• 更新日 : 2025年4月22日

プロジェクトの管理工数とは?工数比率の目安や見積もり方法を解説

管理工数とは、プロジェクトを進行するうえで必要な作業の管理にかかる時間や労力を示す指標です。適切な工数見積もりと管理が行われていない場合、プロジェクトの遅延やコスト増加といった問題を引き起こす可能性があります。

本記事では、管理工数の見積もり方法や削減のための具体的なアプローチを詳しく解説します。

管理工数とは、プロジェクト管理に必要な時間と労力を表す指標

管理工数とは、プロジェクトの進行に必要な管理作業にかかる時間や労力を示す指標です。

具体的には、以下のような管理タスクに対してそれぞれ必要な時間や人員を見積もります。

タスク具体例
進捗管理
  • WBS(Work Breakdown Structure)の作成
  • 定期的な進捗報告会の実施
  • 進捗状況の報告書作成と共有
品質管理
  • 設計書やプログラムに対する有識者レビューの実施
  • 不具合の管理と改善提案
  • 品質向上に向けた改善計画の立案
変更管理
  • 仕様変更に関する会議の調整および実施
  • 関係者への変更内容の共有
障害管理
  • 発生した障害の集計と原因分析
  • 障害修正のための改修計画の作成

たとえば、プロジェクトのスケジュール作成に16時間かかった場合、その作業の管理工数は16時間です。

通常、工数は「人日」や「人月」などの単位で表され、1人日を8時間(ひとりの1日分の労働時間)として定義することが一般的です。つまり、16時間は「2人日」に相当します。

管理工数を正確に把握することで、プロジェクトに必要なリソースを事前に把握でき、リソースの過不足やプロジェクトの遅延を防止できます。

プロジェクト管理の代表的な手法や流れ、留意点については、以下の記事をご覧ください。

管理工数の把握不足が招く問題

管理工数を正確に見積もらないと、予想以上に管理業務が増加し、余分な手間やリソースが必要になる可能性があります。これが時間やリソースの無駄遣いにつながり、プロジェクトをスケジュール通りに進行できなくなる恐れもあります。結果的に、納期遅延やコスト増加といった問題が発生するかもしれません。

また、管理工数を適切に算出せず、リソース配分が不十分なままプロジェクトを進行すると、管理業務に割く時間が減り、特定の作業に過度な負担がかかりやすくなります。この過負荷状態を見逃すと、作業者の疲労が蓄積し、集中力が低下します。その結果、作業効率が悪化し、成果物の品質に深刻な影響を与えることになるでしょう。

管理工数を正確に把握することは、これらのリスクを最小限に抑え、プロジェクトの円滑な進行と高品質な製品・サービスの提供を実現するために非常に重要です。

管理工数の工数比率の目安

プロジェクトにおける管理工数は、全体の工数に対して10〜20%程度が一般的な目安とされています。この比率は、進捗管理や品質管理、変更管理、障害管理など、各管理業務にかかる工数が全体の作業時間に占める割合です。

しかし、実際の割合はプロジェクトの規模や内容によって大きく異なります。

たとえば、大規模なプロジェクトでは管理業務の負担が大きいため、管理工数の割合が高くなる傾向があります。一方、小規模なプロジェクトでは、管理工数が相対的に少なくなることが一般的です。

つまり、管理工数の比率はあくまで目安であり、プロジェクトの特徴に応じて柔軟に調整する必要があります。

適切な管理工数の設定は、リソースの無駄を減らし、効率的なプロジェクト運営を実現するための基盤です。事前の見積もりとプロジェクト進行中の柔軟な調整が、成功のポイントです。

管理工数の見積もり・算出方法

ここでは、プロジェクト管理における工数をどのように見積もり、算出するかを、具体的なステップに沿って解説します。

1. 管理工数の作業項目を整理する

管理工数を正確に見積もるためには、まず管理に必要な業務を整理することが重要です。

プロジェクトにおける管理業務には、進捗管理や品質管理、変更管理、障害管理などが含まれます。それぞれの管理業務をさらに細分化し、どのタスクがいつ発生するのかを明確にすることで、より精度の高い工数見積もりが可能になります。たとえば、進捗管理で発生するタスクは、WBSの作成や定例ミーティング、報告書の作成などです。

このように、作業を具体的にリストアップすることで、各作業に必要な時間やリソースを計算する準備が整います。

2. 作業項目ごとの管理工数を算出する

作業項目を整理できたら、次にそれぞれの項目に必要な管理工数を算出します。

たとえば、進捗報告の会議で、4人のメンバーが1時間の進捗報告を週2回、合計10週間行う場合、管理工数は次の計算式で求められます。

出席者数(4人)×会議時間(1時間)×会議の頻度(週2回)×期間(10週)=80時間

各作業に必要な工数を数値化することで、管理工数を具体的に見積もることが可能です。その結果、プロジェクト全体のリソースやスケジュールをより正確に予測し、無駄な時間やリソースの割り振りを削減できます。

3. 算出した管理工数を検討し、必要に応じて調整する

作業項目ごとの管理工数を算出したら、その妥当性を検討し、必要に応じて調整を行います。

まず、算出した管理工数がプロジェクト全体の工数に対して適正な範囲内であるかを確認します。管理工数の目安は、プロジェクト全体の10~20%程度です。これを超える場合は、管理作業が過剰である可能性が高く、逆に少ない場合は重要な管理タスクが漏れていると考えられます。

適性範囲に収まっていない場合は、各作業項目の工数を再評価し、過剰な作業を削減したり、不足している部分を追加したりしましょう。作業の優先順位を見直すことで、リソースの最適化を図ることも可能です。

4. 見積もり結果をレビューし、最適化する

管理工数を最初から完璧に算出することは難しいため、見積もり結果をレビューし、改善していくことが重要です。

具体的には、算出した管理工数を他のチームメンバーや経験豊富な上司と共有し、フィードバックをもらいます。これにより、過去のプロジェクトの実績や予測と異なる点を見つけ出し、見積もりの精度を向上させることが可能です。

プロジェクト進行中には予期せぬ変更や問題が発生することがよくあります。そのため、進捗に応じて定期的に見積もりを見直し、調整を行うことも大切です。

繰り返しレビューを行うことで、より正確な管理工数を設定し、プロジェクトをスムーズに進行できるようになります。

プロジェクト管理の代表的な4つの手法

ここでは、プロジェクト管理の代表的な4つの手法を紹介します。

紹介する手法は、タスクの整理や進捗の把握、リソースの最適化、リスク管理など、プロジェクトのさまざまな側面を効率化し、管理工数の削減に貢献します。

1. ガントチャート

ガントチャートは、タスクの進捗状況を視覚的に把握できる非常に便利なツールです。横軸に時間を、縦軸にタスクを配置し、各タスクの期間や進捗状況を棒グラフで表現します。

タスクの開始日や終了日を簡単に可視化し、どの作業がいつ行われているのかを瞬時に確認できます。

ガントチャートの特徴は、プロジェクト全体のスケジュールを一目で把握でき、タスク間の依存関係も管理しやすい点です。大規模なプロジェクトや複数のタスクを並行して進める場合にとくに有効で、スケジュールの遅延を早期に発見し、迅速に調整を行う際に役立ちます。

2. WBS

WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト全体を細かいタスクに分解することで、プロジェクトの全体像を把握する手法です。WBSを活用することで、タスクの抜け漏れを防ぎ、各作業の責任者や期限を明確に設定できます。

WBSの特徴は、プロジェクトを細分化することで管理工数の見積もりが容易になり、進捗管理を効率化できる点です。ただし、WBS単体では時間軸の把握が難しいため、ガントチャートなど他の管理手法と併用することが一般的です。

3. CCPM

CCPM(Critical Chain Project Management)では、プロジェクト内でもっとも重要なタスク(クリティカルチェーン)を特定し、その遅延を避けるために「バッファ」を設けます。ここでいうバッファとは、予想外の遅れをカバーするための余裕時間のことです。

CCPMの特徴は、各タスクに余裕をもたせるのではなく、プロジェクト全体にバッファを設定する点です。各タスクが予定通りに進めば、最終的にバッファの分だけプロジェクトが早く完了します。

4. PERT

PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、プロジェクトのスケジュールを効率的に管理する手法のひとつで、タスク間の依存関係や所要時間を視覚的に表現します。

PERT図では、タスクをノード(円)で示し、タスク間の依存関係を矢印でつなぎます。そこに各タスクの所要時間を記入することで、クリティカルパス(もっとも時間がかかる工程)を明確にし、重要なタスクの遅延を防ぐことが可能です。

PERTの特徴は、タスクの遅延が発生した場合にどの作業に影響を及ぼすかを特定できる点です。これにより、遅延を早期に検出し、リスクを最小化できます。

管理工数の削減に効果的な3つの方法

管理工数を削減することは、プロジェクトの効率化に直結します。

ここでは、無駄な工数を減らすための効果的な3つのアプローチを紹介します。

1. 業務フローを見直す

まずは、現在の業務フローを詳細に把握し、非効率な部分を特定しましょう。

たとえば、複数の部門間で繰り返し確認作業が発生している場合、承認手続きや報告のマニュアル化を進めることで確認作業を効率化できます。タスクに優先順位をつけてプロセスを見直し、無駄な業務や時間がかかっているタスクを排除することも重要です。

業務フローを最適化するためには、まず現行のフローを客観的に分析し、改善点を洗い出すことから始まります。

2. 効率的なコミュニケーション方法を活用する

頻繁な会議や報告書を通じた情報共有は、時間がかかり、管理工数を増加させる原因になります。

この問題を改善するためには、オンラインのタスク管理ツールやチャットツールを活用することが効果的です。タスクの進捗報告や質問をリアルタイムで行うことで、誤った情報共有や遅延を防ぎ、無駄な会議やメールのやり取りを削減できます。

また、チーム内で使用するツールを統一することで、進捗状況や問題点を効率よく把握でき、コミュニケーションコストを削減できます。重要な情報のみを簡潔に報告することで、管理工数を削減し、プロジェクトの管理をさらに効率化できるでしょう。

組織やチームの情報共有に課題を感じている方は、以下の記事で具体的な改善策を確認し、管理工数の削減につながるアプローチを実践しましょう。

3. 工数管理ツールを導入する

手作業での工数管理は、作業の進捗や時間配分を正確に把握するのが難しく、人的ミスが発生しやすくなります。一方、工数管理ツールを活用すれば、各業務の所要時間や進捗状況をリアルタイムで可視化できるため、工数を簡単に管理可能です。

たとえば、プロジェクトごとの作業時間を自動で記録・集計する機能を使用することで、プロジェクトの管理者は手動での集計作業を簡略化できます。管理にかかる手間を大幅に削減できるだけでなく、工数のムダを早期に発見し、適切なリソース配分やスケジュールの調整が可能です。

過去のデータをもとに予測分析できる機能が備わっているツールも多く、今後のプロジェクト計画を立てる際に役立ちます。複数のプロジェクトを並行して進めている場合やチームメンバーが多い場合は、工数管理ツールを使うことで、プロジェクト全体の効率化も実現可能です。

工数管理ツールや工数削減のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

管理工数を見直し、プロジェクト管理の効率を高めよう

管理工数の適切な見積もりは、プロジェクト管理の効率化に不可欠です。

もし管理工数が過剰な場合は、業務フローの最適化やコミュニケーションの効率化、工数管理ツールの導入を通じて無駄な工数を削減し、効率的なプロジェクト管理を実現しましょう。


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