- 更新日 : 2025年2月19日
特許権の会計処理と償却方法を仕訳まで解説
特許権の耐用年数は8年間で、その間に償却することになります。特許権を購入したときなどには、適切に会計処理を行わなくてはいけません。具体的にどのように会計処理を行うのかについて、仕訳例を用いて解説します。
特許権とは
特許権とは、特許を受けた発明を権利者が一定期間独占的に使用できる権利のことです。特許権は自動的に付与される権利ではありません。発明をした人が特許権を主張したい場合に限り、特許庁に申請書類などを提出し、審査官の審査を受けて特許査定を受け、特許が認められたときのみ、特許権を有することになります。
また、正しく申請して特許権を取得した場合でも永続的に所有し、権利を独占することはできません。特許権の権利の存続期間は、原則として出願の日から20年間となります。
特許権は売買できる権利です。特許権を購入、あるいは取得したときは、会計上は「固定資産」のうち「無形固定資産」に分類します。
特許権の会計処理
業務を行う上で、特定の技術や商品などの特許権を獲得しておく必要が生じることがあります。業務に必要な特許権をA社から50万円で購入したとしましょう。普通預金から口座振替などで支払ったときは、以下のように仕訳ができます。
他者から取得した特許権の場合、特許権の購入対価と付随費用の合計額を取得原価にできます。付随費用には、出願料や特許料などの事業に用いるために支払った費用を含めることが可能です。
一方、自社で取得した特許権を他社に売却することもあるでしょう。B社に70万円で所有する特許権を売却し、口座振込みで代金を受け取ったときは、以下のように仕訳ができます。
特許権の償却
特許権の権利の存続期間は20年ですが、特許権の耐用年数は8年間です。購入した特許権は8年間に分けて同額ずつ償却していきます。例えば800万円で購入した特許権を同額ずつ8年間で償却したとしましょう。特許権を購入した最初の年は、以下のように仕訳ができます。
1年目/8年 | ||||
2〜8年目も同様に償却します。
2年目/8年 | ||||
上記の仕訳例のように摘要欄に償却何年目か記載しておくと、帳簿が見やすくなるでしょう。
なお、特許権の耐用年数は8年ですが、権利の耐用年数は種類ごとに異なります。例えば、実用新案権は5年、商標権は10年です。いずれも耐用年数に従って償却し、帳簿に記載しておきましょう。
商標権を年初に500万円で購入し、その年内に最初の償却を行ったときは、以下のように仕訳ができます。
1年目/10年 | ||||
2年目以降も同様に償却し、10年目まで毎年帳簿に記します。
特許権を適切に帳簿に記入しよう
特許権は20年間存続する権利です。特許権を特許庁に申請し、受理された場合には、20年間所有して独占的に使用できます。また特許権は売買が可能な権利です。購入したときには「借方」に「特許権」と記入し、購入した価格と購入時や事業に用いるためにかかった費用を合算して計上しましょう。
特許権の耐用年数は8年です。特許権を購入した場合は、8年間で償却します。「借方」に「特許権償却費」、「貸方」に「特許権」と記入し、1/8の金額ずつ償却していきましょう。
特許権を売却したときは「貸方」に「特許権」と記入して仕訳ができます。売却にかかった費用を研究開発費に計上し、経費にすることが可能です。また、研究費以外にも出願料や登録費用なども含めて経費計上できます。
特許権以外にも売買できる権利は少なくありません。商標権や実用新案権なども購入し、事業に必要な権利であれば経費計上できます。それぞれ耐用年数が決まっているので、各年数に分けて償却し、帳簿に記入しておきましょう。例えば商標権であれば耐用年数が10年のため、10年に分けて償却できます。
よくある質問
特許権の会計処理のポイントは?
特許権を購入したときには「借方」、自社で取得した特許権を売却したときには「貸方」に「特許権」の勘定科目を記載し、会計処理を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
特許権の償却のポイントは?
特許権は20年間続く権利ですが、耐用年数は8年なので8年間で償却します。基本的に同額ずつ8年間に分けて「借方」を「特許権償却費」、「貸方」を「特許権」で仕訳をします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
営業外支払手形と営業外受取手形を仕訳から解説
手形を活用すれば、資金を準備できないときでも、仕入や有価証券の購入などを行うことが可能です。企業が扱う手形は、取引の事由に応じて、支払手形(受取手形)と営業外支払手形(営業外受取手形)に分かれています。 今回は営業外支払手形、および営業外受…
詳しくみる売上戻り高の意味と仕訳例まで徹底解説
「売上戻り高や売上値引き、仕入れ戻しなど、似ている名前の用語が多くて違いがよく分からない」という経理担当者は多いのではないでしょうか。本記事では、これらの勘定科目の意味の違いや仕訳例を経理担当者向けに解説します。返品や値引きの対応が多くて困…
詳しくみる倒産防止共済の仕訳と勘定科目は?損金算入に必要な書類は?
中小企業のような規模の小さい事業者は、取引先の倒産などのあおりを受け、急激に経営状況が悪化し、連鎖的に倒産の危機に見舞われることがあります。このような状況を防止するため、中小企業倒産防止共済法に基づく救済制度のひとつ「中小企業倒産防止共済」…
詳しくみる前受金とは?仕訳例から、前受収益・仮受金との違いまで解説!
決算書の負債の部に表記される勘定科目の中に「前受金」というものがあります。商品の販売引き渡しや役務提供が完了する前に受け取った金銭を、前受けとして処理する際に使用する勘定科目です。 金銭を受け取った際に使用する勘定科目にはその他にも「前受収…
詳しくみる未渡小切手とは?仕訳から解説
未渡小切手とは、取引先に渡す予定で振り出したにもかかわらず、渡せないままになっている小切手のことです。本記事では、未渡小切手が見つかった場合の対処方法や、混同されがちな未取付小切手との違いについて解説しています。未渡小切手の取扱い方が分から…
詳しくみる前払費用の勘定科目と仕訳例や長期・短期前払費用との違いを解説
前払費用は、貸借対照表に資産として表示される科目で、決算ではよく使われるものの一つです。 貸借対照表の資産の部には、よく見ると流動資産だけではなく、固定資産の部にも「長期前払費用」として表示されている場合があります。 この記事では、前払費用…
詳しくみる