- 更新日 : 2025年2月19日
移動平均法による評価方法をわかりやすく解説
企業の利益を把握するうえで、売上原価管理は無くてはならない業務のひとつです。棚卸資産の原価を正しく把握できていなければ、利益の数字が不正確となり経営判断や戦略に大きな影響を及ぼすでしょう。
その原価計算をより正確なものとする方法に「移動平均法」があります。リアルタイムに仕入れ原価を算出するので、より高い精度で利益を算出することができるのです。
そんな便利な「移動平均法」ですが、すべて内容を理解しているという方は多くないかもしれません。当記事では移動平均法の概要やメリット・デメリット、具体的な計算方法、総平均法との違いについて解説します。
目次
移動平均法とは?
移動平均法では、棚卸資産の対象となる商品を仕入れるたびに平均単価を算出します。そこで算出された単価を売上原価とし、期末の棚卸資産の評価額に設定するのです。
つまり移動平均法を取り入れることで、期末だけではなく期中でも棚卸資産を評価できるようになります。仕入れの受け入れのたびに平均単価が毎回算出されるので、平均単価が予測ではなく、計算式に基づく額となるのです。
また移動平均法は売上単価を確定する際に役立ちます。
移動平均法の必要性
移動平均法などを通じた原価管理は経営に対して高い重要性を持ちます。原価管理を疎かにすれば次のような問題を抱える可能性があるのです。
- 原価に関わる無駄が見えない
- 人件費などのサービス原価が把握できない
- 適切な売価を設定することができない
- 損益分岐点が曖昧になる
これらを防止するためにも、移動平均法などを活用した正確な原価の把握が必要になります。
移動平均法の公式
移動平均法の計算は仕入れの種類が多いほど、複雑に感じるでしょう。まずは公式をシンプルにお伝えします。移動平均法による平均単価の公式は次の通りです。
平均単価=(受入棚卸資産取得原価+在庫棚卸資産金額)÷(受入棚卸資産数量+在庫棚卸資産数量)
受入棚卸資産取得原価とは、今受け入れた仕入れの金額を指します。また在庫棚卸資産金額はその時点の在庫金額です。
つまり、移動平均法では受け入れ前の評価額に受入分を足して、仕入れるたびに平均単価を再算出することになります。
例えば、期首を2月1日とする場合で、毎月1日に仕入れを行ったケースで見てみましょう。
2月1日:仕入れ100個・単価100円・仕入原価10,000円
3月1日:仕入れ50個・単価130円・仕入原価6,500円
4月1日:仕入れ120個・単価90円・仕入原価10,800円
この場合、最初に3月1日時点で移動平均法による計算を行うことになります。
(3月仕入額6,500円+在庫10,000円)÷(仕入個数50個+在庫個数100個)=110円
この例の場合、3月1日時点での売上原価の平均単価は110円です。続いて4月1日の計算は次のようになります。
(4月仕入額10,800円+在庫16,500円)÷(仕入個数120個+在庫個数150個)=101円
本来であれば売上があがり、在庫は月の途中で減少するでしょう。在庫の減少があってもその分は「在庫棚卸資産金額」「在庫棚卸資産数量」から差し引くことで算出できます。
商品有高帳を用いた移動平均法の計算例
商品有高帳は、店舗や会社に残る在庫の状況を記録する補助簿です。仕入れや売上があったたびに取引日や内容、数量、単価、金額を記入します。
商品有高帳は「この日にはいくら在庫があったのか」すぐに分かるので管理も容易となります。そこで、以下の取引を例に記入方法を確認しましょう。
5月10日 商品100個を@500円で仕入れた
5月11日 商品200個を@600円で仕入れた
5月12日 商品250個を売り上げた
10日に仕入れた100個をそのまま販売すれば、払出単価は500円になります。しかし、11日に追加仕入れを行っており、さらに原価も異なります。
単価の変わるたびに再計算するのが、移動平均法です。よって11日の仕入れ後で、以下のように再計算が必要となります。
(50,000+120,000)÷(100+200)= 566円
この商品が11日以降払い出される際の単価は566円です。12日の売り上げの払出単価も566円となり、商品有高帳には次にように記入します。
【商品有高帳】
| 日付 | 適用 | 受入 | 払出 | 残高 | |||||||
| 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | |||
| 5 | 10 | 仕入 | 100 | 500 | 50,000 | 100 | 500 | 50,000 | |||
| 11 | 仕入 | 200 | 600 | 120,000 | 300 | 566 | 169,800 | ||||
| 12 | 売上 | 250 | 566 | 141,500 | 50 | 566 | 28,300 | ||||
移動平均法は単価の計算が常に必要となるものの、払出単価が1つとなるというメリットもあります。
移動平均法を活用するメリット・デメリット
移動平均法の活用にはメリット・デメリットどちらも存在します。それぞれについて確認しましょう。
メリット
移動平均法最大のメリットは、棚卸資産を受け入れるたびに再計算されるため、リアルタイムで評価額を把握できることです。移動平均法を利用しない場合、前年度実績や担当者の感覚による曖昧な評価額となりがちです。
曖昧な評価額では適切な販売戦略を立てることは難しいでしょう。特に仕入れのたびに仕入額が変動がする業種であれば、評価額のズレは致命的な問題にもなりかねません。
移動平均法を導入することで、常に最新の評価額や変動を把握することができ、柔軟な経営戦略を描けます。つまり移動平均法は売上や利益の拡大へとつながるのです。
デメリット
移動平均法は、前述の通り商品の受け入れをするたびに平均単価を算出しなければなりません。よって「計算の手間」が最大のデメリットといえます。
取り扱う商品に種類が多い企業ほど、算出頻度が高くなり、担当者への負担が大きくなるでしょう。仕入れ担当者がいる企業では大きな課題にはならないかもしれません。
しかし、多くの中小零細企業では移動平均法の算出は何らかの仕事と兼務することとなります。一時的な取り組みでは移動平均法の効果が現れないので、これから取り組みを開始する企業は注意しましょう。
移動平均法と総平均法の違い
移動平均法と総平均法は、両者とも平均原価法のひとつです。移動平均法は、棚卸資産の受け入れを行うたびに再計算するとお伝えしました。
一方、総平均法は仕入れのたびではなく、一定期間をまとめて計算します。どちらの方法も原価を平均で算出し、棚卸資産の評価額とする目的は同じです。
しかし最も大きく異なる違いは「計算する回数」です。つまり「手間の量」とも言い換えることができるでしょう。
どちらも原価を正しく知るための計算方法であり、求める精度や在庫管理にかかる時間や担当する従業員の人件費などを考慮し、選択することをおすすめします。
移動平均法で棚卸資産を正しく評価しよう
ここまで移動平均法の概要や、メリット・デメリット、計算方法、総平均法との違いなどについて解説しました。移動平均法は仕入れる商品の種類が多い業種ほど、管理に手間がかかる可能性があります。
また計算に間違いがあれば、その間違いが次の仕入れにも影響するため、不正確な単価で更新され続けることもあるのです。そのため、会計処理や管理に手間がかかることは十分に理解しておく必要があります。
しかしそれ以上にメリットがあるのも事実です。いつでも最新の平均単価が把握できることは経営の質を上げ、さらには判断スピードを上げることにつながるのです。
移動平均法のメリット・デメリットをそれぞれ知った上で棚卸資産を正しく評価しましょう。
よくある質問
移動平均法とは?
棚卸資産の対象となる商品を仕入れるたびに平均単価を算出することです。詳しくはこちらをご覧ください。
移動平均法を活用するメリットは?
リアルタイムで評価額を把握できることです。詳しくはこちらをご覧ください。
移動平均法と総平均法の違いは?
最も大きく異なる違いは「計算する回数」です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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