- 更新日 : 2025年12月11日
雑収入とは?雑所得や事業所得との違い、仕訳例、確定申告の注意点をわかりやすく解説
雑収入は、個人・法人を問わず、会計処理でよく使う勘定科目です。しかし、確定申告で用いる雑所得と名前が似ているため、混同されやすい側面があります。
この記事では、雑収入の具体例や他の所得との違い、仕訳・会計処理、確定申告の注意点などを詳しく解説します。
目次
雑収入とは?
雑収入とは、企業の主たる営業活動(本業)以外で発生する、臨時的または偶発的な収入を処理するための会計上の勘定科目です。
個人でも法人でも、経営状態の把握などのために本業の収入とそれ以外の収入は分けて管理します。雑収入は、本業以外の収入を管理する科目の一つです。
具体的には、雑収入は会計上「営業外収益」に属します。本業以外の収益のうち、他のどの勘定科目(例:受取利息、有価証券売却益など)にも分類できないものや、金額的に重要でないため独立した科目で管理するほどではない収入を計上する際に使われます。
どのような収入を雑収入として処理するかは、業種や会社によって異なります。法人の場合は、法人税申告書の勘定科目内訳明細書に雑収入の内訳を記入する必要があるため、仕訳の際は補助科目や摘要を活用することが望ましいです。
雑収入の具体例
雑収入として計上される具体例には、作業くずの売却益、補助金・助成金、自動販売機の設置手数料などがあります。これらは、本業の売上や他の営業外収益の勘定科目に該当しない、重要度の低い収益です。
雑収入に何を含めるかは、会社の業種やその取引の重要性によって異なります。
- 本業との関連性
上記の例でも、それが本業の収入にあたる場合は「売上高」として区分します。例えば、不動産運用が本業の場合の家賃収入は、雑収入ではなく売上高です。 - 金額的な重要性
本業以外の収入であっても、総収入に占める割合が大きいなど重要性が高い場合は、雑収入とせず「固定資産売却益」や「不動産賃貸収入」といった独立した勘定科目で表示しなければなりません。
雑収入と雑所得の違いは?
雑収入と雑所得は、会計上の「勘定科目」か、税法上の「所得区分」かという点で明確に異なります。
- 雑収入:会計上の勘定科目
- 雑所得:税法上(所得税)の所得区分の一つ
個人の場合、1年間に得た収入を税金の計算のために以下の10の区分に分けます。
| 所得区分 | 収入の内容 |
|---|---|
| 利子所得 | 預貯金や公社債などの利子(利息) |
| 配当所得 | 株式、投資信託などの配当 |
| 不動産所得 | 土地・建物などの貸付けによる収入 |
| 事業所得 | 農業や小売業、製造業などの収入 |
| 給与所得 | 勤務先からの給料や賞与 |
| 退職所得 | 勤務先からの退職金など |
| 山林所得 | 山林を伐採し売却した際の収入 |
| 譲渡所得 | 土地・建物、株式などの売却をした時 |
| 一時所得 | 懸賞や福引の賞金、競馬の馬券の払戻金など一時的な収入 |
| 雑所得 | 上記のいずれにも該当しない収入 |
この表の通り、雑所得は他の9つの所得に該当しない収入のみが該当します。
雑所得については以下の記事で詳しく解説しています。
雑収入と事業所得の違いは?
雑収入は、個人事業主における「事業所得」の収入の一部として扱われます。
会計上(帳簿上)で、事業に関連する収入を区別するために使われます。
- 売上高:本業の収入
- 雑収入:本業に付随する収入
例えば製造業の場合、製造した製品自体の売却収入は「売上高」ですが、製造過程で出た作業くずの売却収入は「雑収入」となります。
なお、青色申告決算書の損益計算書上では、この売上高と雑収入はまとめて「売上(収入)金額」として表示されます。
事業所得については以下の記事で詳しく解説しています。
雑収入はいくらまで計上できる?
会計上、雑収入として計上する金額に上限はありません。
ただし、会計には「重要性の原則」というルールがあります。これは、重要性が低い項目は「雑収入」としてまとめて処理しても良いが、重要性が高い項目は独立して正確に表示しなければならないというルールです。
したがって、最初は少額だった収入(例:自動販売機手数料)が事業の拡大によって年間数百万円になるなど、金額的に重要性が増した場合は、「雑収入」から独立させ、「受取手数料」などの独立した勘定科目で管理するのが適切です。
雑収入の仕訳・会計処理は?
雑収入が発生した場合、仕訳例のように帳簿付けを行います。雑収入は「収益」の勘定科目であるため、貸方(右側)に計上します。
雑収入は法人・個人事業主(事業所得の場合)ともに帳簿付けが必要です。
例:製造過程で出た作業くずを、10万円で売却し現金で受け取った。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 100,000円 | 雑収入 | 100,000円 |
例:事業用の普通預金に、持続化給付金100万円が振り込まれた。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,000,000円 | 雑収入 | 1,000,000円 |
雑収入の税法上の取扱いは?
消費税の課税事業者である場合、雑収入が課税対象かどうかを判断する必要があります。基準は、その取引に対価があるかどうかです。
雑収入は基本的に消費税の課税対象
雑収入は、基本的に消費税の課税対象となります。
例えば、作業くずの売却は、作業くず(財産)を提供して代金(対価)を得ているため、消費税の課税対象となります。
課税対象外となる雑収入も
雑収入であっても、対価性のないものや、消費税の性質上なじまないものは課税対象外となります。これには「不課税」と「非課税」があります。
- 不課税取引
対価性のないものは、消費税の課税対象外(不課税)です。例えば、持続化給付金や補助金の場合、国などから給付金を受け取りますが、それに対して国に財産や労力を提供しているわけではないため、不課税取引となります。損害賠償金や保険金なども対価性がないため不課税です。 - 非課税取引
消費税法上、社会政策的な配慮などから非課税と定められている取引もあります。雑収入として計上される可能性があるものとしては、土地の売却益、有価証券の売却益、受取利息などが該当します(ただし、これらは金額が大きければ独立した勘定科目で処理されます)。
このように、雑収入には消費税の課税対象・不課税・非課税となる取引が混在するため注意が必要です。
個人事業主の確定申告における雑収入の注意点は?
個人事業主が「雑収入」を「雑所得」と間違えて処理すると、確定申告で税額計算に不利になる可能性があります。会計上の「雑収入」と税法上の「雑所得」は異なるものだからです。
雑所得は青色申告の対象外
最大の注意点は、雑所得は青色申告の対象外であることです。
事業所得の一部である「雑収入」は青色申告の対象ですが、「雑所得」として申告すると青色申告のさまざまな特典が受けられず、損をする可能性があります。
青色申告特別控除が受けられない
雑所得で申告すると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられません。
この控除は青色申告の特典の中で最も大きいものの一つです。雑収入(事業所得)であればこの控除を受けられますが、雑所得では受けられないため、損をすることがあります。
雑収入より所得税が上がる場合も
雑所得では青色申告特別控除が受けられないため、雑収入を雑所得で処理すると、所得税が上がるケースもあります。
例:本業の収入50万円、本業に付随する収入15万円、青色申告特別控除65万円の場合
- 雑収入で処理した場合
事業所得金額=本業の収入50万円+雑収入15万円-青色申告特別控除65万円= 0円 - 雑所得で処理した場合
事業所得金額=本業の収入50万円-青色申告特別控除65万円=0円
雑所得金額= 15万円
合計所得金額15万円
この例では、雑収入で処理した場合は所得金額が0円なので所得税はかかりませんが、雑所得で処理した場合は所得金額が15万円残るため、所得税がかかります。
雑収入を理解し、所得金額や税金を正しく計算しよう
雑収入とは、本業に付随する収入のことです。
特に個人の場合、雑収入は事業所得に該当するため帳簿付けが必要であり 、もし「雑所得」と間違えて処理すると、受けられる控除が適用できず、税額が違ってくるケースが多くあります。
雑収入の内容や正しい処理方法を理解し、所得金額や税額を正確に計算することが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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