• 作成日 : 2026年4月15日

オープンイノベーション促進税制を活用するには?令和8年度税制改正のポイントと最新制度内容を解説

Pointオープンイノベーション促進税制とは、どのような制度ですか?

事業会社等がスタートアップの株式を新規取得した際、取得価額の25%を所得控除できる投資優遇措置です。

  • M&A型の拡充:既存株式の買い取りや自社株対価M&Aも支援。
  • 投資額要件:大企業1億円、中小企業1,000万円以上が対象。
  • 所得控除:取得価額の25%を所得から差し引き、税負担を軽減。

投資した株式は原則5年以上の保有が必要です。 5年以内に売却や清算を行うと、控除分を益金算入(取り崩し)して納税し直す必要があります。

オープンイノベーション促進税制は、企業がスタートアップへ出資する際に活用できる投資優遇措置です。外部の技術やビジネスモデルを取り込みながら成長を目指す企業にとって、税務面の後押しとなる制度として注目されています。令和8年度税制改正では、適用期限の延長や要件の見直しが行われました。

本記事では、制度の基本構造を整理したうえで、改正ポイントと活用時の留意点を解説します。

目次

オープンイノベーション促進税制とは?

オープンイノベーション促進税制は、事業会社やそのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が、スタートアップ企業の株式を新規に取得した場合に、取得価額の20% もしくは25%を所得控除できる仕組みです。革新的な技術やビジネスモデルを持つ外部組織との協業を促し、日本経済のダイナミズムを取り戻すために創設されました。

オープンイノベーション促進税制はスタートアップへの出資による所得控除

この制度の中核は、設立10年未満(特定の要件を満たせば15年未満)の非上場企業に対して、一定額以上の出資を行った際に受けられる税制優遇です。事業会社が自らの経営資源とスタートアップの機動力を組み合わせることを支援しており、投資リスクを税制面から補填する役割を担っています。

目的は自社の成長に繋がる外部連携を国が支援すること

企業が自前主義を脱却し、外部の優れた知見を取り入れるオープンイノベーションは、現代の経営戦略において避けて通れない課題です。国はこの税制を通じて、単なる財務投資ではなく、事業上のシナジーを目的とした戦略的投資を後押ししています。投資によって得られた株式を一定期間保有し続けることが前提となっており、短期的な売却益の追求ではなく、中長期的なパートナーシップの構築が奨励されている背景があります。

参考:オープンイノベーション促進税制

令和8年度税制改正によるオープンイノベーション促進税制の変更点は?

財務省が発表した令和8年度税制改正大綱では、オープンイノベーション促進税制の拡充と延長が盛り込まれました。スタートアップの成長を一段と加速させるために、M&Aによる株式取得に関連する措置が強化されています。これまで以上に大規模な事業再編や、スタートアップを自社グループに取り込む形でのイノベーションが促進される内容となりました。

M&A型(段階取得型)の税制措置が拡充された

今回の改正における最大の注目点は、M&A型の適用類型の拡大です。従来の制度では、発行法人以外の者からの購入により株式を取得した場合、発行済株式の過半数を取得しないとM&A型のオープンイノベーション促進税制が利用できませんでした。しかし、今回の改正においては、一定の要件を満たした場合、段階取得による株式取得も適用対象となるように制度が拡充されました。これにより、スタートアップにとっては創業者の利益確定や事業の継続性を確保する選択肢が増え、エコシステム全体の循環が良くなる効果が期待されます。

吸収合併時の特別勘定取り崩しに係る税負担の軽減措置が導入された(M&A型)

改正前は、M&A型の制度を利用した法人を吸収し合併法人とした場合など、スタートアップ企業が解散した場合には、対象法人はその事業年度において特別勘定の残高を取り崩して一括で益金算入することとされていました。ただし、今回の改正により、スタートアップ企業の事業が成長・発展したことが明確な場合には、合併日を含む事業年度の翌事業年度開始日から5年間にわたり、特別勘定の残高を均等に益金算入できるようになり、税負担の軽減が図られることとなりました。

制度の適用期限が2年間延長され令和9年度末までとなった

本来であれば適用期限が迫っていた本税制ですが、改正によって令和10年(2028年)3月31日までの投資が対象となりました。この延長措置により、企業は中長期的な投資計画をより安定的に策定できるようになります。スタートアップとの交渉やデューデリジェンスには時間を要することが多いため、期限の余裕が生まれたことは、より質の高いマッチングを模索する企業にとって大きな追い風となるはずです。

新規出資型の適用要件が引き上げられた

対象法人が大企業の場合の最低投資金額が改正前の1億円から2億円に引き上げられました。また、対象法人がスタートアップ企業へ投資する際、当該企業に対して既に段階取得型の制度が適用されている場合には、新規取得型の制度の対象外となります。

参考:令和8年度税制改正の大綱|財務省

M&Aによる株式取得(M&A型)の優遇内容は?

令和8年度改正では、スタートアップを買い取る際の「M&A型」の仕組みがより使いやすく洗練されました。一定の要件を満たした場合、段階取得による株式取得も本制度の適用対象となるよう制度拡充が図られました。。これにより、スタートアップ企業に対しマイノリティ出資をする段階から本制度を適用できる余地が生まれました。

段階取得による株式の取得でも所得控除の対象となる枠組みが親切された

従来の制度では、発行法人以外の者からの購入により株式を取得した場合、発行済株式の過半数を取得しないとM&A型のオープンイノベーション促進税制が利用できませんでした。しかし、今回の改正においては、一定の要件を満たした場合、段階取得による株式取得も適用対象となるように制度が拡充されました。スタートアップの成長段階に応じて、初期の出資から最終的な買収までを一貫して支援する体制が、税制面から完成に近づいたと言えるでしょう。

制度を利用するための投資要件や対象企業の範囲は?

オープンイノベーション促進税制を活用するには、出資を受けるスタートアップ側と、出資する事業会社側の双方が特定の条件を満たす必要があります。令和8年度改正でも基本的な属性要件は引き継がれています。

【対象となるスタートアップ】設立年数や属性が定められている

出資対象となるのは、設立後10年未満の未上場企業が原則です。ただし、研究開発型スタートアップなど、収益化までに時間を要する業種については、設立15年未満まで対象が広げられる特例があります。改正後も、この「若くて革新的な企業」という軸は維持されており、新産業の創出に寄与する企業への資金流入を最優先する姿勢が示されています。

【投資額】最低ラインが設定されており中小企業への配慮もある

制度の適用を受けるためには、1件あたりの投資額が大企業であれば2億円以上、中小企業であれば1,000万円以上という基準をクリアしなければなりません。これは、少額の分散投資ではなく、ある程度のコミットメントを伴う投資を促すための仕組みです。改正大綱においても、この投資金額の下限設定は維持されており、本気度の高い事業連携が税制優遇の前提となっています。

項目 要件の概要
対象スタートアップ 設立10年未満(研究開発型等は15年未満)の非上場企業
出資側の条件 青色申告を提出する法人(CVC経由も含む)
最低投資額 大企業:2億円以上 / 中小企業:1,000万円以上
所得控除率 取得価額の20%もしくは25%
保有継続期間 原則として3年間もしくは5年間の保有が必要

税制活用における手続きや認定の流れは?

オープンイノベーション促進税制の恩恵を受けるためには、出資を行うだけでなく、国が定めたステップを正確に踏む必要があります。令和8年度の税制改正においても、経済産業省による「事前の事業認定」と、税務署への「事後の申告」という二段構えのフローは維持されています。

1. スタートアップへの出資・株式取得を実行し証跡を保管する

手続きの出発点は、対象となるスタートアップ企業との投資契約および実際の払い込みです。令和8年度改正で注目されるM&A型の場合、既存株主からの株式譲渡契約などがこれに該当します。この段階で、相手方が設立10年(または15年)未満の要件を満たしているか、自社が議決権を一定以上取得しているかなどの客観的証拠を揃えておく必要があります。

2. 経済産業省に対して事業連携の有効性を申請する

出資実行後、速やかに経済産業省へ「特定株式の取得に関する証明」を申請します。ここでは、その投資が自社の生産性向上や新事業創出にどのように寄与するのかをまとめた「事業計画」の提出が求められます。今回の改正大綱の趣旨を鑑みると、M&Aを通じて相手方の経営資源を自社グループにどう統合し、どのようなシナジーを生み出すのかという説明が、審査を通過する上での重要なポイントとなります。

3. 経済産業省から「証明書」を取得する

提出した事業連携の内容が制度の趣旨に合致すると認められれば、経済産業大臣より証明書が発行されます。この証明書は、所得控除を受けるための法的根拠となる重要な書類です。デジタル化の進展により、以前よりもオンラインでの申請・交付プロセスが効率化されていますが、審査期間を見込んで余裕を持ったスケジュール管理が必要です。

4. 証明書を添えて確定申告時に所得控除を適用する

最終ステップは、法人税確定申告です。経済産業省から交付された証明書の写しを申告書に添付し、取得価額の20%もしくは25%を所得から控除する申告調整を行います。

企業がオープンイノベーション促進税制を活用する際の注意点は?

強力な税制優遇措置である一方で、後日その適用が取り消されたり、控除した所得を取り崩さなければならなくなったりするリスクも存在します。制度の恩恵を最大限に享受するためには、出口戦略を含めた慎重な運用管理が求められます。

5年以内の株式売却は原則として控除額の取り崩し対象となる

本制度は中長期的な連携を目的としているため、投資から5年以内に株式を売却したり、清算したりした場合には、過去に受けた所得控除に相当する金額を益金として計上し直さなければなりません。また、M&A型の制度を利用した対象法人を合併法人とする合併によりスタートアップ企業が解散した場合には、特別勘定の残高を取り崩して益金算入する必要がありますが、改正前は一括で益金算入することとされていました。しかし今回の改正により、スタートアップ企業の事業の成長発展が図られたことが明らかな場合には、合併の日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から5年間で特別勘定の残高を分けて均等に益金算入することが可能とされました。

申告漏れや書類の不備は将来の税務リスクに直結する

証明書の取得が間に合わなかったり、投資対象企業の要件確認を誤ったりすると、税務調査の際に指摘を受け、税制メリットを受けられなくなる原因となります。社内の投資審査部門、法務部門、そして税務部門が密に連携し、証跡管理を徹底する体制を構築することが、制度活用の成否を分けることになります。

改正後のオープンイノベーション促進税制を戦略的に活用しよう

令和8年度の税制改正により、オープンイノベーション促進税制はスタートアップの出口戦略を支える「M&A支援」へと大きく舵を切りました。2年間の延長とM&A型の拡充は、日本企業が外部知見を活用して構造改革を行う絶好の機会を提供しています。企業は20%もしくは25%の所得控除という優遇措置を武器に、革新的な技術を持つパートナーとの連携を深め、持続的な成長を実現するための投資を加速させることが期待されています。

この新制度の枠組みを正しく理解し、自社の事業戦略と照らし合わせて活用することで、法人税負担の軽減と新規事業の創出を同時に成し遂げることが可能になるでしょう。

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