- 更新日 : 2026年3月19日
【図解】内部留保(社内留保)とは?見方や計算方法、高める方法を解説
内部留保とは、企業が生み出した純利益から配当金を差し引き、社内に蓄積した「利益剰余金」のことです。
- 現金だけでなく設備や土地などさまざまな資産を含む
- 日本企業の平均率は約55.3%で増加傾向にある
- 経営危機の備えや取引上の信用スコアとして重要
内部留保は会計上は利益ですが、その多くは既に設備投資などに回されており、必ずしも現金として手元に残っているわけではありません。
近年、企業の内部留保についてニュースで取り上げられることがあります。内部留保は企業が生み出した利益のうち社外流出せず社内に蓄えている利益であり、経営陣は将来に備えてこの内部留保を行いたい一方で、労働組合などからは、内部留保せずに人件費の賃上げが要求されるなど、内部留保に対する考え方は様々です。
内部留保とは「現金」のことではありません。 会計上の定義は「利益剰余金」であり、決算で出た利益のうち配当に回さなかった分を指しますが、その多くはすでに設備や土地、株式といった別の資産に形を変えています。そのため、内部留保が多いからといって、すぐに使える現金が手元にあるわけではないのです。
内部留保とはどのようなことを指し、どのように計算するのでしょうか。
この記事では内部留保の基本から、どのように内部留保を見るのか、その使い方などを解説していきます。
目次
内部留保(社内留保)とは?

内部留保(ないぶりゅうほ)とは、企業が生み出した利益(当期純利益)から、株主への配当金を差し引いた残りの部分を指します。「社内留保」とも呼ばれます。
この仕組みは「損益計算書(P/L)」と「貸借対照表(B/S)」の2つの側面から見るとスムーズに理解できます。
【内部留保の計算式】
一般的に、役員報酬などは費用としてすでに引かれていますが、配当金は税引後の利益から支払われます。その配当金の支払金額を差し引いて、最終的に会社の手元に残った利益が内部留保となります 。
注意点として内部留保の定義はさまざまな説があり、配当金などの社外流出する部分に役員賞与や役員退職金を含めるなどの説もあります。この記事では社外流出を株主への配当金のみとして解説していきます。
損益計算書(P/L)から見る内部留保
決算書の1つである損益計算書の観点から内部留保を説明します。
1年間の売り上げから経費や税金を差し引いて「当期純利益」を確定させます。そこからさらに「配当金」を差し引いた残りが、その年に新しく発生する内部留保です 。
貸借対照表(B/S)から見る内部留保

次は貸借対照表(B/S)の観点から内部留保を説明します。
毎年発生した内部留保は、貸借対照表の純資産の部にある「利益剰余金(りえきじょうよきん)」という項目へ移動し、積み上げられていきます 。
つまり、決算書の利益剰余金を見れば、創業から現在までに会社がどれだけ利益を蓄積してきたか(内部留保の累計額)がわかる仕組みになっています 。
【利益剰余金の増加】
※内部留保 = 当期純利益 – 配当金
なお、利益剰余金は下記でも解説しています。
個人の家計で例えると「貯金」だが少し違う
サラリーマンの家計に例えると、年間の手取り給与から生活費を払い、さらに家族への小遣い(配当)を渡した後に残った金額が内部留保にあたります 。 個人の場合、この残ったお金はそのまま銀行預金(現金)として貯金されることが一般的です 。しかし、企業会計においては、この「残った利益」が必ずしも現金として保存されるわけではありません。ここが個人と企業との違いです 。
日本企業の内部留保は多すぎる?
日本の企業における内部留保の現状は、通年であれば50%前後を推移し、不景気になると内部留保率が下がる傾向があります。
内部留保率の計算式と日本企業の平均目安
当期純利益のうち、どれくらいを将来のために留保したかを見る指標が「内部留保率」です 。
この数値が高いほど、企業が利益を配当に回さず社内に蓄積していることを示します 。
日本企業の平均的な内部留保率は、おおむね50%前後で推移しています 。
実際に、財務省が2024年に発表した法人企業統計調査によると内部留保率は55.3%となっています。
傾向として、大企業よりも中小企業の方が内部留保率は高くなります。これは中小企業には外部株主が少ないためです 。また、不景気で赤字になると内部留保を取り崩すため、この比率はマイナスになることもあります 。
参考:年次別法人企業統計調査(令和6年度)|財務総合政策研究所
財務総合政策研究所|財務省
なぜ日本企業の内部留保は多いと言われるのか
2012年度以降、日本企業の利益剰余金は9年連続で過去最高を更新するなど、増加傾向にあります 。 背景には、バブル崩壊やリーマンショックなどの強烈な経済危機の教訓があります。過去の経済危機の際には、資金繰りに行き詰まった多くの企業が倒産しました。
そのため日本企業は、金融機関に頼らず自前で生き残れる財務体質を目指し、借金を減らして自己資本(内部留保)を厚くする守りの経営へとシフトしてきました 。
内部留保を増やすメリットと経営上の重要性は?
内部留保は企業にとって利益を蓄えることを意味しており、安定した経営と企業の成長のためには重要と考えられています。
中でも特に内部留保が重要と言われる理由は以下の2つです。
1つは、万が一の時に備えるためです。
2020年の新型コロナウイルスの蔓延はコロナショックと言われ、世界経済に深刻な経済危機をもたらしました。経済が停滞すると消費は冷え込み、不景気となります。そして企業の収益力の低下を招き、結果として企業は必要な資金捻出のため貯金(内部留保)を切り崩すことになります。
貯金が無ければ金融機関からの融資を検討することになりますが、特に中小企業では融資を受けられない可能性もあります。万が一の経営危機に備えて内部留保を蓄積することが重要となります。
重要な理由のもう1つは、内部留保(利益剰余金)が信用スコアになることです。
これには日本の商慣行が影響しています。日本では支払いを数カ月先延ばしにする掛取引が主流です。掛取引が根強いのは、企業間の「信用」があるためです。
特に内部留保の累計額を意味する利益剰余金は、企業の信用スコアとして重要視される指標の1つです。つまり、企業の信用スコアを高めるためには内部留保の蓄積が重要というわけです。
内部留保を高めるには?
内部留保は、企業が生み出した利益(当期純利益)から、株主への配当金を差し引いた残りの部分を指します。つまり、当期純利益を大きくする、または配当金を減らすことで内部利益を高められるということになります。
当期純利益を大きくする
内部留保を高める方法の一つとして当期純利益を大きくすることが挙げられます。
当期純利益とは、企業の一会計期間の最終的な経営成績を表す利益です。この利益を大きくすれば、必然的に内部留保される利益も大きくなります。
では、当期純利益を大きくするためにはどのようにすればよいのでしょうか。
当期純利益を算出する過程には本業関連の損益や営業外の損益、さらに特別な要因による損益と税金があります。したがって、当期純利益を大きくするためには、本業の売上高を上げる、仕入原価の見直しをする、などさまざまな方法が考えられ、企業の業種や経営実態によってその方法は異なります。
配当金を減らす
企業が生み出した利益の社外流出の要因となる配当金を減らすことで内部留保を高めるという方法もあります。
配当金の支払いは、特に上場企業では不特定多数の株主がいるため非常に大きな金額になることが考えられます。しかし、内部留保を高めるためとはいえ、配当金を減らすのは簡単ではありません。それは、経営者の立場上の問題や株価の問題があるからです。
経営者は株主へ利益を還元しなければ解任されてしまう可能性があります。配当金を実施しないで内部留保する場合、内部留保の目的を株主へ十分に説明し、理解を得なければなりません。
また、配当金を支払わない場合、基本的にその企業の株の人気が下がり、株価下落につながる可能性が高いといえます。
株価の変動にはさまざまな要因が絡んでいるため、必ず下落するとは言えませんが、株価の下落につながりやすい行動は役員の立場からは選択しにくいと言えるでしょう。
補足として、上場企業とは対照的に中小企業では内部留保が高い傾向にあります。その理由としては、中小企業は不特定多数の株主がいないため、多額の配当金を支払わないためです。
配当金の支払いがない、もしくは配当金が少額の場合、当期純利益のほとんどが内部留保として利益剰余金になります。そのため、中小企業は上場企業に比して内部留保が高くなるのです。
なお、内部留保をしすぎると法人税が課税されることがあります。以下の内部留保課税に該当すると、法人税が課税されるため注意が必要です。
内部留保課税(留保金課税)とは?
内部留保課税とは、法人税法に基づく留保金課税(りゅうほきんかぜい)のことです。
留保金課税とは、一定の法人(特定同族会社)が多額の内部留保を溜め込んでいる場合に追加で法人税を課税するというものです。
課税対象となる「特定同族会社」の条件
この制度の対象となるのは、資本金が1億円を超える「特定同族会社」です 。 特定同族会社とは、簡単に言うと親族経営の会社です。要件などの各規定がありますが、法人の財産 = 親族の財産になる会社が該当します。
具体的に言えば、少数の株主グループが発行済株式の50%超を保有し、法人の意思決定を実質的に支配している会社になります。
オーナー社長などの個人株主が、所得税(累進課税であるため高い税率)を回避するために、あえて配当を出さずに会社に利益を溜め込む「租税回避」を防ぐことが目的です 。
資本金1億円以下の中小企業は、基本的にこの留保金課税の適用除外となります 。多くの中小企業経営者は過度な心配をする必要はありませんが、増資などで資本金が1億円を超える可能性がある場合は注意が必要です。
追加税額の計算方法と税率の段階
もし留保金課税の対象になった場合、控除額を超えた留保金額に対して、以下の特別税率が加算されます 。この税金は通常の法人税に上乗せして支払う必要があります。
| 課税留保金額の区分 | 特別税率 |
|---|---|
| 年3,000万円以下の部分 | 10% |
| 年3,000万円超~1億円以下の部分 | 15% |
| 年1億円超の部分 | 20% |
内部留保(社内留保)を正確に計算するために
内部留保は、当期純利益から配当金を差し引いた金額であり、貸借対照表の利益剰余金として蓄積されていきます。そのため、自社の内部留保の正確な金額を把握するためには、毎期の決算書をミスなく作成することが欠かせません。
決算数値の誤りは手入力が主な原因
株式会社マネーフォワードが実施した調査では、決算において確定前の数値に誤りや修正が発生する原因として最も多いのは手入力によるミス(入力漏れ、桁間違いなど)で、40.8%でした。また、2番目に多いのは組織変更や新規事業に伴う複雑な会計処理の増加で、28.3%となっています。
内部留保を正しく計算し、万が一の経営危機への備えや、取引上の信用スコアとして役立てるためには、日々の仕訳や決算時における手入力ミスをいかに防ぐかが重要です。手入力による業務負担を減らし、正確な決算業務を行うための体制づくりをぜひ検討してみてください。
出典:マネーフォワード クラウド、決算数値の誤りや修正が発生する主な原因【決算に関する調査データ】(回答者:数値の誤りや修正を経験している層635名、集計期間:2026年2月実施)
内部留保を正しく理解し、健全な財務体質へ
内部留保という用語は、損益計算書の観点、貸借対照表の観点、税金の観点で意味が少しずつ違ってきます。
厳密な使い分けが必要ない場面では、「内部留保=利益を蓄えること」で問題ありません。
また、「内部留保=現金・預金」と考えると混乱の原因になりますので注意が必要です。内部留保の元は当期純利益で、あくまでも「利益」だということを覚えておきましょう。
内部留保を理解するためにはまず、自社の貸借対照表(B/S)の「利益剰余金」と「現預金」のバランスを確認することから始めてみてください。
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よくある質問
内部留保とは?
当期純利益のうち配当金に回されない部分のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
内部留保はなぜ重要?
企業にとって利益を蓄えることを意味するためです。詳しくはこちらをご覧ください。
内部留保を高めるには?
計算式からいうと当期純利益を大きくする、または配当金を減らすことが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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