- 更新日 : 2025年3月19日
SaaS事業のコスト構造とは?利益アップのためには原価計算が重要!
SaaS事業を継続し、売上を伸ばすには適切なコスト構造の理解が必須です。
しかし、計算方法が複雑で難しい、原価には何が含まれるのかが分からないと感じる人も多いのではないでしょうか。
本記事では、SaaS事業における原価の計算方法や重要性を解説するとともに、コストを削減し利益アップに役立てる情報をお届けします。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
SaaSの売上原価とは
売上原価とは商品やサービスを生み出す際にかかった費用全般のことを指します。
一般的には販売費や製造関係費、配送に係るすべての諸経費など直接的なコストのことをいいます。しかしSaaSの売上原価(COG)の場合は、物理的な製品の販売ではないため、一般的な売上原価より少し複雑なコスト計算になります。
SaaSのコスト構造
SaaS企業が健全に長期的な事業を行うためには、SaaSのコスト構造を正しく理解しておく必要があります。
SaaS企業の事業活動では、おもに「売上原価」と「販管費」のふたつに区分された費用で構成されます。
売上原価は上記の通り商品・サービスを生み出した際にかかった費用全般を指しますが、原価に着目すると、カスタマーサクセス・開発に二分され、そこからさらに人件費・インフラコストに細分化されます。
販管費とは販売管理費の略称で、マーケティング・営業に二分され、そこから広告宣伝費と人件費に細分化されます。
SaaS事業におけるコスト構造は以下の表のとおりです。
| SaaS企業の 事業活動 | 原価 | カスタマーサクセス | 人件費 |
|---|---|---|---|
| 開発 | インフラコスト | ||
| 人件費 | |||
| 販管費 | マーケティング | 広告宣伝費 | |
| 人件費 | |||
| 営業 | 人件費 |
SaaS企業の事業活動では、費用と収益のバランスを保持することで長期的な事業の継続が可能です。
SaaS事業活動はおもに「売上原価」と「販管費」で成り立っている
SaaS企業は、コスト構造の基本である売上原価と販管費で事業活動が成り立っているといえます。
SaaS事業の基本的なフローは以下のように説明できます。
| システムを開発→サービスを提供→提供したサービスの保守と更新 |
ここでは売上原価と販管費のそれぞれについて詳しく解説します。
①売上原価はおもに3つで構成される
表のとおり、売上原価はおもにカスタマーサクセスの人件費、開発のインフラコストと人件費の3つで構成されます。
カスタマーサクセスはクライアントのために商品やサービスを提案し、サポートする組織です。サービスを生み出すのに直接かかわった費用として原価に分類されます。開発のコストとは、システムの開発や保守に関わる諸経費を指します。
具体的な売上原価は、「開発・保守チームの人件費」「サポートチームの人件費「その他経費(システムの開発・保守に必要なサーバー構築費や管理費、ライセンス料など)」に分けられます。
開発・保守チームの人件費
システムを開発し、提供後に保守や更新などの工程に関わるすべての開発者・技術者・エンジニアなどの従業員の人件費です。
SaaSでは、提供するソフトウェアやサービスの開発・機能改善・障害対応・運用保守が直接に「サービスの品質」や「サービスの稼働可否」に関わります。
これらを担うエンジニアや運用担当者の人件費は、サービスを提供するために不可欠な原価とみなされるためです。
給与・報酬だけでなく、技術取得のためにかかる研修費用や受検費用なども人件費として換算します。
サポートチームの人件費
サポートチームとは顧客に対応するカスタマーサポートのことを指します。
SaaSは継続課金型ビジネスであるため、顧客満足度の向上に伴うカスタマーサポートが欠かせません。
ユーザーが日々の業務で利用するなかで生じる問い合わせやトラブルの対応を行うサポート部門は、サービスそのものの一部と考えられるため、サポートチームの人件費も売上原価の一部と捉えられます。
サポートチームの人件費には、顧客のオンボーディングコストとして実働する従業員の給与や諸経費などが含まれます。
その他経費
人件費以外の経費には、システムの開発や保守に必要なサーバー構築費や管理費、ライセンス料などが分類されます。
細かい部分では、サーバー、データセンター、クラウドサービス、ソフトウェア配信インフラに係るコストも経費になります。
さらに開発担当者の出張費なども、プロフェッショナルサービスを提供するためにかかる直接的費用として該当します。
②販管費には3つに分類される
販管費は「販売費及び一般管理費」という定義で、マーケティングと営業、それぞれ広告宣伝費と人件費で区分されます。マーケティングおよびマーケティングの広告宣伝費においては、S&M、R&D、G&Aの3種類の費用を覚えておきましょう。
S&M(セールス&マーケティング)
S&Mは営業やマーケティングの担当者の人件費や広告宣伝費などを指します。
SaaS事業の特徴のひとつに営業(セールス)とマーケティングの強い結びつきがあります。SaaS企業の経営では、セールスとマーケティングへの投資効果を理解するためにS&Mを細かく確認する必要があります。
S&Mでは一般的にマーケティング(※1)からインサイドセールス(※2)へ、さらにフィールドセールス(※3)へ、という一連の流れにかかる費用が発生します。
(※1)マーケティング:広告や宣伝活動全般を指し、リード(見込み顧客)を効率的に獲得すること
(※2)インサイドセールス:収集されたリードに対して電話やメール、SNSのダイレクトメッセージなどの調節的な対面以外の手法を活用して行う営業活動。
(※3)フィールドセールス:インサイドセールスで収集された高い意欲を持つリードに対して、直接的に商談を設定し、受注につなげる営業活動。
R&D(リサーチ&デベロップメント)
R&Dとは研究開発に関わる費用全般をいいます。革新的なサービスを生み出すために必要な費用で、情報収集・分析、ソフトウェア開発などさまざまな分野で課題解決に役立ちます。
G&A(ジェネラル&アドミニストレイティブ)
G&Aは営業や開発を支える総務などのバックオフィスにおける費用全般を指します。特定の機能や部門に直接的な関係はありませんが、日々の業務に携わる諸経費や経理部門の人件費、オフィスの賃料、設備管理費、光熱費、従業員の給与など企業が事業活動をしていく中で必要とする諸経費はG&Aに分類されます。
原価率の計算方法
SaaS事業における原価率の計算方法を解説します。原価率を算出することで無駄なコスト削減が成功し、利益向上につなげられます。自社にとって最適なコスト構造の実現のために原価率を可能な限り抑えるように努めましょう。
売上原価率の計算式
売上原価率は以下の方程式で算出できます。
売上原価率が算出できたら、自社の原価率を見直してみましょう。原価率が高ければ高いほど薄利益になっている可能性が高いといえます。原価率を極力抑えることで高利益、高いコストパフォーマンスが実現できます。
自社の原価率の基準を決めておくことも重要です。健全な事業活動においては一定の原価率は発生しますが、予算目標の達成のためには原価率の基準を定めることで目標に近づける重要な要素になります。
原価率が低いほど効率的な売上を見込める
原価率とは売上高に占める原価の割合のことです。原価率が低ければ低いほど効率的な売上や利益が期待できます。
たとえば原価率が高いと、以下のような計算になります。
企業Aの売上と原価の状況
- 売上高:1億円
- 原価額:5,000万円(サーバー費用、開発費、サポートコストなど)
- 原価率:50%(5,000万円 ÷ 1億円)
この場合、売上1億円のうち半分がコストとして消えるため、利益を生み出しにくい状況になります。しかし、原価率が低いと以下のようになります。
企業Bの売上と原価の状況
- 売上高:1億円
- 原価額:2,000万円(同じくサーバー費用やサポート費用など)
- 原価率:20%(2,000万円 ÷ 1億円)
この場合、売上1億円のうち原価が2,000万円しかかからないため、利益率が高く、効率的な売上を実現できています。
上記のように同じ売上額でも原価率が変われば、応じて利益も変動することが分かります。
販管費の計算方法
一般的にSaaS事業の会計では売上原価よりも販管費の方が占める割合が大きい傾向にあります。
そのため、販管費を見直すことでより高い売上を算出できると考えられます。
販管費の計算方法を理解し、適切に計算することで合理的な事業活動に活かしましょう。
販管費率の計算式
販管費率は以下の方程式で算出できます。
販管費率とは、売上高に占める販管費(販売管理費および一般管理費)の割合を指します。3つの販管費(S&M・R&D・G&A)のコスト見直しで効率的な売上高を目指しましょう。しかし、SaaS企業にとってマーケティングとセールスは重要なポジションです。
費用対効果を期待し、一定の水準を設けながらある程度の投資をするのが適切と考えられます。結果として健全なSaaS事業活動に結びつくでしょう。
販管費は一定水準を保つ
健全で効率的な事業活動のためにも販管費は一定水準を保つように努めましょう。事業フェーズや競合他社の影響、市場動向などにも左右されがちですが、自社に合った基準設定で一定の売上を見込めるでしょう。
SaaS事業者や企業によって基準設定はさまざまですが、経営戦略のほか経営理念や目的に合わせて設定することが重要です。
利益増するには「40%ルール」がカギ
販管費の水準を決めておくことの重要性を解説しましたが、基準となる数値はどのように設定すればいいのでしょうか。SaaS事業においては海外企業の数値設定を参考にしてみましょう。
そこで利益増幅を目指す場合には「40%ルール」を意識してみましょう。
SaaS企業はスタートアップの会社が多く、前年度比で売上成長率の急上昇がよく見られます。この急成長の背景には、販管費への大きな投資が考えられます。その場合、どんなに売上が高くても営業利益がマイナスになっていることも珍しくありません。
そこで、40%ルールに当てはめて考えてみましょう。
40%ルールとは
40%ルールとはおもに海外企業におけるSaaS企業の評価基準の数値です。40%ルールは以下の方程式で算出できます。
ちなみに、SaaS企業の事業活動全体売上に対する費用の割合を算出するには、以下の方程式を当てはめます。
前述の急成長中のSaaS企業の費用割合は、この方程式に当てはめると100%を超えてくるケースもあります。
気を付けるべきポイントは自社のフェーズや規模感、資本力などを総合的に判断し、自社に合った適切な原価率や販管率を定めて、目標値を設定することです。
売上成長率の計算方法
売上成長率(%)とは売上高の伸び率を数値化したものです。売上成長率(%)は以下の方程式で算出できます。
また、 営業利益率(%)は売上高に対する営業利益の割合を数値化したものです。以下の方程式で算出できます。
それぞれの数値を算出し、管理することで会社の成長を持続することが可能となるでしょう。
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