- 更新日 : 2024年10月31日
勘定科目「貯蔵品」とは?仕訳から解説
勘定科目のひとつに「貯蔵品」があります。貯蔵品とは、未使用の消耗品を資産として計上するための勘定科目です。たとえば、未使用の切手や収入印紙、文房具などは決算期末には貯蔵品として仕訳をすることがあります。具体的な仕訳例や、貯蔵品を使って仕訳をするときの注意点について説明します。
目次
勘定科目「貯蔵品」とは
「貯蔵品」とは、未使用の消耗品を資産として計上するための勘定科目です。
たとえば、未使用の切手や収入印紙、文房具などは、「貯蔵品」の勘定科目を使うことで、使っていないものを資産として計上できます。ほかにも、次のものなどは「貯蔵品」の勘定科目で仕訳をすることがあります。
- 未使用の回数券
- ボールペンやコピー用紙などの文房具のストック
- ダンボールやガムテープなどの梱包用品のストック
- パンフレットやカタログなどの販売促進に使うもの
また、今後も未使用の状態が続くと思われる固定資産を、倉庫などで保管するときも、「貯蔵品」の勘定科目を使って仕訳をすることがあります。たとえば、購入したものの使用予定のない備品や、生産終了となった製品を製造していた機械などは「貯蔵品」として仕訳をすることが一般的です。
貯蔵品が使われるのはどんなときか
経費計上するタイミングは、購入時ではなく使用時です。購入したけれども使用していないものに対しては、「貯蔵品」の勘定科目で仕訳をすることで資産計上が可能です。年度内に計上することで、資産を正確に把握できるようになります。
貯蔵品の仕訳例
貯蔵品の勘定科目を使って仕訳をするのは、通常は決算時です。収入印紙を2,000円分購入したが、800円分使わなかったときの仕訳については、以下をご覧ください。
<購入時>
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 租税公課 | 2,000円 | 現金 | 2,000円 | 200円の収入印紙×10枚 |
<決算時>
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 貯蔵品 | 800円 | 租税公課 | 800円 | 200円の収入印紙×4枚 |
貯蔵品の注意点
貯蔵品の勘定科目を使用すると、まだ使っていないものを資産として計上できます。しかし、どのようなものでも資産計上できるわけではありません。貯蔵品の勘定科目を使うときの注意点を紹介します。
毎年継続して購入しているものは貯蔵品にならない
毎年購入している消耗品や梱包用品などは、貯蔵品の勘定科目を使いません。たとえば定期的にコピー用紙をカートン単位で購入しているときや、ECサイトを運営している小売店がダンボール箱をまとめて数千単位で仕入れているときなどは、貯蔵品の勘定科目を使わなくても、購入時にまとめて経費に計上できます。
ただし、毎年同様の処理が必要です。今年だけ大量に購入したものが残ってしまったなどのケースでは、貯蔵品の勘定科目を使って、決算時に資産計上をします。
使用予定のない固定資産も貯蔵品にできる
この先、使用することがない固定資産や、製造中止になった製品を製造していた機械などは、貯蔵品として仕訳できます。
30万円で仕入れたものの、使うことがなく倉庫に保管している備品があったとしましょう。今までに20万円を減価償却し、処分価格7万円と見積もられている場合なら、次のように仕訳ができます。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 減価償却累計額 | 200,000円 | 備品 | 300,000円 | 備品の除却 |
| 貯蔵品 | 70,000円 | |||
| 固定資産除却損 | 30,000円 | |||
貯蔵品を処分したときも仕訳が必要
貯蔵品を処分したときは、仕訳が必要です。2万円の価値がある貯蔵品を売却し、利益が1万円出た場合は、以下のように仕訳ができます。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 現金 | 30,000円 | 貯蔵品 | 20,000円 | 在庫を売却 |
| 貯蔵品売却益 | 10,000円 | |||
貯蔵品を売却することで損失が生じることもあります。3万円の価値がある貯蔵品を2万円で売却したときは以下のように仕訳をします。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 現金 | 20,000円 | 貯蔵品 | 30,000円 | 在庫を売却 |
| 貯蔵品売却損 | 10,000円 | |||
貯蔵品を処分費用を払って処分することもあります。この場合は貯蔵品の価値と処分費用の合計を「貯蔵品廃棄損」として仕訳をします。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 貯蔵品廃棄損 | 30,000円 | 貯蔵品 | 20,000円 | 在庫を処分(処分費用10,000円) |
| 現金 | 10,000円 | |||
決算前に貯蔵品の仕訳もしておこう
決算前には、貯蔵品の仕訳もしておきましょう。貯蔵品として仕訳をすることで、決算期内に資産計上できます。
ただし、毎年定期的に購入しているものは、貯蔵品にはなりません。適切に判断し、正確に仕訳をしてください。
よくある質問
貯蔵品とは?
未使用の消耗品を資産計上するときの勘定科目です。使用する予定がない固定資産に対しても、貯蔵品の勘定科目を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
貯蔵品の仕訳のポイントは?
決算時に仕訳をします。借方に「貯蔵品」、貸方に購入時に使用した勘定科目を使用します。貯蔵品を処分したときには、貯蔵品を貸方として仕訳をします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
借入金とはどんな勘定科目?種類や仕訳まで解説
法人が事業を続けていくなかで、仕入や費用の支払いのや企業の成長への投資のためなど、さまざまな理由で金融機関などからお金を借りることがあります。融資を受けたお金のことを「借入金」といいます。しかし、ひとくちに借入金といっても、多くの種類があり…
詳しくみる登録免許税の仕訳に使う勘定科目を解説
登録免許税は会社設立の登記や、登記事項を変更する際に納める税金です。会社を興す際は登記が必須なので、法人は登録免許税を納付しなければなりません。したがって法人の会計処理では、登録免許税の適切な仕訳方法を把握しておく必要があるでしょう。今回は…
詳しくみるその他資本剰余金の配当にかかる会計処理・税務処理を解説!
事業の元手となる財産は財務諸表上で「株主資本」とされます。株主資本は「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」に分けられますが、その中の「資本剰余金」は「資本準備金」と「その他資本剰余金」に分けることができます。 利益がそれほど出ず、配当を出す…
詳しくみる勘定科目『未着品』とは?仕訳から解説
未着品とは手許に届いてない商品を処理するための勘定科目です。手許にある商品と区別するために使用され、主に未着品販売において貨物代表証券を取得した際の商品の所有権が発生したときに未着品として認められます。 商品が現在は手許にない段階であっても…
詳しくみる現金主義と発生主義の違いを理解しよう
企業の基本的な会計ルールである企業会計原則には、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」と示されており、大原則として適正な期間損益計算が求められます。その…
詳しくみる紹介料を経費計上するなら?勘定科目や仕訳の具体例を紹介
人材紹介をビジネスとしている法人への代価や、工事を仲介してもらった個人への謝礼など、紹介料の支払いが発生する場面はさまざまです。紹介料として支払った費用を会計処理する際、勘定科目は交際費を用いるのが適切なのでしょうか。 この記事では、紹介料…
詳しくみる