- 更新日 : 2025年2月20日
インボイス制度で小口精算はどう変わる?立替経費の精算方法や効率化のコツについて解説
インボイス制度の導入により、小口精算手続きや会計処理の複雑化が懸念されます。特に、インボイス制度ではいくつかの特例が設けられており、経営者や経理担当者に加え、経費を取り扱う従業員の理解も必要不可欠です。本記事では、インボイス制度による小口精算への影響や各種特例の内容、インボイス対応のポイントなどについて解説します。
目次
インボイス制度により小口精算はどう変わる?
2023年10月1日よりインボイス制度が導入されたことで、仕入税額控除の新たな要件として「適格請求書(インボイス)」の保存が義務付けられました。
インボイス制度導入の影響については、個人・法人を問わずに発生しており、特に事業規模の大きな企業においては、経理業務の負担が大幅に増加するケースもあるでしょう。
また、インボイス制度によって経費精算業務にも変更点があるため、経営者や経理担当者だけでなく、経費を使う従業員についても、制度に対する正しい理解が求められます。
少額な経費精算でもインボイスを回収する
消費税の課税事業者については、支払先から受領するインボイスをきちんと保管することによって、仕入税額控除を適用することが可能です。
インボイス制度導入前では、3万円未満の課税仕入れについては、一定の事項を記載した帳簿のみの保存によって仕入税額控除を受けることができました。しかし、インボイス制度においては、原則としてすべての課税仕入れについてインボイスを回収・保存しなければなりません。
そのため、従業員が立替経費として接待交際費や消耗品費などを支払う場合でも、それぞれの領収書やレシートを忘れずに入手し、経費申請時に経理担当者へ提出しましょう。
小口精算に関連するインボイス制度の特例措置
インボイス制度では、経理業務の負担軽減などの観点からいくつかの特例措置が設けられています。なお、特例措置のなかには、恒久的に適用できる制度ばかりでなく、一定の期間に限って使用できる経過措置もあるため注意が必要です。
特例措置を活用することで、インボイスがなくても仕入税額控除を適用できるケースもあるため、それぞれの内容を正しく理解し、正確な会計処理を行いましょう。
3万円未満の公共交通機関の特例
バスや鉄道など、公共交通機関へ支払う3万円未満の利用料については、インボイスの取得が難しいという背景から、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用できます。
たとえば、取引先を訪問するために公共交通機関を利用した場合には、インボイスの保存がなくても、この特例によって仕入税額控除が認められます。ただし、飛行機やタクシー代については、公共交通機関に該当しないため対象外です。
なお、公共交通機関に関する特例措置に関しては、適用できる期間が定められていないため、制度改正がない限りは恒久的に適用可能です。
ただし、この特例を利用する場合でも、従来どおり、社内規程に基づく「交通費精算書」などの提出は必要不可欠であるため、忘れずに作成しましょう。
出張旅費等の特例
従業員などに対して、出張旅費や宿泊費、出張日当などを支給する場合には、通常必要と認められる金額(所得税が非課税になる旅費など)であれば、インボイスがなくても、帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用できます。
なお、この特例については、社内規程の有無や、概算払い・実費精算などの支払方法にかかわらず適用することが可能です。
したがって、公共交通機関の特例に該当しない旅費や交通費に関しても、この特例措置を活用すれば、帳簿のみの保存で対応できます。
ただし、この特例措置については、企業などの事業者が従業員に対して支払う出張旅費が対象です。法人クレジットカードで決済する旅費や交通費に関しては、従業員を介することなく、企業が直接相手先へ代金を支払うため、この特例の対象とはなりません。
1万円未満の課税仕入れに関する「少額特例」
インボイス制度導入による経理業務の負担増加を抑制するために、「少額特例」という期間限定の特例措置も設けられています。
少額特例とは、税込1万円未満の課税仕入れを行った場合に、インボイスがなくても、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用が認められる制度です。
この特例の対象者は、「基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1億円以下」または「特定期間(前事業年度の上半期)の課税売上高が5千万円以下」のいずれかに該当する事業者です。
この特例措置については、適用対象期間が定められており、2023年10月1日から2029年9月30日までに行われた課税仕入れが対象となります。
適用対象期間の最終年である2029年については、9月末までは少額特例を適用できますが、10月1日以降については、たとえ課税期間の途中であっても本特例を適用できず、インボイスの保存が必須となるため注意しましょう。
従業員に対する周知が必要不可欠に
いくつかの特例措置も相まって、インボイス制度を正確に理解することの難しさに拍車がかかっていると言えるでしょう。
複雑な制度について従業員に周知することも難しいことから、特例措置の適用可否にかかわらず、従業員に対して一律でインボイスの提出を義務付ける企業も少なくありません。
しかし、特例措置を考慮しない運用方法は、従業員や経理担当者の事務負担増加や、仕入税額控除の計算誤りによる消費税の過大納付につながるリスクもあります。
したがって、国税庁の資料やフローチャートを活用するなど、従業員に対する周知を徹底し、適正かつ効率的なインボイス対応を目指しましょう。
インボイス制度にともなう小口精算の方法
小口精算の際に正確なインボイス対応を行うためには、経理部門を中心に適切な業務フローを構築し、慎重に業務にあたることが大切です。
具体的には、以下のように段階的な対応を心掛けることをおすすめします。
自社で適用可能な特例措置を確認する
インボイス制度にはさまざまな特例措置が用意されているため、まずは自社が適用できる特例を精査することが必要不可欠です。
なお、時限的な特例措置である「少額特例」については、過年度の課税売上高によって適用可否を判断します。そのため、インボイス制度の導入初年度だけでなく、課税期間ごとに適用できるかどうかを毎回きちんと確認しましょう。
社内ルールの整備や見直しを行い、従業員に周知する
適用可能な特例措置を確認したら、社内における経費精算のルールや業務プロセスの見直しを行います。
インボイス対応において誤りやすいポイントなどがあれば、申請書類のフォーマットを一部変更したり、チェックリストを設けたりするなどの工夫も効果的です。
また、インボイス制度や各種特例措置の内容については、経営者や経理担当者だけでなく、実際に経費を取り扱う従業員の理解や協力が欠かせません。社内説明会の開催や相談窓口の設置など、不明点や確認事項が発生した際にはスムーズに対応できる環境を整えましょう。
証憑書類を確認し、適切な会計処理を行う
インボイス対応のための社内ルールに基づいて、小口精算を行う場合には、経理担当者は証憑書類がインボイスに該当するかどうか、丁寧に確認しなければなりません。
領収書やレシートなどに記載されたインボイス番号については、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」にて照合することが可能です。原則として、インボイスか否かによって仕入税額控除の計算が異なるため、正確な会計処理が求められます。
なお、インボイスの保存が不要となる特例措置を適用する場合には、一定の事項を記載した帳簿の保存が要件となるため、適切な帳簿の作成を徹底しましょう。
インボイス制度が経理業務におよぼす影響
インボイス制度の導入により、企業における経理業務や経費精算手続きが煩雑化し、経理担当者の負担が大幅に増加しています。
インボイス制度では、仕入税額控除の要件としてインボイスの保存が義務付けられていることで、少額特例などの経過措置に当てはまらない場合には、支払先から受領する請求書や領収書がインボイスかどうかを判別する作業が発生します。
したがって経費精算においても、領収書ごとにインボイス番号の有無などを確認したうえで、適切な会計処理を行わなければなりません。たとえば、従業員が飲食費や消耗品代などの立替経費を精算する場合には、領収書1枚ずつについてインボイスに該当するかどうかを確認することになります。
そのため、従来の経費精算に比べて確認作業が増加し、経理担当者の業務負担増加やヒューマンエラーの発生につながるリスクも高まります。
小口精算を効率化するポイント
インボイス制度の導入で経費精算がより一層複雑になるなかで、経理業務を効率化するためには、小口精算の業務プロセスを見直し、システムやツールを活用することが効果的です。
具体的には、以下のような方法で小口精算の効率化を目指しましょう。
経費精算システムの導入
専用のシステムを導入することで、小口精算の手続きを大幅に効率化できます。
経費精算システムでは、経費精算業務における申請や承認作業をオンライン上で行えるうえ、請求書や領収書データを添付することが可能です。これにより、経理担当者は経費の内容を画面上で確認できるため、紙の書類を手作業で確認する必要がなくなり、承認作業や支払い処理もスムーズに実行できます。
また、インボイス制度に対応したシステムであれば、インボイス番号の自動照合など機能も搭載されており、煩雑なインボイス対応の精度向上やスピードアップにも役立ちます。
立替経費の振込精算
従業員の立替経費を小口現金で精算するのではなく、一定期間分をまとめて振り込んで精算する方法(振込精算)に切り替えることも効果的です。
月末や締め日ごとに立替経費を集計し、従業員の銀行口座に一括で振り込むことで、小口現金を管理する手間が省け、経理業務の負担を軽減できます。また、振込精算によって客観的な記録が残るため、お金の流れが視認しやすくなるというメリットもあります。
ただし、振込精算の場合でも、インボイス対応に関しては、領収書などがインボイスに該当するかどうかを細かくチェックしなければならないため注意が必要です。
法人クレジットカードの導入
法人クレジットカードを導入し、経費をカードで決済することにより、立替経費の発生が抑制され、小口精算手続きを削減できます。
また、法人クレジットカードを使用すれば、毎月の利用明細をまとめて確認できるため、カードごとの使用状況を捕捉しやすくなります。
なお、インボイス対応に関しては、利用明細では各支払先におけるインボイスの登録状況までは確認できません。そのため、小口精算の場合と同様に、それぞれの領収書などからインボイスか否かを確認する必要があります。
精算手続きのペーパーレス化
小口精算の効率化には、精算手続きのペーパーレス化も効果的です。
経費精算の際に、領収書や請求書を紙で提出する代わりに、スマートフォンやスキャナーでデータ化して提出する仕組みを導入することで、拠点間で申請書類を郵送するなどの手間も省けます。
ペーパーレス化により、インボイスの確認作業も電子データで一括管理できるため、証憑書類の紛失リスク削減にもつながります。また、データの検索や確認が容易になり、社内の生産性向上も期待できるでしょう。
小口精算の効率化には、マネーフォワード クラウド経費の導入がおすすめ!
「マネーフォワード クラウド経費」では、煩雑で手間のかかる経費精算業務の自動化や効率化に向けて、さまざまな機能を提供しています。
たとえば、スマホアプリやオンライン上で経費申請から承認までの一連の作業を完結できるため、小口精算のペーパーレス化にも効果的です。
また、領収書やレシートの画像をアップロードすることで、証憑書類におけるインボイス番号の有無や照合作業を自動化し、会計システムにも連携できるため、面倒なインボイス対応を自動化できます。
サービス内容にご興味のある方は、ぜひ以下のリンクをご参照ください。
小口精算のインボイス対応を進めよう!
インボイス制度が導入されたことで、小口精算をはじめとする経費精算業務にも影響が及んでいます。
また、公共交通機関の特例や出張旅費等の特例、期間限定の少額特例なども設けられており、慎重かつ正確な経理処理が求められます。
インボイス対応に関しては、経営者や経理担当者だけでなく、実際に経費を使用する従業員の理解も必要不可欠であるため、社内教育を徹底して小口精算の効率化に努めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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