• 作成日 : 2026年4月15日

グローバル・ミニマム課税とは?制度概要と令和8年度税制改正の変更点を解説

Pointグローバル・ミニマム課税とは?

グローバル・ミニマム課税は、世界中の拠点に最低15%の税負担を求める国際的な課税ルールです。

  • 対象: 年間総収入7.5億ユーロ以上の多国籍企業
  • 仕組み: 15%に満たない不足分を親会社側で上乗せ課税
  • 改正: 令和8年度改正で計算の簡素化や定義の精緻化が決定

2024年4月開始事業年度から順次適用されており、最初の申告期限は原則として年度終了から15ヶ月以内(初回のみ18ヶ月以内)となります。

グローバル・ミニマム課税は、一定規模以上の多国籍企業グループに対し、各国ごとの実効税率を15%以上にそろえることを目指す国際的な税制ルールです。日本でも制度整備が進み、令和8年度税制改正では実務に直結する見直しが示されました。

本記事では、制度の基本構造から改正のポイントなどを整理します。

目次

グローバル・ミニマム課税とはどのような制度?

グローバル・ミニマム課税は、法人税の国際的な引下げ競争に歯止めをかけ、税制面における企業間の公平な競争条件を確保するため、国際的に合意されたものであり、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させることを目的とした国際的な課税ルールです。デジタル経済の進展に伴い、低税率国への利益移転による「底辺への競争」を抑制するためにOECD(経済協力開発機構)が主導して設計されました。

各国で最低税率15%以上の課税を確保する国際的な取り決め

この制度の核心は、多国籍企業が低税率国で事業を行う場合であっても、最終的には最低15%の法人税を負担させる仕組みにあります。仮に拠点を置く国の実効税率が15%を下回る場合、親会社が所在する国などがその差額分を「上乗せ」して課税することで、租税回避のインセンティブを削ぐ狙いがあります。これはBEPS2.0(多国籍企業により国際的な税逃れや利益移転の問題に対処するための新たな税制改革の取り組み)の「Pillar 2(第2の柱)」とも呼ばれ、日本を含む多くの国が国内法への取り込みを進めています。

所得合算ルール(IIR)が制度の主軸を担う

最低税率に満たない場合の不足税額を計算し、親会社に対して課税する仕組みを所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)と呼びます。日本では令和5年度税制改正により、このIIRに相当する「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」が創設されました。これにより、海外子会社の税負担が極めて低い場合、日本の親会社側で不足分を納税する義務が発生する構造となっています。

参考:グローバル・ミニマム課税関係|国税庁

グローバル・ミニマム課税の開始時期は?

グローバル・ミニマム課税は、すでに始まっている制度です。日本では、2024年4月1日以降に開始する会計年度から適用されています。

日本では2024年4月から制度が開始されている

日本における「所得合算ルール(IIR)」は、2024年4月1日以後に開始する会計年度から適用されています。

  • 3月決算の企業:2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の事業年度から対象。
  • 12月決算の企業:2025年12月期(2025年1月〜)の事業年度から対象。

これにより、対象となる多国籍企業は、すでに日々の取引や子会社の所得データを「最低税率15%」という新ルールに照らして管理しなければならないフェーズに突入しています。

最初の申告期限は「対象会計年度終了の日の翌日から18ヶ月以内」

制度が始まっても、すぐに納税が発生するわけではありません。申告と納税の期限には猶予があります。

  • 原則:各対象会計年度終了の日の翌日から15ヶ月以内。
  • 初回のみの特例:制度が初めて適用される年度については、終了の日の翌日から18ヶ月以内に延長されます。

例えば、2025年3月決算の企業であれば、2026年9月末が最初の申告期限となります。

令和8年度税制改正によるグローバル・ミニマム課税の変更点は?

令和8年度税制改正大綱では、グローバル・ミニマム課税について、一定の要件を満たす国・地域に係る適用免除基準の創設や、移行期間CbCRセーフハーバーの適用期限の延長などの見直しが示されました。国際的な議論の進展に伴い、計算の簡素化や定義の明確化が図られています。複雑な計算負担を軽減するためのセーフハーバーの拡充や、所得算定における細かな調整が焦点となっており、企業のコンプライアンス維持に配慮した内容です。

グローバル・ミニマム課税に関する計算方法が精緻化された

改正により、移行対象会計年度前に行われた事由によって計上された繰延税金資産又は繰延税金負債について、グローバル・ミニマム課税の計算上、無視又は制限する規定がありましたが、その計算を更に精緻化すす旨の規定が設けられました。

実務負担を軽減する簡便的な計算手法が拡充された

複雑極まる税額計算を簡略化するため、「簡易な実効税率セーフハーバー」の規定が導入されます。これは実効税率の計算において、複雑な調整計算を不要とするものです。また、カントリー・バイ・カントリー・レポート(CbCR)の数値を活用できるという「移行期間CbCRセーフハーバー」について、1年間の延長が認められました。これらにより、経理現場での事務負担を軽減しつつ、制度の趣旨を損なわない範囲での柔軟な運用が図られることになりました。

租税優遇措置をグローバル・ミニマム課税の対象から除外する規定が導入された

支出や生産など、現実に雇用や設備投資が生み出されていることに関する租税優遇措置に関しては、グローバル・ミニマム課税の対象から除外するという「実質ベースの租税優遇措置に関するセーフハーバー」が導入されました。これは恒久的な措置となります。

参考:令和8年度税制改正の大綱|財務省

グローバル・ミニマム課税の対象企業は?

本制度の適用対象は、多国籍企業グループの中でも規模の大きな組織に限定されています。全ての海外進出企業が対象になるわけではなく、国際的な基準に基づいた高い収入要件が設けられています。中小企業や一般的な中堅企業については課税対象からは外れることが多いでしょう。

年間の連結総収入が7.5億ユーロ以上のグループが対象

グローバル・ミニマム課税が適用されるのは、直前の4対象会計年度のうち2年度以上で連結総収入が7.5億ユーロ(日本円で約1,350億円以上)に達するグループです。この巨大な収入基準は、国際的な市場において支配的な影響力を持つ企業をターゲットにするためのものです。日本国内に本社を置くグローバル企業だけでなく、海外に親会社を持ち、日本で事業を展開する大規模な子会社もこのルールのネットワークに含まれます。

構成会社や共同支配企業など広範な組織が計算に含まれる

課税対象の判定にあたっては、親会社が連結財務諸表に含める「構成会社」だけでなく、最終親会社が50%以上の持分を有するジョイントベンチャーも含まれる場合があります。グループ全体の所得と税額を合算して実効税率を算出するため、直接的な子会社のみならず、複雑な資本関係にある関連組織についても税務データの集約が必要になります。改正大綱では、これらの組織範囲の定義についても一部明確化が図られました。

最低課税額の計算方法は?

最低課税額の計算は、国ごとに算出される「実効税率」と、一定の「控除額」を用いて導き出されます。単純な表面税率ではなく、会計上の利益に複雑な調整を加えた後の数値をベースにするため、高度な税務知識が必要です。令和8年度改正では、この計算過程における資産の評価や特定の利益の除外について、より実務に即した修正が加えられました。

国ごとの実効税率を算出し15%との差額を特定する

まず、特定の国に所在するグループ会社全体の所得を合算し、その国で納めた税金の合計額で割ることで、国別の実効税率(Effective Tax Rate)を計算します。この数値が15%を下回った場合、その差(トップアップ税率)が課税の基礎となります。このプロセスがあるため、たとえ一部の子会社が赤字であっても、同一国内の他の黒字会社と合算することで国全体の税負担を評価する仕組みになっています。

実質ベースの所得除外(SBIE)が適用される

課税対象となる利益からは、現地での実質的な経済活動(設備投資や雇用)に応じた一定額を差し引くことができます。これを「実質ベースの所得除外(SBIE:Substance-based Income Exclusion)」と呼び、工場などの有形固定資産の帳簿価額や給与総額の一定割合が控除対象となります。これにより、低税率国であっても実体のある事業活動を行っている場合には、トップアップ課税の影響を緩和できるよう配慮されています。

企業の事務負担を減らす「セーフハーバー」とは?

グローバル・ミニマム課税は計算が煩雑であるため、特定の条件を満たす場合に計算を簡略化できる「セーフハーバー規定」が重要視されています。令和8年度改正においても、この簡便措置の継続や適用条件の整理が行われました。これにより、リスクが低いと判断される国については、膨大なデータ収集を伴う詳細計算を行わずに済むようになります。

CbCRセーフハーバーにより詳細計算を免除できる場合がある

国別報告書(CbCR)のデータを利用し、特定の基準を満たせばトップアップ税額をゼロとみなす「移行期間CbCRセーフハーバー」が設けられています。収入金額が一定額以下である「デミニマス要件」や、実効税率が一定以上である「簡素な実効税率要件」などがこれに該当します。

QDMTTセーフハーバーで所得合算ルール(IIR)の適用が免除

進出先の国が「適格な」国内ミニマム課税(QDMTT)を導入している場合、その所在地国での所得合算ルールが免除されます。この「QDMTTセーフハーバー」を適用するには、その国での自国内最低課税額に係る税が①QDMTT会計基準及び②整合性基準のいずれの要件も満たす必要があります。このセーフハーバーを適用できれば所得合算の計算自体が不要となるため、実務負担の軽減を図ることができます。グローバル・ミニマム課税の導入による投資インセンティブへの影響は?

グローバル・ミニマム課税の導入は、各国の誘致政策と企業の拠点選定戦略に根本的な変容を迫っています。これまで主流だった「法人税の免税」というアプローチは、最低税率15%を下回った分を他国に課税されるため、その効果が相殺される「無効化」のリスクに直面しています。企業は今後、表面的な税率の低さではなく、新ルール下でも有効に機能するインセンティブの形式を精査し、より実質的な経済合理性に基づいた投資判断を行う必要があります。

従来の「免税・軽減税率」による投資誘致効果が相殺される

多くの国が実施してきた「タックス・ホリデー(一定期間の免税)」などの優遇措置は、グローバル・ミニマム課税下ではそのメリットが失われる可能性があります。現地での実効税率が15%を下回ると、その差額分が親会社所在国などで「トップアップ課税」として徴収されるため、企業グループ全体の税負担は結局15%まで引き上げられます。これにより、低税率を武器にした拠点の優位性が低下し、従来の拠点選定基準は通用しなくなっています。

「適格給付付き税額控除(QRTC)」を採用する国が選定の優先候補となる

新ルールにおいて、現金等による還付が保証された「適格給付付き税額控除(QRTC)」は、実効税率を計算する際に、分子の税金の削減ではなく分母の収入増として扱われ、他の優遇税制措置のように不利な影響は受けないと考えられます。投資を呼び込みたい国々は、このルールに適合したインセンティブ制度への切り替えを急いでいます。企業にとって、こうした国際基準に適合した高度な支援策を提供する国を拠点として選定することが、投資効率を維持するための新たなスタンダードとなります。

拠点選定の基準が「税率」から「インフラや人財」などの実体にシフトする

税制による差別化が困難になる結果、企業の拠点選定は、教育水準の高い人財、充実したインフラ、市場へのアクセスといった「事業環境の実力」をより重視するようになります。また、実質的な経済活動(設備投資や雇用)の規模に応じて課税対象を減らす「SBIE(実質ベースの所得除外)」が存在するため、ペーパーカンパニーではなく、実際に多くの雇用や設備を抱える大規模な生産拠点を有する国が、相対的に有利な投資先として再評価されることになります。

国際課税の新時代に合わせたグローバル戦略を構築しよう

グローバル・ミニマム課税は、コスト増として捉えるのではなく、世界共通の透明な課税ルールへの適応として前向きに捉えるべきです。令和8年度税制改正により、ルールの明確化と実務的な配慮が進んだことは、企業にとって予測可能性を高めるポジティブな変化と言えます。複雑な制度を正しく理解し、適切なセーフハーバーを活用することで、税務リスクを最小限に抑えたグローバル経営が可能になります。

改正大綱の内容を早期に反映させ、自社の税負担や事務コストへの影響をシミュレーションすることが、国際競争力を維持するための第一歩となります。

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