- 更新日 : 2025年7月15日
電子帳簿保存法で入力期間の2ヶ月を過ぎたらどうする?スキャナ保存の要件も解説
スキャナ保存制度を導入するには定められた要件を満たさなければいけません。要件はいくつかあり、そのなかのひとつである「入力期間の制限」は、定められた期間内に書類を保存する必要があります。
本記事では、入力期間の制限を過ぎた場合どうなるのかや、期間を過ぎないための対処法を解説します。
目次
電子帳簿保存法には最長2ヶ月と7営業日の入力期間の制限がある
スキャナ保存は、取引先から受領または自ら作成した書類の控えなどの紙の書類を、電子データで保存できる制度です。
スキャナ保存の入力期間は、おおむね7営業日以内、もしくは最長2ヶ月とおおむね7営業日以内に保存する必要があります。入力方式は以下のどちらかを選択します。
- 早期入力方式・・・おおむね7営業日以内に保存
- 業務処理サイクル方式・・・最長2ヶ月とおおむね7営業日以内に保存
業務処理サイクル方式は、業務において書類の受理や精査といった事務処理に関する社内ルールを定める必要があります。
なお、通常の事務処理に係る期間は企業によって異なり、通常サイクルが20日の企業であれば、「最長2ヶ月」が「20日」となります。
電子帳簿保存法で入力期間の2ヶ月を過ぎたらどうなる?
業務処理サイクル方式で2ヶ月以内に保存しなかった場合、紙の状態のまま保存しなければいけません。
一方、早期入力方式でやむを得ず7営業日以内に入力できなかった場合、入力できなかった理由を解消したのちに即入力すれば要件を満たしていることになります。
例えば、毎日のように出勤しない勤務体系の人が書類を受領した場合、期間内に入力できない場合もあるでしょう。そのようなケースでは、出勤次第入力すれば問題ありません。
もし、機器の保守を怠るなどの人的要因により期間内に入力できなかったにもかかわらず、スキャナ保存して原本を廃棄した場合は、罰則を受ける可能性があります。
スキャンミスがあった場合はどうする?
電子データ化して保存した後、折れ曲がっているなどして正しく保存できていない場合があるかもしれません。その場合は、読み取ったデータが原本と同じであると確認でき、かつ以下の条件であれば要件を満たしていることになります。
- 最初に読み取りしたタイミングが受領の日から最長2ヶ月とおおむね7営業日以内である
- ミス発覚時から最長2ヶ月とおおむね7営業日以内に再度タイムスタンプを押す
- 訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する
スキャナ保存の入力期間の変遷
スキャナ保存制度は2005年に制定され、これまで何度か改正されてきました。ここでは改正の変遷をご紹介します。
変遷①2016年の改正で3日以内もしくは7日以内
制度が制定された当初、入力期間は7日以内(業務サイクル方式は最長1ヶ月と7日以内)でした。しかし2016年の改正により以下のように変更されました。
- 作成または受領者自身が保存する場合は3日以内
- 受領者以外の人が保存する場合は7日以内
- 業務サイクル方式の場合は2ヶ月とおおむね7営業日(67日)以内
変遷②2019年の改正でおおむね3営業日以内もしくは2ヶ月とおおむね7営業日(67日前後)
2019年の改正では受領者自身が保存する場合、「3日以内」から「3営業日以内」へと変更されました。
改正前では金曜日に受領した場合、日曜日中(3日以内)には保存しなければいけませんでしたが、改正後は火曜日中(3営業日以内)に保存すればよいことになりました。
また、受領者以外の人が保存する場合は2ヶ月とおおむね7営業日(67日)に変更となり、2016年の改正時より大幅に緩和されています。
変遷③2022年の改正で最長2ヶ月とおおむね7営業日以内
2022年の改正では、受領者自身、または受領者以外が保存する場合、最長2ヶ月とおおむね7営業日以内に変更されました。
入力期間の変更以外には、訂正や削除の履歴が残るシステム利用時は、受領者本人が保存する場合の自署が不要となっています。
その他には、適正事務処理要件が廃止となり、「相互けんせい」や「定期的な検査」、「社内規程の整備」が不要となりました。これにより、2名以上でチェックしていた事務処理を1人で行えるようになりました。また検査用に保存が必要だった原本は、スキャン後に廃棄可能となっています。
スキャナ保存の対象書類
スキャナ保存の対象となる書類は、以下のような国税関係書類です。
| 対象書類の例 | 重要度 | 重要度の説明 | 書類の分類 |
|---|---|---|---|
| 高 | 資金や物の流れに関係する書類のうち特に重要な書類 | 重要書類 |
| 中 | 資金や物の流れに関係する書類 | 重要書類 | |
| 低 | 資金や物の流れに関係しない書類 | 一般書類 |
仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿、損益計算書や貸借対照表などの決算関係書類は対象外となります。
なお、一般書類は保存に関する事務処理規程を定めていれば入力期間の制限はありません。
参考 e-GOV 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則
スキャナ保存の保存要件
スキャナ保存の要件は、入力期間の制限を含め以下のものがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入力期間 |
|
| 一定の解像度、カラー画像での読み取り |
|
| タイムスタンプの付与 |
|
| バージョン管理 |
|
| 帳簿との関連性の保持 |
|
| データを確認・表示できる装置の備付け 速やかな表示・出力 |
|
| システム関連書類の備付け |
|
| 検索機能の確保 |
|
スキャナ保存を導入すれば、紙の保管コスト軽減や業務効率化になりますが、細かな要件が定められているため内容を把握しておきましょう。
2ヶ月を過ぎないための対処法
入力期間を守るためには、以下のような環境や社内ルールを整える必要があります。
①電子帳簿保存法に対応したシステムの導入
②電子帳簿保存法の規程に沿った運用ルールの策定
③要件を満たすスキャナの準備
①電子帳簿保存法に対応したシステムの導入
まず対応したいのが、電子帳簿保存法の要件を満たせる会計ソフトの導入です。
さきほど解説したように、スキャナ保存の要件はいくつかあり、全てを手作業で対応すると時間と手間がかかります。
例えばタイムスタンプの付与を手作業で行う場合、電子データのハッシュ値をTAS(時刻認証局)に送付してタイムスタンプを発行してもらう必要があり、効率的ではありません。
また、手作業では事務作業の際、入力間違いなどの人的要因によるミスが発生する可能性があります。
電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入すれば、タイムスタンプ付与機能が備わっていたり、人的ミスを防止できたりするため業務効率化になります。
②電子帳簿保存法の規程に沿った運用ルールの策定
電子帳簿保存法に対応した会計ソフトだけでは対策できない部分については、以下のような社内ルールを定めた事務処理規程を策定しておくといいでしょう。
- 担当者や管理責任者の配置
- 対象書類の明確化
- 書類ごとの保存期間の明確化
- 入力期間の設定
- 検索機能の検索条件設定
策定する際のサンプルが国税庁にて公開されていますので参考にしてください。
③要件を満たすスキャナの準備
読み取り装置は解像度が200dpii相当以上、色の階調が256階調以上と定められています。
そのため、条件を満たしていない装置で読み取ったとしても、要件を満たせません。
後から要件を満たしていないことが判明して入力期間が過ぎないよう、スキャナを準備する際は解像度や階調を確認しましょう。
なお、2016年の法改正にて、スマートフォンやデジタルカメラで撮影したデータも保存可能となりました。
保存要件を理解してデータを適切に保存しよう
スキャナ保存はペーパーレス化や手作業の手間を減らせるため、コスト削減や業務効率化につながります。要件のひとつ「入力期間の制限」は、作成または受領した書類は定められた期間内に保存する必要があります。
また、その他の要件も満たす必要があるため、スキャナ保存を導入する際は本記事で解説した内容を参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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