- 更新日 : 2024年8月9日
決算修正の方法と注意点 – 前年度修正損益は必ず申告
当年度の決算書を作成する際、すでに確定している過年度の決算書に誤りが見つかる場合があります。
この記事では、決算修正(過年度修正)の具体的なやり方と、決算修正の結果によって生じる可能性のある税務上の問題点と対処方法について解説します。過年度の決算書に誤りを見つけお困りの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
決算修正とは?
決算修正とは、既に確定した過年度の決算書について、その内容を当年度の決算書で修正することです。たとえば、前年度の決算書に誤りが見つかり、それを当年度の決算書上で直したい場合に行われます。過年度修正とも呼ばれます。
決算修正はなぜ起こってしまう?
決算書の修正をしなければならなくなるケースでありがちな原因としては、以下のようなものがあります。
通帳記帳しておらず期末の入出金に気付かなかった
期末に売上の入金や経費の引き落としがあったことに気付かず、帳簿を締めてしまうことがあります。期末よりも前に記帳し、期末にチェックしていない場合、収益や費用の計上もれ、また、その結果としての未収収益や未払費用の計上もれが発生しがちです。
棚卸資産の計上もれや評価方法の誤り
期末に商品の在庫がある場合、棚卸資産として評価・計上しなければなりません。本来は棚卸資産として計上すべきものを計上していないことがあります。また、棚卸資産を計上するときに、評価方法を間違えてしまうこともあります。
決算修正が認められるケース
企業会計基準では、原則として過年度の影響を当年度の決算書で修正することは認められません。(会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準を指します。)
つまり過年度の決算書に誤りが見つかった場合には、過年度のあるべき決算書を作る、または過年度からあるべき処理が行われていたものとして、当年度の決算書を作成すべきとされています。
しかし、以下の場合には過年度の影響を当年度の決算書において修正することが認められます。
決算修正が認められるケース
- 金額的に重要性が低い場合
- 中小企業の場合
企業会計原則では、重要性の乏しいものについて簡便的な処理が認められ、過年度の影響を当年度の決算書において修正しても良いと考えられています。
また、中小企業の場合には「中小企業の会計に関する基本要領」が適用されるため、過年度の決算書を修正する必要はありません。
決算修正のやり方
決算修正のパターンは、大きく2通りあります。
1.過年度の損益計算書に影響を与えない場合
たとえば、資産の勘定科目名称を誤っていたようなケースや、長短分類の誤り、資産・負債の間で修正が必要なケースが該当します。
【具体例】短期借入金として表示すべきところを、長期借入金として表示していた場合など
この場合には、単純に科目名称を変更すれば良く、当年度の決算書を作成する上で正しい勘定科目を用いれば良いことになります。
2.過年度の損益計算書に影響を与える場合
たとえば売上高の計上漏れや、未払費用の計上漏れなどが挙げられます。
【具体例】前期売上高を計上しなかった取引について、前期検収済みであったことが発覚した場合など
この場合、前年度の売上高・売上原価が増加し、純額となる利益分だけ、前年度末の利益剰余金残高が前期に提出した決算書上の金額よりも増加することになります。
当年度の株主資本等変動計算書における利益剰余金の当期首残高の金額は、前年度の決算書における期末残高と一致しなければなりません。そのため、この金額を当年度の決算書上で修正する必要があります。
修正表示の方法は2種類。利益剰余金の当期首残高を修正する方法と、当年度の損益計算書上で修正する方法です。
なお損益計算書上で表示する場合でかつ金額が巨額となる場合には、特別損益の区分に表示する必要があります。しかし、実務上は「雑収入」「雑損失」などの勘定科目で表示するケースが多く見られます。
決算修正から生じる、税務上の問題
過年度の損益計算書に影響のある決算修正の場合には、過年度に収めた税金額が変わる可能性があります。この場合、修正申告または更正の請求を行う必要があります。
修正申告または更正の請求が必要な場合は以下の通りです。
修正申告が必要な場合
- 税額に不足が生じるとき
- 欠損額が過大となるとき
- 還付税額が過大となるとき
更正の請求が必要な場合
- 税額が過大であるとき
- 欠損額が過少であるとき
- 還付税額が過少であるとき
追加で税金を払う必要が生じる場合には「修正申告」、税金を納めすぎていた場合には「更正の請求」が必要となります。
特に、修正申告を行った場合は、いくつかのペナルティが存在します。
まず、追加で納付が必要となる税金に対して延滞税が課されます。延滞税は年間で「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合とされていますが、納付期限の翌日から起算して2カ月を経過した場合、税率が年間「14.6%」と「特例基準割合+7/3%」のいずれか低い割合まで増加します。具体的な割合については国税庁のホームページにて確認できます。誤りに気付いた場合には、すぐに修正申告を進めましょう。
また自己申告ではなく税務署からの指摘によって修正申告を行った場合には、過少申告加算税も課されることになります。この税率は、追加納付額に対して10~15%です。できる限り誤りのない決算書を作成するようにしてください。
修正申告をしなかった場合はどうなる?
修正により利益が増える場合、自主的に修正申告しないと、税務調査で指摘されることがあります。税務調査で指摘された場合には、増えた分の税金に加えて、過少申告加算税が課されます。
なお、修正により利益が減って、かかる税金も減ることになる場合、更正の請求をするかどうかは任意なので、申告しなくても問題はありません。
決算修正による修正申告・更正の請求のやり方
修正申告を行う場合には、「確定申告書B第一表」および「第五表(修正申告書)」を提出しなければなりません。作成の流れとしては、まず「第一表」に正しい確定申告内容を記載し、「第五表」に修正前の確定申告内容を記載すると良いでしょう。
また、更正の請求を行う場合には「更正の請求書」を作成し、所轄税務署長に提出する必要があります。この「更正の請求書」は、各税務署や国税庁Webサイトからダウンロード可能です。
詳しくは国税庁による更生の請求手続のページをご確認ください。
決算修正と決算整理の違い
決算修正と混同しやすい用語に「決算整理」があります。決算修正と決算整理の違いを確認しておきましょう。
決算修正はすでに申告した決算を修正することですが、決算整理は申告前に修正するという違いがあります。
決算整理とは、当期の決算前に期中に作成した仕訳と決算時点の情報を照らし合わせ、作成済みの仕訳が当期のものに当たるかを改めて確認し、修正点があれば正すことです。
決算整理では、具体的に以下の作業を行います。
- 当期分と来期分の売上が混合していないかを確認し、分ける
- 支払い済みの来期の費用を「前払費用」に振り替える
- 当期分で支払っていない費用を「未払費用」「未払金」として計上する
- 棚卸振替や有価証券の時価評価などを行う
決算修正はいつまでできる?
決算修正の期限は原則5年です。特に、税金を多く納めすぎていたため修正する「更生の請求」ができるのは、法定申告期限から5年以内と定められているので、注意してください。
また、納める税金が少なすぎた場合や還付される税金が多すぎた場合、修正申告をしても過少申告加算税がかかる場合があるため、注意しましょう。ただし、税務署の調査前に自主的に申告を行えば課税されない場合もあります。
誤りに気付いたらすぐに決算修正を行い、修正申告をしましょう
決算書の作成は忙しい中で人が行うため、どうしてもミスが生じてしまいます。
ミスに気付いた場合に決算修正・修正申告を後回しにしてしまうと、追加で払うべき税金額が大きくなってしまい、企業経営に支障をきたすケースもあります。
間違いに気付いた場合には、すぐに修正措置を講じるようにしましょう。
よくある質問
決算修正とは?
既に確定した過年度の決算書について、その内容を当年度の決算書で修正することです。詳しくはこちらをご覧ください。
決算修正が認められる場合とは?
「金額的に重要性が低い場合」や「中小企業の場合」が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
修正申告をしなかった場合はどうなる?
修正により利益が増える場合、自主的に修正申告しないと、税務調査で指摘されることがあり、指摘された場合には、増えた分の税金に加えて、過少申告加算税が課されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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