- 作成日 : 2025年1月14日
バックキャストとは?フォーキャストとの違いや手法、事例を解説
バックキャストとは、未来のある時点での理想的な状態や目標を設定し、その目標から達成に必要なステップを逆算して計画を立てる手法です。
ビジネスの長期戦略や環境問題などの正解が存在しない課題やテーマに対して、実現のための具体策を考える手法として注目されています。
本記事では、バックキャストの概要について解説し、バックキャストの具体的な手法や活用事例について解説します。
目次
バックキャストとは
バックキャストとは、未来のある時点での理想的な状態や目標を設定し、その目標から達成に必要なステップを逆算して計画を立てる手法です。
企業や組織の長期戦略や、環境問題のプロジェクトマネジメントなどのさまざまな分野で活用されています。
バックキャストは未来で実現したい状態、ビジョンを起点とするアプローチであるため、明確な正解が存在しないテーマのゴールを描き、実現に必要な具体策を考える方法として注目されています。
バックキャストとフォーキャストの違い
バックキャストが未来の理想的な状態を起点とするアプローチであるのに対し、フォーキャストは現時点の最新データやトレンドをもとに未来を予測する方法をとります。
フォーキャストでは現時点の課題から将来に向かって計画を立てていく点がバックキャストと異なり、これまでの実績や情報を根拠に思考することが多いです。
そのためフォーキャストが活用されるシーンとしては、現状の売上データや市場動向をもとに将来の売上予測を立てる場合など、バックキャストと比較して達成の確実性が高く、短期間の課題解決や目標の管理を行う場合が挙げられます。
フォーキャストについては、以下の記事で解説しています。
バックキャストのメリット
本章では、バックキャストのメリットとして、以下の点を解説します。
- 正解がない問題に使用できる
- 創造的なアイデアが生まれやすい
正解がない問題に使用できる
バックキャストは、明確な答えが存在しない問題に対して、ビジョンや理想の状態を描くところから始めます。ビジョンを実現するためのプロセスは無数に存在する上、決まった答えはないため、正解のない問題にも向き合い、柔軟に対応することができます。
社会情勢やビジネス環境の不確実性が高いといわれる現代でも、バックキャストを通じ、ビジョンの実現に向けて手段や組織のあり方を変容させることができれば、企業の変革力を高めることも可能です。
同様に、将来の予測ができない不確実性が高い時代において必要とされるスキルである「ダイナミックケイパビリティ」については、以下の記事で解説しています。
創造的なアイデアが生まれやすい
バックキャストは、企業が実現したいビジョンに主眼を置き、実現する手段には制約をかけません。そのため、過去の実績や現状の積み上げで考えるフォーキャストに比べ、既成概念に縛られない自由な発想が促されやすいという特徴があります。
利害関係や現状の課題といった枠を超えて理想の状態を描いて思考できるので、新たなアイデアや革新的なイノベーションのきっかけにもなるでしょう。
バックキャストのデメリット
一方でバックキャストのデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 短期目標には不向き
- 長期的なモチベーションの維持が難しい
1. 短期目標には不向き
自由な発想から生み出したアイデアが、あまりにも現状と乖離していて短期的には実現できない場合など、バックキャストが機能しない場合もあります。
描いた理想を実現するための具体的なプロセスに落とし込めない場合は、プロジェクトが失敗する原因にもなるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
短期目標の達成には、これまでの実績や現状の課題をもとに着地点を予測するフォーキャストがより適しているでしょう。
2. 長期的なモチベーションの維持が難しい
長期的なビジョン実現の過程では、進捗が思わしくない場合や、不確実な外部環境の変化などの原因によって従業員のモチベーションが低下することも考えられます。
また長期的なプロセスの中で、掲げたビジョンに疑問を感じる場合もあるでしょう。
モチベーション低下の課題はあらゆる組織で起こりうるため、ビジョンを描いた時点から折り込んでおき、考えうる対処法を事前に準備しておくことが重要です。
バックキャストの具体的な手法とステップ
バックキャストの具体的な手法とステップとしては、以下が挙げられます。
- ビジョンの明確化
- 現状と未来のギャップの整理
- 達成に必要な行動の決定
- シナリオの作成
1.ビジョンの明確化
バックキャストの最初のステップは、実現したい未来のビジョンを具体的に設定することです。ビジョンは従業員のモチベーションの源泉となるため、具体的かつ魅力的であることが重要になります。
また、達成後に得られる成果とその意義が従業員に浸透し、企業全体で共有されていることも重要です。
2.現状と未来のギャップの整理
ビジョンが決まったら、現在の状況と理想の未来とのギャップを洗い出し、課題を明らかにする段階に移ります。現時点のヒト、モノ、技術、組織体制などさまざまな切り口から評価を行います。
この段階で洗い出した課題の精度がビジョンに向けた戦略の有効性に直結するため、抜け漏れがないよう丁寧に行いましょう。
3.達成に必要な行動の決定
洗い出した課題から、ビジョンの実現のために取るべき行動を設定します。課題の解決方法はひとつではなく、既存の慣習や実績から決める必要もありません。
複数の選択肢から最も効果的と思われるものを選択し、自社のリソースのみでなく他社、地域社会、行政機関、専門職などとの協業も視野に入れて検討します。
4.シナリオの作成
設定した行動計画に沿って、ビジョン実現までのシナリオを作成します。未来に向かってどのようなステップで進んでいくかを時系列で具体的に表現し、期限や優先順位を明確化しましょう。
シナリオ作成以降に生じる技術革新やビジネス環境の変化も見込んだ上で、理想像を定期的に最適化することも重要です。
バックキャストの活用事例
ある自動車会社は2015年に気候変動、生物多様性の損失などの地球環境の問題に、自動車が与える影響を限りなくゼロに近づけるべく、6つのチャレンジを策定しました。
6つのチャレンジのうち、「新車CO2ゼロチャレンジ」、「工場CO2ゼロチャレンジ」では2050年と明確な期限を設け、達成に向けて取り組みを行っています。
これは、長期的かつ正解のない問題に対するバックキャストの事例といえます。
まとめ
バックキャストでは、未来のある時点での理想的な状態や目標を設定し、逆算によってその達成までの道筋を自由に描くことができます。
企業や組織の実現したいビジョンなど決まった正解のない目標に向けて、既成概念に縛られない発想で取り組みたい場合に最適な方法です。
バックキャストを実行する際は、ビジョンの明確化、現状と未来のギャップの整理、達成に必要な行動の決定、シナリオの作成の順に行い、従業員のモチベーションが維持できているかにも着目するとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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