- 更新日 : 2025年4月23日
損金とは?法人税の計算に欠かせない損金算入・不算入を解説
企業が営業活動を行う際には、広告費や光熱費といった「費用・経費」が必ず発生します。会計上の「費用・経費」のことを法人税法上は「損金」と呼びますが、会計上の「費用・経費」と法人税法上の「損金」の金額は必ずしも一致しません。「費用・経費」に対する認識のズレからくるこの差額については税務申告で調整が必要となります。ここでは、「費用・経費」と「損金」の違い、また、これらの間に生じる差額をどう処理するのかをお話しします。
目次
損金とは?税金との関係
法人税の計算で登場する「損金」とは、その名の通り「損をして失った金銭」のことを指します。「会社の支出」であるという意味では「費用」と同じですが、「経費として認められるか?」という点で両者には決定的な違いがあります。
そのため会計では「費用」として計上した支出が、税務申告の段階で「損金」として認められず課税される…といったことが起こりえます。
「損金」の仕組みを正しく理解することのメリットとして、決算直前の税額を予測する段階で大きく読み間違えるといった事態を回避できることが挙げられます。
損金と費用・経費の違い
会計上の「利益」を計算する際は「収益」から「費用」を差し引いて求めます。一方、法人税の計算では「利益」を「課税所得」、「収益」を「益金」、「費用」を「損金」に置き換えて計算します。
- 会計では 「利益」=「収益」-「費用」
- 法人税では 「課税所得」=「益金」-「損金」
「費用」と「損金」はいずれも「会社の支出」「利益(所得)のマイナス項目」であるという点では同じですが、会計と税法では見方が異なります。
会計上の「費用」は簿記や企業会計原則のルールに従ってさえいれば全額認められます。これに対して、税法上の「損金」はその内容によって一部あるいは全額が認められない場合があるのです。
「会計上の利益は0円だったのに法人税を納めなければならないのはなぜ?」といったケースが起こりうるのは、税金の計算をする際に、一部の支出が「損金」として認められず「なかったもの」として会計上の利益が再計算されるためです。
損金経理について 損金算入・不算入とは?
会社の支出を会計で「費用」として処理することを税法では「損金経理」と呼びます。
「減価償却費」や「引当金の繰入れ」といったような特殊な費用を「損金」とするためには、この「損金経理」が条件とされることがあります。この場合会社が支出した全てを損金として処理できるわけではなく、法人税法で損金にできる「項目」とその「限度額」が設定されているのです。
損金算入と損金不算入
「損金算入」とは、会計上「費用」としていないのに、税務上は「損金」扱いになることを指し、「損金不算入」は逆に会計上「費用」であっても、税務上は「損金」扱いにならないことを指します。
- 会計で「費用としていない」ものを税法で「損金」とする → 損金算入
- 会計で「費用とした」ものを税法で「損金」としない → 損金不算入
損金算入となる勘定科目の例
以下は、基本的に損金算入が認められる勘定科目の例です。
| 損金算入の対象となる主な勘定科目 |
|---|
| 【会計処理に共通して損金算入が認められる費用】 【その他】
|
法人税や法人住民税などは損金算入が認められていませんが、法人事業税は損金算入が認められます。ただし、損金算入の時期は申告書を提出した事業年度になるため、未払金として会計処理を行っている場合は、確定申告書上で損金算入の調整を行います。
損金不算入となる勘定科目の例
損金不算入となる主な勘定科目は、以下の通りです。
| 損金不算入となる主な勘定科目 |
|---|
【一部損金算入が認められる可能性のある勘定科目】
【税務上の限度額を超える部分の損金算入が認められない勘定科目】
|
全額が損金不算入となる業務外の交通違反の罰金、一部損金算入が認められない役員給与や交際費、税務上の限度額を超える部分の損金算入が認められない減価償却費などがあります。
損金算入が可能な租税公課について
事業を営む上では、法人税をはじめ固定資産税や事業税など、さまざまな税金を納める必要があります。それらの税金のなかでも、損金に算入されるものとされないものに大別されます。
- 固定資産税
- 利子税
- 地方税の延滞金(納期限延長によるもの)
- 不動産取得税
- 事業に使用するための自動車にかかる税金(自動車税、軽自動車税、自動車取得税、重量税など)
- 登録免許税
- 法人税額から控除されない所得税、外国法人税
- 印紙税(収入印紙)
- 事業税
- 事業所税
- 都市計画税
- 軽油引取税
- 酒税
- ゴルフ場利用税
損金算入が不可となっている租税公課
納める義務のある税金のなかでも、法人税や法人住民税などは、損金への算入が不可となっています。基本的には、所得に対して課税されるものについては、税額計算の定めにより、損金への算入ができません。また、過怠税や加算税、延滞税など、本来やるべきものに対して遅延なり、対応しなかったといった理由で課された税金については、損金算入はできません。
損金への算入が不可となっている主な租税公課については、以下となっています。
損金を正しく理解しよう
節税のためにと支出した費用でも、「損金不算入」の網に引っかかってしまっては、せっかくの支出も無駄になってしまいます。税金の計算は税理士さんにお任せという経営者の方も多いかと思いますが、支出する前にまずは相談してから実行することをおすすめします。
よくある質問
損金の意味とは?
その名の通り「損をして失った金銭」のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
損金算入とは?
会計上「費用」としていないのに、税務上は「損金」扱いになることを指し、代表的なものとしては「法人事業税」が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
損金不算入とは?
逆に、会計上「費用」であっても、税務上は「損金」扱いにならないことを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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