正しく理解していますか?消費税の仕入税額控除を徹底解説!

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消費税は特定の物品やサービスに課税する個別消費税とは異なり、消費に対して広く公平な負担を求める間接税です。

生産および流通におけるそれぞれの段階で、商品や製品などが販売される都度その販売価格に上乗せされて消費税がかかりますが、最終的に税を負担するのは消費者です。実際には取引が行われる度に何度も消費税を支払っているのではなく、生産の途中段階にある企業にとっては、消費者が最終的に支払う消費税を預かっているという状況です。

消費税の仕入税額控除とは

消費税における「仕入税額控除」は、他の税で行われる“税額控除”とは性格が異なり、生産や流通の段階で支払いが行われるたびに発生する消費税の累積(二重課税)を解消するための制度です。

消費税を納付する際には、課税期間中の課税売上げに係る消費税額からその課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額)を控除して計算します。

消費税の仕入税額控除の仕組み

仕入税額控除の仕組みについて以下のケースで具体的に確認します。
仕入税額控除_仕組

ある商品が、Aという工場で原料の生産が行われ、Bという加工工場を経て、Cという販売店によって売られていた場合(A・B・Cは課税事業者とする)
Aから1,000円でBに売られ、Bからは1,200円でCに売られ、最終的には1,500円で消費者に販売していたとする。
なお消費税率は一律10%とし、軽減税率については考慮しない。

Aは1,000円でBに対して商品を販売するので、販売価格は1,100円となり、Bから100円の消費税を受け取ります。Aは受け取った100円の消費税を納付する義務があります。

Bは1,200円でCに対して商品を販売するので、販売価格は1,320円となり、Cから120円の消費税を受け取ります。Bはすでに100円の消費税をAに支払っているので、Bが納付しなければならない消費税は20円となります。

Cは1,500円で消費者に対して商品を販売するので、販売価格は1,650円となり、消費者から150円の消費税を受け取ります。Cはすでに120円の消費税を支払っているので、Cが納付しなければならない消費税は30円となります。

このように、最終的には消費者が支払うことになる150円の消費税をAが100円、Bが20円、Cが30円をそれぞれ負担することにより、仕入れに対して自社商品に対する付加価値に相当する消費税を納付する責務を負うというような仕組みになっているのです。

消費税の仕入税額控除の対象

消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上げに係る消費税額からその課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額)を控除して計算するというのは先述したとおりです。

課税仕入れとは、事業のために他の者から資産の購入や借り受けを行うこと、または役務の提供を受けることをいいます。課税仕入れの対象とならない取引については仕入税額控除が適用されませんので、仕入税額控除の対象となるものを理解しておく必要があります。

課税仕入の対象となる取引には以下のようなものがあります。

(1)商品などの棚卸資産の購入
(2)原材料費等の購入
(3)機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入または賃借
(4)広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払
(5)事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
(6)修繕費
(7)外注費

なお、加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されるので、課税仕入れの対象となります。非課税となる取引や給与等の支払いは含まれません。

消費税の仕入税額控除の計算方法

仕入税額控除の計算方法は、課税期間中の課税売上高と課税期間中の課税売上割合によって異なります。

課税売上割合は、下記の計算式により求めます。

課税売上割合=課税売上高(税抜)/{ 課税売上高(税抜) + 非課税売上高 }

仮に、不動産販売業者が、

・建物の売上高1,500万円(課税)
・土地の売上高1,000万円(非課税)

を販売したとすると、課税売上割合は以下の式から求められます。

1,500万円 / (1,500万円 + 1,000万円)=60%

そして原則では課税売上割合や課税売上高によって、仕入税額控除の計算方法が以下のように3通りに分かれます。
・全額控除
・個別対応方式
・一括比例分配方式

<1> 課税期間中の課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上の場合

課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の“全額を控除”します。

課税仕入れにかかる消費税を全額控除できるため、税額控除のなかで最も有効で計算が簡易に行えることが特徴です。

<2> 課税期間中の課税売上高が5億円を超えるか、または課税売上割合が95%未満の場合

課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除するのではなく、課税売り上げに対応する部分のみを控除します。

個別対応方式と一括比例配分方式

上記<2>の場合において、「個別対応方式」と「一括比例分配方式」のうちどちらかを選択して計算を行うことになります。

個別対応方式

課税仕入れをその内容から以下の3つに区分し、仕入税額控除の金額を個別に計算する方法です。

(1)課税売上にのみ対応する課税仕入の消費税額
(2)非課税売上げにのみ対応する課税仕入の消費税額
(3)課税売り上げと非課税売上に共通して対応する課税仕入の消費税額

計算を行う際には下記の計算式を用います。

仕入税額控除= 課税売上げにのみ対応する課税仕入の消費税額 + (課税売上と非課税売上に共通して対応する課税仕入の消費税額 × 課税売上割合)

3つの計算方式のなかで最も計算が複雑ですが、課税売上への貢献度が高い課税仕入ほど仕入税額に計上できる金額も大きくなる仕組みなので、控除が多くなる傾向にあります。

一括比例配分方式

こちらは課税仕入れの内容を区分せず、課税仕入の全額に課税売上割合をかけて計算します。個別対応方式のように、3つに区分されていない場合はこちらを選択することになるでしょう。もし区分をしていた場合でも、個別対応方式と比較して有利なほうを選択できます。

計算式は以下のとおりです。

仕入控除税額 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合

なお一括比例配分方式を選択した場合、少なくとも2年間は個別対応方式を選択できないので、注意が必要です。

簡易課税制度

消費税の納付税額はあらかじめ計算式が決められており、原則として様式に沿って計算を行う必要があります。

ですが課税期間の前々年または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届け出を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入などに係る消費税額を計算する必要のない「簡易課税制度」の適用を受けることができます。

この制度では、業種ごとに一定の割合のみなし仕入率を適用し、これをもとに仕入税額控除の計算をします。
詳しくは国税庁による簡易課税制度の事業区分をご確認ください。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。



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