- 更新日 : 2026年1月27日
少額減価償却資産とは?特例の対象についても解説
時間の経過とともに価値が減少する資産を、税法上「減価償却資産」といいます。
減価償却資産に該当する資産は、原則として減価償却(一時に費用とするのではなく耐用年数に応じて費用に計上すること)が必要です。ただし、取得価額の低い少額資産は会計処理の負担を軽減するための別途規定が設けられています。
今回は、30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合の中小企業の特例を中心に、資産の取り扱いを見ていきましょう。
目次
中小企業の少額減価償却資産の特例とは
中小企業の少額減価償却資産の特例は、正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といいます。
事業の用に供した取得価額30万円未満の減価償却資産について、特定の条件に該当する中小企業者等を対象に一定額まで全額を損金に算入できる税法上の特例です。
なお、取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満の減価償却資産は、消耗品費などの勘定科目を用いて一括で経費計上することが認められています。この制度はすべての企業が対象となっており、事業規模や白色・青色確定申告を問わず適用が可能です。
そもそも減価償却資産とは
減価償却資産とは、事業で使用する資産のうち、時間の経過に応じて価値が減少していく資産をいいます。土地や骨とう品のような、時間とともに価値の減少が生じない資産は減価償却資産には該当しません。
減価償却資産は税法上の表現ですので、会計上は、固定資産に該当する資産のうち減価償却の対象になるものが減価償却資産として扱われます。
減価償却の意味や減価償却の対象になる資産については下記の記事で詳しく説明していますので、こちらを参照ください。
少額減価償却資産と一括償却資産の違い
少額減価償却資産の特例は、中小企業者等を対象に取得価額30万円未満の減価償却資産に適用される特例です。別途10万円未満の少額の減価償却資産の取得価額を全額損金算入できる特例がありますので、実質的には取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産が対象となります。
このほか、減価償却資産に関する特例には「一括償却資産の損金算入」があります。これは取得価額20万円未満の減価償却資産を法定耐用年数に関わらず3年で均等償却できる税法上の特例です。少額減価償却資産の特例とは異なり、すべての企業が適用できます。
一括償却資産については下記の記事で詳細を解説していますので、こちらも参照ください。
少額固定資産と少額減価償却資産の違い
「少額固定資産」という言葉で検索や問い合わせをされる方もいらっしゃいますが、実務上・税務上の正しい呼び方は「少額減価償却資産」です。
そもそも固定資産のうち「減価償却を必要とする資産」を減価償却資産と呼び、その取得価額が30万円未満のものを「少額減価償却資産」と定義します。
- 固定資産 と減価償却資産
- 固定資産:事業用に長期使用が見込まれる資産全般
- 減価償却資産:固定資産のうち、使用することで価値が減っていくため、減価償却が必要な資産
- 取得価額が30万円未満なら少額減価償却資産
- 減価償却資産の中でも、取得価額が30万円未満の資産を「少額減価償却資産」と呼びます。
- 税法上の特例により、該当する資産は取得した期に一括して費用計上できるメリットがあります。
「少額固定資産」とはあくまでも一般的な呼び方であり、税務上は「少額減価償却資産」が正しい取扱いとなります。
誤って処理しないように、名称だけでなく、その定義や扱いを正しく理解しておきましょう。
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少額減価償却資産の特例の対象になるのは?
中小企業等の少額減価償却資産の特例はどのような企業や資産を対象としたものなのか、具体的な内容を解説していきます。
対象となる企業
少額減価償却資産の特例を適用できるのは、次の要件のすべてを満たす特定の中小企業者等に限定されます。
また、上記の条件を満たしても、下記に該当する法人は対象外となります。
- 大規模法人(資本金または出資金の額が1億円超の法人、大法人(資本金5億円以上の法人など)との完全支配関係にある法人)に発行済株式の総数または出資金総額の2分の1以上を所有されている法人
- 複数の法人に発行済株式の総数または出資金総額の3分の2以上を所有されている法人
個人事業主の適用対象については以下の記事で解説していますので、こちらも参照ください。
対象となる資産
少額減価償却資産の特例の対象になるのは、取得価額30万円未満の減価償却資産です。ただし、取得価額30万円未満でも、主要な事業として行われるもの(リース事業者の所有する減価償却資産など)を除き、貸付けの用に供した資産は対象外となります。
貸付けの用に供した資産を特例から除外する内容は令和4年度の改正により適用されました。大量に取得した少額減価償却資産を貸付け、特例を適用して損金に算入したのち、すぐに売却を行うことにより課税所得を繰り延べることに対処する必要性があったためです。
また、一事業年度内に特例の対象にできる少額減価償却資産の合計額には限度が定められており、300万円に達するまでとされています。
必要な手続き
少額減価償却資産の特例の適用は、その事業年度における取得価額相当額の損金経理が要件となっています。つまり、取得価額相当額を費用として計上しない場合、特例は適用できないということです。
25万円の取得原価のうち、10万円を資産に計上したような場合は特例が適用できません。特例を適用したい少額減価償却資産については、全額を費用に計上する会計処理を行う必要があります。
また、確定申告時には、別表16(7)「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」を添付して申告することが必要です。
少額減価償却資産の特例の注意点
中小企業者等を対象とした少額減価償却資産の特例を適用する場合の注意点をいくつか紹介します。
10万円未満の減価償却資産や一括償却資産とは選択適用
減価償却資産の取得価額における税法上の取り扱いには以下の3つがあります。
- 少額の減価償却資産の損金算入(取得価額10万円未満)
- 一括償却資産の損金算入(取得価額20万円未満)
- 少額減価償却資産の特例(取得価額10万円以上30万円未満・中小企業者等に限定)
これらの取り扱いは重複適用ができません。通常通り減価償却をするか、上記3つのいずれかを選択適用することになります。
取得価額10万円未満の減価償却資産を取得した場合は、少額の減価償却資産の損金算入を適用するのが一般的です。
青色申告法人の中小企業者等が取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産を取得した場合は、通常の減価償却、一括償却(※取得価額20万円未満に限り)、特例のいずれかを選択できます。
税法上の特別償却などとの重複適用ができない
中小企業等の少額減価償却資産の特例は、租税特別措置法上の特別償却や税額控除、圧縮記帳と重複して適用できません。
特別償却とは、通常の減価償却費に加えて、特別償却費として取得価額のうち一定額を減価償却できる制度です。中小企業者等が一定額以上の機械等を取得した場合に、基準取得価額のうち30%の特別償却が認められます。
税額控除は、法人税額から税額を控除できる制度です。中小企業等が取得する一定額以上の機械等に対し、基準取得額の合計7%まで法人税から控除が認められます。なお、特別償却と併用は認められておらず、どちらか一方を選択する必要があります。
圧縮記帳とは、固定資産の取得に補助金等を使用した場合に資産取得額と補助金による収益を相殺し、固定資産の簿価を下げることで取得年度の税負担を軽減できる制度です。
租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳は、いずれも減価償却資産に関わる特別措置であることから、少額減価償却資産の特例と重複できません。
限度の300万円に達するまでの金額注意が必要
少額減価償却資産の特例の上限である「300万円に達するまでの金額」の考え方には注意が必要です。購入した資産の金額によっては300万円全額を利用できない可能性があります。
例えば、1組27万円の減価償却資産を12組購入したとしましょう。27万円×12組で合計額324万円になりますが、実際に特例を使用できるのは11組(300万円÷27万円=11.111→切捨てで11)までです。
これは、1組の資産を特例の対象部分と対象でない部分に分けられないためです。そのため、このケースでは297万円(27万円×11)まで特例が適用できることになります。
また、300万円に達するまでの金額は、事業年度が1年に満たないときは限度額を月割しなければなりません。設立事業年度などで、事業年度が6ヶ月である場合の上限は、150万円(300万円×6/12)に達するまでとなります。
税込経理と税抜経理で判定が異なる
少額減価償却資産の特例の基準となる取得価額は、税込経理方式と税抜経理方式で金額が異なります。税込経理方式の場合は税込金額を、税抜経理方式の場合は税抜金額を基準とするためです。
例えば税抜280,000円(税込308,000円)の資産の場合、税抜経理方式を採用していれば特例を適用できますが、税込経理方式を採用している場合は取得価額が30万円以上となるため特例を適用できません。
※税込経理方式や税抜経理方式は消費税の経理方式です。
少額減価償却資産の特例の適用例
中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用するには、対象となる減価償却資産の取得価額全額を事業供用した事業年度に、損金に算入(費用に計上)する必要があります。
【資産に計上する方法】
損金に算入するための会計処理としてはまず、以下の例のように、取得時に資産に計上後、事業供用年度末に取得価額全額を費用に振り替える処理が考えられます。
(仕訳例)
一台22万円のパソコンを現金で購入し、すぐに事業の用に供した。対象の資産は、中小企業者等の少額減価償却資産に該当するものである。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 220,000円 | 現金 | 220,000円 |
事業年度末日に、本年度事業の用に供したパソコンの購入代金22万円全額を中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用するために費用に振り替えた。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 220,000円 | 工具器具備品 | 220,000円 |
上記の仕訳では、資産を購入したことを示すために、取得時に資産の勘定科目で仕訳を行います。また、特例を適用するには取得価額全額を損金算入する必要があるため、減価償却費として全額を費用に計上する仕訳を行います。
【取得時に経費計上する方法】
特例の適用にあたって、取得価額全額を損金に算入することが要件であるため、以下の仕訳のように取得時に費用の項目で処理する方法も認められます。
(仕訳例)
一台22万円のパソコンを現金で購入し、すぐに事業の用に供した。対象の資産は、中小企業者等の少額減価償却資産に該当するものである。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 220,000円 | 現金 | 220,000円 |
中小企業者等であれば少額減価償却資産の特例を適用できる
取得価額10万円未満の少額資産(少額減価償却資産)は全額を損金に算入できることから、多くの場合全額を費用に計上する会計処理が行われます。
なお、中小企業者等に該当する法人であれば、10万円未満の少額減価償却資産だけでなく、取得価額30万円未満の少額減価償却資産も全額を損金に算入(※300万円に達する金額まで)できます。10万円未満の少額資産の損金算入、一括償却資産、少額減価償却資産の特例は選択適用となりますので、状況に応じてうまく活用するとよいでしょう。
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