- 更新日 : 2026年2月19日
請求書を一括で振込できる?マナーや手数料の負担、効率化の手順を解説
同一取引先への複数請求書は、事前に合意があれば合算して一括で振り込めます。
振込手数料を差し引いてもよいですか?
A. 特約がなければ支払側の負担が原則です。またインボイス制度下では、相手負担(手数料相殺)にすると返還インボイスの発行が必要となり事務処理が煩雑化するため、自社負担による一括振込が実務上合理的です。
複数枚ある請求書を一括で振込できると、振込手数料の削減や経理業務の効率化にもつながります。
同一の取引先に対して複数の請求書がある場合、合算して支払うことは一般的な商慣習として認められていますが、事前の通知や合意が必要です。
月次の支払業務において、「一件ずつ入力する手間を省きたい」「手数料負担を減らしたい」と考える担当者もいるでしょう。
本記事では、請求書を一括で処理する際のルールや手数料の考え方、効率的な手順について詳しく解説します。
目次
請求書を一括で振込することはできる?
同一の取引先に対する複数の請求書は、合算して一括で振込しても問題ありません。
企業間取引(BtoB)において、1ヶ月の間に複数回の取引が発生することは珍しくなく、都度払いではなく「締め日」を設けて翌月末などにまとめて支払う掛取引が一般的だからです。
ただし、これにはいくつかの条件やマナーがあります。
同一取引先なら合算して支払う
同じ取引先から発行された複数の請求書は、合計金額を算出して一度の振込手続きで済ませるのが通例です。
振込手数料は件数ごとに発生するため、これをまとめることでコスト削減につながります。たとえば、月に3回請求書が届いた場合、3回振り込むのではなく、合計額を1回で振り込むほうが、振込手数料は3分の1で済みます。
受け取る側にとっても、入金確認の手間が1回で済むメリットがあります。
振込先口座が異なる場合の対応
同一企業であっても、請求書ごとに振込先口座(支店や口座種別)が異なる場合は、原則として一括振込はできません。
大企業や部門独立採算制をとっている企業では、事業部ごとに管理口座を分けているケースがあるからです。この場合、指定されたそれぞれの口座へ個別に振り込む必要があります。
無理に一つの口座へまとめてしまうと、相手方の経理処理で「どの案件の入金か不明」といった混乱を招く原因となりかねません。
もし一括で支払いたい場合は、事前に相手方の経理担当者へ「〇〇支店の分も合わせて、こちらの口座へ振り込んでもよいか」を確認する必要があるでしょう。
事前の連絡と支払案内書の送付
一括振込を行う際は、どの請求書を合算したのかが相手に伝わるよう、支払案内書(支払通知書)を送付するか、メールで内訳を伝えるのがマナーです。
金額がぴったり一致していれば推測は可能ですが、振込手数料を差し引いたり、返品等の相殺があったりする場合、相手側での入金消込(売掛金の消込)作業が困難になります。
「〇月分請求のA案件(10万円)とB案件(5万円)を合算して振り込みます」といった明細情報を事前に、あるいは振込と同時に伝えることで、トラブルを未然に防げるでしょう。
一括振込時の振込手数料はどちらが負担すべき?
振込手数料の負担については、原則として「支払う側(債務者)」が負担しますが、当事者間の取り決めが優先されます。
請求書の金額と実際の振込額が合わない原因の多くは、この手数料の差し引きによるものです。
トラブルを避けるために、法的な原則と実務上の慣習を正しく理解しておきましょう。
民法上の原則と商慣習の違い
民法第485条では、弁済の費用(振込手数料など)について特段の意思表示がない場合、債務者(支払う側)が負担すると定められています。
つまり、法律の原則に従えば、請求金額全額を相手の口座に着金させ、手数料は別途自社が支払うのが正解です。
一方で、商慣習としては「振込手数料は受取人負担」とするケースも過去には多く見られました。しかし、インボイス制度の導入やコンプライアンス意識の高まりにより、原則通り「振込側負担」とする企業が増加傾向にあります。
もし手数料を差し引いて振り込む(相手負担にする)場合は、契約書や発注時の条件でその旨が合意されていなければなりません。
(弁済の費用)
第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
参照:民法|e-Gov法令検索
差額が発生した際のリスク
手数料を勝手に差し引いて一括振込を行うと、相手側では「一部未入金」として扱われるリスクがあります。
数百円の差額であっても、経理上は残高が残り続けるため、相手方の担当者はその処理に追われることになります。最悪の場合、信用問題に発展したり、次回の取引を断られたりする要因になりかねません。
特に新規の取引先に対しては、手数料を自社負担にするのが無難であり、信頼関係構築の一助となるでしょう。
インボイス制度下での端数処理と手数料
2023年10月1日から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)の下では、消費税の端数処理と手数料の扱いがより厳格になっています。
複数の請求書を一括で支払う際、それぞれの手数料を差し引く計算をすると、消費税額にズレが生じる可能性があります。
また、振込手数料を相手負担とする場合、その手数料分に対する「返還インボイス(適格返還請求書)」の発行を求める必要が出てくるなど、事務処理が煩雑になります。
こうした事務コストを考えると、手数料を支払側が負担して一括振込するほうが、結果的に全体の業務コストを下げられるケースが多いといえます。
銀行振込を一括で行い業務を効率化する手段はある?
毎月の支払件数が多い場合、ATMや窓口での手続きではなく、インターネットバンキングの「総合振込」などを活用することで業務を効率化できます。
手作業による振込は、口座番号の入力ミスや二重払いのリスクがつきまといます。
デジタルツールを活用し、安全かつ迅速に処理する方法を検討しましょう。
インターネットバンキングの総合振込を活用する
総合振込(総振)とは、複数の振込先データをまとめて銀行に送信し、一括で資金決済を行うサービスです。
通常の振込とは異なり、一件ごとに操作する必要がありません。一度に数十件から数百件の振込指示が可能で、経理担当者の作業時間を大幅に短縮できます。
また、多くの金融機関では、総合振込を利用する場合の振込手数料を通常の振込よりも安価に設定しています。
| 項目 | 通常の振込(都度振込) | 総合振込 |
|---|---|---|
| 対象 | 件数が少ない場合 | 件数が多い場合(目安:10件以上) |
| 操作 | 1件ずつ入力・承認 | データ送信で一括承認 |
| 手数料 | 比較的高め | 割安な設定が多い |
| 事前準備 | 特になし | 契約が必要な場合が多い |
全銀フォーマットデータの作成
総合振込を利用するには、「全銀フォーマット」と呼ばれる銀行共通の形式で振込データを作成する必要があります。
多くの会計ソフトや給与計算ソフトは、この全銀フォーマットでのデータ出力に対応しています。
ソフトに入力済みの買掛金や未払金のデータから振込用データを生成し、それをインターネットバンキングに取り込むだけで、振込先情報や金額が自動反映されます。これにより、手入力によるミスをほぼゼロにすることが可能です。
振込代行サービスによる一括振込
銀行の総合振込以外にも、法人向けの「振込代行サービス」を利用する方法があります。
これは、振込資金と手数料を代行会社に一括で入金し、代行会社が各取引先へ振り込む仕組みです。
銀行の手数料よりも安価な単価(例:一律200円台など)で提供されている場合があり、振込件数が非常に多い企業や、振込コストを極限まで下げたい企業に適しています。
ただし、着金までに1日程度のラグが発生する場合があるため、支払期日に余裕を持ったスケジュール管理が求められます。
請求書の一括振込とインボイス制度の消込課題
請求書を合算して一括振込する場合、受け取る側の「入金消込」作業が複雑化しないよう配慮する必要があります。
特に、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が完全に義務化されており、データの整合性が強く求められます。
ここでは、デジタル経理時代特有の課題と解決策について解説します。
消込作業の複雑化を防ぐ工夫
一括振込された金額が、どの請求書の合計なのかが不明確だと、経理担当者は内訳確認のために時間を取られます。
これを防ぐため、振込依頼人名の欄に工夫を凝らす方法があります。
通常は「カ)〇〇ショウジ」といった社名のみですが、可能であれば「カ)〇〇 1月分」のように対象月を入れたり、事前に取り決めた「顧客コード」を付記したりすることで、相手方のシステムでの自動消込率が上がります。
また、前述した「支払通知書」をメール等のデジタルデータで送ることは、双方の会計ソフト連携においても有効です。
独自のID管理とEDI情報の活用
金融機関のシステムによっては、振込データに「EDI情報(企業間取引情報)」を添付できる機能があります。
ここに請求書番号や伝票番号を入力して送信すれば、受け取り側の通帳や入金データにその番号が表示されます。
ZEDI(全銀EDIシステム)に対応している金融機関同士であれば、XML形式で詳細な商流情報を添付できるため、請求書ごとの金額内訳をデータとしてそのまま渡すことも可能です。
まだ普及の途上にある技術かもしれませんが、経理DXを進めるうえでは知っておくべき手段でしょう。
振込業務をミスなく進めるための手順
実際に複数の請求書を一括で振り込む際の流れをステップ形式で整理します。
確認不足は誤振込や信用低下に直結するため、プロセスを標準化しておくことが望ましいでしょう。
STEP1:請求書の照合と支払予定表の作成
まず、手元にある請求書の内容が、発注内容や納品書と一致しているかを確認します。
そのうえで、当月の支払予定表(支払一覧表)を作成します。ここで「同一取引先への支払いが複数ないか」をチェックし、ある場合は合算した金額を算出します。
会計ソフトを使用している場合は、買掛金や未払金のレポートを出力して確認するとスムーズです。
STEP2:手数料負担と振込口座の確認
各取引先との契約条件を確認し、振込手数料を「自社負担(当方負担)」にするか「先方負担」にするかを確定させます。
初めて取引する相手や、久しぶりに取引する相手の場合、口座情報に変更がないかも確認しましょう。
特に、金融機関の統廃合により支店名や支店番号が変わっているケースには注意が必要です。
STEP3:振込データの作成と承認
インターネットバンキングまたは振込代行サービスの形式に合わせて、振込データを作成します。
会計ソフトから出力したCSVデータを取り込むのが最も安全です。
データ作成後は、必ず別の担当者が「ダブルチェック」を行う体制を作りましょう。金額の桁間違いや、口座番号の相違は、この段階で発見しなければなりません。
STEP4:支払通知の発行と実行
振込を実行(または予約)します。
一括振込を行なった取引先や、手数料を相殺した取引先に対しては、振込日当日までに「支払通知書」をメールまたは郵送で送付します。
「本日の振込は、請求書No.001とNo.002の合算です」と一言あるだけで、相手方の経理業務は格段に楽になり、良好な関係維持につながります。
請求書の一括振込の際は取引先への配慮が大切
複数の請求書を一括で振り込むことは、コスト削減と業務時間の短縮に直結する有効な手段です。
同一取引先への支払いをまとめることで、振込手数料を抑えられるだけでなく、承認作業の回数も減らすことができます。
しかし、その際に忘れてはならないのが、取引先への配慮と正確な情報伝達です。
ただ漫然と合計額を振り込むだけでは、相手方の経理処理に負担をかけ、「管理がずさんな会社」という印象を与えかねません。手数料の負担区分を明確にし、支払通知書を活用して内訳を伝えることが、円滑な取引継続のポイントとなります。
会計ソフトやインターネットバンキングの機能を活用することで、こうした一括処理をミスなく自動化する環境が整っていくでしょう。
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