- 更新日 : 2024年8月8日
為替換算調整勘定とは?例から解説
為替換算調整勘定は為替差損益と似ているようで、実は違う勘定科目です。
この記事では、連結会計や外貨建会計基準の基本的な部分を中心に、為替換算調整勘定の基本的な内容や具体例、税効果について説明してきます。
為替換算調整勘定とは
為替換算調整勘定とは、連結財務諸表を作成する手続で発生する換算差額を調整する勘定科目です。連結財務諸表では、親会社の持分相当額が「為替換算調整勘定」として純資産の部に表示され、非支配株主の持分相当額は「非支配株主持分」に含めて表示されます。
為替換算調整勘定が発生するのは、在外子会社を連結する場合と在外関係会社に持分法を適用する場合があります。
この記事では、在外子会社を重点的に説明していきます。
また、形式的に為替換算調整勘定が発生する仕組みは後述しますが、為替換算調整勘定の実質的な意味合いとしては、親会社の持分の換算差額ということもできます。
為替差損益との違い
為替差損益と為替換算調整勘定を比較すると以下になります。
| 為替差損益 | 為替換算調整勘定 | |
|---|---|---|
| 発生 | 個別財務諸表 | 連結財務諸表 |
| 連結財務諸表 | ||
| 勘定科目 | 損益 | 純資産 |
| 損益の性質 | 実現 | 未実現 |
まず、為替差損益は外貨建取引を行ったときや外国通貨などを持っているときに発生する換算差額です。その換算差額は取引によって確定している、または運用の成績を表すため損益項目になります。
それに対して為替換算調整勘定は、連結手続によって生じる換算差額です。
具体的にいうと、為替換算調整勘定は、外貨建の取引や外国通貨などを持っているときに発生するものではないため、在外子会社の経営成績とは無関係な換算差額です。
したがって、為替換算調整勘定は損益項目ではなく純資産項目になります。
在外子会社の換算方法
まず、在外子会社の換算に使用する為替レートは以下の3つがあります。
| 為替レート | 意味 |
|---|---|
| 取得時・取引発生時(HR) | Historical Rate(ヒストリカルレート)の略 |
| 取引発生時や親会社との取引時のレートなどの過去のレート | |
| 期中平均(AR) | Average Rate(アベレージレート)の略 |
| 期間の平均レート。連結では1会計期間の平均レート | |
| 決算時(CR) | Current Rate(カレントレート)の略 |
| 期末・決算時の為替レート |
次に、在外子会社の各項目は以下のように換算します。
【損益計算書】
| ・収益 ・費用 ・当期純利益 | 原則:期中平均レート(AR)による算額 例外:決算時の為替レート(CR)による算額 なお、親会社との取引は親会社が使用する為替レートに合わせて換算する |
|---|
【貸借対照表の資産と負債】
| ・資産 ・負債 | 決算時の為替レート(CR)による算額 |
|---|
【貸借対照表の純資産】
| ・資本金 | 支配獲得時のレート(HR) |
| ・利益剰余金 | 支配獲得時にある利益剰余金は支配獲得時のレート(HR) |
| その後の当期純利益による増加は各期の期中平均レート(AR) | |
| 配当金の支払いは、支払い時のレート(HR) |
為替換算調整勘定が生じる仕組み
上記で換算レートと在外子会社の各項目の換算方法を説明しました。
為替換算調整勘定が生じるのは、資産と負債、純資産の換算に違いがあることが原因です。
具体的に為替換算調整勘定が生じる理由は、貸借対照表の資産と負債を決算時為替レート(CR)で換算しているのに対して純資産をHRやARで換算するためにズレが生じるからです。
反対にいうと、純資産をCRで換算できれば為替換算調整勘定が生じません。資産と負債、純資産がすべてCRで換算され、ズレが生じないためです。
まとめると、資産と負債はCRで換算しているのに対して純資産はHRやARで換算するためにズレが生じます。そのズレを調整する勘定科目が為替換算調整勘定です。
為替換算調整勘定の例
以下の設例を使って為替換算調整勘定を説明していきます。
【設例1】
P社以外の株主はいない。
S社の資産負債の簿価と時価は一致している。
税効果会計は適用しない。【S社の財務情報】
第1期末のS社の財務諸表は以下の通り
資産:100ドル
負債:50ドル
純資産:50ドル※資本金のみ
損益はゼロ【為替レート】
第1期の為替レートは以下の通り(単位:ドル/円)
HR:110
CR:110
AR:105
【解説】
まず、S社の資産、負債、純資産を換算していきます。
資産、負債は決算時レート(CR)を使用し、純資産(資本金)は支配獲得時のレート(HR)を使用します。設例の場合は、期末に設立しているため決算時レート(CR)と支配獲得時のレート(HR)が同じ価格になっています。
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 資産 | 100 | 110(CR) | 11,000 |
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 負債 | 50 | 110(CR) | 5,500 |
| 資本金 | 50 | 110(HR) | 5,500 |
| 合計 | 100 | - | 11,000 |
上記設例では、資産、負債、純資産がすべて同じレートである1ドル110円で換算されているため、為替換算調整勘定は生じません。
次の設例は、設例1の翌年度の状況です。
【設例2】
P社以外の株主はいない。
S社の資産負債の簿価と時価は一致している。
S社は配当を行っておらず、親会社P社との取引はない。
税効果会計は適用しない。【S社の財務情報】
第2期末のS社の財務諸表は以下の通り
資産:120ドル
負債:50ドル
純資産:70ドル
うち資本金:50ドル
うち利益剰余金:20ドル収益:120ドル
費用:100ドル
利益:20ドル
【為替レート】
第2期の為替レートは以下の通り(単位:ドル/円)
HR:110(支配獲得時のレート)
CR:120
AR:115
【解説】
まず、収益、費用、利益をそれぞれ期中平均レート(AR)で換算します。
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 収益 | 120 | 115(AR) | 13,800 |
| 費用 | 100 | 115(AR) | 11,500 |
| 利益 | 20 | 115(AR) | 2,300 |
注意点として利益は収益から費用を差し引かないで、期中平均レート(AR)で換算します。
次に、S社の資産、負債を決算時レート(CR)で換算していきます。
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 資産 | 120 | 120(CR) | 14,400 |
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 負債 | 50 | 120(CR) | 6,000 |
次に、純資産を各レートで換算していきます。
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 50 | 110(HR) | 5,500 |
| 利益剰余金 | 20 | 115(AR) | 2,300 |
| 純資産合計 | 70 | - | 7,800 |
注意点として、利益剰余金は、当期純利益を換算した後に株主資本等変動計算書の計算にしたがって利益剰余金期末残高になります。この設例では利益剰余金が当期純利益と等しいため上記のように換算しています。
次に、資産から負債と純資産の合計を差し引きます。
資産合計(借方合計):14,400円
負債と純資産の合計(貸方合計):13,800円
計算:負債合計6,000円 + 純資産の合計7,800 = 13,800円
差し引き:600円(貸方)
計算:資産合計14,400円 - 負債純資産の合計13,800円 = 600円
上記の差し引きの結果である600円が為替換算調整勘定になります。
設例の場合は、資産合計のほうが負債純資産の合計よりも大きいため、貸方に為替換算調整勘定600円が計上されます。為替換算調整勘定を計上することで貸借の合計が一致します。
補足として、純資産の合計を決算時レート(CR)で換算しないため、為替換算調整勘定が生じます。この意味で計算しても設例と同じ結果になります。
まず、純資産を各レートで換算していきます。
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 50 | 110(HR) | 5,500 |
| 利益剰余金 | 20 | 115(AR) | 2,300 |
| 純資産合計 | 70 | - | 7,800 |
次に、純資産のドル合計を決算時レート(CR)で換算します。
| ドル | レート(ドル/円) | 合計(円) | |
|---|---|---|---|
| 純資産 | 70 | 120(CR) | 8,400 |
最後に差額を計算します。
各レートで換算した純資産合計:7,800円
決算時レート(CR)で換算した純資産合計:8,400円
差し引き:600円
税効果会計の適用について
結論からいうと、在外子会社の株式を売却する予定がない場合、為替換算調整勘定に対して税効果会計を適用しません。
反対に、在外子会社の株式を売却する予定がある場合は、税効果会計を適用します。
そもそも連結手続で生じる一時差異は税効果会計を適用することが原則です。しかし為替換算調整勘定に限っては、在外子会社の株式を売却しない限り、損益にならず税金へ影響しません。
したがって、在外子会社の株式を売却する予定がない場合、為替換算調整勘定に対して税効果会計を適用しません。
また、税効果会計を適用する場合は、発生した為替換算調整勘定から繰延税金資産または繰延税金負債の金額を加減することになります。
為替換算調整勘定の計算はじっくりと
この記事では、為替換算調整勘定の基本的な内容を説明しました。
為替換算調整勘定は連結手続で生じる換算差額で、持分の計算や為替レート等を考慮しなければ算定できません。
実際に計算する場合は、1つ1つ確認しながら計算しましょう。
よくある質問
為替換算調整勘定とは?
為替換算調整勘定とは、連結財務諸表を作成する手続で発生する換算差額を調整する勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
為替換算調整勘定と為替差損益との違いは?
為替差損益は外貨建取引を行ったときや外国通貨などを持っているときに発生する換算差額であるのに対し、為替換算調整勘定は連結手続によって生じる換算差額です。詳しくはこちらをご覧ください。
為替換算調整勘定が生じるのはなぜ?
貸借対照表の資産と負債を決算時為替レート(CR)で換算しているのに対し、純資産をHRやARで換算するためにズレが生じるからです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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