- 更新日 : 2024年8月8日
営業外損益とは?営業損益や特別損失との違いを解説
損益計算書で見る「営業損益の部」「営業外損益の部」「特別損益の部」の項目。この3つの項目の特徴とそれぞれの違いを正確に理解できると、経営への貢献度の高い経理担当者になれるかもしれません。この記事では、営業外損益の特徴と営業損益や特別損失との違いを紹介していきます。
目次
営業外損益とは
営業外損益とは法人の本業以外の活動で生じた収益と費用の差です。また、特定の期にだけ生じる一時的なものではなく、経常的に生じる性質のものであることも条件とされています。
本業とは法人の定款で「目的」として定めている事業を指します。例えば飲食店の場合、店で客に料理に提供することが目的ですから、料理の材料費や、店のテナント料、人件費、広告費などの費用、お店の売り上げによる収益は本業によるものです。一方、店で客に料理に提供すること以外で生じる収益や費用は、本業以外によるものといえます。
営業外損益は決算書の損益計算書(P/L)で知ることができます。損益計算書の経常損益のうち、営業損益の次に表示されます。下の図では赤い線で囲んでいます。営業外損益の金額は営業外収益から営業外費用を差し引くことで算出します。
営業外損益と営業損益の違い
営業損益とは本業の活動により生じた、収益と費用の差です。「本業による儲け(ないしは損)」と言い換えると理解しやすいかもしれません。具体的には売上高から売上原価と販売費、および一般管理費を差し引いて算出します。
営業外損益と営業損益の違いは「本業の活動によるものか、本業以外の活動によるものか」という点です。一方、経常的という点では、営業外損益と営業損益は同じ性質を持ちます。
営業損益と営業外損益を足すと経常利益を算出できます。経常利益は「その法人の正常な収益力」を表す指標なので、通常の期には発生しないような収益や費用は含まれません。
営業外損益と特別損失の違い
特別損失とは例外的または異常な事象により生じた、多額の損失や費用です。「特損」と略して呼ばれることもあります。営業外損益は法人の本業以外の経常的な損益であることに対し、特別損失は法人の本業や経常的な活動とは関係のない臨時的な損失という点に違いがあります。
与信への影響は、営業外損益より特別損失の方が少ない傾向にあります。特別損失はある特定の期だけの臨時的な損失ですが、営業外損益は他の期にも経常的に生じる性質があるためです。
同様に特別利益で大きな額を計上したとしても、「その法人の正常な収益力」としての評価にはつながらず、与信にプラスに働くことはあまり無いでしょう。
特別利益とは?
特別利益には次のような利益や収入が計上されます。
- 固定資産の売却益
- 売買目的ではなく長期保有している株式や証券の売却により得た利益
- 大規模な自然災害など異常な事象に関連した、補助金や助成金による収入
- 前期以前の決算の間違いを修正するための前期損益修正益
などが例としてあげられます。いずれも臨時的な利益や収入といえます。
ただし、一律の基準があるわけではありません。法人ごと事案ごとに臨時性や多額であるかどうかを勘案し、特別利益とするかどうかを判断する必要があります。
特別損失とは?
特別損失には次のような損失や費用が計上されます。
- 固定資産の売却損
- 長期保有している株式や証券の売却により生じた損失
- 火災や自然災害、盗難により生じた損失
- 情報漏えい対応費用や損害賠償対応費用
- 休業による損失、リストラ費用
- 前期以前の決算の間違いを修正するための前期損益修正損
などが例として挙げられます。いずれも臨時的な損失や費用といえます。
特別利益と同様、一律の基準は無いため、法人ごと事案ごとに特別利益とするかどうかを判断する必要があります。
営業外損益と営業外費用の関係
営業外損益は営業外収益から営業外費用を差し引くことで算出できます。営業外費用が大きくなれば営業外損益にマイナスに働き、経常利益にもマイナスに働きます。すなわち「法人の正常な収益力」の評価にマイナスに働くということです。
営業外費用とは?
法人の本業以外の活動によって経常的に生じる費用を指します。借入による利息の支払い、売掛金の早期回収による割引、振込手数料、為替レートによる損失、有価証券の売買で生じた損失、保有している株式の評価額が低下した時の損失などがあげられます。また、会社設立の準備費用や会社設立から営業開始までの準備費用も営業外費用です。
営業外費用の勘定科目例
「支払利息」「売上割引」「支払手数料」「有価証券売却損」「有価証券評価損」「為替差損」「創立費」「開業費」「雑損」などの勘定科目があげられます。ただし、営業外費用の勘定科目は業種によって異なります。
例えば、証券会社であれば「有価証券売却損」は本業の活動による費用になるでしょう。法人ごとに事業の内容と照らし合わせて、営業外費用とするかどうかを判断する必要があります。
また、上場している場合は、財務諸表規則第90条および93条により営業外費用の総額の10%超の勘定科目については、別掲が必要とされています。借入額が多額になっている場合、支払利息の別掲が必要になり、借入が目立ってしまうということが起きることもあります。
営業外損益と営業外収益の関係
営業外収益が大きくなれば営業外損益にはプラスに働き、経常利益にもプラスに働きます。すなわち「その法人の正常な収益力」の評価にプラスに働くということです。
営業外収益とは?
法人の本業以外の活動によって経常的に生じる収益です。金融機関への預金による利息や株式の配当金、有価証券の売買で生じた利益、保有している株式の評価額が上昇したときの利益、為替レートによる利益、買掛金の早期支払いによる割引などがあげられます。また、補助金や助成金、法人税の還付などによる収入も営業外収益に計上できます。
グローバルに展開している会社が当期の営業利益はマイナスであったものの、為替レートによる差益で多額の営業外収益があがり、経常利益がプラスに転じたという事例も過去にありました。
営業外収益の勘定科目例
「受取利息」「受取配当金」「有価証券売却益」「有価証券評価益」「為替差益」「仕入れ割引」「雑収入」などの科目があげられます。やはり営業外費用と同様に、法人ごとに事業の内容と照らし合わせて、営業外収益とするかどうかを判断する必要があります。
また、上場している場合は、営業外費用と同様に、営業外費用の総額の10%超の勘定科目については別掲が必要です。
正しい仕訳で信用力の向上を
この記事では、営業外損益の特徴と営業損益や特別損益との違いを紹介しました。営業外損益は経常利益に直結しているため、金融機関の与信や株主からの評価にも影響します。また、一律の基準があるわけではなく法人が判断して1つずつ計上していくものです。
今一度、営業外損益や特別損益の内容を見直してみてはいかがでしょうか。売上高や経常利益に計上できるものがあるかもしれません。ぜひ正しい仕訳で信用力を向上させて経営に貢献していきましょう。
よくある質問
営業外損益とは?
本業以外で生じる経常的な損益。詳しくはこちらをご覧ください。
営業外損益と営業損益の違いは?
営業外損益は本業以外、営業損益は本業の損益。詳しくはこちらをご覧ください。
営業外損益と特別損失の違いは?
営業外損益は経常的、特別損失は一次的。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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