- 更新日 : 2024年7月12日
コモディティ化とは?発生原因や脱却に向けた戦略を解説
コモディティ化とは、さまざまな要因により製品の価値が失われ、汎用品化(価値が低下)することを指します。
昨今ではSDGs経営が注目を集めていますが、未だ大量生産・大量消費という社会問題は解決にいたっていないのが現状です。また、スマートフォンやSNSなどの普及により、日々爆発的に情報が生まれています。
そのような背景の中で、あるひとつの商品がコモディティ化するスピードは年々加速しています。
そしてコモディティ化は、企業に深刻な経営ダメージをもたらすリスクを有しています。
そこで今回は、コモディティ化の原因や企業への影響、そして打開策や成功事例について解説します。
目次
コモディティ化とは
コモディティ(Commodity)とは、日本語で「日用品」や「汎用品」という意味を持つ言葉です。
ビジネスにおいては、販売開始時には高い価値を持っていた商品が、競合製品の登場や技術革新が進んだ結果、価値が失われて均一化・低価格化してしまうことをコモディティ化と呼びます。
コモディティ化の一例としては、液晶テレビが挙げられます。
2004年当時、SHARPが展開していた「亀山モデル」は、高品質な液晶テレビとして世界中で高い人気を集めていました。しかし、韓国や台湾などの海外家電メーカーの台頭により、液晶テレビは一気にコモディティ化が進みました。
昨今、ビジネススピードはさらに加速しており、技術革新が次々と起こっています。そのため、あらゆる業界でコモディティ化が進行しているのです。
コモディティ化の発生原因
ここでは、コモディティ化の主な発生原因について解説します。
競合他社による類似商品・模倣商品の展開
ある市場において自社製品のシェアを拡大したいのであれば、その市場でトップシェアを占めている製品の分析が有効です。
世界的な経済学者であるピーター・ドラッカーも「創造的模倣」という戦略を提唱しています。この「創造的模倣」とは、他社の製品を模倣した上で+αの付加価値を付与するという戦略を指します。
ただ、このような戦略を各社が展開すると、市場は類似製品や模倣製品で溢れ返っていきます。その結果、コモディティ化が発生するのです。
技術革新
将来にわたり自社の強みを維持できれば良いのですが、競合他社も自社の存続をかけて研究や商品開発に投資を行っており、より高い価値を持つ技術や製品を創出しようとしています。
ある時点においては、高度な技術によって自社に優位性があっても、時間の経過とともに業界全体の技術水準は上がっていきます。このような技術革新も、コモディティ化を発生させる原因だといえます。
製品を構成する要素の部品化(モジュール化)
部品化(モジュール化)も、製品がコモディティ化する要因のひとつです。
部品化とは、ある規格やルールなどに準拠した部品を用いて製品を製造することを指します。
かつて、日本のPCメーカーが栄えていた時代のパソコンは非常に高額でした。しかし現在ではコモディティ化が進み、わずか数万円で購入できるようになっています。
パソコンはメモリやSSDなどのパーツをはじめ、ソフトウェアなども含めて部品化が進んでいます。その結果、製造に必要とされる技術は格段に低下し、コモディティ化が発生したのです。
低価格帯製品の台頭
例え高額な製品でも、市場へ投入した段階で価値が認められれば、消費者は購入する可能性があります。しかし、競合他社が「製品の機能や品質はやや劣るが、低価格な製品」を展開しはじめると、顧客は安価な製品に流れることがあります。例えば、海外からの輸入品や、スーパーなどが展開するプライベートブランド商品などが該当します。
このような低価格製品の台頭も、コモディティ化を招く要因のひとつです。
コモディティ化の問題点と企業への影響
コモディティ化は価格競争の激化を招きます。なぜならば、製品が持つ機能や品質などでの差別化が難しくなると、企業は製品価格で競争せざるを得なくなるからです。
そのため、企業は「厚利少売型」から「薄利多売型」のビジネスモデルへの転換が求められるでしょう。
その結果として「規模の経済」を活用できる大企業や、日本よりも製造コストが安価な海外企業がシェアを拡大していくことが予想されます。
一方で、顧客から見れば機能や品質面での差別化が伴わずに価格だけが高い製品を選ぶメリットが少なくなるため、顧客ロイヤルティ低下のリスクが高まります。結果として、企業の存続を左右するケースも少なくありません。
そのほか、コモディティ化による製品の品質低下や、消費者の選択する自由が奪われる点もコモディティ化がもたらす問題だといえます。
コモディティ化を脱却するための戦略とは
コモディティ化を脱却するためには次の戦略が有効です。
更なる差別化
コモディティ化を脱却するためには、更なる差別化を進める戦略が有効です。
一度コモディティ化した製品でも、新たな価値を付与すれば差別化に成功する可能性は十分にあります。
例えば、ソフトウェア業界では「クラウド化」や「AIの導入」などにより、高付加価値を創出することが可能です。また、納期短縮化やポイント経済圏の構築などによる付加価値も差別化のひとつだといえるでしょう。
ターゲットの再選定
巨大な市場であっても、その市場を細分化した上で適切なターゲットを選定すれば、コモディティ化を脱却できる可能性があります。また、ターゲットそのものの見直しや再選定もコモディティ化の対策となり得るでしょう。
例えば、日本で「緑茶」は飲料のひとつとしてコモディティ化していますが、海外市場では大きな伸びを見せています。具体的には、伊藤園の商品である「お〜いお茶」の海外における販売推移が右肩上がりの成長を遂げているのです。
参考:伊藤園「2023年4月期上半期決算説明会資料(P17)」
ブランディングの強化
自社に関するストーリーの発信や企業イメージ向上なども、コモディティ化を脱却するためのポイントです。
iPhoneなどを展開するApple社は、ブランディングに成功している企業のひとつだといえます。スマートフォンが持つ機能そのものは、競合であるAndroidと大差はありませんが「Apple社の製品を使いたい」と思わせるブランド力を有しているのが特徴です。
コモディティ化を脱却した事例
ここでは、さまざまな戦略によってコモディティ化からの脱却に成功した企業を紹介します。
| 会社名 | 製品 | コモディティ化脱却のポイント |
| バルミューダ | 家電製品など | 高級かつ洗練されたデザイン力 |
| ダイソン | 家電製品 | 常識を打ち破る製品開発力 |
| Apple | スマートフォンなどのデバイス | 突出したブランディング力 |
| 湖池屋 | 菓子(ポテトチップスなど) | プレミアム商品路線の拡大 |
自社の強み・弱みはもちろん、市場状況および消費者のニーズを分析すれば、上記企業のようにコモディティ化からの脱却に成功する糸口を掴めるはずです。
まとめ
自社の競争力を高めるためには下記の様な分析を行い、市場と自社の関係性を把握することが重要です。
- STP分析
- SWOT分析
- バリューチェーン分析
一方で、常日頃から自社のコストを見直し、一時的なコモディティ化にも耐えうる強靭な経営体質を目指すことも重要です。正しい経営判断を行うためにも、精緻なバックオフィス体制の構築がポイントになります。バックオフィスシステムの導入にお悩みの方は、低コストで柔軟な導入が可能なマネーフォワード クラウドERPをぜひご検討ください。
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