- 更新日 : 2025年2月20日
経理は在宅勤務が難しい?理由や実現するメリット、やり方を解説
経理業務は、セキュリティ面のリスクなどから在宅勤務が難しいと言われています。しかし、クラウドシステムを利用した書類のペーパーレス化やICT環境の整備を行うことで、在宅勤務は実現可能です。在宅勤務の推進は、人材の確保やコスト削減などのメリットも多いです。この記事では、経理の在宅勤務を推進するためのポイントについて解説します。
目次
経理は在宅勤務が難しい?
経理部門の在宅勤務は難しいとされています。国土交通省が毎年実施している「テレワーク人口実態調査」によると、経理業務が含まれる事務職のテレワーク率は3割程度です。
参考:令和5年度テレワーク人口実態調査ー調査結果ー|国土交通省
経理は在宅勤務が難しいと言われる理由
ここでは、経理業務の在宅勤務が難しいと言われる理由について解説します。
紙の書類の確認のため
経理部門では、取引先から送付される請求書や納品書、従業員から提出される経費精算書といった紙ベースでの書類が多くあります。紙ベースでの書類が多いと、書類に記載されている内容を確認し、適切に管理・保管するために出社が必要です。
押印のため
日本はハンコ文化が根強く、請求書や契約書などの書面に押印が必要な場合も多くあります。そのため、押印に伴う出社が必要なこともあります。
承認フローが必要となるため
承認フローにおいても、書面への承認印を求められる場合が多くあります。申請作業の承認のための出社も必要です。
セキュリティ面のリスク
経理部門では、社内の財務情報や取引先の情報といった機密情報を扱います。書類やデータを社外に持ち出すと、情報漏洩や紛失などのセキュリティ面でのリスクが高まります。そのため、出社して業務を行うことが求められます。
経理の在宅勤務を推進するメリット
経理業務の在宅勤務を推進する理由や、メリットについて解説します。
人材の確保・流出の抑制につながる
高齢化社会が進んでいる日本において、優秀な人材の確保や定着は企業にとって大きな課題の一つです。特に経理は簿記などの専門知識を必要とするため、人材の確保はより重要となります。
在宅勤務では働く場所を選ばないため、地方や海外在住の優秀な人材の確保や、家庭の事情による勤務体系の変化などにも柔軟に対応が可能です。
従業員満足度が向上する
在宅勤務は、出社のための移動時間がないため、育児や介護、趣味などの時間を確保しやすくなり、「ワーク・ライフ・バランス」が実現しやすくなります。その結果、従業員の満足度も向上するでしょう。
生産性があがる
在宅勤務を推進する目的としてICT環境の整備を行うと、業務がシステム化され作業が効率化します。その結果、人為的ミスの削減などで生産性があがるでしょう。
コストの削減
在宅勤務の推進のためのペーパーレス化により、紙の印刷代や保管場所、郵送費などを削減できます。また、従業員が出社しないため、オフィスの縮小化や交通費なども削減することが可能です。
経理の在宅勤務を推進するポイント
ここでは、経理の在宅勤務を推進するポイントについて解説します。
ペーパーレス化
紙の請求書をPDFでメール送信する、紙の領収書をスキャナーなどを使って電子データにするなど、紙で作成・管理していた書類のペーパーレス化を実現する必要があります。
電子印鑑を導入する
紙に押印する目的での出社をなくすため、電子印鑑や電子署名などのツールを導入することも重要です。押印が不要になることで、業務フローの改善や業務効率化を実現できます。
各種帳票の電子化
経理では、仕訳伝票や決算書、税務申告書など様々な帳票を作成する必要があり、これらの帳票の電子化も必要です。経理帳票の電子化には、クラウド会計ソフトの導入が効果的でしょう。
フローのマニュアル化
業務フローをマニュアル化すると、在宅勤務でも経理業務が円滑に行えるようになり、業務の効率化につながります。また、在宅で業務を行うときのルールや注意点などを明確にすることも必要です。
さらに、業務連絡の方法にビジネスチャットを活用する、ビデオ通話で会議を行うなど、在宅勤務でも情報共有を適切に行えるような仕組みを取り入れることも重要です。
ICT環境の整備
在宅勤務の実現には、パソコンやインターネットなどのICT環境の整備やセキュリティ対策が重要となります。自社でのICT環境の整備はコストが多くかかるため、クラウドサービスなどを利用することも有用です。
また、ネットバンキングなどを利用することで、口座の取引履歴をネットで確認することができ、銀行での記帳作業などが不要になり、業務を効率化できます。
経理の在宅勤務を実現する会計ソフトの選び方
経理の在宅勤務を実現するために役立つ、会計ソフトを選ぶポイントを解説します。
クラウド型の会計ソフトか
会計ソフトにはクラウド型とインストール型の大きく2種類があります。クラウド型の会計ソフトは、パソコンにソフトをインストールするインストール型と異なり、インターネット環境を経由して利用します。場所を選ばずに使用できるため、在宅勤務に向いているでしょう。
最新の税法に対応しているか
クラウド型の会計ソフトの場合は、バージョンアップや更新が自動で行われます。税制改正などがあった場合も、自動的に適宜内容が更新されます。一方、インストール型の場合には、自身でソフトのバージョンアップなどの更新作業を行うことが必要です。
他のシステムやネットバンキングと連携できるか
自社で使用している販売管理システムや給与システムなどと、会計システムが連携可能かどうかも選び方のポイントです。CSVファイルなどでインポートする連携方法とAPI処理などで自動連携できるシステムがあるため、使いやすいほうを選ぶとよいでしょう。
また、ネットバンキングに対応している会計ソフトの場合には、口座の入出金明細を取り込むことができるため、仕訳入力を効率化できます。
料金体系が自社と合っているか
高額な会計ソフトには様々な機能がついていますが、会社の規模によって会計ソフトに求める機能は異なります。自社の利用目的に合った機能と料金体系の会計ソフトを選びましょう。
また、なかには無料期間がある会計ソフトもあります。事前に操作性などを確認したい場合には、トライアル利用が可能なソフトを導入するのもおすすめです。
サポート体制が整っているか
会計ソフトを選ぶときには、電話やチャットでのサポート体制が充実しているかも重要です。また、料金プランによってサポート体制が異なる場合もあるので、事前に確認しましょう。
セキュリティ対策は万全か
会計ソフトには、会社の財務情報や取引先の情報などの機密情報が多く含まれています。セキュリティ対策をしっかり行っている会計ソフトを選ぶようにしましょう。
経理の在宅勤務はクラウド化で実現可能
経理の在宅勤務は、書類のペーパーレス化やICT環境の整備などにより実現可能です。また、在宅勤務の推進には、従業員満足度や生産性の向上などのメリットもあります。ぜひ、自社の会計ソフトをクラウド化して、業務フローを見直すことで、経理の在宅勤務を実現してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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