- 作成日 : 2025年1月10日
決算報告を成功させる説明の仕方は?ポイントや例文を紹介
企業の経理担当者の中には、決算報告の説明担当になった方もいるかと思います。決算報告を説明する際には、押さえておきたいポイントがあります。
本記事では、決算報告を説明する際のポイントや活用できるフレーズなどを紹介します。
目次
決算報告とは
決算報告の説明の仕方について解説する前に、まずは決算報告について解説します。
決算報告とは、事業年度ごとに期末の財政状態と経営成績を株主や債権者などに報告することです。法人においては、決算報告書の作成が義務となっています。
呼び方にも決算書や決算報告書などがありますが、呼び方が違うだけで同じ意味を持つ言葉です。決算書という言葉は俗称で、作成が義務づけられている法律によって、呼ばれ方も異なります。法律によっては、財務諸表や計算書類と呼ばれることもあります。
目的
決算報告を行う目的は、次の2つです。
- 企業の財政状態と経営成績を外部に報告するため
- 自社の財政状態および経営成績を把握するため
決算報告書は、株主・取引先・税務署・金融機関などに対して、その事業年度における財政状態と経営成績を報告するために必要です。
税務署は、確定申告で提出された決算報告書を確認し、適正に税額が算出されているかを判断します。株主は投資意思決定の判断として用いるほか、銀行などの金融機関から融資を受ける際にも使われます。
また、決算報告書は自社の財政状態を把握するうえでも欠かせません。決算報告書は1年間の事業の成果をまとめたものであるため、書類を読み解いて分析することで、適切な経営判断が下せるようになります。
開催時期
決算報告を行う時期は、主に次の2つです。
- 確定申告のとき
- 株主総会を開催するとき
確定申告の際には、確定申告書と共に決算報告書の提出が必要です。確定申告の時期は法人税法によって定められています。法人税の申告・納付期限は事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。
株主総会では、株主に対して決算報告を行う必要があります。株主総会は会社法で、「毎事業年度の終了後一定の時期に招集すること」と定められており、年に一度の開催が義務づけられています。
必要な書類
決算報告書は、法人税法・会社法・金融商品取引法それぞれで必要書類が異なるため注意が必要です。それぞれの法律において必要な書類は、次のとおりです。
<法人税法>
<会社法>
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
<金融商品取引法>
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- キャッシュ・フロー計算書
- 附属明細書
共通している書類もありますが、それぞれで必要となる書類もあるため、あらかじめ理解しておきましょう。
決算報告の説明の仕方のポイント①【財務三表】
決算報告時に財務三表を説明する際のポイントを紹介します。財務三表とは、次の3つのことです。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュ・フロー計算書
まず、どの項目が重要であるかを簡潔にまとめて報告しましょう。あわせて、収益性や安全性、効率性、お金の流れの4点についても具体的な説明を行ってください。それぞれのポイントは、次のとおりです。
収益性
収益性を確認するうえでは、損益計算書を用います。損益計算書の5つの利益が黒字であることが基本です。
総資本利益率(ROA)や自己資本利益率(ROE)、売上高利益率を算出することで、同業他社との比較や自社の経年変化を分析・評価可能です。
安全性
投資の安全性を分析する際は、固定比率や固定長期適合率が経営指標となります。次の指標を計算して、評価内容を分析しましょう。
効率性
企業が持つ売上債権や在庫を効率的に活用できているかの指標としては、売上債権回転期間や在庫回転期間が有効です。
お金の流れ
キャッシュ・フロー計算書を用いると、企業のお金がどのようなところへ流れているかを把握できます。また、配当性向を用いると、利益をどれくらい配当に回しているのかがわかります。
決算報告の説明の仕方のポイント②【期間・予実比較】
数値だけを見ても、何を示しているのかわからないため、財務三表を期間比較することが大切です。比較できるように、まずは次の期間に対しての資料を準備しましょう。
- 前期/当期
- 前月/当月
- 前期同月/当期同月
- 前期同期間/当期同期間
資料を用意したうえで、次のような視点で分析した結果を伝えることが重要です。
- 今期の利益は前期と比べてどのように変化しているか
- 資産と負債の増減はどう変化しているか
- キャッシュの増減は前期と比べてどうなっているのか
など、期間比較を行うと同時に要因も含めて分析して伝えましょう。
また、予算をあらかじめ設定していた場合は、予算どおりに進行しているのかどうかを確認しなくてはなりません。その際は、予算と実績を比較できる資料も準備しておきましょう。
さらに、資金繰りの予測についても、同様の対応が必要です。
決算報告の説明の仕方のポイント③【税額の見積もり】
経営者の一番の関心事は税額であるため、しっかりと説明できるように準備しておきましょう。報告する際は、いくらの税額がどの時期に発生するか把握したうえで、納付期限がいつなのかを報告してください。
なお、税額に関しての細かな計算方法などについては説明不要です。
決算報告の説明の仕方のポイント④【収支予測・改善案】
収支予測・改善案では、会計情報の分析と期間比較・予実比較の分析が重要です。会計情報の分析を行うことで、今後の収支予測が立てられるようになるほか、期間比較や予実比較の分析を行えば、改善策の立案も可能です。
決算報告で利用できるフレーズ・例文
ここでは、決算報告で利用できるフレーズ・例文を紹介します。
<フレーズ・例文>
その概略につきまして、ご説明申し上げます。
前述した内容を説明する
財務三表
期間・予実比較
税額の見積もり
収支予測・改善案
-----
質疑応答を設け、対応する
-----
それでは、これをもちまして第●期の決算報告を終わります。
こちらの例文を参考に、自社にあった内容にカスタマイズしてご活用ください。
決算報告における説明の仕方のポイントを押さえておこう
決算報告を行う目的としては、財政状態と経営成績の外部報告と自社の財政状態および経営成績の把握があります。決算報告を行う時期は、確定申告時と株主総会時の2つです。必要な書類は法人税法・会社法・金融商品取引法など法律によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
決算報告には多くの項目があるため、どの項目が重要であるかを簡潔に伝えることが重要です。また、数値を用いつつ期間・予実比較することで具体的な内容に仕上がります。
本記事で紹介した内容を参考に、理解しやすい説明ができるようになりましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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