- 作成日 : 2024年8月19日
業務委託費とはどんな勘定科目?仕訳例や消費税の取扱など
業務委託費は、契約に基づき外部に業務を委託した際に支払う費用に関する勘定科目です。この記事では、業務委託費に該当する経費や仕訳、業務委託費と消費税・源泉徴収の関係、外注費との違いについて解説します。
業務委託費とは
業務委託費とは、業務を外部の企業または個人事業主に委託することで発生する費用のことです。
業務委託には、請負契約、委任契約、準委任契約の3つの形態があります。請負契約は、成果物を委託先から納品してもらうことで報酬を支払う契約です。委任契約は法律行為の遂行を委託する場合の契約で、代理人契約などが挙げられます。準委任契約は、事実行為の遂行を委託する契約です。
一般的に、業務委託は社内の業務をスリム化したい場合や外部の専門家などに質の高い成果物を作成してもらいたい場合に活用されます。
業務委託費に該当する経費
下表のように業務委託費の範囲は幅広く、さまざまな経費を業務委託費として計上できます。ただし、業務委託費は外部への委託であることから、社内の従業員に対する報酬は給与となり、業務委託費には含まれません。
主な業務委託費の一覧 |
---|
など |
業務委託費の仕訳例
業務委託費が発生した場合はどのように仕訳をするのか、仕訳例をいくつか紹介します。
(仕訳例1)
顧問契約を結んでいる税理士に、顧問料として普通預金から5万円支払った。なお、支払先は税理士法人ではなく、税理士個人である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
業務委託費 | 50,000円 | 普通預金 | 44,895円 |
預り金 | 5,105円 |
税理士など特定の資格を持つ個人に対する報酬については、源泉徴収の義務があります。そのため、源泉徴収額(100万円以下の報酬は報酬額×10.21%)を差し引いた額を支払います。
(仕訳例2)
経営コンサルティング会社に報酬として100万円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
業務委託費 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,000,000円 |
コンサルティングは特定の資格に該当せず、また法人に対する支払いのため源泉徴収はしません。
(仕訳例3)
オンラインアシスタントサービスを利用してバックオフィス業務を委託し、月の利用料として10万円をクレジットカードから支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
業務委託費 | 100,000円 | 未払金 | 100,000円 |
個人に対して原稿作成やWebデザイン制作などを依頼する場合は源泉徴収が必要ですが、法人への業務委託なので源泉徴収は発生しません。
業務委託費は課税対象になる?
業務委託費は消費税の課税対象です。そのため、業務委託費を支出する側は、本来の対価の額に消費税を加算した金額を支払います。業務委託先がインボイス発行事業者である場合は、原則としてインボイスを発行してもらうことで、業務委託費の消費税分を仕入税額控除額に含めることができます。
なお、業務委託費として報酬を受け取る側には、法人であれば法人税、個人であれば所得税がかかります。法人税については、取引相手である法人が自ら法人税の計算をして申告することになるため、業務委託費を支払う側で行う手続きは特にありません。
業務委託先が個人で、国税庁が源泉徴収の対象としている報酬・料金などに該当する場合は、支払う側が所得税の源泉徴収をしなければなりません。
業務委託費の源泉徴収が必要な場合の対応
個人に対する原稿料や講演料の支払い、弁護士などの特定の資格を有する人への支払いでは、報酬を支払う際に所得税の源泉徴収が必要です。
対象者に報酬を支払うときに、本来の報酬の金額から源泉徴収分を差し引いた金額を支払います。源泉徴収額は、報酬や料金の区分によって決められています。例えば、弁護士や税理士などに報酬を支払う場合、源泉徴収する金額は対価の10.21%(100万円を超える部分については20.42%)です。例えば報酬が10万円の場合、10.21%に相当する10,210円を報酬から控除した金額を支払います。
なお、源泉徴収した金額はあくまでも対象者からの預り金なので、対象者に代わって納付しなければなりません。源泉徴収額は、原則として報酬を支払った月の翌月10日までに納付します。
報酬・料金等の所得税徴収高計算書(弁護士など特定の資格を有する個人への報酬は給与所得・退職所得等の納付書)を作成し、税務署または金融機関の窓口で納付しましょう。窓口での納付に代えて、e-Taxを利用した納付もできます。
業務委託費と外注費の違い
外注も業務委託も、外部に業務を委託することをいいます。
外注と業務委託で異なるのは契約の有無です。業務委託は、請負契約・委任契約・準委任契約のある業務の発注に限られます。
一方、外注は契約がないものも含めて広い範囲で使われる言葉であるため、慣習として使われることはあっても、基本的に契約時には使われません。
業務委託費は源泉徴収に注意しよう
業務委託費は、消費税、法人税、所得税などの課税対象です。個人に対して業務委託費を支払う場合は、源泉徴収が必要になることがあります。源泉徴収をする場合は、業務委託費の仕訳も源泉徴収を含めて行わなければなりません。業務委託費については、源泉徴収の有無に注意して会計処理をしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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