- 作成日 : 2026年4月15日
令和8年度税制改正大綱まとめ:基礎控除・178万円の壁・住宅ローン控除等を解説
令和8年度税制改正は、所得税の負担軽減と住宅・投資支援を軸に家計と企業へ広く影響する改正です。
所得税は原則令和8年分から、源泉徴収は令和9年支払分から適用です。
令和8年度税制改正では、所得税の基礎控除や給与所得控除の引上げ、課税最低限178万円への対応、住宅ローン控除の延長、NISAの未成年拡充、大規模設備投資向けの新税制創設など、家計と企業の双方に影響する改正が盛り込まれました。
本記事では、税制改正大綱をもとに「何がどのように変わるのか」を整理します。
目次
① 所得税の基礎控除と給与所得控除の見直し
令和8年度税制改正では、物価上昇に対応する観点から、所得税の基礎控除と給与所得控除が引き上げられました。控除額が長年据え置かれてきたことで、名目収入が変わらなくても実質的な税負担が増しやすい状況が生じていたためです。今回の改正では、控除額そのものの拡充に加え、扶養等の判定基準も調整され、制度全体の整合性が図られています。
【基礎控除】合計所得金額2,350万円以下で4万円引き上げ、改正後は62万円
合計所得金額が2,350万円以下の個人について、基礎控除額が4万円引き上げられ、改正後は62万円となります。
| 合計所得金額 | 改正前の基礎控除額 | 改正後の基礎控除額 |
|---|---|---|
| 2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
| 2,350万円超 ~ 2,400万円以下 | 48万円 | 48万円 |
| 2,400万円超 ~ 2,450万円以下 | 32万円 | 32万円 |
| 2,450万円超 ~ 2,500万円以下 | 16万円 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 | 0円 |
適用時期は原則として令和8年分以後の所得税からです。一方で、給与等に対する源泉徴収は令和9年1月1日以後に支払う給与から適用されるため、年末調整や源泉徴収事務において時期の違いが生じる点に留意が必要です。
【給与所得控除】最低保障額は65万円から69万円へ引き上げ
給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円へ引き上げられます。
給与所得控除は給与収入に応じて計算されますが、一定水準以下の収入に対しては最低保障額が適用される仕組みであり、その下限が拡充される形です。
控除額の変更は、扶養控除や配偶者控除の判定に用いる所得基準にも影響します。そのため、同一生計配偶者や扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下へ改められるなど、関連規定も合わせて調整されています。
給与所得控除の最低保障額
| 区分 | 改正前 | 改正後(令和8年分以後) |
|---|---|---|
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 69万円 |
扶養・配偶者判定に用いる合計所得金額要件
| 区分 | 改正前 | 改正後(令和8年分以後) |
|---|---|---|
| 同一生計配偶者の合計所得金額要件 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 扶養親族の合計所得金額要件 | 58万円以下 | 62万円以下 |
こちらも原則として令和8年分以後の所得税が対象で、源泉徴収税額表の改正は令和9年1月支払分から適用されます。
② 所得税の課税最低限178万円への引上げ
令和8年度税制改正では、いわゆる「年収の壁」問題を踏まえ、所得税の課税最低限を178万円まで特例的に引き上げる方針が示されました。単一の控除拡大ではなく、基礎控除や給与所得控除に設けられる特例を組み合わせることで到達する設計であり、中低所得層への配慮という位置づけがなされています。
178万円は基礎控除と給与所得控除の特例を組み合わせて実現する水準
一定の条件下で基礎控除側の加算と給与所得控除側の上乗せが重なり、「課税最低限178万円」という水準が形成される仕組みです。
概要資料には「課税最低限を178万円まで特例的に先取りして引き上げる」と明記されており、同一ページ上で基礎控除等の特例加算と給与所得控除の最低保障額に関する特例創設が並んで示されています。
資料上の数値を「控除の合計」という形で整理すると、次のように説明できます。
| 構成要素(所得税) | 資料上の位置づけ | 金額の例 |
|---|---|---|
| 基礎控除(本則) | 2,350万円以下の引上げ後水準 | 62万円 |
| 基礎控除等の特例(加算) | 所得帯に応じた加算(例:令和8・9年分の一部で42万円等) | 42万円など |
| 給与所得控除(最低保障) | 引上げ後水準 | 69万円 |
| 給与所得控除(最低保障の特例) | 令和8・9年で最低保障額をさらに5万円上乗せ | +5万円 |
実際の税額は家族構成や社会保険料控除、住民税計算などにより変動します。
年収178万円までは所得税がかからなくなり、就業調整の圧力がやわらぐ
所得税の負担発生ラインが後ろ倒しになることで、年収を抑える就業調整の動機は一定程度緩和されます。これまで所得税の課税開始水準を意識して働き方を調整するケースがありましたが、課税最低限が引き上げられることで、収入を増やしても所得税負担が急に生じる局面が後退します。
ただし、社会保険の加入基準や扶養判定、勤務先の手当制度などは別の制度枠組みで運用されています。したがって、就業判断においては所得税だけでなく、社会保険料負担や家族手当の有無なども含めて総合的に検討する視点が必要です。
③ 住宅ローン控除の拡充・延長
令和8年度税制改正では、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除、いわゆる住宅ローン控除の適用期限が延長されるとともに、対象住宅の区分ごとの借入限度額などが再設定されます。制度の重点は、省エネ性能や子育て世帯といった属性に配慮する方向へ移っています。
適用期限が令和12年12月31日まで5年延長される
従来の適用期限である令和7年12月31日から、令和12年12月31日まで5年間延長される方針です。
税制改正大綱本文には「適用期限を令和12年12月31日まで5年延長」と明記されています。あわせて「令和8年から令和12年までに居住の用に供した場合」という枠組みが示されており、入居年ベースでの判定が前提となります。
もっとも、延長は単なる期間の繰延べではありません。制度内容も同時に見直されるため、従来と同一条件で利用できるとは限らず、住宅の種類や性能区分、入居時期に応じて借入限度額などが整理される設計となっています。
借入限度額が住宅区分ごとに再設定される
認定住宅やZEH水準省エネ住宅などの区分ごとに借入限度額が設定され、認定住宅で4,500万円、ZEH水準省エネ住宅で3,500万円といった水準が示されています。
大綱本文中の表では、住宅区分ごとの借入限度額に加え、控除率0.7%、控除期間13年が整理されています。これにより、住宅の性能や区分によって適用できる上限額が異なる仕組みが明確化されています。
省エネ性能の高い既存住宅に係る借入限度額の引上げや、子育て世帯への上乗せ措置の対象拡充、床面積要件の緩和なども示されています。制度の焦点が「住宅の性能」と「世帯属性」に置かれている点が、今回の拡充・再設計の特徴です。
④ NISAの投資枠の拡大
令和8年度税制改正では、少額投資非課税制度(NISA)のうち「つみたて投資枠」を未成年にも広げる方針が示されました。これにより、子ども名義での長期・分散・積立投資を制度上後押しする設計となります。
つみたて投資枠の口座開設年齢は0〜17歳へ拡大される
つみたて投資枠の口座開設可能年齢が0〜17歳へ拡充される方針です。
税制改正大綱の概要には「次世代の資産形成支援として、NISAのつみたて投資枠の口座開設可能年齢を0〜17歳に拡充する」と明記されています。これにより、未成年期から非課税枠を活用した積立投資が可能となる枠組みが整えられます。
未成年の資産形成を制度として位置づけ直す狙いが読み取れ、長期投資の早期開始を後押しする方向性が示されています。申込手続や管理者の扱い、金融機関の実務対応などの細目は、施行に向けて省令や事務手続で具体化される見込みです。
0〜17歳は年間60万円・非課税保有限度額600万円の枠が設定される
子どもが0〜17歳の間は、年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円の水準が示されています。
大綱の概要では、未成年向けの投資枠として整理されています。これは通常の成人向け枠とは区分された設計であり、子ども期に積み立てられる非課税資産の上限が明確化されています。
家計側の検討では、教育費の見通しとリスク許容度を分けて考えると整理しやすくなります。NISAは税制上の非課税措置であり、元本や価格変動を保証する制度ではありません。積立の目的や期間を明確にしたうえで活用することで、子どもの資産形成を計画的に進めやすくなります。
⑤ 設備投資の促進税制が新設
令和8年度税制改正では、大規模な設備投資を後押しするための新たな優遇税制が創設されます。一定の要件を満たす投資について、即時償却または税額控除を選択できる仕組みです。一般的な減税措置とは異なり、投資規模や収益性を満たす「戦略投資」を対象とする点が特徴です。
投資規模35億円以上(中小企業者等は5億円以上)かつROI15%以上などの定量要件
本税制は投資規模と収益性の見込みを満たす計画のみが対象となります。
大綱の概要では、投資計画における取得価額の合計が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)であり、かつ年平均の投資利益率(ROI)が15%以上見込まれることなどの基準に適合し、確認を受けた計画に限ると整理されています。
対象資産には機械装置、建物、ソフトウェア等が含まれます。経済産業省側の説明資料でも、ROI要件や投資下限額が図表で示されており、制度が大規模かつ成長志向の投資向けに設計されていることが明確です。単なる設備更新ではなく、収益性向上を伴う投資が前提となっています。
即時償却または税額控除7%(建物等は4%)を選択できる
優遇措置は即時償却と税額控除のいずれかを選択する方式です。大綱の概要には、税額控除率が取得価額の7%(建物等は4%)であること、さらに控除税額の上限が当期法人税額の20%であることが記載されています。
即時償却を選択すれば初年度の損金算入額が大きくなり、税額控除を選べば法人税額から直接控除できます。資金繰りや損益見通しによって有利不利が分かれる設計です。また、控除限度額を超えた場合の3年間の繰越控除が認められるケースも示されており、国際経済事情の急変などに対応する計画認定を受けた場合の特例も制度の一部となっています。
⑥ インボイス制度の経過措置の見直し
令和8年度税制改正では、インボイス制度導入に伴う経過措置が一部再設計されます。目的は、特例終了後に生じ得る急激な負担増を緩和することです。
個人事業者は2割特例終了後も売上税額の3割を納税額にできる期間が設けられる
いわゆる2割特例の終了後も、個人事業者については納税額を売上税額の3割とできる措置が、令和9年分・令和10年分の2年に限って講じられます。
税制改正大綱の概要には、2割特例終了後の緩和措置として、個人事業者に対し売上税額の3割を納税額とする選択肢を設ける旨が明記されています。
対象が個人事業者に限定されている点がポイントです。法人は対象外であり、また個人であっても簡易課税制度など他の制度の方が有利となる場合があります。売上税額と仕入税額の関係を試算し、どの計算方式が適するかを検討する姿勢が現実的です。
免税事業者からの仕入税額控除は、期限を延長しつつ控除割合を段階的に縮小
仕入税額控除に関する免税事業者からの仕入れに係る経過措置は、最終期限を2年延長しつつ、控除割合を段階的に引き下げる設計へ見直されます。
大綱の概要では、令和8年10月から7割、令和10年10月から5割、令和12年10月から令和13年9月末まで3割という控除割合の道筋が示されています。
さらに、免税事業者ごとの年間適用上限仕入額を1億円へ引き下げる方針も併記されています。これは、控除を広く残し過ぎることで制度を迂回する行動を抑える趣旨と理解できます。経過措置の縮小は段階的に進むため、取引先構成や仕入割合を踏まえた計画的な対応が求められます。
改正点を踏まえ、令和8年度税制改正に備えよう
令和8年度税制改正は、所得税の基礎控除・給与所得控除の引上げや課税最低限178万円への対応、住宅ローン控除の延長・再設計、NISAの未成年拡充、大規模設備投資向け新税制の創設、インボイス経過措置の見直しなど、多方面に及びます。
家計面では税負担の緩和と資産形成支援、企業面では成長投資の後押しが柱です。最終条文・施行時期などを国税庁等の公表資料で確認しながら、手続きを進めていきましょう。
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