- 更新日 : 2024年7月16日
ティール組織とは?定義や理論をわかりやすく解説
ティール組織は2014年にフレデリック・ラルーの著書「ティール組織」で使用された言葉で、近代社会における企業とは異なる要素を持った組織モデルとして国内外で注目を集めています。この記事ではティール組織がどういった組織モデルか、主な構成要素や特徴を分かりやすく解説します。
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ティール組織とは?
ティール組織とは従業員が各々の判断で行動し、対等な関係性の中で目的達成に向けて運営される組織のことです。2014年にフレデリック・ラルー氏が出版した書籍がもとになっている表現で、日本では2018年に同著書の和訳版が出版されたことで広まりました。
フレデリック・ラルーの書籍で注目が集まる
ティール組織はフレデリック・ラルー氏が出版した書籍「Reinventing Organizations」で用いられた表現です。同書籍では組織モデルを成長段階に応じて5種類に分けており、各モデルの概要やメリット・デメリットについて解説されています。
ティールの一般的な意味
ティールは日本語で「鴨の羽色」という意味で、青緑色に近い色味のことを指します。ティール組織は企業内の従業員が対等な関係で行動、協力などを行う組織形態を示し、明確なリーダーが存在しない点が特徴です。企業としての目的達成に向けて従業員が各自で目標を立てて行動できる組織モデルになっています。
ティール組織の位置づけ・定義
フレデリック・ラルー氏はティール組織に到達するまでの組織モデルを5種類の色に分類して表現しています。ここではそれぞれの概要、定義について紹介します。
レッド(衝動型)
レッド組織は「オオカミの群れ」と比喩されており、5種類の中では原始的な組織モデルです。圧倒的な力を持つ個人によって統率されている集団を指しており、構成メンバーはトップの人物が持つ力によってまとめ上げられていることが特徴です。
レッド組織は一個人の能力で維持される関係上、トップが交代したタイミングで組織の規模、ルールが一変することがあるなど組織として再現性がないことがデメリットといえます。
アンバー(順応型)
アンバー組織は「軍隊」と比喩されており、トップダウンで構成メンバーの役割が明確に定められていることが特徴です。アンバー組織では階級に基づいたヒエラルキーがあり、各メンバーは割り振られた役割に従って行動することが要求されます。現代では行政機関や警察などで主に見られる組織モデルです。
明確なルールを設定することで安定した組織運営を行える点がアンバー組織の強みになっていますが、状況が変化した際に柔軟な対応を取りづらいことが難点です。
オレンジ(達成型)
オレンジ組織は「機械」と比喩されており、基本的には階級に基づいたヒエラルキーがありながらも成果に応じて評価、昇進を図れるようになっていることが特徴です。オレンジ組織は現代の国内企業によく見られる組織モデルで、組織内における競争、イノベーションが生じやすい環境を形成する工夫が行われています。
実力主義によって業務効率向上が見込める一方で、組織内や競合他社との競争が続く過程で心身にプレッシャーがかかる場合があります。結果として機械のように働く状態に陥ることがあり、人間らしさが損なわれるリスクがある点がオレンジ組織の問題点とされています。
グリーン(多元型)
グリーン組織は「家族」と比喩されており、個人の価値観を重視して意思決定を行う組織です。階級によるヒエラルキーは存在していますが、組織単位で意思決定を行う際には現場で働くメンバーから意見を聞くボトムアップ型で実施されます。
グリーン組織に分類される企業においては、経営陣が現場従業員の主体性を尊重し、実力を発揮しやすい環境を整える様式で組織運営が行われます。しかし、複数の部署やチームなどを設けて権限を分散させた場合、組織内で意見をまとめ上げる際に長い時間を要することが難点です。
ティール(進化型)
ティール組織は「生命体」と比喩されており、組織の目標を達成するために構成メンバーがそれぞれ必要な意思決定を行うことで運営される組織モデルです。構成メンバーが組織の目標やルールを理解し、自主的に行動することで組織が運営されます。権限を集約したリーダー的な人員は存在せず、全員が対等な状況下で行動するシステムが整備されていることが特徴です。
日本の組織には「達成型」が多いと言われている
ティール組織はレッドからグリーンまでに該当しない要素を備えた企業として、日本では働き方改革の推進に伴って注目度が高まりつつある概念です。日本の組織には階級に基づいたヒエラルキーや成果に応じた昇進など、オレンジ組織(達成型)に該当する要素を取り入れている企業が多いとされています。
参考として、オレンジ組織との主な違いを解説します。
オレンジ組織は明確なデータに基づく経営計画や売上目標などを掲げ、合理性を重視して目標達成を目指す社内体制が構築されます。従業員の成果は数値的に評価され、各企業の基準に従って昇進・昇給を目指せることが特徴です。
一方、ティール組織は従業員が各自の判断で予算配分や目標設定を行い、目標達成に向けて各メンバーが個別に行動します。リーダーや管理職などの役職が存在せず、プロジェクトの進行や市場環境の変化などに応じて役割が適宜変化していくことが主な特徴です。
これら2種類の組織モデルを比較すると、オレンジ組織は管理職による経営管理が実施されており、部門別に職務内容が決められているのに対して、ティール組織は従業員が自己判断で行動し、それぞれの役割が流動的に変化するという違いがあります。
ティール組織を構成する3つの要素
企業がティール組織として円滑に機能するには、各メンバーが自主的に役割を考えて行動できる環境が構築されていることが大切です。ティール組織として円滑に機能する企業が備える3つの要素としてフレデリック・ラルー氏が挙げている「エボリューショナリーパーパス」「ホールネス」「セルフマネジメント」の3つの要素について紹介します。
エボリューショナリーパーパス(存在目的)
ティール組織では企業の存在目的を常に考え、環境変化に応じて自社のエボリューショナリーパーパス(存在目的)を常に達成、進化させていくことが重要になっています。従来型の組織と異なる点としては競合と争うことを重要視していないこと、自社の目的達成に向けた継続的な進化を重要視していることの2つです。事前に入念なプランニングを行うわけではなく、事業計画を推進する過程で対応策を随時発案、調整していくような形が基本的な経営イメージとされています。
ホールネス(全体性)
ホールネスは全体性という意味で、従業員間でフラットな関係性を構築して能力を発揮することの必要性を表す概念です。企業内の環境整備を通して従業員の心理的安全性を確保し、従業員の個人目標と組織としての目標が一致する環境を構築することが必要だとされています。従業員が最大限に能力を発揮することで個人としての成長を促進し、企業のセルフマネジメントを高い水準で実現するためにホールネスの推進は必要とされる考え方のひとつです。
セルフマネジメント(自主経営)
ティール組織に該当する企業はメンバーごとの階級や権限に差が無く、各々の判断でセルフマネジメント(自主経営)されていくことが特徴です。企業が保有している情報は必要に応じて全従業員が把握できる仕組みが構築されるようになっており、事業運営に必要な判断を行う際には同分野の専門家に助言を受けられるようになっています。ただし、最終的な判断は従業員が行うようになっており、個人の判断に基づいた決定内容が尊重される組織です。
ティール組織から読み取る自社の強みと課題
ティール組織は従業員が対等な関係性を構築し、階級や権限の違いが無い状況下で運営される組織モデルを指します。既存の組織に該当しない要素を備えていることが特徴で、ティール組織を目指した企業が他社と比較して必ずしも成長できる訳ではありません。企業の成長、目標達成を考える際には自社の強みと課題を理解し、目指すべき組織モデルのひとつとしてティール組織の概要を把握しておくことが大切です。
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