- 作成日 : 2024年10月1日
売上と請求の違いとは?意味や計上タイミングをわかりやすく解説
売上と請求の違いがわからないという人もいるでしょう。本記事では、売上と請求の違いや売上から請求までの流れについて解説します。あわせて、売上や請求に役立つテンプレートも紹介するので、業務で必要な場合はぜひご活用ください。
目次
売上と請求の違い
まずは、売上と請求の違いから解説します。
売上(高)とは、企業の事業活動で得られる収益の総額のことで、商品・サービスを提供することで得られる対価です。
一方の請求とは、ある行為をするように相手に求めることを指します。金銭の支払いや物品の受け渡しなどがその一例です。
売上と請求の関係性は、次のようになっています。
- 顧客に商品が出荷される
- 売上が計上される
- 顧客に対価を請求する(請求書の発行)
企業間の取引では、代金より前にモノの取引が行われている(信用取引)ため、計上された売上金額は、売掛として管理されるため、注意しましょう。顧客に対価を請求する際は請求書を送ります。
売上とは?
ここからは、個別にそれぞれについて見ていきましょう。売上(高)とは企業の事業活動で得られる収益の総額で、商品やサービスを提供することで得られる対価のことです。売上が計上されないと、企業は利益を獲得できません。
売上は、企業の業績や事業規模を示すものでもあり、同業他社と比較した際の市場シェアや自社の立ち位置なども表すため、企業が成長するうえでは重要な指標といえます。
売上を計上するタイミング
売上を計上するタイミングとしては、以下の3つがあります(認識基準であり、企業会計原則によるもの)。
発生主義とは、事実の発生に基づいて認識する基準のことです。商品の売上(収益)で考えると、注文が入った時点で売上を計上することになります。ただし、注文がキャンセルされる恐れや、商品を未提供のため売上の架空計上になりうる側面がある点には注意しましょう。
実現主義とは、商品・サービスの提供と現金等価物の受領をもって売上(収益)を認識する基準のことです。
この際重要なことは、次の2つをもって実現となることです。
- 取引相手へ商品やサービスを提供すること
- 取引相手から現金等価物(現金、売掛金、物など)を受領すること
現実的には商品を提供した時点で、取引相手も支払義務を負うため、商品提供時点で実現するとされています。
現金主義とは、現金の収支に基づいて認識する基準のことです。商品の売上を例にすると、商品代金を現金もしくは預金として受領したときに売上を計上します。
損益計算書の「売上高」とは?
財務諸表は、損益計算書と貸借対照表の2つで構成されています。
損益計算書:1年間の利益を表す
貸借対照表:財産や借金を表す
売上高は、損益計算書上の項目に該当します。損益計算書のなかの1番上に記載されていて、その下に仕入れや人件費などの経費が書かれています。
請求とは?
請求とは、ある行為をするように相手に求めることです。とくに、金銭の支払いや物品の受け渡しなどを求めることが該当します。
請求を行うタイミング
請求を行う時点で請求書を発行します。請求書とは、提供商品やサービスに対する対価を請求するために発行する書類のことです。請求書を発行するタイミングは、商品やサービスを提供したあとになります。
請求書の発行タイミングについては、明確なルールがあるわけではありません。あらかじめ、取引先と相談して決めます。
- 掛売方式:前月分の請求書を月初に発行する
- 都度方式:商品・サービスの納品のたびに請求書を発行する
請求書は、一般的に掛売方式で発行されます。掛売方式は、継続取引している場合や取引が月に複数回ある場合などで採用されています。1ヶ月に発生した売上を一括で請求するため、お互いに業務負担を軽減できる点がメリットです。
都度方式は、取引を開始したばかりの企業や、継続的な取引を想定していない場合などに用いられる傾向にあります。
売上から請求までの流れ
ここでは、実際の売上から請求までの流れを見ていきましょう。主な流れは次のとおりです。
- 商品(サービス)の受注
- 商品(サービス)の提供
- 請求書の作成と発行
- 入金の確認
- 未払いへの催促
①商品(サービス)の受注
発注側から見積もり内容で問題がなければ、注文書・発注書が届きます。その後、注文書の内容に問題がなければ、社内用に注文の記録を残すために受注伝票を作成して保管しましょう。
さらに、受注伝票をもとに注文請書を発行して、発注者へと送付してください。注文請書の作成義務はありませんが、納品ミスを防ぐためにも送信しておくとよいでしょう。
②商品(サービス)の提供
商品(サービス)の受注が完了したら、納期に間に合うように出荷し納品します。このとき、商品とともに納品書も送付しましょう。請求書も一緒に送る場合もあります。
納品書とは、製品(サービス)の提供と同時に取引先へ発行する文書です。納品書と請求書は、相手方と手元に残しておく保存用の2部作成しましょう。
③請求書の作成と発行
商品を出荷したら、売上伝票と請求書を作成します。支払期日も、契約時にあらかじめ決めておきましょう。請求書を納品時に送らないのであれば、別途送付する必要があります。
商品を発送したら、売上の仕訳を記載しましょう。代金の回収が後日の場合は、売掛金で処理してください。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
売掛金 | ×円 | 売上高 | ×円 | ○月分売上 |
④入金の確認
支払期日になったら、入金を確認しましょう。入金を確認後、領収証を作成し取引先に渡します。その際、5万円以上の商品の売買があった場合は収入印紙が必要になるため、貼り忘れに注意しましょう。
詳細は国税庁発行の「印紙税額一覧表」に記載されていますので、そちらを参考にしてください。
入金を確認して、予定通りに正しく行われていれば、入金消込を行います。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
普通預金 | ×円 | 売掛金 | ×円 | ○月分売上代金回収 |
参考:国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
⑤未払いへの催促
指定期日までに金額が万が一振り込まれていなければ、営業部門など窓口となっている担当者に事情を連絡し、入金を催促しましょう。
売上や請求に役立つテンプレート
売上や請求の際に、どういった内容を盛り込めばよいのかわからないという人も多いでしょう。売上や請求に役立つテンプレートを以下でまとめています。業務内容にあわせて、ぜひご活用ください。
・伝票のテンプレート一覧
・請求書のテンプレート一覧
・仕訳帳のテンプレート一覧
・売上管理帳のテンプレート一覧
売上と請求の意味を正しく理解しよう
売上と請求は、それぞれ言葉の意味も実施するタイミングも異なるものです。基本的には、商品・サービスを売り上げて、商品・サービスを提供したあとに請求する流れになります。
普段から伝票や請求書、仕訳帳などの作成に慣れていない場合、どんな項目が必要なのか、正しい書式は何なのかわからないという人も多いでしょう。その場合は、本記事で紹介したテンプレートをぜひご活用ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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