- 更新日 : 2024年7月12日
CAGR(年平均成長率)とは?計算式と求め方【エクセル数式付き】
CAGRとは、ある一定期間におけるビジネスや投資の平均的な年間成長率を表す指標であり、売上予測や投資対象の成長性分析などに活用されます。またCAGRは、エクセルの関数を活用することでも算出できます。
本記事では、CAGRの意味や計算式、活用場面、活用時の注意点などを解説します。また、事例として3つの業界におけるCAGRのデータも紹介します。
目次
CAGR(年平均成長率)とは
CAGR(年平均成長率)とは、Compound Annual Growth Rateの頭文字からなる略語です。CAGRは、ある一定期間における成長率の1年あたりでの幾何平均を表しています。なお幾何平均とは、比率で表現されるデータの平均値を指します。
簡単にいうと、「一定の期において、対象が毎年平均してどのくらい成長しているか」を分析できる指標です。
CAGR(年平均成長率)の計算式と求め方
CAGRの計算式と計算プロセスを、簡単な例を使って解説します。
CAGRの計算式
CAGRは、以下の計算式で算出します。
CAGR(%)=[(X年目の数値 ÷ 計測1年目の数値)^ { 1 ÷(X-1)}-1]×100
なお、「^」は「べき乗」を表します。
CAGRの計算プロセス
下記の簡単な例を使って、CAGRを計算してみましょう。
年 | 1年目末 | 2年目末 | 3年目末 |
売上(万円) | 1,000 | 1,150 | 1,400 |
上記の例は、1年目末〜3年目末の2年間で、売上が1,000万円から1,400万円まで増加したことを表します。この場合におけるCAGRは以下のように算出されます。
- CAGR(%)= [(3年目末の売上÷1年目末の売上)^ {1÷(3-1)}-1]×100
- CAGR(%)= [(1,400÷1,000)^ {1÷(3-1)}-1]×100≒18.3%
つまり、2年間において毎年平均で約18.3%成長したことがわかります。
エクセルによるCAGRの計算方法
上記のように手計算でCAGRを計算することは可能ですが、データの書き出しや計算の手間がかかります。また、計算ミスや入力ミスによって正しい結果を得られないこともあります。
以上の理由から、労力やミスを削減できるエクセルを活用して、CAGRを計算するのがおすすめです。エクセルでは、主に「算術演算子」や「POWER関数」によってCAGRを計算できます。
算術演算子
算術演算子を利用する場合、以下の流れで簡単かつミスなくCAGRを算出できます。
- あらかじめデータをセルに入力した表を準備する
- 別のセルに「=(X年目の売上/計測1年目の売上)^(1/α)-1」という計算式を入力し、計算する
- 計算結果に100をかけることで、%表示のCAGRを算出する
簡単にいうと、前述の計算式をエクセル入力用に一部加工して利用するだけです。なおαは、前述の式の“(X − 1)”の計算結果(経過年数)を表します。
例えば、以下のデータをセルに入力したとします(カッコは入力したセルを表す)。
1年目末(A1) | 2年目末(B1) | 3年目末(C1) |
1,000(A2) | 1,150(B2) | 1,400(C2) |
この場合、上記以外の任意のセルに「=(C2/A2)^(1/α)-1」という計算式を入力し、計算結果に100をかけるとCAGRを算出することができます。
POWER関数
べき乗を計算するPOWER関数を活用する方法もあります。基本的な流れは算術演算子を用いる場合と同じですが、計算式は以下を用います。
- =POWER(X年目の売上/計測1年目の売上,1/α)-1
前述の例だと、「=POWER(C2/A2,1/α)-1」とセルに入力し、計算結果に100をかけるとCAGRが算出できます。また、αは算術演算子と同様に(X−1)の計算結果(経過年数)を表します。
CAGR(年平均成長率)の3つの活用場面(メリット)
CAGRは、主に以下3つの場面で活用できます。
メリット1:将来的な売上の予測
直近数年間のCAGRを算出することで、今後どのように売上が推移するかを予測できます。
例えば直近5年間のCAGRが10%で現時点の売上が1億円の場合、次年度の売上は1.1億円になるという簡易的な予測が立てられます。
メリット2:成長率の調査・比較
異なる企業や市場の間の成長率を比較できる点もメリットです。
例えば、売上が1億円のA社と50億円のB社では、単純な事業規模ならB社の方が大きいと判断できますが、どちらがより成長しているかは判断できません。
このような場合にCAGRを算出することで、事業規模が異なる会社間における成長性を比較することができます。
このように、CAGRは利便性が高いため、M&Aや事業投資などの場面でも活用されています。
メリット3:長期的な安定性の確認
1つの企業において、異なる期間のCAGRを複数算出することで、長期的な安定性を確認することもできます。
例えば、直近3年間のCAGR(短期)と、直近20年間のCAGR(長期)を比較するとしましょう。長期の成長率は高い一方で、短期の成長率は低い場合、近年の成長率が鈍化していると判断できます。
分析結果を踏まえて早期に対策を講じることで、業績の深刻な悪化を防ぎやすくなります。
CAGR(年平均成長率)の注意点(デメリット)
一方で、CAGRの活用に際しては以下2つの点に注意が必要です。
業績が不安定な場合に分析しづらい
業績が安定していない企業にCAGRを用いると、成長性を正確に分析できない可能性があります。
例えば、CAGRの算出時に単年成長率が大幅なマイナス(売上が大幅に減少)となった年度を含めてしまうと、計算結果が大幅に変わってしまいます。
このようなデータを使うと将来的な売上予測などの分析精度が下がるため、注意が必要です。
あくまで目安の指標に過ぎない
業績が安定している企業のCAGRだからといって、かならずしも将来予測を正確にできるとは限りません。
例えば、技術革新や法規制などの影響により、次年度以降の業績が不安定となる場合もあるでしょう。
CAGRはあくまで目安に過ぎないということを念頭に置いておきましょう。
CAGR(年平均成長率)の業界別活用事例
最後に、3つの業界におけるCAGRのデータを紹介します。
画像解析システム市場
2021年度〜2025年度におけるCAGRは19.2%になる見込みです。人手不足の解決手段として、同市場は急速な拡大を見せると考えられています。
参考記事:矢野経済研究所「画像解析システム市場に関する調査を実施(2023年)」
食品宅配市場
2022年度〜2027年度におけるCAGRは2.8%となる見込みです。コロナ禍を契機として急激に拡大した同市場は、消費者が日常使いする新たなサービスとして定着するのではないかと考えられています。
参考記事:矢野経済研究所「食品宅配市場に関する調査を実施(2023年)」
医薬品原薬・中間体市場
2023年度〜2027年度におけるCAGRは2.5%となる見込みです。安定供給に対するニーズの高さなどを背景に、国内の同市場は今後も拡大傾向で推移すると考えられています。
参考記事:矢野経済研究所「医薬品原薬・中間体市場に関する調査を実施(2023年)」
まとめ
CAGRの活用により、将来的な売上予測やM&Aなどの投資判断が可能となります。CAGRは手計算でも算出できますが、計算や入力のミスを防ぐためにも、エクセルを使うことがおすすめです。
事業計画の策定や成長戦略の指針策定にも役立つため、ぜひCAGRを活用してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
レベニューシェアとは?メリット・デメリットや契約のポイントを解説
レベニューシェアとは、発注者側と受注者側で、事業の収益を分配する契約を結ぶ、成果報酬型の契約方式です。 発注者としてはコストやリスクを抑えたビジネス展開ができ、受注者としては継続的な収入の確保につながるという特徴があります。 本記事ではレベ…
詳しくみる価格転嫁とは?成功・失敗事例と交渉のコツを解説
価格転嫁とは、原材料費やエネルギー費の高騰に伴う生産コストの増加分を製品価格に反映させることを指します。 昨今の日本では、原材料費や石油価格の高騰に加え、昨今の賃上げトレンドによる労務費の増加も相まって、製品の生産コストは上昇傾向にあります…
詳しくみるエグゼキューションとは?ビジネスにおける意味や手続き、成功させるためのポイントを解説
エグゼキューションとは、M&Aなどの取引実行を意味する用語です。エグゼキューションの実施は、関係する企業の合意形成やリスク把握に役立ちます。 本記事では、ビジネスにおけるエグゼキューションの意味やプロセス、成功のポイントを解説します…
詳しくみる経営資源とは?効率的な管理を実現するためのポイントや課題解決策を解説
経営資源とは、企業が経営を持続・成長させていくために必要不可欠なものです。 昨今ではビジネス環境の変化や技術革新の影響により、経営に必要な資源が増加しています。 この記事では、経営資源の概要や要素をはじめ、効率的に管理するポイントを解説しま…
詳しくみる業績管理の重要性!管理すべき内容や具体的な進め方、ツールを解説
競争が激化する昨今、ビジネス環境で成功するためには「業績管理」が不可欠です。正確かつ効果的な業績管理が実現できれば、市場での競争力向上やリソースの最適化、コスト削減、生産性の向上、決算の迅速化など、企業は多くの利点を享受できるでしょう。 本…
詳しくみるROEとROICを解説!それぞれの違いやROICの活用方法について
会社経営において、売上や利益だけを追求しているという方もいらっしゃるかもしれません。もちろんこれらも重要な要素ですが、同時に「どれだけ効率的に資金を活用して利益を上げているか」という点も重要なポイントです。そこで注目したいのが、ROEやRO…
詳しくみる