• 作成日 : 2024年12月13日

マイグレーションとは?種類やシステム移行の手順を初心者向けに解説

マイグレーションとは、既存のシステムやデータをより安全で効率的な新しい環境へ移行させる取り組みのことです。システムの老朽化によるセキュリティリスクの低減や、業務効率化を目的として実施される施策です。

この記事では、移行の判断に迷う方に向けて、マイグレーションの意味と必要性、種類や手順をわかりやすく解説します。

マイグレーションとは何か?

マイグレーション(Migration)とは、直訳すると「移動」や「移住」を意味し、IT分野では既存のシステムやデータを新しい環境へ移行することを指します。

特に近年は、老朽化した社内システムを最新のクラウド環境へ移すことや、サポートが終了するOSを最新版へ切り替えることを指して使われるケースが増えています。

リプレイスとの違いは?

リプレイスとは、既存のシステムと同等の機能を持つ新しいシステムへ「置き換える」ことを指します。

マイグレーションが「環境の移行・進化」に重点を置くのに対し、リプレイスは「老朽化した機器の交換」や「現状機能の維持」に主眼が置かれる点が異なります。

  • マイグレーション: データを活かしつつ、クラウドなど新しい環境へ移して活用幅を広げる(発展的)。
  • リプレイス: 壊れたサーバーを新品にするなど、基本機能を維持して刷新する(保守的)。

なぜマイグレーションが必要なのか

多くの企業でマイグレーションが急務とされる理由は、主に「2025年の崖」と呼ばれるレガシーシステム(老朽化したシステム)の維持管理コスト増大と、セキュリティリスクへの対応が必要だからです。

長年使い続けてきた社内システムは、度重なる改修で内部構造が複雑化し、ブラックボックス化していることが少なくありません。このようなシステムを維持し続けるには、専門知識を持った特定の技術者に依存せざるを得ず、多額の維持管理費がかかります。経済産業省のレポートでも「2025年の崖」として警鐘が鳴らされており、古いシステムを放置することは経営リスクそのものと言えます。

参照:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

主なマイグレーションの種類

マイグレーションは移行する対象によって、データ、アプリケーション、システム(サーバー)全体の3つの種類に分類されます。

それぞれの対象範囲を理解することで、自社に必要な対策が見えてきます。

1. データマイグレーション

データマイグレーションとは、業務で使用しているデータそのものを、別のストレージやデータベースへ移行することです。身近な例では、PCの買い替え時に古いPCから新しいPCへファイルを移す作業もこれに含まれます。

企業では、以下のような移行が実施されます。

  • オンプレミスのファイルサーバーから、クラウドストレージ(GoogleドライブやBoxなど)への移行
  • 古いデータベースソフトから、新しいバージョンのデータベースへの移行
  • 会計ソフトの変更に伴う、過去の仕訳データの移行

ここで注意が必要なのは「データ形式の整合性」です。例えば、移行元のシステムでは「顧客名」が全角20文字までだったのに、移行先では全角10文字までしか入らない、といった仕様の違いがあると、データが切り捨てられたりエラーになったりします。そのため、移行前にはデータの「クレンジング(整理・修正)」という作業が必要になります。

2. アプリケーションマイグレーション

アプリケーションマイグレーションとは、使用している業務ソフトやアプリケーションを新しい言語や環境へ移行することです。近年多いのは、自社開発した古いプログラムを、クラウド環境でも動作するように改修するケースです。

アプリケーションの移行には、いくつかの手法があります。専門用語では「移行の7R」などと呼ばれますが、ここでは代表的な3つを紹介します。

  • リホスト(Rehost):既存のアプリには手を加えず、そのまま新しいサーバー(クラウドなど)に乗せ換える方法。「リフト&シフト」の「リフト」にあたります。手っ取り早いですが、クラウド特有のメリット(自動拡張など)は受けにくいです。
  • リプラットフォーム(Replatform):アプリの基本機能は変えず、データベース部分だけクラウドのマネージドサービスに置き換えるなど、部分的に最適化する方法です。コストと効果のバランスが良い手法です。
  • リファクタリング(Refactoring):新しい環境に合わせて、プログラムの中身(コード)を書き直す方法です。手間と時間はかかりますが、クラウドの性能を最大限に引き出せるため、長期的な運用効率は最も良くなります。

3. システム(サーバー)マイグレーション(クラウド移行)

システム(サーバー)マイグレーションとは、システムが稼働しているサーバー環境(OSやハードウェア)を移行することです。

近年もっとも多い事例は、自社内にサーバーを置く「オンプレミス」環境から、AWSやAzureなどの「クラウド」環境への移行です。ハードウェアの管理から解放されるため、運用コストの削減につながります。

マイグレーションを実行する3つの手法

マイグレーションには、システムの移行深度に応じて「リホスト」「リライト」「リビルド」という3つの主要な手法があります。

予算やかけられる時間、将来の拡張性に合わせて最適な手法を選ぶ必要があります。

1. リホスト(そのまま移行)

リホストとは、既存のアプリケーションやデータに変更を加えず、そのまま新しい環境(クラウドなど)へ持ち込む手法です。

「リフト&シフト」とも呼ばれます。作業工数が少なく、短期間・低コストで移行できるのが特徴ですが、クラウド特有のメリット(自動拡張など)を完全には享受できない場合があります。

2. リライト(修正して移行)

リライトとは、既存のアプリケーションのロジックは変えずに、プログラムコードの一部を新しい環境に合わせて書き換える手法です。

「リファクタリング」とも呼ばれます。リホストよりも手間はかかりますが、新環境の性能を引き出しやすく、セキュリティや処理速度の向上が見込めます。

3. リビルド(再構築)

リビルドとは、既存のシステムを廃棄し、新しい環境に合わせてゼロからシステムを作り直す手法です。

もっともコストと時間がかかりますが、不要な機能を断捨離し、最新技術をフル活用した業務フローへ刷新できるため、長期的には高い投資対効果が期待できます。

【手法別の比較表】

手法コスト移行期間難易度メリット
リホスト短いとにかく早く移行できる
リライトコストと性能のバランスが良い
リビルド長い業務プロセスごと最適化できる

マイグレーションのメリットとデメリット

マイグレーションを実施することは、企業の競争力を高める多くのメリットをもたらす一方で、移行プロセス特有のリスクやデメリットもあります。

メリット:業務効率の向上とコストの最適化

マイグレーションを実施するメリットとして挙げられるのは、業務効率の向上とコストの最適化です。最新のシステム環境へ移行することで処理速度が改善され、スマートフォンやタブレットからのアクセスも容易になります。そうすることで、場所を選ばない柔軟な働き方が可能になります。

また、クラウド環境へ移行すれば、物理サーバーの電気代や設置スペース代、老朽化したハードウェアの買い替え費用が不要となり、運用コストの大幅な削減が見込めます。さらに、最新のOSやセキュリティパッチが適用される環境になるため、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを低減できる点も大きなメリットです。

デメリット:移行に伴う業務停止やトラブルの可能性

マイグレーションを実施するデメリットやリスクとしては、移行に伴う業務停止やトラブルの可能性が挙げられます。

システムを切り替える作業中には、一時的にシステムが使えない「ダウンタイム」が発生する場合があり、業務調整が必要です。また、手順を誤るとデータが破損・消失するリスクや、新環境で一部の機能が正常に動かない「互換性の問題」が発生する恐れもあります。これらのリスクを最小限に抑えるためには、十分な計画とバックアップ、事前のテスト検証が必要です。

失敗しないマイグレーションの手順

マイグレーションの成功は、実行段階よりも準備段階で決まります。

以下の5つのステップに沿って着実に進めましょう。

STEP1:現状分析(棚卸し)

社内にどのようなシステム、サーバー、データが存在するかをリストアップします。

「誰が」「どの頻度で」使っているかを確認し、移行せずに廃棄すべき不要なデータがないかもこの段階で仕分けます。不要なデータを移行することはコストの無駄になります。

STEP2:方針決定と計画

移行の目的(コスト削減か、性能向上か)に合わせて、手法(リホスト・リライト・リビルド)を決定します。

また、業務への影響が少ない時期(連休中や夜間など)を選定し、具体的なスケジュールを引きます。

STEP3:テスト環境での検証

いきなり本番環境を移行するのではなく、テスト環境を用意してリハーサルを行います。

データが文字化けしないか、計算結果がズレないかなどを入念にチェックします。この段階で不具合を出し切ることが、本番でのトラブルを防ぐ防波堤となります。

STEP4:移行の実行

計画に基づき、実際のデータ移行を行います。

万が一に備え、必ず直前の状態で「バックアップ」を取得してから作業を開始してください。問題が発生した際に、すぐに元の状態に戻せる準備をしておくことが鉄則です。

STEP5:運用開始と評価

新環境での運用を開始し、動作確認を行います。

ユーザー(社員)からの問い合わせに対応する体制を整えつつ、当初の目的(速度向上など)が達成されているかを評価します。必要に応じてチューニングを行い、環境を最適化していきます。

マイグレーションは業務効率を高めセキュリティリスクを守る

マイグレーションは、機器の入れ替えだけではなく、企業の業務効率を高め、セキュリティリスクから守るための投資です。

実施には「リホスト」「リライト」「リビルド」といった手法の選択肢があり、自社の予算や目的に応じて選ぶ必要があります。

一方で、データ消失や業務停止といったリスクも伴うため、事前の現状分析とバックアップ、テスト検証を徹底することが成功への近道です。

まずは自社の社内システムやサーバーの状況を棚卸しし、優先して移行すべきデータが何かを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

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