- 更新日 : 2025年2月19日
土地再評価差額金とは?会計処理の方法を仕訳例を用いて解説
上場企業の財務諸表を見ると、貸借対照表の純資産の部に「土地再評価差額金」が記載されていることがあります。「土地再評価差額金」がどのような勘定科目なのか、知らない方は多いでしょう。計上している会社としていない会社があるのは、なぜでしょうか。この記事では土地再評価差額金の概要と、その会計処理を仕訳例を用いて解説します。
目次
土地再評価差額金とは?
土地評価差額金は、土地再評価法という法律に基づいて生じた勘定科目です。土地再評価法の正式名称は「土地の再評価に関する法律」で、金融機関や一定の要件を満たす株式会社、上場会社が事業用の土地の価格を再評価し、その土地評価益(または土地評価損)を貸借対照表に計上することを可能にした法律です。
土地再評価法に基づく処理
土地再評価法は1998年3月に3年間の時限立法として成立し、2001年3月に1年延長されて2002年3月31日まで適用されていました。したがって、現在は適用されません。
土地再評価法では、会社が所有する事業用土地のすべてを再評価することを要求しており、個々の土地を再評価した際に生じた評価損益を合計したものが、貸借対照表の純資産の部に記載されます。
通常、会社に損益が生じた場合は損益計算書に計上されますが、土地再評価法によって生じた土地の評価損益は損益計算書には計上されません。したがって評価益にかかる税負担が発生しないため、会社の資本増強に寄与します。
土地再評価差額金ができた背景
土地再評価法が制定された1998年は、景気低迷による企業の財政状態の悪化によって、銀行から融資を受けられない企業が少なくありませんでした。
特に古くからある企業は、土地の時価が取得時よりもはるかに高いにも関わらず、取得時の低い金額のまま貸借対照表に計上されていたため、財政状態が悪く見えていたのです。そこで、時限立法を制定して土地を時価で再評価し、簿価との差額を土地再評価差額金として純資産の部に計上することにしました。
これによって企業の財務諸表が実態に近くなり、銀行からの信頼を得ることができたのです。
土地再評価差額金の会計処理方法は?
具体的な例を用いて、土地再評価差額金の会計処理を説明します。
土地再評価差額金の仕訳例
- 土地を再評価したとき
土地再評価法は時限立法であるため、現在は土地再評価差額金に関する会計処理はできません。ここでは、当時行っていた会計処理について解説します。
例えば土地の帳簿価額が50万円で、時価が1,000万円である場合の仕訳は以下のようになります。
| 土地 | ¥9,500,000 | 土地評価差額金 | ¥9,500,000 |
- 再評価した土地を売却したとき
1.で再評価した土地を1,200万円で売却した場合の仕訳は、以下のとおりです。
| 現預金 | ¥12,000,000 | 土地 土地売却益 | ¥10,000,000 ¥2,000,000 |
土地再評価差額金の税効果はある?
土地再評価差額金に税効果があるか解説します。
税効果とは
税効果会計とは、会計上の費用・収益と税務上の損金・益金の範囲が異なる場合に、会計上の利益と法人税などの税金を対応させることを目的とする会計手法です。会計上の利益計算と税務上の所得の計算方法が異なるため、その差異を調整するために税効果会計が導入されています。
会計上で評価損益として計上した土地評価差額金は税務上の益金・損金として認められず、会計上と税務上の差異が生じるため、税効果を認識する必要があります。
税効果がある際の仕訳例
土地評価差額金について税効果を認識するために、「繰延税金資産」または「再評繰延税金負債」の勘定科目を用いて以下のような仕訳を行います。なお、実効税率は40%とします。
- 土地の帳簿価額が50万円で、時価が1,000万円である場合
| 土地 | ¥9,500,000 | 土地評価差額金 繰延税金負債 | ¥5,700,000 (※)¥3,800,000 |
(※)¥9,500,000×40%
- 再評価した土地を売却したとき
1.で再評価した土地を1,200万円で売却した場合の仕訳は、以下のとおりです。
| 現預金 | ¥12,000,000 | 土地 土地売却益 | ¥10,000,000 ¥2,000,000 |
| 繰延税金負債 土地再評価差額金 | ¥3,800,000 ¥5,700,000 | 法人税等調整額 再評価差額金取崩額 | ¥3,800,000 ¥5,700,000 |
土地再評価差額金の取り崩しは可能?
土地の再評価は法律によって一度しか行えないため、新たに土地再評価差額金を計上することはできません。したがって、土地評価差額金が変動するのは以下の場合に限られます。
- 土地を売却した場合
- 土地の減損を認識する場合
- 再評価に係る繰延税金資産の回収可能性に変化があった場合
- 法定実効税率が変更された場合
土地再評価差額金の取り崩し時の仕訳例
ここでは、土地再評価差額金を計上した土地について減損処理を行ったときの仕訳について見ていきます。
- 簿価10,000の土地を時価50,000に再評価した(実効税率40%)
| 土地 | 40,000 | 土地評価差額金 繰延税金負債 | 24,000 16,000 |
- 土地の時価が20,000となったので減損を認識した
| 減損損失 土地再評価差額金 繰延税金負債 | 30,000 18,000 12,000 | 土地評価差額金 繰延税金負債 法人税等調整額 | 30,000 18,000 12,000 |
<土地評価差額金取り崩しのイメージ図>

連結財務諸表上の取り扱いは?
連結財務諸表とは、子会社を含めたグループ会社全体の財務諸表のことで、原則として親会社と子会社の個別財務諸表を合算し、親子会社間取引を調整して作成されます。
したがって連結財務諸表では、子会社が計上していた土地再評価差額金は親会社の投資勘定と相殺されます。そのため、連結財務諸表の純資産の部に計上される土地再評価差額金は、親会社が計上した土地再評価差額金及び連結子会社が計上した土地再評価差額金のうち、親会社持分相当額の合計額になります。
合併したとき、土地再評価差額金の処理方法は?
会社同士が合併した場合、存続会社が計上していた土地再評価差額金については特に処理を行う必要はありません。一方、合併によって消滅した会社が計上していた土地再評価差額金及び再評価による繰延税金負債(資産)は、そのまま存続会社の貸借対照表に引き継がれます。
土地再評価差額金と包括利益の関係は?
土地再評価差額金は計上時に損益計算書を通さず、その他の包括利益として純資産の部に直接計上されます。また、土地再評価差額金の取り崩し時は、損益計算書を経由することなくその他利益剰余金に計上され、土地再評価差額金がその分減少しますが、純資産の額は変動しないため、その他の包括利益の構成要素にはなりません。
土地再評価差額金について正しく理解しよう!
土地再評価差額金の会計処理はそれほど難しくないので、処理方法で迷うことはないでしょう。現在は土地再評価差額金を新たに計上することはありませんが、再評価した土地を売却したり、減損を認識したりすることがあるため、正しく理解しておかなければ会計処理を誤るおそれがあります。きちんと整理して、理解しておきましょう。
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よくある質問
土地評価差額金とは?
土地再評価法に基づいて、企業が所有する土地を再評価した場合の評価差額のことで、貸借対照表の純資産の部に表示されます。詳しくはこちらをご覧ください。
土地評価差額金に税効果は?
土地評価差額金は税務上認められないため、税効果を考慮する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
土地評価差額金は取り崩しが可能か?
土地評価差額金は、土地を売却したときや減損を認識したとき、実効税率が変更されたときなどに取り崩すことができます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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