• 更新日 : 2026年3月13日

企業結合に関する会計基準とは?徹底解説

Point企業結合に関する会計基準とは?

企業結合に関する会計基準は、M&Aなどで会社や事業が統合される際の会計処理を定めたルールです。

  • 取引の分類:結合前後の支配関係の変化に基づき、取得、共通支配下の取引、共同支配企業の形成の3つに分類されます。
  • 資産の評価:取得の場合は時価で評価しますが、共通支配下の取引や共同支配企業の形成では帳簿価額を引き継ぎます。

同じ吸収合併という名称の取引であっても、結合前後の支配関係が異なれば会計処理も全く別物になります。まずは取引名ではなく、支配権がどう動いたかに着目して分類を特定することが正確な会計処理への第一歩です。

企業結合会計は、M&Aの様々な取引を分類して会計処理が行われます。この会計基準を理解するためには、M&Aの各取引に加えて、会計基準独特の分類の仕方を知らなければいけません。

この記事では企業結合に関する会計基準を理解できるように、重要な部分のみを解説しました。この記事をお読みいただくことで、企業結合会計への苦手意識を感じなくなると幸いです。

企業結合会計とは?

企業結合会計とは、会社や事業が1つの報告単位に統合される取引に対する会計です。

なお、報告単位とは、財務諸表の作成単位のことを意味しています。

また、企業結合は以下3つの取引の総称です。

  • 会社と会社の統合
  • 会社と事業の統合
  • 事業と事業の統合

上記の3つは、具体的に以下の取引の名称で呼ばれます。

企業結合会計でよく出てくる取引を取り上げました。

企業結合の具体例取引の概要
吸収合併2つ以上の会社が1つの会社になる取引
新設合併新しい1つの会社を受け皿として、2つ以上の会社が新しい1つの会社になる取引
吸収分割会社の一部である事業を他の会社が取り込む取引
新設分割新しい会社に他の会社の事業を取り込む取引
株式交換会社を親会社とするために他の会社がすべての株式を親会社となる会社に取得させ、子会社となる取引
株式移転新しい会社を親会社とするために、他の会社が株式をすべて取得させ、子会社となる取引
事業譲渡会社の一部である事業を売却し、他の会社が取り込む取引

次に、企業結合会計では上記取引の前後に着目して分類します。

ここで注意が必要なのは、すべての吸収合併に対して同じ会計処理は行いません。同じ吸収合併でも取引の前後が異なると違う会計処理になります。

吸収合併を例としましたが、他の取引でも同様です。

企業結合会計の分類は以下の3つです。

  • 取得
  • 共通支配下の取引
  • 共同支配企業の形成

企業結合は吸収合併や株式交換などの取引の総称です。

会計処理の際には、企業結合の前後に着目します。

前後がどう変化したかにより、「取得」「共通支配下の取引」「共同支配企業の形成」に分類し会計処理を行っていきます。

取得とは?

取得

取得とは、会社または事業に対する支配を獲得することです。

上記画像を例にすると、取引前はA社とB社はどちらも支配を獲得していない独立関係であるのに対して、取引後はA社がB社を取り込んだことで支配を獲得している状態です。

補足として、B社が消滅するため、B社の財産などはA社が引き継いでA社の思い通りに使用することができます。

なお、支配とは会社または事業の経営意思決定を左右する能力があることを意味します。

支配の代表的な例は、会社の株式の50%超を保有することです。

株式50%超を保有することで株主総会の決議を左右できるため、その会社を支配していることになります。

取得についてまとめると、企業結合前に支配関係が無く、企業結合後に支配を獲得した場合です。

取得の会計処理

吸収合併などの企業結合が「取得」になる場合は、支配を獲得した企業がパーチェス法の会計処理を行います。

なお、パーチェスを直訳すると購入、購買のことを意味しますが、企業結合会計では新規投資という意味合いが強いです。

パーチェス法は、支配を獲得した会社が、受け入れる会社または事業を時価で取り入れる方法です。時価の理由は、支配を獲得することを新規投資とみなすためです。新規投資をするときの価額は時価になります。

ただし、会社または事業の時価は把握することが難しいため、支払う対価と会社または事業の時価に差額が生じることがあります。

この差額は「のれん」または「負ののれん」という勘定科目で処理します。

対価を支払いすぎて会社または事業を割高で購入した場合はのれんになり、反対に割安で購入できた場合は負ののれんになります。

また、パーチェス法の会計処理について、個別財務諸表連結財務諸表のそれぞれを説明します。

個別財務諸表のパーチェス法は以下の仕訳になります。

(※仕訳は簡略化しています。実際には会社や事業には資産や負債の具体的な勘定科目が入ります。対価についても同様に現金や株式、資本金などが入ります。以下同様)

【割高で購入した場合の仕訳】

借方
貸方
会社または事業
会社または事業の時価
現金などの対価
対価の時価
  
のれん
差額

【割安で購入した場合の仕訳】

借方
貸方
会社または事業
会社または事業の時価
現金などの対価
対価の時価
負ののれん
差額

次に、連結財務諸表で取得の会計処理は、企業結合によって様々です。

連結会計の範囲にもなりますが、新規連結手続によって実質的にパーチェス法の仕訳を行った結果と同じです。

ただし、企業結合で株式の保有割合が変わる場合は、子会社株式の追加取得や一部売却の仕訳を行うことになります。

逆取得とは

逆取得とは、企業結合で会社または事業を受け入れる会社が支配されてしまうことです。

上記画像の例では、A社が存続会社となりS社が消滅する吸収合併です。

具体的にA社の視点で説明すると、吸収合併でS社を取り込み、S社(S社の資産や負債)を支配したように見えます。しかし、吸収合併の対価として大量のA社株式をP社へ交付したため、結果的に、P社に支配される状態になります。

吸収合併を例に、取得と逆取得を比較すると以下の点が異なります。

取得存続会社 = 会社または事業を支配する会社
逆取得存続会社 ≠ 会社または事業を支配する会社

逆取得の会計処理

逆取得の個別財務諸表の会計処理を説明します。

逆取得では、法的存続会社ではなく、会計上の取得企業を親会社として連結財務諸表を作成します。

逆取得に該当する場合でも、連結財務諸表上は取得と同様にパーチェス法が適用され、被取得企業の資産・負債は時価で認識されます。

また、逆取得の仕訳は以下になります。

【逆取得の個別財務諸表の仕訳】

借方
貸方
会社または事業
会社または事業の帳簿価額
資本金または資本準備金
会社または事業の帳簿価額

共通支配下の取引とは?

共同支配化の取引

共通支配下の取引とは、企業結合の前後で支配関係が変わらない取引です。

上記の例では、親会社であるP社が企業結合の前後で子会社を支配しているため、共通支配下の取引になります。

具体的にいうと、吸収合併の前はP社を完全親会社(株式保有100%)としてS1社とS2社が支配されている状態です。

吸収合併の後は、S2社が消滅しS1社に取り込まれますが、P社がS1社の完全親会社であることは変わりません。

従って、企業結合の前後で支配関係が変わらないため、共通支配下の取引に該当します。

共通支配下の取引の会計処理

吸収合併などの企業結合が共通支配下の取引になる場合は、受け入れる会社または事業の適正な帳簿価額で会計処理を行います。 帳簿価額の理由は、共通支配下の取引では支配関係が変わらないためです。 次に、個別財務諸表と連結財務諸表の観点でそれぞれ説明します。 まず、個別財務諸表の会計処理は受け入れる会社または事業の適正な帳簿価額で行います。 具体的には、個別財務諸表の会計処理は、企業結合で移転する会社や事業、対価の現金や株式を移転する形式通りに帳簿価額で行うということです。 基本的に以下のような仕訳になります。

【受け入れる会社側の仕訳】

借方
貸方
会社または事業
会社または事業の帳簿価額
現金などの対価
対価の金額

上記の仕訳で、資産・負債の差額と対価との間に差が生じる場合は、「資本剰余金」として処理します。共通支配下の取引では、内部取引であるため、新たにのれんや負ののれんが計上されることはありません。

次に、連結財務諸表の観点で説明します。 連結財務諸表では親会社や子会社という単独ではなく、連結グループとしたまとまりで企業結合に着目します。この観点からは、共通支配下の取引は連結グループ内の内部取引になります。 企業結合で移転した会社や事業、対価の現金や株式をすべて消去することになります。

つまり、企業結合の前後で連結財務諸表は基本的に変わりません。 ただし、企業結合で株式の保有割合が変わる場合は、連結会計の範囲になりますが子会社株式の追加取得や一部売却の会計処理を行います。

仕訳は企業結合によって異なるため、一概には示せません。理由は連結財務諸表をどのように作成するかによって必要な仕訳が異なるためです。しかし、結果的に企業結合前の連結財務諸表と基本的に変わらないため、企業結合を無かったことにする仕訳を行います。

その後、株式の保有割合が変わる場合は子会社株式の追加取得や一部売却の仕訳を行います。

共同支配企業の形成とは?

共同支配企業

共同支配企業の形成とは、複数の独立した会社に共同で支配される会社を形成することです。

上記画像の例では、A社とB社がそれぞれC社に事業を譲渡し、A社とB社が共同でC社を支配する契約をしています。このような企業結合を共同支配企業の形成といいます。

共同支配企業の形成になるためには、企業結合の前後で支配する会社が複数で独立している必要があります。さらに共同で支配する契約などが必要です。

共同支配企業の形成の会計処理

共同支配企業の形成の会計処理は、支配される会社側と支配する会社側の会計処理があります。

まず、支配される会社側は企業結合で受け入れる事業(資産や負債)を支配する会社側の適正な帳簿価額で受け入れる会計処理を行います。支配される会社側は、基本的に株式を発行します。

個別財務諸表の仕訳は以下のようになります。

【支配される側の会社の仕訳】

借方
貸方
会社または事業
会社または事業の帳簿価額
資本金または資本準備金
会社または事業の帳簿価額

補足として、貸方勘定科目が資本金または資本準備金となるのは株式を発行するためです。

次に、支配する会社側の個別財務諸表の会計処理は、企業結合で移転する事業と受け取る株式を交換する会計処理を行います。
仕訳は以下のようになります。

【支配する会社側の個別財務諸表の仕訳】

借方
貸方
株式
事業の帳簿価額
事業
事業の帳簿価額

最後に、支配する会社側の連結財務諸表の会計処理は、持分法に従って会計処理を行います。簡単にいうと持分法は、投資先の会社の利益や損失を株式に反映するように会計処理を行います。

持分法の仕訳は以下2つになります。

【投資先の会社の利益を反映させる仕訳1】

借方
貸方
株式
利益×持分割合
持分法による投資損益
利益×持分割合

【投資先の会社の損失を反映させる仕訳2】

借方
貸方
持分法による投資損益
利益×持分割合
株主
損失×持分割合

企業結合会計はポイントから理解しよう

企業結合会計を読み解く鍵は、取引名そのものではなく「支配関係がどう変化したか」にあります。新たに支配を獲得した場合は「取得」に分類され、時価評価による「のれん」の計上が欠かせません。

一方、グループ内の再編である「共通支配下の取引」では、帳簿価額を引き継ぐため、のれんは発生せず差額を資本剰余金で処理するのが鉄則です。この分類ごとの評価基準さえ整理できれば、複雑なM&A会計の全体像も自ずと見えてくるでしょう。

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よくある質問

企業結合会計とは?

会社や事業が1つの報告単位に統合される取引に対する会計です。詳しくはこちらをご覧ください。

取得とは?

会社または事業に対する支配を獲得することです。詳しくはこちらをご覧ください。

共通支配下の取引とは?

企業結合の前後で支配関係が変わらない取引です。詳しくはこちらをご覧ください。


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