- 更新日 : 2025年2月20日
NPO法人会計基準とは?基本の考え方や構成の解説
NPO法人会計基準とは、非営利法人である「NPO」の会計基準のことです。NPO法人会計基準には、一般の会社の会計とは考え方や処理の仕方が異なる部分が多く、きちんと理解することが大切です。
この記事では、NPO法人会計基準について詳しく解説します。基本的な考え方や構成、必要性を確認しておきましょう。
目次
NPO法人会計基準とは
NPO法人会計基準とは、非営利法人であるNPO法人に関わる会計基準のことです。NPO法人が目的達成のためにどのような活動を行い、それぞれの活動にどのくらいの資金を使ったかを明らかにするものです。
NPO法人が資金をどのように調達し、それをどのような目的で何に使っているかを世間に理解してもらうためには、積極的に情報を開示する必要があります。きちんと会計処理を行い、その結果を公開するのは情報開示の一環というわけです。
NPO法人にとっての会計の重要性
NPO法人は一般の会社とは異なるため、「会計はそこまで重要とは思えない」という方もいるかもしれません。では、なぜNPO法人の会計が重要なのか、詳しく見ていきましょう。
資金源を明らかにするため
NPO法人の資金源には、以下のようなものがあります。
- 支援者からの寄付金
- 国や地方公共団体からの助成金や補助金
- NPO法人会員からの会費
- 事業収入
- 融資
NPO法人が自主性や安定性を持続するためには、資金源が偏っていないことが重要です。これは、取引先や国・地方自治体、融資を行う金融機関にNPO法人の健全性を確認してもらうためにも必要です。
NPO法人内部の人への説明
NPO法人の資金源の一つに、会員からの会費や支援者からの寄付があります。会費や寄付金がどのような活動に使われているか、また適切に使われているかを知ることは会員・寄付者の権利です。
外部の人に活動実態を理解してもらうため
NPO法人の活動や経済状況を外部に知ってもらうことで、新たな支援者の獲得にもつながります。透明性の高い組織であることを理解してもらうためにも、活動内容だけでなく会計についても公開したほうがよいでしょう。
NPO法人会計基準の構成
NPO法人の会計基準は、収入規模500万円以下のNPO法人でも適切な会計ができるよう策定されたものです。2009年3月に策定作業が開始され、2010年7月に最終的な会計基準が発表されています。全体の構成は以下の通りです。
- NPO法人会計基準の性格と基本的考え方
- NPO法人会計基準
- 議論の経緯と結論の背景
- 実務担当者のためのガイドライン
この中から、「1. NPO法人会計基準の性格と基本的考え方」と「2.NPO法人会計基準」について詳しく解説します。
1.NPO法人会計基準の性格と基本的考え方
NPO法人会計基準策定の出発点は、「市民の期待とそれにこたえるべきNPO法人の責任の双方にふさわしい会計基準とはいかなるものであるか」です。基本的な考え方では、以下の点を重視しています。
- 市民にとってわかりやすいか
- NPO法人の信頼性の向上につながるか
なお、NPO法人会計基準の採用は強制ではなく任意です。採用時期も特に定められていないため、無理なく導入できます。
2.NPO法人会計基準
NPO法人会計基準では正確性を担保するため、複式簿記・発生主義を原則とし「貸借対照表」と企業会計の損益計算書にあたる「活動計算書」の作成を中心としています。また、収支計算書・活動計算書と貸借対照表がつながっていることが原則です。
利益の追求が目的ではないNPO法人でも、どの程度のコストがかかったか、事業継続は可能なのかを知るために、会計報告を行うことは重要だとされています。
NPO法人を運営するのであれば、NPO法人会計基準を理解しておこう
一般の会社経営ではないため、収益が上がることをそれほど重視していないというNPO法人もあるでしょう。そのため、「会計には特に力を入れなくてもよいのでは?」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、NPO法人の資金源は多岐にわたるケースが少なくありません。さらに、会員からの会費や寄付金という収入もあります。そのため、透明性を保つためにも、しっかりと会計を行い、どの活動にどのくらいの資金を使っているかを明確にしておくことは非常に重要です。
NPO法人会計基準の導入は義務ではありませんが、NPO法人の活動を理解してもらいたい場合は導入することをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
売掛金のトラブルを未然に防ぐ!貸し倒れを避けるための正しい対処法とは?
はじめに 企業規模を問わず、事業を行う上でキャッシュフローの管理は、財務面で最も重要な活動の1つと言えるでしょう。損益計算書の売上高、純利益は実際のお金の流れを表しておらず、自社の資金の流れは別に管理する必要があります。 特に、掛取引が多い…
詳しくみる直接労務費差異とは?求め方や例題、分析方法などをわかりやすく解説
直接労務費差異は、標準原価と実際原価のズレから現場の課題やコストの問題点を浮き彫りにする重要な指標です。この記事では、直接労務費差異の基本的な意味から、計算方法、具体例、分析手順、そして改善につなげる実践的な活用法までをわかりやすく解説しま…
詳しくみる稟議書とは?書き方・目的別の例文、無料テンプレート
稟議書とは、経費で物品を購入する場合や社員の新規採用の場合などに、上長から承認を得るための書類です。しかし、いざ稟議書を書くとなると、書き方がわからない方も多いのではないでしょうか。 本記事では、稟議書の書き方や稟議の流れについて解説します…
詳しくみる労務管理費とは?労務費や人件費との違い、内訳、計算方法、勘定科目などを解説
労務管理費は、建設業等の現場で発生する労働管理・運営のための経費の総称であり、労働の対価としての現場作業員への給与や賃金以外の現場作業員の募集・採用、消耗品の手配、会議や打ち上げなどを行う際に発生する費用を指します。この記事では、労務管理費…
詳しくみる製造業の会計・経理業務とは?
製造業とは、モノを製造し卸売を行う業務全体を指す言葉です。製造業の経理を初めて担当する場合、製造業ならではの考え方や仕組みがあり、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、製造業の定義、製造業の経理業務で押さえておきたいポイン…
詳しくみるIFRSにおける減損とは?日本基準との違いや減損テストの方法などを解説
IFRSにおける減損は、資産の回収可能価額が帳簿価額を下回ると判断された場合に、その差額を損失として認識することを指します。この記事では、IFRSにおける減損の概要や対象資産、減損テストの具体的な流れについてご紹介し、日本基準との違いや実務…
詳しくみる