• 更新日 : 2025年2月20日

繰越金額とは?請求書の書き方や防止策を解説

会計帳簿や書類においては、繰越金額、繰越残高などの用語がよく出てきます。「繰越(くりこし)」とは、ある会計期間の収益や費用を適切な期間に帰属させるために使われる用語で、似たようなものに「繰延(くりのべ)」などがあります。

この記事では、請求書上に記載された「繰越金額」について正しく理解するとともに、使用上の留意点を解説します。

繰越金額とは未回収の売掛金

会計帳簿や会計書類に出てくる「繰越金額」は、何を繰り越すのかによって意味するものが異なります。その中で、請求書上に記載された「繰越金額」とは、売り手側から見た「売掛金の繰越金額」を意味しています。買い手から見ると、前回の請求額のうち未払いとなっているものを指します。

繰越金額は債権として請求できる

売り手にとって請求書上に記載された繰越金額は、まだ入金のない売掛金です。本来、以前の請求に対して正しく入金があれば、繰り越す金額は発生しません。ところが、前回以前の請求に対して入金がなかったか、一部しか入金されなかったかの理由により、売掛金として残ってしまったのが「繰越金額」です。

売り手において、入金されずに売掛金として残っているものは債権として請求できるため、次の請求書上に「以前の請求で未入金のもの」を表示することは適切な手続きと言えます。

繰越金額が発生する理由

繰越金額が発生する理由としては、さまざまなものが考えられます。よくあるのは、入金と請求タイミングのズレによるものです。

月単位で請求締めをする場合、請求締め日に前回分の入金があっても請求書には未入金として残ってしまうことがあります。一般に請求書には支払期限が記載されていますが、支払期限以降に入金があった場合には、システム上の仕様として「繰越金額」が表示されることが考えられます。このようなケースは、締めの都合によるやむを得ないケースと言えます。

また、先方の入金が一部しかなかった場合などで、先方が「次回に合わせて振り込みます」などと回答した場合等に「繰越金額」として改めて請求することは理にかなっていると言えます。

その他、理由がわからない未回収額については、繰越金額となる前に解決するほうがよいでしょう。

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繰越金額がある場合の請求書の書き方

繰越金額が発生した場合には、前回の請求に対する入金額を明示した上で、今回の合計額を請求するなど分かりやすく表示します。

繰越金額のある請求書では、次の5項目について表示することが望ましいと言えます。

1前回請求額前回提出した請求書の請求額

前回より前にも繰越金額があった場合には、前回の合計請求額

2入金額当請求書を発行するまでに入金のあった額
3繰越金額1-2(当請求直前の未回収額)
4今回売上額当請求書に係る請求額
5今回合計請求額3+4(繰越金額及び今回請求額)

請求書への表示方法はさまざまですが、少なくともこれら5項目については明示しておくと分かりやすいです。それぞれの文言については、意味が分かればよいでしょう。

下のサンプルは、繰越金額がある場合の請求書例です。

繰越金額がある場合の請求書例

このサンプルからも分かるように、繰越金額が前回以前のどの時期に発生したかどうかは分かりません。前回だけでなくその前からの繰越金額である場合には、別途連絡をして解決しておくべきでしょう。

繰越金額をインボイスに記載する方法

インボイス制度において、インボイス書面のどこに繰越金額を記載するべきかなどのルールは特にありません。したがって、インボイスにおける6項目、さらに繰越金額がある場合には5項目を請求書に盛り込む必要があります。

この場合、今回の売上に係るものと繰越金額の違いが分かりやすいように、レイアウトに工夫が必要な場合もあります。

上記の請求書サンプルに、インボイス項目(青い部分)の解説をつけたものが下の図です。

インボイス項目(青い部分)の解説をつけた図

  1. インボイス発行事業者の氏名および登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 交付を受ける事業者の名称等

参考:インボイス制度の概要|国税庁適格請求書等保存方式の概要

繰越金額の注意点

請求書に常時繰越金額がある場合には注意しなければなりません。請求データが確定した時点で、「繰越金額」に数値が入るものについては注意しましょう。入金消込先の間違いもあり得るため、日ごろ繰越金額の掲載されない得意先があればよく調査してから請求書を提出しましょう。

不良債権化しないよう早期に回収する

繰越金額がある場合、そのまま放置されると不良債権化するリスクがあります。多くの取引先において繰越金額が散見されたり、繰越金額が高額になったりする場合、会社のキャッシュフローに悪影響を及ぼします。

したがって、繰越金額が発生した場合は、取引先に連絡をとり、早期に回収するための具体策を講じることが重要です。

支払サイトが1ヶ月以上の場合は、当月請求額と翌月支払額が異なる

支払サイトとは、取引の締日から実際の支払日までの期間のことを言います。支払サイトは30日から60日が多いですが、取引先によってそれより長期となることもあります。

取引先における支払サイトが長い場合には、当月の請求額と翌月の支払額が異なることがあり、「繰越金額」が発生します。この場合は通常の債権回収の範囲内であるため、システム上に「繰越金額」が表示されないオプションがある場合には利用しましょう。

繰越金額の発生防止策

先方の入金タイミングによるものを除き、繰越金額の中には、請求書上に「繰越金額」と表示される前に未回収の売掛金として分かっている場合が多いでしょう。そこで、繰越金額の発生防止、つまり売掛金の未収防止策として次の3点を提案します。

発行側のミスをなくす

もともとの請求額に誤りや、二重請求、請求漏れなどがある場合には請求書発行業務における管理を強化する必要があります。どの内容の請求書がいつ発送されたのかを社内で容易に追跡できる環境にしなければなりません。

請求書発送業務で人為ミスを防ぐ方法として推奨するのは、クラウド型請求書発行システムの導入です。請求書発行を一元的に管理できるITツールを導入することによって業務のスピードと正確性の向上が期待できます。

取引先とのコミュニケーション強化

決算や営業日等により請求タイミングがいつもと異なる場合など、注意すべき取引先には確認のためのコミュニケーションを密にすることが推奨されます。システム停止、担当要員の欠如などはいつ発生するか分からないため、取引先にメールや電話で確認を取り、誤解のないよう早めに気づけるように促します。

コミュニケーション強化によって、取引先が請求書の内容を早めに正しく理解し、適切に入金処理をできるようにします。

リアルタイムの未収金管理

売掛金の入金消込においても、クラウド型の入金消込システムの導入が推奨されます。入金データを自動的に取り込むため、手作業による入力作業が不要となり、人的ミスを大幅に削減できます。

手作業での入金消込で課題となる入金データと請求データのマッチングも、システムにて照合・消込をするため、作業時間を大幅に短縮できる上、リアルタイムに閲覧が可能になります。

また、最新の入金状況把握によって、迅速な督促や対応も可能となり、未収金の回収率向上が期待できます。

繰越金額を正しく理解して、売掛金の未回収削減を!

会計事務をしていると、実に多くの箇所で「繰越高」や「繰越金額」という用語に遭遇します。これは、会計の基本的な考え方と密接に関連しています。

企業は基本的に将来にわたって継続していく前提があり、会計は企業が継続して事業することを前提に作られています。会計では、この継続を保つために、期間を超えて資産や負債の額を引き継ぐことになり、会計全体を見ると繰り越される金額がどこかで発生することになります。

請求書に記載された「繰越金額」も、この継続を保つために前月の情報を翌期に引き継ぐ役割を果たすとともに、売掛金未回収の警告をしていると言えるでしょう。

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