• 更新日 : 2024年7月12日

プロジェクト管理とは?代表的な手法や流れを詳しく解説

プロジェクトを効率的に進めるためには「プロジェクト管理」を適切に行う必要があります。
プロジェクト管理は、スケジュール管理やコスト・品質の管理、人材の確保などやるべきことが非常に多く、進め方もさまざまです。プロジェクト管理を行う際には、まず代表的な手法や基本的な流れについて理解しておく必要があります。

本記事では、プロジェクト管理の代表的な手法や流れ、留意点、ツールなどについて詳しく解説します。

プロジェクト管理とは

プロジェクト管理とは、人やお金、モノ、スケジュールなどを適切にコントロールすることによってプロジェクトを計画通りに進めるための活動を指します。
プロジェクトごとに納期や予算などの要件が決まっているため、最小限のコスト・時間でプロジェクトを進行することが求められます。

プロジェクト管理に必要な基礎知識を身に付けるためには、プロジェクト管理に必要な知識やノウハウをまとめた「PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)」を一読するとよいでしょう。
PMBOKは、米国の非営利団体であるPMI(Project Management Institute)によって策定されました。PMBOKを読むことで、プロジェクトマネジメントに必要なプロセスや知識、ポイントなどを体系的に学ぶことができます。

プロジェクト管理の目的

プロジェクト管理の主な目的は、プロジェクト達成による利益を最大化することです。

プロジェクトを遂行する際には、決められた予算内でプロジェクトを達成するだけでなく、利益を最大化するためにムダをなくすことも求められています。

プロジェクト管理を行う際には、経費だけではなく、人員や工程のムダも削減する取り組みが重要です。

プロジェクト管理を行わないことで発生しうるリスク

プロジェクト管理を適切に行わなかった場合、以下のようなリスクにつながる可能性があります。

  • 作業に時間がかかりすぎてしまい、決められた納期に間に合わない
  • ムダな費用が発生して予算をオーバーしてしまう
  • クライアントから求められている品質を満たせない

    上記のような事態に陥ると、クライアントからの信頼を失って取引がなくなったり、コストをかけすぎて赤字になったりする可能性が高くなります。
    プロジェクトの失敗を未然に防ぐためにも、プロジェクト管理は非常に重要だといえるでしょう。

    PMBOKとは

    PMBOKは、プロジェクト管理における基本的なルールとベストプラクティスをまとめた指針です。
    プロジェクトマネージャーや専門家たちによって、プロジェクトを成功に導くための標準的な枠組みが提供されています。

    このガイドでは、プロジェクトマネジメントの起動(開始)、計画、実行、監視と制御、終結という5つの主要な手順と、10項目の主要な管理要素(例えば、予算や時間、品質、チーム、コミュニケーション、リスク対策など)について示されています。

    例えば5つの手順のうち、プロジェクトの計画や監視においては、進捗をリアルタイムに把握し、問題発生時に迅速に対処することが大切です。正確な計画は品質を担保し、無駄な時間や資源の浪費を防ぎ、プロジェクトの効率を高めます。

    コミュニケーションの管理は、プロジェクトに関わる顧客やメンバーとのコミュニケーションをより効果的なものにします。顧客の期待値や要件が明確になることで、プロジェクトの品質向上につながるでしょう。

    人的資源管理は、適切な人員配置やスキル向上を通じて、チームのパフォーマンス向上を促進します。

    これらの要素をうまく組み合わせると、プロジェクトの全体像を把握することができるようになり、プロジェクト成功の助けになります。

    プロジェクト管理において管理すべき項目

    実際にプロジェクト管理を行う際には、さまざまな項目を管理する必要があります。この章では、プロジェクト管理で管理すべき代表的な項目を紹介します。

    コスト管理

    プロジェクトの予算や原価、予算と実績の動向などを管理していきます。
    また、プロジェクトの進捗や状況に応じて、余計なコストがかからないように、コスト調整することも重要です。

    要員管理

    プロジェクトに携わる要員の管理も重要な項目の一つです。まずは、プロジェクト達成に必要なスキル・知識を持った人材を確保し、適した業務を割り振っていきます。プロジェクト進行中も要員の負担や状況を定期的にチェックし、業務内容や業務量を調整するとよいでしょう。

    品質管理

    コスト・人件費を抑えてプロジェクトを進めたとしても、成果物の品質が低ければ意味がありません。プロジェクトの成果物の品質管理も徹底するようにしましょう。定めた品質目標を達成するために必要な計画も立てていきます。

    スケジュール管理

    プロジェクト全体の工数を見積もり、進捗状況を管理していきます。各タスクの関連性・必要な時間を把握した上でスケジュールを作成することが重要です。

    リスク管理

    プロジェクトを進行する際、予期せぬアクシデントやトラブルを避けては通れません。事前に想定されるリスクを洗い出し、対応策を検討するようにしましょう。

    プロジェクト管理の代表的な手法

    プロジェクトの成功には、目的や組織体制に適した管理手法の選定が欠かせません。近年では、柔軟性やスピードを重視した手法から、確実な計画性に基づく手法まで多様化が進んでいます。それぞれの特性を理解することで、状況に応じた最適な運用が可能となりますので紹介します。

    ウォーターフォール

    ウォーターフォールモデルは、工程を段階的に進めていく構造が特徴です。開始から終結までを一方向に進めていく設計となっており、各段階は完了してから次に進むという流れが基本となります。初期段階で要件を明確に定義し、それに基づいた詳細な計画を立ててプロジェクトを遂行する形式です。

    ウォーターフォールは、要件が明確に定まっており、途中での変更が想定されにくいプロジェクトに向いています。例えば、公共事業や基幹システムの構築など、確実な計画遂行が求められるケースで有効です。進捗の予測がしやすいため、外部委託や契約ベースの開発にも適しています。

    アジャイル

    アジャイルは、変化への対応力とチーム内の協働を重視した手法です。小さな単位で作業を繰り返す反復的な開発スタイルを採用しており、進捗の柔軟な見直しが可能です。プロジェクトの途中で仕様が変化するケースでも、影響を最小限に抑えながら対応できます。

    アジャイルは、変化が頻繁に発生するような不確実性の高いプロジェクトに適しています。サービス開発やスタートアップ領域では、顧客の反応に応じて仕様を柔軟に変更できることが強みとなります。短期間で成果を出しながら、段階的に改善を進めていきたい場合に効果を発揮します。

    スクラム

    スクラムは、短期間の作業サイクルを繰り返すことで成果を積み重ねていくプロジェクト管理手法です。スプリントと呼ばれる短期目標の設定と検証を繰り返す構造になっており、迅速なフィードバックと継続的な改善が可能です。プロダクトオーナーやスクラムマスターといった役割分担を明確にし、日次で進捗を確認するミーティングを通じてチームの一体感を維持します。

    スクラムは、仕様の変動や顧客からのフィードバックを迅速に取り入れる必要があるプロジェクトに適しています。特に、ソフトウェアやアプリの開発など、チームで密に連携しながら価値を生み出していく領域で活用されています。短期目標でチームを動かしたい場面に向いています。

    カンバン

    カンバンは、作業の可視化と進行中のタスク制限を通じて生産性の最大化を目指す手法です。タスクをボード上で管理することで、進捗状況が一目で把握できるようになります。また、同時に進める作業量を制限することで、過剰な負荷を回避し、停滞の発生源を把握しやすくなります。

    カンバンは、作業のボトルネックやチームの負荷分散に課題があるプロジェクトに向いています。複数のタスクが並行して進む状況や、業務フローの改善が必要な場合に有効です。既存のプロセスを大きく変えずに可視化を通じた改善を図りたいときにも活用されています。

    CCPM(Critical Chain Project Management)

    CCPMは、スケジュールの最適化とリソースの有効活用に焦点を当てたプロジェクト管理手法です。タスク同士の依存関係やリソースの競合を加味して、最短かつ実現可能な工程を策定します。予期せぬ遅延に備えたバッファの設定により、全体スケジュールの安定性が高まります。タスクを並列ではなく連続的に処理することで、業務負荷の集中を防ぎながら効率を維持できます。

    CCPMは、納期に対するプレッシャーが強く、リソースの制約が大きいプロジェクトに適しています。複数のタスクが並行し、どの作業も重要となるような工程では、バッファの管理によってスケジュールの安定性を高められます。人員や設備の限界を意識した運用に強みがあります。

    WBS(Work Breakdown Structure)

    WBSは、プロジェクト全体を小さな単位に分解し、それぞれの作業を管理しやすくするための構造です。上位目標を段階的に分割していくことで、全体の見通しが明確になり、担当範囲や責任の所在が把握しやすくなります。タスクの抜け漏れを防ぐための設計にも適しており、初期計画段階で活用されることが多くあります。進捗や成果物の確認を行う際の基盤としても有効です。

    WBSは、業務の全体像が複雑で、抜け漏れが発生しやすいプロジェクトに向いています。各タスクの担当範囲や成果物を明確に定義し、段階的に管理したい場面に有効です。新規事業や大型開発など、多数の工程を一つずつ丁寧に進める必要がある場合に重宝されます。

    PERT(Program Evaluation and Review Technique)

    PERTは、プロジェクト全体の所要時間を予測する際に用いられる分析手法です。タスク同士の依存関係をネットワーク図で表現し、全体の流れと主要な経路(クリティカルパス)を把握します。各タスクには複数の時間見積もりを行い、不確実性の影響を反映させる仕組みが組み込まれています。

    PERTは、完了までの期間が読みづらく、リスクの影響が不確実なプロジェクトに向いています。研究開発や試作段階の業務など、所要時間にばらつきがある場合に適しており、最短で成果を出すためのスケジューリングが求められる場面で活用されます。

    PPM(Project Portfolio Management)

    PPMは、複数のプロジェクトを俯瞰的に管理するための手法です。個別のプロジェクト単位ではなく、ポートフォリオという集合体としての観点から評価・選別を行います。経営戦略と整合性のある案件を優先的に進めることで、組織全体としての資源配分の最適化が実現します。進行中のプロジェクトの効果測定や、実行の中止・再編などの判断材料にもなります。

    PPMは、複数のプロジェクトを同時に管理する必要がある組織や、限られたリソースで最も効果的な成果を上げたい場合に適しています。全体最適を重視した経営判断を必要とする環境において、投資効果の最大化やリスクの分散が図れます。

    P2M(Project & Program Management)

    P2Mは、日本発のプロジェクト管理モデルで、プロジェクトとプログラムの両方に対応する統合的なアプローチです。個別のプロジェクトだけでなく、相互に関連する複数の案件をまとめて管理することにより、組織全体の価値創出を目指します。長期的な視点を持ちながら、成果の最大化に取り組む点が特徴です。

    P2Mは、複数のプロジェクトが連携しながら進むような広範な取り組みに適しています。企業の中期戦略や官民連携プロジェクトなど、組織横断的な目標達成を目指すケースで力を発揮します。価値創出に重きを置く場面で有効です。

    プロジェクト管理の流れ

    プロジェクト管理の流れはプロジェクトの内容・規模などによって微妙に異なりますが、基本的な流れは同じです。この章では、プロジェクト管理の基本的な流れについて解説します。

    ステップ1:プロジェクトの目標を明確化する

    はじめに、プロジェクトの目標を明確にしましょう。プロジェクトの目標が明確になれば、タスクの優先順位や予算なども明確になります。一般的には品質・コスト・納期の3点において目標を立てるケースが多いでしょう。

    ステップ2:タスクを整理して優先順位を付ける

    次に、プロジェクトのタスクを整理し、優先順位を付けていきましょう。タスクを整理するときには、担当者や各タスクの期限なども具体的に決めておきます。その際には、メンバーの適性や希望などを考慮した上で、適切なボリュームのタスクを割り振るのが理想です。各メンバーのタスクが決まったら、実際にプロジェクトの実行へと移っていきます。

    ステップ3:進捗をチェックして必要に応じて軌道修正する

    プロジェクトが始まったら、進捗をこまめにチェックし、必要に応じて軌道修正しましょう。各タスクの期限と実際の進捗状況を比較し、ズレが生じていたら修正していきます。

    なお、プロジェクト管理を円滑に行うために「プロジェクト管理ツール」を活用することもおすすめです。WBSなど、プロジェクト管理に必要なさまざまな機能が提供されており、プロジェクト管理の精度を高められます。

    プロジェクト管理の留意点

    プロジェクト管理を効果的なものにするためには、さまざまな要素をバランスよく取り入れる必要があります。以下では、プロジェクトマネージャーが留意すべき主要なポイントを解説します。

    プロジェクトの範囲の明確化

    プロジェクトの成功は、明確なスコープ定義から始まります。プロジェクトの目的と範囲を定義し、顧客を中心とした関係者との合意を形成します。スコープの変更が生じた場合には、変更の影響を検討し、調整を行う柔軟性が求められます。スコープを適切に管理することは、プロジェクトの進捗や成果物の品質向上につながります。

    リスクへの対応

    リスクはプロジェクトの不確実性から生じますが、これを見極め、効果的に対処することが重要です。プロジェクト開始時にリスクを洗い出しておき、発生した場合には即座に対応策を実施しましょう。リスクを常にモニタリングし、関係者とのコミュニケーションを通じてリスクに対する意識を高めることで、プロジェクトの持続可能性を高められます。

    またリスク管理ができていないと、バグや仕様変更などが頻繁に発生することになり、プロジェクトのスケジュール遅延や損益の悪化などにつながります。

    効果的なスケジュール管理

    スケジュールの管理では、多くのタスクの依存関係を可視化し、リスクヘッジも含めた現実的なスケジュールを策定します。マイルストーンを設定し、日次・週次・月次など、定期的に緻密な進捗管理を行うことで、遅延を食い止めてプロジェクトをスムーズに進めます。スケジュールに変更が生じた場合には、関係者を集めてプロジェクト全体への影響などを確認し、適切なプロセスで変更・管理を行います。

    予算管理の徹底

    予算管理は、プロジェクトの成否に直結する重要な要素です。プロジェクトの予算を透明かつ効果的に管理するためには、予測と実績のチェックを定期的に行いましょう。予算内で効率的なプロジェクト進行を実現し、無駄を省いて利益を確保することで、プロジェクトを成功に導くことができます。

    コミュニケーションの重要性

    プロジェクトの成否は、各所とのコミュニケーションに大きく依存するといえます。予期せぬ問題が発生した際などは、プロジェクトメンバーや顧客との密なコミュニケーションを行います。そして問題を迅速に処理した上で、フィードバックを受けましょう。フィードバックを反映することで、プロジェクトを前進させ、関係者間の信頼関係を築くことができます。
    そうすれば、プロジェクト全体をよい方向へ改善していくことができるでしょう。

    プロジェクト管理をサポートするツールの活用

    品質やコスト、人員、スケジュールなど多くの要素を効率的に管理するには、ソフトウェアやツールの活用がおすすめです。ツールの導入はプロジェクト成功へのカギとなり、柔軟で効果的なプロジェクト運営の実現につながります。

    プロジェクト管理ソフトウェア

    プロジェクト全体を一元管理するためのプロジェクト管理ソフトウェアは、タスクやスケジュール、リソースの割り当てなど、プロジェクト全体を可視化し、チームメンバーとのリアルタイムなコラボレーションを可能にします。これにより、タスク管理やマイルストーンの追跡、ドキュメント管理などを効率的に行えます。プロジェクト管理ソフトウェアを利用すると、プロジェクトの進捗をチーム全体が把握しやすくなります。そのため課題や優先事項をチームで共有でき、誤解やミスなどのリスク低減が期待できます。

    結果として、プロジェクトマネージャーはプロジェクトの全体像の把握に注力でき、迅速な意思決定が可能となるのです。

    コラボレーションツール

    SlackやMicrosoft Teamsなどのコラボレーションツールは、チームメンバー間のリアルタイムな情報共有やファイル共有、関係のある話題や問題について、メッセージやコメントをスレッド化することが可能です。

    コラボレーションツールを導入すると、リモートワークや異なる拠点にいるチームメンバーともコミュニケーションを取りやすくなり、プロジェクトの円滑な運営につながります。

    レポーティングツール

    プロジェクトの成果や課題に関するデータを分析するためのレポーティングツールは、プロジェクト管理において価値のある存在です。カスタムレポートやダッシュボードを活用することで、プロジェクトの状況や成果を可視化し、顧客などのステークホルダーに対して分かりやすく報告することができます。

    ERPの活用

    ERPシステムは、企業全体のデータを一元管理し、プロジェクト情報と統合することで、プロジェクトの効率的かつ網羅的な管理を可能にします。特に、ヒト・モノ・カネなどのリソースや予算・売上などの財務情報など、複数のシステムに散在するデータをBIツールで抽出し分析・レポーティングできるため、データを活用したプロジェクトの立案や効率的な管理に役立ちます。

    また、ERPにはプロジェクト管理型ERPと呼ばれるものがあります。これはプロジェクト管理型ビジネスを行う企業に適しています。プロジェクト管理型ビジネスとは、クライアントから受注した各プロジェクト単位で人や資金を確保して、その予算と実績を管理するビジネス形態です。

    こういったプロジェクトには、ERPをプロジェクト管理ツールとして検討してみるのもよいでしょう。

    まとめ

    今回は、プロジェクト管理の代表的な手法や流れについて解説しました。プロジェクト管理を行うことで、コストのムダを削減することができ、利益を最大化することが可能です。まずは、プロジェクトの目標を明確にし、タスクの優先順位や担当者などを決めていきましょう。

    プロジェクト管理を実施する手法には「ウォーターフォール」「アジャイル」「スクラム」などさまざまなものがあります。さらに、プロジェクト管理ソフトウェアやコラボレーションツール、ERPなどの各種ツールを組み合わせることで、リアルタイムでの情報共有や進捗管理ができるようになり、効果的なプロジェクト推進を実現できます。

    柔軟で適切なツールの導入は、プロジェクト成功に向けたカギとなります。ぜひ導入を検討してみてください。


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