、複数のパッケージシステムの比較や、カスタマイズ要否を判断するために用いられます。
Fit&Gap分析において、対象システムが自社の運用に適合しているかどうかは大切ですが、パッケージの機能のみで自社運用の要件をすべて網羅するケースは非常にまれです。
よって、カスタマイズのしやすさも重要な指標となります。
システム導入を成功させるには、企画・検討段階でFit&Gap分析を丁寧に行うことが非常に大切です。
「要件定義」との違い
要件定義とは、システムの導入・開発時にユーザーやクライアントの要件をまとめ、その要件をシステムで実現するためにどうすべきかを定義することを指します。
いずれも要件を明確にするという点では同じですが、要件定義がシステム導入・開発における工程の一つであるのに対し、Fit&Gapは自社要件を明確にするための手法であるという違いがあります。
Fit to Standardとの違い
Fit to Standardとは、「業務をシステムに合わせる」という方針のもと、原則としてカスタマイズやアドオン開発をせずにシステムを導入する方式を指します。
Fit&Gapは自社の運用に合わせたカスタマイズをしてからシステムを導入するのに対し、Fit to Standardは既存機能のままシステム導入するという違いがあります。
Fit to Standard方式にはシステムのカスタマイズをしないため、導入費用が抑えられることや、短期間でのシステム導入が可能であるというメリットがあります。
Fit&Gap分析の具体的なステップ
続いて、Fit&Gap分析を行う際の具体的なステップを解説します。
- STEP1.システム要件の洗い出し
- STEP2.パッケージシステムの調査・比較
- STEP3.システムを選定する
STEP1.システム要件の洗い出し
Fit&Gap分析におけるステップの一つ目は、システム導入に際し、システムに求める要件を洗い出すことです。
既存の業務フローにおいて、システム導入で効率化を実現したい点や電子化したい点などの要件を明確にし、整理します。
システムの機能はもちろん、出力したい帳票や他システムとのデータ連携などについても考慮が必要です。
STEP2.パッケージシステムの調査・比較
続いて、先ほど洗い出したシステム要件を満たせそうなものについて、ERPなどのパッケージシステムを対象に調査します。
パッケージ機能のみで自社のシステム要件を満たせるに越したことはありませんが、そのようなシステムは非常にまれであるため、カスタマイズをすることも視野に入れておきましょう。
その上で自社の運用とマッチしそうなシステムを分析し、カスタマイズのしやすさを含めて比較・検討します。
STEP3.システムを選定する
最後に、Fit&Gap分析をした結果に加えコスト面やサポート対応の充実度も考慮して、システムを選定します。
コストについて、導入コストはもちろん、運用・保守サポートに必要なランニングコストも重要な指標となります。
また、システムに何らかの不具合が発生した際に、迅速にサポートしてもらえるかどうかも大切です。
以上のステップを実施することで、システム導入後のミスマッチを最小限にすることが可能です。
Fit&Gap分析の注意点
本章では、Fit&Gap分析をする際の注意点を解説します。
全部署のシステム利用者に意見を聞く
Fit&Gap分析時にシステム要件を洗い出す際は、全部署のシステム利用者に意見を聞くことが大切です。
システム主管部門の意見のみを聞いて、他部署のシステム利用者の意見を聞かなかった場合、現場で使用されるシステムが利用者にとって使いづらいシステムとなるおそれがあります。
同時に、運用中に発生する予期せぬ問題に対応するための仕様が見逃されるリスクも高まります。
したがって、特定の部署だけでなく「全部署」のシステム利用者に要件をヒアリングすることが重要です。
要件を可能な限り詳細にもれなく洗い出す
Fit&Gap分析では、要件を可能な限り詳細に、もれなく洗い出すことが非常に重要です。
要件の洗い出しが甘いと、システム導入後に仕様の漏れに気づき、追加費用でカスタマイズをしなければならなくなる可能性があります。
システムの入力や画面表示などの基本機能はもちろん、運用のイレギュラーパターンや、出力帳票、データ連携についてなど、必要な要件を可能な限り漏れなく洗い出しましょう。
必須要件と希望要件を明確にしておく
Fit&Gap分析で洗い出した要件については、必須要件と希望要件を明確に区別しておきましょう。
すべての要件を必須要件に指定してしまうとシステムの実装作業が複雑になり、カスタマイズに伴うコストが増大して予算の超過を引き起こす原因となります。
システムの検討時は、必須要件をすべて満たすことが前提条件ですが、希望要件については、コストを考慮し、カスタマイズの可否・運用方針などを検討することが大切です。
システム間の連携を考慮する
最後に、システム間のデータ連携を考慮することも重要です。
システム導入時における要件抽出では、既存システムの機能を有効活用できるかどうかが注目されやすく、システム間でのデータ連携については見逃されがちです。
データ連携に問題が発生すれば、企業全体でデータを活用しづらくなり、企業運営が非効率になるおそれがあります。
そのため、導入するシステムと既存システムの間で、スムーズなデータ連携ができるかどうかも重要なポイントとなります。
特にERPシステムでは、人事や会計、在庫管理など、企業内のさまざまなデータを一元管理しているためデータ連携が容易です。
そのため、部門ごとに異なるパッケージシステムを導入している場合、ERPシステムに統合すれば、データ連携の心配はなくなるでしょう。
ERPシステムへの移行時におけるポイントは、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
Fit&Gap分析とは、システム導入時において、自社がシステムに求める要件を洗い出すための分析手法です。
Fit&Gap分析を実施することで、自社に最適なシステム選定やカスタマイズ要否の判断ができます。
Fit&Gap分析を行う際は全部署のシステム利用者に意見をヒアリングし、要件を可能な限り詳細にもれなく洗い出すことが大切です。
本記事を参考にしてFit&Gap分析を行い、システム導入後のミスマッチを防いで、導入を成功させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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