- 作成日 : 2025年6月13日
100億宣言が開始!中小企業成長加速化補助金と100億宣言について解説
100億円宣言とは、中小企業が将来的に達成を目指す売上目標を公表し、その達成に向けた挑戦を国が後押しする制度です。
本記事では、100億円宣言の目的やメリット、関連する中小企業成長加速化補助金の内容や申請方法について、わかりやすく解説します。
目次
100億宣言とは?
100億宣言は、中小企業が自ら「売上高100億円」を目指すという意欲的な目標を掲げ、その実現に向けた計画と行動を公にするものです。
これは、中小企業庁と中小機構によって、売上高100億円という高い成長目標に挑戦する中小企業を支援するために立ち上げられたプロジェクトの一環で、2025年2月に発表されました。
100億宣言の目的と概要
「100億宣言」は、経済産業省が主導する中小企業支援施策の一環として創設された制度です。その目的は、中小企業が大きな成長目標を掲げることで、将来的な事業展開への意思を明確にし、官民を挙げた支援を受ける契機とすることにあります。
経済産業省が推進する中小企業支援施策の一環であり、成長意欲のある企業を広報や資金面で支援するものです。革新的な事業展開を目指す中小企業が、売上100億円の達成を目指すことを公に宣言することで、国や自治体、支援機関からの注目を集めやすくなります。
2024年度補正予算に基づき、2025年5月8日から申請受付が行われます。
100億宣言をしたほうがいい企業は?
100億円宣言は売上高10億円以上100億円未満の中小企業が対象です。積極的に活用すべき企業は、今後の大幅な成長を見据えて具体的なビジョンを描いている中小企業やスタートアップでしょう。
とくに自社独自の技術やサービスを活かして新市場に参入したい企業や、脱下請けを目指して自社ブランドの構築を進めている企業にとっては、外部からの支援を得るきっかけになります。また、社内外への成長意識の浸透にもつながるため、経営戦略の節目においても有効です。
100億宣言のメリット
100億円宣言としての主なメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
- 企業のPRになる
- 補助金を申請できる
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
企業のPRになる
100億宣言は、企業のビジョンや目標を対外的に示す手段となるため、社会的な信用力や認知度の向上に寄与します。専用ポータルサイトへの掲載により社会的信頼性が向上するほか、自治体や商工団体、投資家などの目に留まりやすくなり、協業や資金調達の機会を拡大できる可能性も期待できるでしょう。
補助金を申請できる
100億宣言を行った企業は、後述する「中小企業成長加速化補助金」などの一部補助金の申請対象になります。単なるビジョン表明にとどまらず、実際の資金的支援と連動する点が大きなメリットです。
中小企業成長加速化補助金とは?
中小企業成長加速化補助金とは、100億円宣言を行った中小企業が事業の成長を後押しするための設備投資や新規事業の実行、経営体制の強化等に必要な費用について、国からの支援を受けられる補助制度です。
とくに、革新的な取り組みやデジタル技術の活用、脱炭素・GX対応など、政策的に重視される分野に取り組む企業が対象になります。
申請要件は?
中小企業成長加速化補助金の対象になるのは、本補助金の対象となるのは、100億宣言を行い、具体的な成長戦略を策定した中小企業です。申請には宣言を行っていること以外に、以下の要件を満たす必要があります。
- 売上高10億円以上100億円未満
- 1億円以上の投資計画(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
- 一定の賃上げ要件を満たす5年間の事業計画策定(賃上げ実施期間は補助事業終了後3年間)
- 日本国内において事業を実施
補助限度額は?
補助上限額は最大5億円で、補助率は1/2以内です。この水準はほかの中小企業向け補助制度と比較しても高く、より大規模かつ本格的な成長投資を支援する目的がうかがえます。
なお、補助事業は補助金の交付決定日から24ヶ月以内に実施しなければなりません。
対象となる経費は?
対象経費は、以下のとおりです。
- 建物費(新設・増築):補助事業のために使用される生産施設や販売施設、事務所等の建築、改築、増築、改修など
- 機械装置費(器具・備品含む):補助事業のために使用される機械装置、器具・工具、検査装置、什器などの購入や借入、取り付けなど
- ソフトウェア費:業務用アプリケーション、クラウドサービスの初期導入費用など
- 外注費:試作品製作の委託、システム開発の外注、調査・分析業務の委託費用など
- 専門家経費:中小企業診断士や弁理士等の専門家によるアドバイザリー費用や報酬など
ただし、いずれも補助事業遂行のための経費であることが前提であり、単なる建物や設備の老朽化の更新経費は対象にはなりません。
100億宣言の参加方法
100億円宣言は、専用ポータルサイトを通じて登録手続きを行う必要があります。以下では、その流れや入力項目、申請時期について詳しく説明します。
参加はポータルサイトから
100億円宣言は、原則としてポータルサイトからで行います。詳しくは後述しますが、企業理念や経営者メッセージなどの必要時事項を記載したものをPDF形式で提出します。
なお、100億宣言を行った企業が活用できる中小企業成長加速化補助金の申請にあたっては、事業者を対象にした共通認証システムであるGビズIDの取得が必要です。
GビズIDには、「GビズIDプライム」「GビズIDメンバー」「GビズIDエントリー」という3種類のアカウントがあります。しかし、100億円宣言は法人代表者や個人事業主が対象であり、すべての行政サービスが利用できるプライムアカウントを取得しなければなりません。
プライムは審査が入るため、アカウントの作成に時間がかかる場合があります。アカウント申請はオンライン、書類の2通りの対応がありますがオンラインは最短即日で審査結果がわかるのに対し、書類申請では1週間程度かかるため、注意しましょう。
なお、オンライン申請ではマイナンバーカードが必須です。
記載する内容
100億円宣言の申請書には、以下の内容を記載します。
【企業概要】
- 本店所在地
- 事業概要
- 従業員数
- 現在の売上高
- 法人番号
- 登録番号
- ウェブサイトのアドレス
記載した内容はすべて特設サイト上で公表されるため、その前提で記載しておきましょう。
【企業理念・100億宣言に向けた経営者メッセージ(企業理念、ミッション)】
この項目では、経営者の写真が必要です。また、記載内容はあくまでも企業理念や100億円宣言に関するメッセージにとどめ、自社の商品やサービスなどに関する宣伝、法令違反に当たる内容などは避けてください。
【売上高100億円実現の目標と課題】
現在の売上高、営業利益、事業構造、市場規模などの現状を踏まえ、何年後にどのような手段で売上高100億円の達成を目指すのか、その数値目標やターゲット市場を明確に示します。可能な限り、定量的な目標を記載するようにしましょう。また、目標についてはグラフや表などを使用し、わかりやすく説明することが求められます。
あわせて、目標達成を阻むと見込まれる課題(販路の拡大が困難、人材の確保と育成に時間がかかる、資金調達が不安定など)を具体的に洗い出します。これらの課題に対し、どのような手段やリソースを活用して解決を図るかについては、次の「売上高100億円実現に向けた具体的措置」で詳細に説明しなければなりません。両項目は一体的に評価されるため、目標・課題と措置との間に論理的整合性があることが求められます。
【売上高100億円実現に向けた具体的措置】
掲げた目標(売上高100億円)に対しての実現措置や課題解決策の内容を、具体的に記載します。企業の組織体制や外部リソースの活用、生産体制増強、新事業、海外展開などの成長手段をできるだけ詳細に記述しましょう。商品力や競合に対する優位性などの先進性、成長性なども同様です。
なお、この部分では現状に限らず、今後の体制整備の方針の記載も可能です。
申請は2025年5月に開始予定
100億宣言の登録と、それに連動する補助金の申請受付は2025年5月8日(木)に開始される予定です。スムーズに申請できるよう、事前に事業計画の策定や必要な資料を整えておくことをおすすめします。中小企業成長加速化補助金の申請受付は2025年6月9日(月)です。
また、申請書類の正確性や整合性が審査に大きく影響するため、必要があれば専門家の支援を受けながら準備を進めるといいでしょう。
100億円宣言に関して、詳しくは以下をご覧ください。
参考:中小企業庁 100億宣言
100億宣言をして中小企業成長加速化補助金をもらおう!
100億宣言は、単なるスローガンではなく、国が後押しする中小企業の成長支援施策の起点となる制度です。この宣言を通じて自社の成長戦略を明確化し、補助金や支援施策とのマッチングを図ることが可能になります。
制度の活用には一定の準備と戦略が必要ですが、その分、得られる支援は非常に実効性の高いものとなるでしょう。今後の成長を目指す中小企業にとって、積極的な活用が期待されます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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