- 作成日 : 2025年1月30日
法人の確定申告は自分でできる?注意点や税理士に依頼するかの基準も解説
法人の確定申告といえば、税理士やアウトソーシングに依頼するというイメージをお持ちの方は多いでしょう。しかしながら、経費節約等の理由から自分で確定申告を行いたいという方もいるかもしれません。
今回は、法人の確定申告は自分でできるのか、そして可能な場合、どのような流れで行うのかをご紹介します。
目次
法人の確定申告は自分でできる?
結論から申し上げると、法人の確定申告は税理士などに依頼せずに自分で行うこともできます。自分で確定申告を行う場合のメリットと注意点、そして、自分で確定申告を行えるかの判断基準を確認しましょう。
確定申告を自分で行うメリット
法人が自分で確定申告を行うメリットは以下の通りです。
■ 費用がかからない
税理士やアウトソーシングに委託すると報酬等の費用がかかりますが、自分で行う場合、費用は必要ありません。
■ 帳簿や情報を渡す時間や手間が不要になる
税理士などに確定申告業務を委託する場合、自社の情報や帳簿を渡し、綿密に連絡を取る必要がありますが、自分で行う場合はそれらの手続きは不要です。コミュニケーションコストの削減ができます。
確定申告を自分で行う注意点
自分で確定申告を行う場合の注意点も確認しておきましょう。
■ 知識がない場合、手続きに時間や手間がかかる
法人の決算や確定申告を行うためには会計や法律の知識が必要です。知識がない場合、確定申告手続きに時間がかかり、通常業務に影響が出る可能性があります。また、上手に節税対策ができない恐れもあります。
■ 専門家のアドバイスが受けられない
税理士と顧問契約を結んでいると、会計や確定申告手続きだけでなく、経営のアドバイスも受けられます。税理士に依頼せず、自分で手続きを行う場合、アドバイスは受けられません。
■ 書類の不備が発生しやすい
税理士などの専門家がチェックしていない確定申告書類は、不備がある可能性が高くなります。不備がある書類を提出すると修正申告が必要となり、場合によっては追徴課税が発生することもあります。
■ 税務調査の対応も自分で行う必要がある
税理士などに依頼していないと、確定申告後に税務調査が入った場合に自分で対応しなければなりません。
法人の確定申告を自分で行うかどうかの判断基準
以下に当てはまる場合、専門家に依頼せず自分で確定申告を行ってもよいでしょう。
- 従業員がいない
- 売上が少ない
- 節税を気にしない
- 会計ソフトを使っている
これらの詳細は後ほど解説します。
法人の確定申告とは
法人の場合、以下の税金について確定申告を行います。
【国税】
【地方税】
- 法人住民税
- 法人事業税
法人税
法人税とは、事業で得た所得(以下「所得」)に課せられる税金です。ただし、所得すべてに課税されるわけではありません。所得から税務上損金としないものや各種控除を差し引いた金額に課税されます。
消費税
商品・サービスの販売や提供の際にかかる税金が消費税です。消費税免税事業者でない法人(売上1,000万円以上、もしくは適格請求書発行事業者)に納税の義務があります。
法人住民税
事務所がある都道府県や市町村に支払う税金です。法人税額に自治体によって定められた税率を掛けて算出される「法人税割」と資本金等の額と従業員数で税額が決まる「均等割」を合わせた金額が納める税額となります。
なお赤字の場合、法人税割部分は課税されませんが、均等割部分は課税されます。
法人事業税
法人が事業を行う際に利用する行政サービスの経費を一部負担する、という目的で課せられる税金です。法人税同様、赤字の場合は課税されません。
税率は、全国一律の「標準税率」と各都道府県がそれぞれ定める「超過税率」に分けられています。
法人の確定申告の流れ
法人の確定申告までの基本的な流れは以下の通りです。
税金の申告は上記の「9.各種申告書を税務署などへ提出し納税する」の部分です。税金の種類ごとに確認してみましょう。
法人税の場合
法人税は、決算書作成後、それに基づき法人税等の計算をして税務署に申告します。原則として、事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内に所轄税務署で確定申告および税金の納付を行ってください。「法人税申告書」にて申告を行います。
消費税の場合
消費税(消費税および地方消費税)の申告と税金の納付期限は事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内です。「消費税申告書」にて申告を行います。申告先は法人税同様に所轄税務署です。
法人住民税・法人事業税の場合
地方税である法人住民税、法人事業税の申告先は都道府県税事務所です。「法人事業税及び法人住民税申告書」にて申告を行いますが、書式は自治体ごとに異なるため気を付けましょう。こちらも申告と納付期限は事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内です。
確定申告を自分で行ったほうがよいケース
自分で確定申告を行ったほうがよいケースをご紹介します。
従業員がいない
従業員がおらず代表者の自分しかいない法人であれば、確定申告手続きはそれほど複雑にはなりません。自分で確定申告をしても業務の負担にはならないでしょう。
売上が少ない
売上高1000万円以下など、売上が少ない法人も申告額や税額を間違えるリスクが低いため、自分で確定申告手続きを行ってもよいでしょう。また、法人税を納付しなくてもよい赤字法人の場合も、自分で確定申告を行っても問題ありません。
節税を気にしない
税理士等の専門家は節税の知識を持っているため、確定申告の際、法人にさまざまなアドバイスをしてくれます。しかし、「節税はそれほど気にしない」という法人であれば、専門家に任せず自分で確定申告をしても構いません。
会計ソフトを使っている
会計ソフトを利用すれば、会計や決算の知識がそれほどない方でも会計業務が行えます。確定申告書類の作成も可能です。
確定申告を税理士に依頼したほうがよいケース
確定申告を自分で行わないほうがよいケースもあります。こちらも確認しておきましょう。
申告業務を間違わず行う自信がない・申告書類を作る時間がない
確定申告業務を行うためには多くの知識が必要です。知識があまりなくミスなく行う自信がないという場合は自分で行わないほうがいいでしょう。
また、通常業務が忙しく申告書類を作る時間が取れないという場合も、専門家に任せることを検討してください。
売上が多い
売上が多い法人は確定申告作業も煩雑になりがちです。そして、所得も多いと税額が高くなる可能性もあります。間違いなく申告するためにも専門家に依頼するとよいでしょう。
複数の収入源がある
複数の収入源がある法人も確定申告作業が煩雑になるため、自分だけ申告を行うのは難しくなります。
消費税申告がある
消費税計算は複雑です。特に売上が多い法人の場合、計算ミスが生じる可能性もあります。自分だけで申告作業を行わず、専門家に依頼しましょう。
税務調査対策をしたい
確定申告後、税務調査が入る可能性があります。「自分だけでは対応できそうにない」という法人は、自分で確定申告はしないほうがよいでしょう。
確定申告は自分でもできる!ただし、注意点は把握しておこう
今回ご紹介したように、確定申告は税理士などに委託せずとも自分でもできます。その際は、なるべく通常業務に支障を出さないように、会計・経理の専門知識があまりなくても申告書類作成ができる会計ソフトを利用することをおすすめします。
自分だけで確定申告を行うと、ミス発生の可能性がある、節税対策が不十分、税務調査対策ができない、などのデメリットもあります。これらのデメリットを避けたいというのであれば、専門家に委託することを検討してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
経理担当が決算を乗り切るには?決算業務の流れやチェックリストを紹介
経理の決算業務は、会社の財政状況を把握し確定させるための重要な作業です。企業の経営状態や財務状況を正確に把握するため、経理担当者は期中の取引をまとめて決算書類を作成し、納税額の確定まで行う必要があります。 本記事では、決算業務の基本的な流れ…
詳しくみる決算書の作り方は?手順や必要書類を簡単にわかりやすく解説
決算書を作るには、会計関連の書類の収集など、の事前準備が必要です。その上で、日々の取引の記帳を行い、決算整理仕訳などの手順を踏んで、決算書を作成していきます。この記事では、決算書作成のスケジュールモデルや作成工程の目安、決算書作成に必要な書…
詳しくみるキャッシュフローを改善するためのポイント
事業を継続していると、会社にはお金が出たり入ったりします。キャッシュフローとは、一定期間の活動の結果として会社に出たり入ったりするキャッシュということになり、実際に手にする現金の流れのことを指し、健全な事業の運営を継続するためには、これが重…
詳しくみる連結決算で親子会社間に決算期のずれがある場合は?わかりやすく解説
連結決算において親・子会社間で決算期がずれている場合、一定の期日を境に対応が異なることをご存知ない企業の方も多いのではないでしょうか。原則として決算日は統一することが推奨されますが、ずれている期間によっては調整しなくても良いケースもあります…
詳しくみるキャッシュフローとは?キャッシュフロー計算書(C/F)の読み方を解説
キャッシュフロー(C/F)は、一定期間における企業や個人の現金および現金同等物の流入と流出の差額のことです。 企業にとって資金の状況を把握するのは非常に重要です。適切に資金の状況が把握できていなければ、場合によっては経営が困難になる可能性も…
詳しくみる資金収支計算書とは何か?おさえておくべき3つのポイント
「資金収支計算書」とは、社会福祉法人や学校法人が作成しなければならない財務諸表の1つです。 ここでは社会福祉法人に関する、 ・資金収支計算書の法的根拠 ・資金収支計算書の記載内容 ・新会計基準導入で変更した点 の3つのポイントについて解説し…
詳しくみる